序ノ口

2ヶ月前から息苦しさを感じ、「死を初めて感じた。」とおっしゃる70才代の男性患者Bさん。40才の頃、肺気腫となりお灸で良くなった経験があるため、当院に来られました。Bさんは卓球選手で大学時代は1日8時間の練習をし、30才まで現役選手でした。そのため、猫背になってしまい、肺に負荷がかかったのかも知れません。週2回のペースで来院されているので、今回で20回目となります。

治療後、息苦しさが少なくなる期間が、徐々に増えてきています。元々お灸を受けたくて来院されたBさん。今回はお灸もしてみようと思います。

最近、足にパイオネックス(円皮鍼)を貼る治療を中心に行っているのですが、これは、肩こり、腰痛といった、病名が付く手前の不定愁訴(ふていしゅうそ)によく効きます。それとは、全く別次元で脳梗塞、パーキンソン病などの難病に対し、山元式新頭鍼療法(YNSA)が、大変有効であることは、世界中に知れわたっています(残念ながら、日本ではあまり知られていません)。

つまり、私がやっているのは、山元式新頭鍼療法(YNSA)のまだ序ノ口なです。それでも一定の効果が出ているのですから、YNSAの素晴らしさがおわかり頂けると思います。さて、今回のBさんの治療には、いきなり頭頂部のノドと肺に効く治療点に置鍼1本。その後、左足にパイオネックス3ケ。後はうつ伏せになっていただき、Bさん40才の時になった肺気腫に効いたとされる、1点に25壮のお灸をして終了となりました。

これからも、患者さんの声に耳を傾ける治療を目指したいと思います。

モモちゃん、大脱走?

「おはよう・・・モモちゃん❣️・・・・・あれ?おらん!」

朝起きて、治療室の掃除をする準備・・・どころではありません!モモちゃんがいるはずのキャリーボックスにいないのです!

『まさか?・・・何で・・・・ドアは閉めたはず・・・・逃げる訳ない・・・・あれ、ドア開(あ)いとったんじゃろか・・・・・いやいや、そんなはずはない・・・・しかし、どこ探してもおらん』

モモちゃんが交通事故になってしまった映像が浮かんだり、里親のKさんがガッカリした表情が現れたり、ちょっとパニック状態で探しまわるも見つかりません。そんな時に限って、

「ピンポン!」

『こんなに早く・・・・だいたい分かる、クロネコヤマトじゃ・・・猫タワーが来たんじゃろ』

ということで、モモちゃん探しをやめて、1階の治療室に走ります。逃げてしまったモモちゃんがもう使わないかもしれないと思うと、やや沈みがちな表情に・・・

笑顔が明るいヤマトのお兄ちゃんが、思った通り猫タワーを預けてくれました・・・・ところが、注文したベージュ色ではなく、ブラウン色・・・ダブルショックでふらふらしそう・・・・笑顔のお兄ちゃんには、一所懸命、愛想笑い・・・・足取り重く2階に戻る私。

探しても探してもいないので、あきらめかけた時、居ました!

隣の部屋にある出窓に!資料を置いている隅に小さくなって、隠れていました。朝の日差しが注いでいて、きっと気持ちよかったのでしょう。明るい場所で白いモモちゃんは、同化していて見つかり難(にく)いようです。

それにしても、何とも恥ずかしい自作自演のドタバタ劇・・・・一件落着で良しとしましょう。

猫好きの患者さんが多いので、色々教えてくれます。引っ越しして緊張した猫は、大小便をなかなかしないそうです。それが出来れば、少し落ち着いてくるとのことでした。しっかり大きいのと小さいのが出来たモモちゃん、少し慣れて来たのかもしれません。まあ、ボチボチ・・・

追伸:2月22日は猫の日だそうです。2にゃ~2にゃ~2にゃ~なんでしょうね。

モモちゃん、2日目

生後5ヶ月のメス猫・モモちゃんが我が家に嫁(とつ)いで来ました。非常に繊細で、まだ怯(おび)えています。エサも水もいっさい口にしていません。そこで、お手当て大作戦。モモちゃんに優しく右手の平で、触れること50分。すると、最初は警戒して耳を下げていたのですが、徐々に立っていきノドをゴロゴロいわせて、後ろ脚をダランと伸ばし始めました。途中数分は眠ったようです。

2日目にしては、慣れてきたと思っています。今日は患者さんが少ないので、診察室にいないで極力モモちゃんと一緒に過ごすようにしました。モモちゃんをみる時は、笑福亭鶴瓶さんが笑ったような表情を作って安心させるようにしています。

モモちゃんにとって、このオッサンは敵か味方を判断する時期なのでしょう。今は、キャリーボックスに入って、私の様子をじ~っと見ています。この小さな生命が私の評価をしているのです。ありのままをさらして、敵では無いことを証明しなくてはなりません。無理せず、ボチボチ。

天井につるした2羽のセキセイインコ・キーとボーが、モモちゃんの存在を全く無視していつものように、おしゃべりし続けているので、もしかして仲良く住み分けができるのでは・・・・と、淡い期待しているのです。明日でも、ちょっとキー、ボーを散歩させてみようかな・・・・

モモちゃん

生後5ヶ月ほどのメス猫・モモちゃんが、我が家に嫁入りしてきました。1ヶ月前に1度会ったのですが、2倍ほど大きくなっていたのに驚きました。もうすっかりJKです。横隔膜ヘルニアで腸が肺を圧迫していたので、大手術だったのです。モモちゃんは、本当にラッキーです。あのままだったら余命1年くらいだったそうです。優しい、優しい方に拾われ、大事に育てられました。

愛情をたっぷり注がれたモモちゃん。一回しか会った事のないおじさんの家に、突然引っ越ししたのですから、それはそれは、寂しいことでしょう。しかも、ギャアギャアうるさいインコのキーとボーが天井から話しかけて来るのですから・・・・随分とカルチャーショックを受けているようです。

エサも水も全く口にしてない様子です。モモちゃんの臭いが付いた暖かタオルの入っているキャリーボックスで、ずう~っとうずくまっています。20分ほど背中、首、オデコを撫(な)でてあげたので落ち着いてきました。ノドを鳴らしていますが、耳が下がっているので、まだまだ警戒しているようです。タオルが暴(あば)れているので、直そうとしていたら、逃げて台所の隅っこに隠れてしまいました。

仕方がないので、台所にキャリーボックスを運び、今日はそちらで休んでもらおうと思います。まあ焦らず、ボチボチお付き合いしていくことにしましょう!

これでいいのだ!

70才代の男性患者Aさんは、息苦しさから「死」さえも感じたのですが、通院されて2ヶ月近くになり、徐々に良くなっています。週に2回のペースで通院され、昨日の朝は、目覚めると全く息苦しさがなく、奥さんに

「ワシ、治ったんじゃろか・・・・全然苦しくない。」

と言ったほどの気持ち良さを感じたそうです。ところが、その日に病院(定期検診)に行き出された新薬があまり合わない気がするそうです。私は医師でないので、薬に関して知識がありません。何一つアドバイスをする事はできません。しかし、患者さんが飲んでいる薬が、どのような作用を及ぼすのかを知っておく必要はあります。そこで、Aさんに薬の説明書を持って来ていただきました。友人の薬剤師に見てもらい、少しずつ勉強していこうと思います。治療が終わり、帰り支度(じたく)をしているAさんが、

「先生、お灸はしないんですですか?」

「いいや、やりますよ。」

「以前にも言いましたけど、私が40才くらいのころ、肺気腫になってお灸で治したんです。肩甲骨と肩甲骨の間の1ヶ所にお灸をしただけなんですが・・・」

「・・・肺兪(はいゆ)かな?・・・・」

どうやらAさん私にお灸をしてもらいたいようです。今回は、肺兪(はいゆ)と思(おぼ)しき個所にパイオネックス(円皮鍼)を貼って済ませたのですが、次回はお灸をしてみようと思います。

山元式新頭鍼療法(YNSA)の治療に変更して1年ほど経つのですが、経穴(つぼ)の名前を口にすることが全く無くなっているのに、少し驚きました・・・・・そして、何故か、専門学校時代の経穴の教科書を開いてみたくなりました。当時は、教科書にイラストを描いてイメージで経穴(つぼ)を覚えていたのです。

今見てみたら、楽しく勉強していた様子が伺(うかが)えます。試験の間際まで描き続けていたと思います。しかし、これらの知識を捨てさって山元式新頭鍼療法(YNSA)に鞍替(くらが)えしたことに、爽快感を感じます。これでいいのだ!

嫁入り(その2)

昨日、嫁入りした金のなる木を見た患者さんの第一声、

「先生、これ金のなる木ですよね・・・花が咲いてるのを、初めて見た!・・・・先生、この木は本当に、金のなる木なんで・・・・大事にしてください。」

「えっっっ、これは金を作るんですか?」

「はい、そうです。」

「え~~~」

「私が結婚したころ、主人とコツコツお金を貯め始めました。ちょうどその頃、友達からもらった金のなる木を育て始めて・・・・少しずつ、大きく育っていったんです。金のなる木の成長と共に、貯金も貯まっていき、ついに、新車を買うことが出来たんです。」

「ほ~お、それは凄い!」

「でしょう?・・・・でも、貯金は0になったんです・・・・それから1週間して、突然金のなる木が枯れてしまったんです。」

「うううううん・・・怖い話・・・・ちゅうことは、えっっ、お金と金のなる木は、同じもん?」

「そういう事になります。」

「あああああ・・・凄いもんが、嫁入りして来た・・・・大事にします・・・・まあ大丈夫。隣のお友達(観葉植物)とうまくいってる・・・大丈夫、大丈夫。」

金のなる木を特別あつかいしないで、いつものようにやれば良いだけ!

嫁入り

「先生、お嫁にもらってください!」

と、ちょっとだけ強引に患者さんからいただいたのが、「金の成る木」。調べみると

『南アフリカ東部原産で、ナミビア、アフリカ東部、マダガスカルに分布する。日本では昭和初期に渡来した。

丈夫な観葉植物としてよく栽培されている。水不足が続くと枝の節目からも根を生やすことがあるほか、枝からちぎれた葉1枚葉で、葉の付け根を有しないものも土に挿しておくと不定根と不定芽を断面から生じるほど再生能力が発達しているため、繁殖は挿し木で行われる。

1年を通じて日向か半日陰で乾燥気味に育てる。春から秋の成長期に潅水するとよく成長し、大きな株は1年間潅水を怠っても枯れることはない。乾燥気味に育てれば氷点下5℃程度に耐えるほど寒さに強いが、霜や雪には弱いために冬は屋内か軒下やベランダなどで育てる。砂だけでも栽培できるなど比較的用土を選ばないが、肥沃で通気性の良い弱酸性の土壌が好ましい。』

外に置いてあった「金の成る木」大きくなって、寒い冬、室内に入れることが出来なくなったので、当院に嫁入りとなりました。2鉢は多すぎると思ったのですが、ピッタリと治りました。他の植物とも仲良くお話出来るような雰囲気です。きっと、患者さんがこの玄関に合うと思ってのやや強引な嫁入りだったようです。

お見事です!ありがとうございます❣️

静かなブーム

昨年6月、愛媛県立美術館で2020 TSUMIKI in Matsuyama というタイトルで積み木アートを行った時に知り合った30才代の男性患者Aさん、半年ぶりの来院です。

「佐伯さんの実家は、惣河内神社じゃなかったですか?」

「はい、そうですよ。」

「やっぱり・・・昨日、絵本みたいな薄い本を読んでいて、惣河内神社の天井絵について書いてあったんです・・・もしかして、と思ったんです。」

「あああ・・・近藤林内さんの・・・あのイラストは、僕が描いたんです・・・そして、この間、坊ちゃん劇場の横にあるシアターNESTで、近藤林内さんの演劇があったんです。よく出来たお話でした・・・」

「ええええそうだったんですか!」

「・・・・これでしょう?(近藤林内物語の冊子をお見せする」

「そうそう・・・ここで、この本に出会えるなんて・・・あの本、神さまを大切にしなさいと言っていたでしょう。これには、感じることがあったんです。」

で、その一説をご紹介します。

「これからの人生で、どんなにえらい人になろうとも、自分のはるか上には、いつも神様仏様がいらっしゃることを忘れてはいけない。神様仏様が守ってくださるおかげで、私達は毎日を平和に暮らしていける。神様仏様から見たら、人間なんてみんな同じじゃ。お金持ちも貧乏も関係ない。このことを忘れず、深く頭を下げて感謝しなさい。そして、人は死んだら、みんな神様仏様になり、私たち子孫を守ってくださるんじゃ。」

と言って、寺や神社を大切にしました。寄付を頼まれて断った事は一度もなかったそうです。寄付を集めていると言う話が耳に入れば、どこであってもかけつけて寄付をしました。そして、

「どうか自分の名前を出さないでください。」

とお願いしていました。寄付を受け取った寺や神社はさすがに大金で名前を出さないわけにもいかないので、「河之内 近藤氏」とだけ石に刻みました。

どうやら、しずかな近藤林内ブームが愛媛の片田舎で起こったいるようです。

ソマトトープと指ヨガ

山元式新頭鍼療法(YNSA)の基本概念の1つとしてソマトトープがあります。ソマトトープというのは、人が体調を崩した時、治療点が「小さな人型の投影」として、体表に表れる事をいいます。その多くは、頭皮に現れています。元々、受精卵の外胚葉がくぼみ、神経を形成し、それが集合したのが脳。つまり、外胚葉の延長である体表(頭皮を含みます)と脳は、切っても切れない仲。ですから、頭皮は脳の裏返しと考えられます。

受精卵から胎児へと移行する段階で、最終目標の人型にイメージ「人型になりたいという宇宙の意志」のようなものが、働くのだと思います。そこで、どこを切っても同じ顔が出る金太郎アメのように、人型が様々な個所に現れるのだろうと思います。

体調が悪くなくても、ソマトトープ(小さな人型の投影)が分かる個所があります。それが手です。

韓国の柳泰佑(ユウ・テウ)博士は、高麗手指鍼(高麗手指鍼療法)を考案されたのですが、それは、両手の手掌・手背・手指に、全身全ての器官(臓器)と人体を流注する十四経絡(十四気脈と呼ぶ)に345の経穴(気穴と呼ぶ)が縮図化して存在することの発見でした。つまり、手全体を立体的なソマトトープとみなしたのです。

この考えを元に、ヨガの達人・龍村修先生が「龍村式指ヨガ健康法」(日貿出版社)を出版されています。手は、体の投影で「全体即部分・部分即全体」なのです。この立体的ソマトトープは、山元式新頭鍼灸療法(YNSA)を追求する上で、ヒントを与えてくれているように思います。漠然としていて、まだ言葉にはなりませんが・・・・

茅葺きの民俗学

筑波大学名誉教授・安藤邦廣先生によるリモート勉強会 「日本の住まいの成立」がありました。今回は5回目で、茅葺きの民俗学でした。安藤先生が一番最初に出版した本のタイトルが、「茅葺きの民俗学」。今なお再出版され書店で購入出来るそうです。茅葺き民家は遺物ではないので考古学としての考察は出来ません。安藤先生の「歩く・見る・聞く」の仕事ぶりを見た出版社の側から、茅葺き民家を日本の伝承、習慣としてとらえ、「茅葺きの民俗学」というタイトルで出版するように提案されたそうです。

ここで、茅(かや)の定義。茅(かや)とは、屋根となる素材の総称で、ススキ、ヨシ、チガヤ、クマザサ、稲ワラ、麦ワラなどをいいます。この茅があるところが茅場という草原です。戦前にはこの草原が日本国土の30%を占めていましたが、戦後の国策として杉の植林を草原にしたので、一気に茅場がなくなりました。明治から戦前には多くの家は、茅葺きだったため、茅場の需要はあり、古くなった茅は肥料として使われ完全なエコシステムが成立していました。ところが、経済成長優先の路線の元、茅葺き民家はすたれ茅場という草原の生態系が崩れていき、現在では、国土の1%しか草原は残っていないそうです。

コロナ禍の後の世界、茅葺き民家を見直し、エコシステムの再建を考えてみたいと思ったのです。