先は長い!

40才代の女性患者Cさん。ギックリ腰で腰を折り曲げて来院されました。イスに座っていると腰に痛みが出てくるため、仰向きになっての治療となりました。私は上腕診の代わりに膝診を行なっています。推測ではありますが、山元式新頭鍼療法(YNSA)の治療をなさっている医師、鍼灸師の先生方は、やり慣れている上腕診をされていると思います。

膝診に慣れてしまっている私にとっては、上腕診だけでは情報不足を感じます。理由は、膝診では、頸椎1番から仙骨までの状態が分かるからです。例えばCさんの場合、

頸椎診断点は全て圧痛があり、胸椎診断点は、1番と8、9番、腰椎診断点は5番と仙骨に圧痛があります。そのため、Cさんの首、背中中央部、仙骨あたりに痛みがあると推測できます。これらの診断点を緩めるのに7本頭に置鍼。

そのあとトルコのテクチ医師に教わった治療点に2本、後は後頭部のKソマトトープに3本の置鍼で痛みがほぼ無くなりました。後は、左を上にして側臥位で休んでいただきました。最近、腰痛にはKソマトトープを多用しています。皮膚の観察、触診で治療点が明確になるという当たり前のことが、やっと分かってきました。先は長い!

ブルネロ・クチネリ

雨の日は、早朝近くの温泉に行き、サウナで汗を流すことが多いのです。そこで、愛媛新聞を見ていると「ブルネロ・クチネリ」という文字が飛び込んできました。

「あれ?岩崎が翻訳した・・・人間主義的経営の著者!」

と、思わず目を見開き読み始めました。イタリアを代表する高級ブランドのオーナーだと再確認したのです。私の親友で岩崎春夫というスケールの大きい、誠実な偉人がいます。彼が翻訳した「人間主義的経営」という本はベストセラーにもなりました。その序文をご紹介します。

『ブルネロ・クチネリは1953年、ウンブリア州ペルージャ郊外の村、カステル・リオーネの農家に生まれました。

1978年、色鮮やかなカシミヤセーターを製造する小さな会社を立ち上げ、事業の目的を、倫理的にも経済的にも人間の尊厳を追及することと定めました。

1982年、ウンブリアの小さな村、ソロメオに移り、そこを「人間のための資本主義」を実現する場所と定めました。3年後には廃墟となっていた村の古城を買い取り本社としました。

2000年、村外れの古い工場を買い取り、そこを回収して事業の拡大に合わせた新たな生産体制を整えました。

2012年、ブルネロ・クチネリ社はミラノ証券取引所に上場しました。同年、若者たちが技術を身に付け、誇りを持って働くことを願い、本社のある城の一角に職人学校を設立しました。

ロメオ村の豊かな暮らしを取り戻すため、村を修復し、文化、芸術、人々の交流を促進するために、彼は、劇場、図書館、公園などの施設を整備しました。』

恩返し

昨日は、珍しく10名もの患者さんが来院されました。毎日、このように来られると、ちょっと経営は楽になるのですが・・・まだまだ、実力不足、謙虚に邁進です。

今回は野球繋がりの患者さんがほとんどです。これは、特に大学での野球生活が実を結んでいます。まさか、大学で野球をするなどと思いもしなかった私。筑波大学芸術専門学群という大きな枠組みの中に飛び込んだはいいが・・・・はて?一体何をしたらいいのやら?

連日、友人とは芸術話で夜更かし・・・・ホトホト疲れ、もっと健康的な生活をしようと、だだっ広いキャンバスを歩いていると、懐かしい硬式ボールを打つバットの音。

「あれ?この大学に野球部があるの!・・・・人数少ないし、楽しそうだし・・・・なんか、俺でもやれそう!」

と、その日に入部を決め、キャプテンの元に行き面接。1学期も終わり、夏休みの練習から参加することになったのです。「野球ってこんなに楽しいんだ!」と思えた大学生活。その後は、四国に帰ってくる8年前までは、全く野球とは無縁の生活を送っていたのですが、母校松山東高校が21世紀枠で、春の選抜野球選手権に参加したのをきっかけに、「俺、野球部じゃった!」という心に火がついて、松山市内で鍼灸院を開業。

幸い、筑波大学野球部OBが愛媛県に10数名いることもあり、野球ネットワークが広がっていきました。私が大学時代に本当にお世話になった功力靖雄監督に、何の恩返しも出来なかった私。せめてもの罪滅ぼしに、愛媛の高校球児に治療という形でお返ししたいと思っています。

少食のすすめ

本日は、「石原医学大全」の一節をほんの少し!

『少食であることの尊さをいにしえの賢人、哲人が言い残している。

「子曰く」で有名な孔子は「悪衣、悪食を恥じるな。多くを食するな」。

イエス・キリストは「生命のために何を食い、何を飲み、また何を着んやと思い煩うなかれ」

釈迦は「一切の疾病は宿食(食いだめ、過食)をもととす」。

精神を正すだけではない。「大食」が睡魔や倦怠や、果ては不調や病気をもたらすのに対し、「少食」はとてつもないエネルギーを創出する。』

これは、「少食」を実行している人ならば、当たり前に感じとられます。ところが、美食家、大食いの人は、何かとケチをつけてきます・・・・「まず、やってみましょう」。

天児牛大さん

舞踏集団「山海塾」の創始者でリーダーであった天児牛大(あまがつうしお)氏が逝去されました。私は直接面識はありません。しかし、友人の岩下徹氏が筑波大大ホールに「山海塾」を招いて、初めて「金柑少年」を見た時の衝撃は圧倒的。まさに、私が野球青年から、芸術青年に移行する分岐点でした。その後、石井満隆氏(舞踏家)との出会い・ワークショップでの自由な表現、精神病院勤務でのイベント・・・気づいてみれば、チェルノブイリ原発事故後のポーランド、イエニゴラで積み木パフォーマンスをやっていました。ホテルで同室のスラバはロシア最高の道化師、奥様が日本人なので、日本公演を精力的に・・・・

「金柑少年」の衝撃からの広がりが私の今を支えてくれています。

「鍼を刺す」という行為は、舞踏の動きに通じています。踵重心で脱力し指先の皮膚からの響きを感じ取るという所作は、舞踏家のそれと通じていると思い込んでいます。私は患者さんを相手に鍼と共に踊っているのです・・・・踊るしなやかな筋肉を身につけてようと思っているのです・・・・目指すぞ、美しいしなやかな肉体と、それに伴う治療技術。

そんなことを思えるようになったのも、岩下徹氏をはじめとする仲間の存在です。心より感謝いたします。そして、天児牛大(あまがつうしお)氏のご冥福を衷心よりお祈りいたします。

右薬指

 

高校野球部のA君、右肘痛が長引いていたのですが、3週間前から通院されボールを普通に投げることが出来るようになりました。ただ、先日ボールを投げた時、右薬指が引きつるような感じになり、肘にかけて違和感があるそうです。今回でA君の治療は4回目。

いつものように背骨を整え(頭の置鍼4本)、自律神経の働きを良くした上で、A君にデルマトーム(皮膚分節) の絵を見てもらい、頸椎から出ている7番と8番の神経が、右薬指に関係あることを理解してもらいました。

ここで、膝診が非常に役に立つことが分かったのです。一般的に山元式新頭鍼療法(YNSA)では膝診ではなく上腕診で、脳、頸椎、胸椎、腰椎の状態を診断します。しかし、上腕診に全く反応をしめさなかった患者さんに対し、膝診を試みた結果、上腕診と同様の反応を示し、それを去年の学会で発表し、認めていただきました。また、膝診の特徴は、下腿三頭筋という膝ウラから始まる幅広い筋肉があり、頸椎から腰痛までを点でなく線で診断出来るため、頸椎1番から仙骨までの状態を診断出来るという利点です。

A君の右薬指が引きつった神経が出る場所が、頸椎7番と胸椎1番あたりになります。このあたりの診断個所が、右膝ウラの内側1~2点になるのですが、触診するとしっかり圧痛硬結点として存在していました。

そこで、右眉毛の上にあるE点の胸椎1番と、右耳横のIソマトトープ頸椎7番に2本置鍼。すると、右膝ウラの胸椎1番と頸椎7番の診断点がゆるみ、右薬指の引きつった感覚が、ほとんどなくなりました。

なぜ、このような結果が出たのか・・・・だいたい分かるのですが、もう少し深掘りしたいので、次回説明致します。

紫雲膏のムラサキ

最近は、鍼治療からお灸治療に移行する患者さんが、徐々に増えてきたため、モグサと皮膚の間に緩衝材として乗せる「紫雲膏」の消費量が増えてきました。この「紫雲膏」たったの20gで980円もするのです。そこで、手作りで安く!

と、作り方などを調べていったのですが、「安く作る事は、無理」という結論に至りました。その理由は、紫雲膏の紫色を作っている植物・ムラサキが絶滅危惧種であることが分かったからです。滋賀県東近江市株式会社「みんなの奥永源寺」の前川真司さんがこのムラサキを栽培し絶滅危惧種からの危機を救おうとしておられます。その一節を記載します。

【紫草(ムラサキ)とは】

ムラサキ目ムラサキ科ムラサキ属の多年草で、2007年に「東近江市の花」に選出。紫草は、万葉集に詠われるほど歴史が古く、その根を紫根(シコン)と言います。

紫根は、濃紫の染料のほか、抗炎症や皮膚再生作用が高いことから生薬としても珍重されてきました(成分名は「シコニン」)。

紫根の花(初夏から咲き出します)

栽培の歴史が長いにも関わらず栽培技術が未だ確立していないため、収穫率は僅か5%程度。また、冷涼な気候を好むため、温暖化による環境変化に伴い生育数が減少し、絶滅危惧1B類に指定されている貴重な植物です。

※絶滅危惧とは、環境省が公表しているレッドリストに掲載され、近い将来に絶滅危険度の高いものもしくは絶滅の意見が増大しているものを示しています。

【紫根(紫草の根)】

染織すると紫色になりますが、収穫した紫根は赤色に近いものとなっています。また、絹を染めると濃紫色になりますが、麻や木綿などは淡紫色になります。

【紫草を絶やさない】

絶滅危惧1B類ではあるものの全国で栽培されている紫草。前川さんは全国の生産者と積極的に情報交換を行い栽培技術を高めていきたいと考えています。

【みんなの奥永源】2017年、奥永源寺地域をはじめ地元住民から出資を募り、株式会社みんなの奥永源寺を設立しました。

2018年から、産官学創連携により、紫草を用いた化粧品を開発・販売し、業績は好調です。

とあり、いずれにしても手に入り辛い植物であることが分かります。そこで、紫雲膏作りは諦めました。その代わり、別物を入れて、モグサと皮膚の緩衝材にします。出来上がったら紹介いたします。

 

先が見えてきた!

20才代の男性患者Bさん、2週間前から腰痛で通院され5回目の治療となります。山元式新頭鍼療法(YNSA)の治り方は、良くなって、少し後戻りし、再び良くなって、また少し後戻りを繰り返しながら、完治に向かうというのが一般的だと思います。Bさんの場合、初診で来られた時の痛みが10で全く痛みがないのが0だと、本日の腰の痛みは3~5くらいだそうです。

Bさんに17本頭の置鍼を行い、今回も前回同様に、ベッドでうつ伏せになってもらい、肩甲骨の治療を始めることにしました。最近は、「肩甲骨周辺の重要なツボ(経穴)に置鍼し、腰痛を治す」を行っています。どうも、これが効いているようでBさん、

「肩甲骨に貼っていただいた鍼(パイオネックスという0.6mmの円皮鍼)が効いているように思います。」

と、素直な感想を喋ってくれました。

「・・・そうですか、そうしたら、この上から指先で触れるだけの治療をしましょう。」

と、当初予定していた鍼とお灸を変更することにしました。鍼灸師になる以前、操体法の指先で触れるだけの治療をしていました。今回は、皮膚に貼ったパイオネックスの上に指先を軽く触れるだけの治療を15分ほど行いました。

「・・・・・先生、なんかカラダが緩んでくるんですが、これって良いんですか?」

「良いですね!緩んでくるなんて最高です、ゆっくりその感じを味わってくださいね。」

ゆっくりしてもらった後、足裏やくるぶしにお灸をして終了となりました。

「不思議な体験をしました・・・・」

「そうでしょう、脳と皮膚は、元々外胚葉という受精卵で同じ場所から分裂したものなので、繋がりが強いんです。皮膚に軽い刺激を与えるだけで、脳が反応し治癒へと向かうんです。人によっては、無意識の動きが出たり、光や色が見えたりして良くなって行くんです。」

などと話しながら、今回は痛みが「2」となり終了しました。Bさんは、熱心なので、今週もう一度来院されます・・・・先が見えてきました!

サウナの効能

昨日は、同窓会で飲み過ぎたため、近所の温泉「ゆらら」に早朝出かけ、しっかりと2回サウナに入りました。そのため、今回はサウナの効能を「石原医学大全」から引用します。

『低くても70℃、高いと90℃もの高温に身をさらす「サウナ浴」は汗腺と皮膚腺が全開になり、皮膚に張りと潤いを与える。体温もグンと上がるので、体内の老廃物も燃焼処分され、「万病一元、血液の汚れから生ず」(漢方医学)の“血液の汚れ”が浄化される。

温熱刺激は血管を拡張し、血流が促進されるため、心拍出量も50~100%増える。その結果、血流が増えた腎臓は活発に働き、尿量も増加する。サウナの後に気分爽快、開放感いっぱいになるのは、脳からα波が出ているから。心身ともに気持ちが良い時は免疫力も確実に上がっている。サウナ浴は甲状腺の働きを促し、美肌若返り効果がある

(中略)

また鹿児島大学の教授だった鄭忠和博士は、「65℃のサウナに15分、その後30分の保温、最後に水分補給」という方法の「和温療法」を確立。動脈硬化、慢性疲労、線維筋痛症まであらゆる病気で治療実績を上げておられる。

特筆すべきは慢性心不全への治療効果だ。心臓の血液拍出量が減り、腎臓の血流が低下して、尿が出なくなって、体内に水分が蓄流し、1日に1kg以上も体重が増えていくような深刻な心不全が、和温療法で快瘉しているケースも多くあるという。サウナ浴の温熱により、発汗と排尿が促され、末梢血管の内皮機能も改善するからだという。心臓病にサウナは禁忌とされたされていたが、プロフェッショナルの管理下で行う和温療法によってその常識が覆されたのだ。』

今度、「和温療法」に挑戦してみようと思います。