根拠のない確信

 

二日前にギックリ腰の一歩手前で来られた60才代の男性患者Bさん。本日も来院されました。4日後の日曜日には、ゴルフ大会が控えているため、体調を万全にしておく必要があります。前回の治療では、「ギックリ腰の一歩手前」プラス「3ヶ月前から五十肩」もありチョット中途半端な治療になったかもしれません。

「腰は翌日からまた痛みが出てきたんよ。」

「それで、肩の方はどうなん?」

「肩は良うなった!」

「よっしゃ分かった。そしたら、上着を脱いで患者着に着替えてもらおうわい。」

と、今回は腰痛だけに絞って治療することにしました。左右の膝診で7本置鍼し、後頭部のKソマトトープに4本置鍼後、奥のベッドに移動してもらいました。そこでは、うつ伏せになってもらい、肩甲骨辺りのツボ(天宗、臑兪、秉風、天髎)に左右4本ずつの合計8本置鍼。その後、足にみつけた腰の治療点にお灸を左右に12壮して、尚かつ、肩甲骨周辺にパイオネックス(円皮鍼)を8ヶ貼り終了としました。

「どうですか?」

「軽い!」

今回は腰痛が戻らないという、根拠のない確信を感じたのでした。

紫雲膏のムラサキ

最近は、鍼治療からお灸治療に移行する患者さんが、徐々に増えてきたため、モグサと皮膚の間に緩衝材として乗せる「紫雲膏」の消費量が増えてきました。この「紫雲膏」たったの20gで980円もするのです。そこで、手作りで安く!

と、作り方などを調べていったのですが、「安く作る事は、無理」という結論に至りました。その理由は、紫雲膏の紫色を作っている植物・ムラサキが絶滅危惧種であることが分かったからです。滋賀県東近江市株式会社「みんなの奥永源寺」の前川真司さんがこのムラサキを栽培し絶滅危惧種からの危機を救おうとしておられます。その一節を記載します。

【紫草(ムラサキ)とは】

ムラサキ目ムラサキ科ムラサキ属の多年草で、2007年に「東近江市の花」に選出。紫草は、万葉集に詠われるほど歴史が古く、その根を紫根(シコン)と言います。

紫根は、濃紫の染料のほか、抗炎症や皮膚再生作用が高いことから生薬としても珍重されてきました(成分名は「シコニン」)。

紫根の花(初夏から咲き出します)

栽培の歴史が長いにも関わらず栽培技術が未だ確立していないため、収穫率は僅か5%程度。また、冷涼な気候を好むため、温暖化による環境変化に伴い生育数が減少し、絶滅危惧1B類に指定されている貴重な植物です。

※絶滅危惧とは、環境省が公表しているレッドリストに掲載され、近い将来に絶滅危険度の高いものもしくは絶滅の意見が増大しているものを示しています。

【紫根(紫草の根)】

染織すると紫色になりますが、収穫した紫根は赤色に近いものとなっています。また、絹を染めると濃紫色になりますが、麻や木綿などは淡紫色になります。

【紫草を絶やさない】

絶滅危惧1B類ではあるものの全国で栽培されている紫草。前川さんは全国の生産者と積極的に情報交換を行い栽培技術を高めていきたいと考えています。

【みんなの奥永源】2017年、奥永源寺地域をはじめ地元住民から出資を募り、株式会社みんなの奥永源寺を設立しました。

2018年から、産官学創連携により、紫草を用いた化粧品を開発・販売し、業績は好調です。

とあり、いずれにしても手に入り辛い植物であることが分かります。そこで、紫雲膏作りは諦めました。その代わり、別物を入れて、モグサと皮膚の緩衝材にします。出来上がったら紹介いたします。

 

眠気からの教え

 

最近、治療点を見つけ「ここだ!」と感じられる時、突然眠気が襲ってくるという現象が現れはじめています。2週間くらい前から、ちょくちょく感じてはいたのですが、この2~3日は顕著な形で現れています。これは、一体何なのでしょう?

そこで、眠気に関して調べてみた結果、眠気と覚醒は釣り合っていて、覚醒が弱まれば、眠気がくるということだけは理解できました。それ以外の事は、私の頭脳の許容範囲を超えており理解出来ませんでした。理解できたことから判断すると、覚醒という最大の緊張から解き放たれた時に眠気が生じるといえるのかも知れません。

私の治療時は、左右の指先を治療点と診断点に触れて集中します。感覚を研ぎ澄ませ、治療点と診断点の相関関係を感じ取ろうとします。そして、「ここだ」と確信した時、一気に覚醒が弱まり、眠気を感じるのかも知れません。

ということは、以前の治療は感覚を研ぎ澄ませるまでの集中力がなかったと言えます。もう少し体験しながら、眠気に付き合ってみようと思います。

お灸が効いた!

 

「先生、前回のお灸が効いた!背中が全然痛ない!」

と、来院されるや否や、70才代の女性患者Aさんがおっしゃいました。Aさんは1年前から腰痛があり、最近では背中が痛くて眠れないときもあったそうです。この1週間で3回も通院され、鍼とお灸を併用しながら治療をしていきました。

これらの治療前に、食生活の改善を進めていくことを(朝色なしの1日2食)促すと、Aさんは、非常に納得してくれました。後から伺うと、食生活に関しては、このままではいけないと感じておられたようです。実にタイミングが良かったのです。

Aさんの要望は、もう一つありました。鍼治療後、耳の聞こえが良くなったので、耳のために鍼治療をした後、お灸治療をすることにしました。両耳に「耳鳴り」治療9本置鍼。その後は、足に見つけた治療点にお灸をして終了となりました。

次回は、来週の治療となりますので、術後の経過を教えてもらおうと思います。

お灸

9日間で5回来院の70才代の女性患者Cさん。本日は2日連続で来院されました。去年の9月から左肩が上がらない五十肩。それだけでなく、Cさんは、頭痛持ちで鼻の調子も悪い。様々なストレスもお持ちです。

「先生、生き返った感じ。昨日なんか、カラダが軽くて朝からよく動けるの。ここに来る前は、腐った大根だったのに、芽が生えてきた感じ。」

「えっっっっっ、腐った大根だったの」

ご自身を「腐った大根」と表現されることに驚きました・・・色々、お話を伺っていくと、四国中央部の山間部で自給自足に近い生活をされておられたのが原体験。その頃のお話をボツボツと話して下さるのです。その生活と、私が幼いころの生活とが重なりあう部分が数多くありました。

「鍼とお灸、どちらにしましょうか?」

「昨日のお灸が良かったので、お灸で。」

ということで、2日連続でお灸をすることになりました。最近は、お灸治療が徐々に増えていています。施術をしながらその理由を探っていきたいと思っています。

Cさんの五十肩は、初診で痛みは取れたのですが、まだ挙上はできません。今回の治療時、まだ痛みは少し残っています。それを、足に見つけた治療点にお灸をすることで、痛みは無くなりました。この治療点は、昨日の80才代の女性患者さんにも効き、

「先生、肩が柔らかくなった!」

との声をいただきました。今後とも、症例を増やしていきます。

 

お灸治療が、増えて来ています。

足にお灸をして、頭の置鍼と同じ効果があるのが分かってきたので、最近は、

「鍼とお灸どちらにしますか?」

という質問から治療に入ることが、多くなってきました。80才代の男性患者Bさん、治療前に靴下を脱いでこられました・・・お灸の準備をされているのを確認した上で、

「鍼とお灸どちらにしますか?」

と尋ねたところ、お灸という答えが返ってきました。Bさんは、毎年この時期になると花粉症に悩まされるのですが、今年はその症状が出ていません。2週間に1回の治療が効いているようです。ただ、少し鼻水が出るというので、オデコにある鼻の治療点に2本置鍼をしました。その後は、膝診を行い、足に見つけた治療点にお灸をしていくだけです。

お灸の良い点はたくさんあるのですが、一つは、患者さんご自身が、覚えた治療点にお灸をし、アフターケアできることです。また、お灸をしながら、モグサのエキスであるチネオールの臭いでリラックスしながら会話を楽しむことが出来るのです。

Bさんは、野球やソフトボールに精通されているので、施術中、野球の話に花が咲きます。経験豊富なBさんからは、様々なことを学びっぱなしです。また、感覚が鋭い方なので、お灸を受けた時の感覚を適切な言葉にしてくれます。

「最後まで、熱さに耐えて、モグサを取ってもらうと、スーッと入ってくるんです。それが、よく効いています。」

なるほど・・・・これが、今の私のお灸が目指すところ!・・・・って、教えていただきました。

紫雲膏も線香も

モグサ作りが思った以上に成果があったので、今度は紫雲膏や線香も作れないか?とインターネットを調べていると、何と何と作れるのです。紫雲膏においては、料理と実験の感覚で温度と時間調整が大事なようです。線香には、漢方薬に使用する桂皮、クローブなどの粉を混ぜ合わせ、※﨓(たぶ)の樹皮を粉にしたものをつなぎとして、少量の水を加えながら、粘土を作っていくのです。

その粘土を細長く伸ばしたものが、線香になるのです。タブ粉に炭粉末を加えると、煙が少ない線香になるそうです。灸治療の場合は、煙が少ない方が良いので、炭粉末は欠かせないようです。

まだ、作っていないので、今日はここまで。作った暁には、ご報告します。

※﨓(たぶ)は、クスノキ科の常緑高木で別名「イヌグス」ともいいます。

ヨモギ茶

ヨモギをミキサーで細かく刻み、モグサを作っているのですが、その時に出来たヨモギの粉が、まるで抹茶のようにヨモギ茶となることにやっと気づきました。熱湯を注ぎ、黒糖を入れて飲むと、非常に美味しくいただけました。ヨモギのチネオールという精油が灸治療に効果を与えています。湘南太田鍼灸院のホームページのコピペを下記に記載します。

『お灸と言えば艾(もぐさ)ですが、艾は蓬(よもぎ)の葉を乾燥したものです。蓬の葉の裏にはチネオールという精油成分が含まれています。

チネオールには疼痛緩和成分があり、燃やし煙になることで篩板(鼻の奥にある篩骨と呼ばれる骨の中央にある小孔)を通じ前頭葉に働きかけ、リラックスする効果があります。

艾は火をつけると一気には燃えず、少しずつ燃えていきます。その温度は50~60度と言われています。人のタンパク質は42~48度で変性するので、お灸を当てている部位やその周辺の老廃物を壊すことができます。

あえて火傷の状態にすることもあります。火傷になるとそれを治そうとして人体は膿を出します。膿は白血球(マクロファージ:体内に生じた変性物質や侵入した細菌等を捕食)の死骸なので、そうやって悪い物質を体外へ排出します。』

チネオールには、疼痛緩和成分があり、リラックスさせる効果もある。幼い頃からヨモギ餅を食べていたため、ヨモギを口にすることに全く違和感を感じない。そのため、お茶として飲むのは当たり前。今年もしっかりヨモギを収穫して、乾燥させて、粉まで全て使い果たそうと思います。

粗悪モグサ、その後

今朝、乾燥したヨモギをミキサーに、1度だけかけて「超粗悪モグサ」を作りました(右上の一番黒いモグサ)。そのキッカケは、昨日の患者さんの一言からです。

「紫雲膏の上に置いた上質モグサは、急に熱くなる。それに比べると、粗悪モグサは、途中から熱が伝わって来て徐々に熱くなるので、気持ちいい。」

この一言で、上質モグサを使うことは、やめるようにしました。今まで作った上質モグサは、もう一度ミキサーにいれ、作っている過程で出来たヨモギの細かい粉を加えて撹拌(かくはん)すれば、粗悪モグサに戻ります。細かい粉の量を調整すれば、様々な種類のモグサができるので、逆に重宝。

今朝、出来上がった「超粗悪モグサ」を、早速午前中の患者さんに施灸すると、

「途中から熱が伝わって来て、最後は熱くなる。」

と、滑り出し好調です。そして、何壮もやっていくうちに、患者さんが教えてくれました。

「先生、さっきやったモグサ・・・超粗悪モグサじゃないやつ。あれは、最後までええ熱さじゃった。あれ、やったらどうです?」

「あっそうか?そうしましょう・・・・紫雲膏をたっぷり塗って、粗悪モグサを・・・火をつけて・・・・これで、どうですか?」

「・・・・ええ感じです・・・・・ちょうどええ加減で終わりました。」

だいたいのモグサは、最後にピンセットで取り上げて「超熱く」なるのを避けるのですが、紫雲膏をたっぷり塗った上に乗せた粗悪モグサは、程よい熱で終了することが多くありそうです。これからのモグサ作り、楽しくなります!

足の探索

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50才代の女性患者Aさん、不整脈が気になり今年の秋にある検診までに何とか治したいと考えておられます。そこで、下記の石原医学大全の不整脈に関する一節を紹介しました。

『体を冷やす水分を、くしゃみ、鼻水などのアレルギー、寝汗、下痢などで十分に排泄できないときに、体温を上げて代謝をよくして、水分を消費しようとする。1℃の体温上昇には、脈を八~十回/分増やす必要がある(頻脈)。頻脈になると脈が乱れることもあろう(不整脈。』

また、石原医学大全には、水毒(カラダに余分な水がある)の症状を列挙しており、Aさんは、1)まぶたや顔がむくみやすい、2)やたらと喉がかわく、3)お腹が冷たい、4)足がむくみやすいとあるので、どうやら水毒が始まっているようです。

そんなAさんは、朝食をやめることにしました。すると、3日間で体重が1kg減ったそうです。もう早速、反応がありました。足がむくむので、今回はお灸を足にすることをお勧めしてみました。

「えっ、結果は鍼と同じなんですか?」

「はい、同じです。最近は、鍼からお灸へ替わる人が、結構増えてきています。鍼は自分では出来ないですけど、お灸なら自分でできるでしょう?・・・・だから。」

で、足にみつけた治療点にお灸をするのですが、鍉鍼(ていしん)という銀の棒で治療点に押圧するだけで、膝や首の診断点が緩むことが多いのです。「鍉鍼での押圧」は、非常に痛いので、瞬間的に診断点が緊張します。その後、緩むため「一瞬芸」で終了し、おまけにお灸をするという感じです。

今回は、お灸で鍼と同じ診断点の緩み、時間的余裕があったので、足底に見つけている顔の診断点にあえてお灸をしてみました。

「・・・・顔が引っ張られている感覚なんですが・・・・」

と、Aさんからの反応がありました。やはり、あそこが顔に違いありません。足はまだまだ、治療点が存在していると思っています・・・足探索、面白い!

Aさん、検診に向けて決して無理せず、楽しくやっていきましょう!