日本の鍼(はり)があまり痛くない3つの理由❣️

多くの人は、「鍼(はり)」といえば小学校の予防注射鍼(直径0.55~0.4mm)を想像し、いい印象はありません。大人になって血液検査を受ける採血注射鍼(直径0.8~0.4mm)にしても気持ちの良いものではありません。

皮膚に刺入した時の「チクッ」とした痛みが「鍼原体験」としてカラダにも心にも染み付いると思います。注射前日に眠れない恐怖を覚えた小学生(特に男の子)などは、大人になればなるほど、恐怖感が鮮明に蘇(よみがえ)ると思います。

また、鍼の発祥地中国は、直径が0.22~0.45mmの鍼が一般的です。ということは、注射鍼と同じ直径の鍼も使用している事になります。また、鍼先を直接皮膚に押し付けて刺入するため、痛みを伴います。私の想像では、一般の方がイメージする鍼が、この中国鍼ではないかと思います。

ところが、日本の鍼は患者さんに優しいのです。理由は3つあります。

①鍼の直径が中国鍼の半分以下。

現在、私が使用している鍼は、美容鍼直径0.12~0.14mm(これは、髪の毛の太さです)。治療鍼直径0.16~0.25mm。お相撲さんのようにガタイのしっかりした患者さんには、0.3mmを使う時もあります。以上のように直径が小さい上に、最新技術により先端に丸みを作って痛み軽減の努力をしています。

②鍼を鍼より5mm程短い管(くだ)に入れ、管(くだ)から出た鍼の柄(え)を軽く指さきで叩(たた)き皮膚に刺入。

この方法は、日本独自の技です。多くの鍼灸師は、使い捨てのプラスチック管とステンレス鍼を使用しています。このプラスチック管がポイント。

内径が3mmのプラスチック管に鍼を入れると皮膚には、角を丸く加工したプラスチック管とその中央部に鍼先が触れています。患者さんには、プラスチックの円形押圧の感覚だけが伝わっています。その瞬間、鍼を軽く叩(たた)いて皮膚に刺入すると、脳は痛みを感じない場合が多いのです。

 理由は、触圧を感じる受容器からは、太い神経(高速道路の感じ)を経由して脳まで伝達するシステムがあり、痛覚の受容器からは、細い神経(一般道路の感じ)を経由するシステムがあるため、脳は早く到達する触圧だけを感じる場合が多いのです。

もう少し、具体的にいうと、ほっぺを叩(たたか)れると、思わず手をほっぺに持っていきます。これで痛みの個所を触圧し、太い神経の高速道路経由の感覚を脳に伝え、痛みを和(やわ)らげます。このシステムを、鍼の刺入時に使っているのです。

③日本独自の押手(おしで)技法。

鍼灸師がツボを探す時は、左の人差し指をセンサーにして、手のひら全体を患者さんの皮膚に軽く添(そ)えます。これを押手(おしで)といいます。ツボに鍼を刺すまで柔らかい左手のひらが皮膚に触れているため、それだけで、患者さんは気持ちいいのです。そこへ、ド ンピシャの鍼が入るとカラダはゆるむのです。

最近、日本でやっと「東洋医学って実はすごい」などとテレビ言い始めました。

チョット悲しいです。

これには、鍼灸師である我々にも非があると思います。ですから、もっと普通に当たり前に発信しようと思います。

日本の鍼灸および漢方は、仏教伝来と共に日本に浸透し独自の展開をしています。これらの貴重な研究資料を中国は逆輸入していたのです。

実は、中国の鍼灸の歴史は、1822年清の時代から衰退し、1925年、中華民国では中国医学の禁止令がでました。貴重な資料や研究は日本に数多くあり、私の母校である東京医療専門学校(呉竹学園)を1934~35年に視察した承淡庵(1899 - 1957)は、帰国後すぐに中国鍼灸医学専門学校を設立し、その門下が、1956年から各地に設立された中医学院で教鞭をとったという驚くべき事実があります。つまり現在の中国鍼灸の歴史は新しいのです。

もう少し、日本の鍼灸に興味を持って頂きたいものです。