直接灸

 

今までやったことのないお灸をしています。本来のお灸は、半米粒大~米粒大の大きさのモグサに線香の火をつけ、火が皮膚に到達する手前で人差し指と中指を使って、火を消します。そのため、ヤケドにはなりません。ところが、多くの人はてんこ盛りのモグサに火をつけて皮膚を焼ききるイメージを持っておられると思います。しかし、こんなことをしたら、患者さんは逃げてしまいます。

そこで、私はゴマ油、ミツロウをベースとしたヤケドに効く紫雲膏を皮膚にのせ、その上にお灸をする間接灸をしています。これだと心地よい熱のお灸となり、結構人気があります。ところが、そんなお灸をではなく、皮膚を焼ききるお灸をせざるを得なくなったのです。

「すみません、突然で申し訳ないのですが、腰に印をつけたところに、お灸をしてもらえないでしょうか?偉い先生に診てもろて、ここにお灸したら一発で治ると言われたんです。」

「・・・・・いいですよ。ただ、どうしてその偉い先生にはしてもらえないのですか?」

「もうお年で、治療院も閉められたので、やっておられるんのです。」

「・・・・・なるほど、そうしたらやりましょう。」

ということになり着替えていただき、ベッドでうつ伏せにのままお灸をすることとなりました。

一回目のお灸は焼ききるようにはしない間接灸としたにですが、

「偉い先生曰く、焼ききらんといかんそうです。」

ということになり、2回目は米粒大のモグサを、焼ききるお灸を行いました。すると、

「普段歩くには、痛みを感じんのですが、朝起きてから10分が腰が痛いのです。」

と、徐々に良くはなっているようです。3回目はモグサをもっと大きい半小豆大くらいのモグサにして焼ききりました。腰回りの9カ所に45分のお灸です、かなり辛抱されていました。さて、次回はどのような結果になるのやら・・・・見当がつきません。

お久しぶり

 

山元式新頭鍼療法(YNSA)の初級セミナーを受け、頭に置鍼をし始めた頃、70才代の男性患者A

さんのバイクが壊れ、Aさんは来院出来なくなりました。それから4年程経ち、やっと来院出来るようになりました。その間、コロナ禍もありAさんも人に会う機会が少なかったそうです。移動手段がなくなり、コロナ禍だとやはり、籠(こも)ってしまいます。久しぶりに会うAさんの笑顔を見ると嬉しくなりました。Aさんは、以前のように服を着替えようとするのですが、

「Aさん、もう着替えをしなくていいんです。」

「あああ、そうなんだ・・・・着替えるつもりで来てたのに・・・」

「この待合室で治療しているんです。」

「そうですよね・・・・最後の頃は、ここで頭に鍼刺すことがありました。」

私の場合、YNSAを習い始めてからなるべくYNSAだけで治療を始めました。その理由は、即効性があるからです。この即効性のおかげで今までの治療時間の半分に短縮出来るようになったのです。

「あれから随分進化して、お灸で足だけのYNSAや、鍼もお灸も使わないで指を当てるだけの治療もしています。」

と、4年間の変せんをさりげなくお伝えしました。

「先生、あの頭の鍼で花粉症が治りました・・・あの治療点に刺激すると、首の方に気持ち良さが走ったりするので、しょっ中やってました。」

「あああ、それは良いですね・・・・Aさんは感覚がすごいので、こちらが本当に勉強させてもらっています。」

などと、会話をしながら治療に入っていきます。Aさんは、言語能力に優れており、カラダに起こる感覚の変化を瞬時に表現してくれます。その能力の素晴らしさをお伝えすると、

「いやいや、私は普段は全く話さないんです。特にコロナ禍になって人と会うことがなくなったでしょう・・・・すると、ノドがおかしくなるんです・・・こういう時、ハーモニカを吹くと元気が出て来て、ノドもよくなるんですよ・・・ばあさんじいさんが、お経を読んでいる意味が、やっとこの年になって分かってきました。お経読むのは、タダでしょう?これ、カラオケに行って歌おうものなら、お金がいるじゃないですか・・・・世の中はうまい具合に出来ているんですよ。」

「なるほど!」

「今まで喋ってない分こうやって、いくらでもしゃべることが出来るんですよ。」

「なるほど・・・」

などと、話が続いていくのです。 (つづく)

 

人型の治療区域

 

somatotope(ソマトトープ)という山元先生の造語があります。somatoとは、ラテン語で身体、topeとは、凝縮という意味です。これは、人型(ひとがた)の形状をした治療区域を意味します。もう少し具体的にいうと、山元先生が頭皮に見つけられたIソマトトープ、Jソマトトープ、Kソマトトープなどがあります。例えば、Iソマトトープは、耳を胴体とみなした人型が逆さまになっている治療区域です。逆さまになったIソマトトープの頭は、耳タブの下にあります。そのため、ノドが痛い患者さんは、ノドに位置する耳タブの下に鍼を刺すと治療になるのです。

Jソマトトープ、Kソマトトープは頭頂部にどーんと横たわっているので、それぞれの患部に合わせた治療部位に鍼を刺すと患部がよくなります。

この信じられないような治療法がなぜ生まれたのでしょう?それは、フラクタル構造にあると思います。フラクタル構造とは、簡単にいうと「どんなに小さな一部分をとっても、それが全体と同じ形をあらわしている構造」のことで、自己相似と呼ばれるものです。例えば、小腸の絨毛は凸凹していますが、その絨毛の表面もまた、凸凹しているといった現象のことです。それが、身体にも当てはまるのです。

もっとも分かりやすいのは「高麗手指鍼」。これは、柳泰佑先生(現高麗手指鍼療法学会会長)によって1975年に韓国で創案されました。これは、「部分即全体」という表現で説明されています。つまり手首から指先をカラダとみなします。すると、中指の第一関節(先っぽの関節)から先が頭となり、第一関節から第ニ関節が首、そこから手首までが背骨骨盤となります。右手の人差し指は左腕、右手の薬指は右腕、右手の親指は左脚、右手の小指は右脚になります。

これは、韓国で当たり前に行われている治療法です。私もこの見方で治療する時もあります。この「人型(ひとがた)の形状をした治療区域」が手そのものですが、頭にもこのフラクタル構造の形状が存在していたのを、山元先生が見つけられたのです。少し大げさにいうとカラダという宇宙に存在するフラクタル構造がいたる所に存在し、それを日々発見する旅に我々治療家は出ているのです。

山元先生、ハーバード大学に呼ばれる

私の師匠である冨田祥史(とみたよしふみ)先生が、「山元式新頭鍼療法の実践」という加藤直哉先生との共著で、下記のように書かれています。

『補完代替医療の研究が盛んな、アメリカにおいてもYNSAは注目されています。1992年、アメリカ政府による補完代替医療の研究がスタートし、当時の研究費は2億円でしたが、現在では数百億円の予算がつき鍼灸治療の化学化において大きな成果を上げています。アメリカでは、現在2万人以上の鍼灸師がいて、全米に50以上の鍼灸学校があるそうです。そして実際にアメリカ全土の大学病院の中には、ほぼすべての大学病院に鍼灸科があります。がん治療で有名なスローンケタリング病院やデューク大学附属病院では、抗がん剤の副作用を低減や疼痛緩和に鍼灸治療が行われ、人工関節置換手術の後は、鍼灸治療を実施するそうです。その中で補完代替医療の分野でも、先進的な動きをしているアメリカの最も権威のあるハーバード大学、医学部大学院は、ヨーロッパのYNSAの噂を聞きつけ、2007年5月山元先生の講演と指導を依頼しています。日本の歴史上ハーバード大学医学部から直接招待を受けた医師は何人いるのでしょうか。』

わずか30年の間に、補完代替医療に費やした国家予算が何百倍です!経済が全く低迷した日本の30年との差はあまりにも大きすぎます。山元先生がハーバード大学で講演され16年経ったのですから、ハーバード大学の研究は凄いことになっていると思います。個人で頑張るには限度があります。日本政府、ちょっと頑張って!

なぜドイツでYNSAが普及したのか?

ドイツでYNSAの普及が世界中で1番の理由

山元敏勝先生は、ドイツのケルン大学病院で働かれ、奥様ヘレンさんはドイツ人で看護師をされていたのが大きな要因だと思います。山元先生のお人柄とその力量で多くの医師からの信頼を受けておられたからだと思います。私の師匠である冨田祥史(とみたよしふみ)先生が、「山元式新頭鍼療法の実践」という加藤直哉先生との共著で、下記のように書かれています。

『ドイツを始め、ヨーロッパの国々は自然療法をとても大切にしています。なんと、古代エジプト時代以来、4000年もの自然療法の伝統を受け継ぎ大切にしているのです。特にドイツでは、医学生は薬草の授業が必須であり、医師国家試験にも問題として出ます。また、医師免許更新時にも薬草のレクチャーを受ける必要があるのです。ドイツ人医師の20%は、ハーブや鍼灸治療、温泉療法など、補完医療(西洋医学以外の治療)を行っており、その割合は年々増加し、1パーセントもいない日本の現状と比べると、桁違いの普及率と言えると思います。またドイツにはハイルプラックティカー(補完代替医師・自然療法士)と呼ばれる鍼灸治療、アロマやハーブ、漢方、音楽療法、温泉療法など、補完代替医療を行うプラクティショナーの制度が、1938年からあり、ハイルプラクティカーの中でも鍼灸治療は人気が高く、YNSAは、中医鍼灸と並んで多くのプラクティショナーがいるそうです。』

この文章を読んで、日本との違いにただ呆然としてしまいます。そして4000年も続いた自然療法がドイツに存在していたことすら知らなかったのです・・・・私は。

そんな歴史があるドイツだから、当たり前に補完代替医療が展開できるのでしょう。羨ましいかぎりです。ただ、羨むばかりでは進歩しません、日本には日本の優れた発酵食品(ぬか床、納豆、醤油、味噌、日本酒などなど)があり、YNSAがあるのです。それだけではありません、縄文文明という新しい概念が生まれきています。1万7500年前から、縄文文明なるものが存在していたという事実が最新考古学の研究から、徐々に明らかになってきているようです。もちろん、この縄文文明という考え方を全く正しいかどうかは分かりません。ただ言えることは、もう少し日本に誇りと自信を持ってもいいのではということです。独自の補完代替医療を目指したいものです。

東温史談

 

「東温史談」という東温市の歴史を紹介する立派な冊子が届きました。これに、惣河内(そうこうち)神社宮司の佐伯敦が近藤林内物語 身宝は 芋に大根に 麦の飯 という文章を書いております。イラストは私が描きました。

近藤林内(こんどうりんない)さんは、大庄屋として地域をまとめ、作り酒屋として美味しい酒をつくり、大繁盛し、その金を地域のために使った偉人です。焼けた惣河内神社を再建したのも近藤林内さんです。その一節をご紹介します。

『わしは大庄屋になってはおるが、村のみんなと同じただの百しょうじゃ。刀なんぞは、いらん。たまたま商売がうまくいってお金が入ってくるけど、それも、神様、仏様、そして村のみんなのおかげじゃ。みんな、苦しい生活をしよるんじゃから、わしらもがまんして、みんなと同じ生活をしよう。そして、少しでも、河之内のためになるようにお金を貯めようと思う。お前らにも苦労をかけるけど、がまんしてくれ。うちの店にお金がたくさんあるからといって、自分たちが偉いと思ってはいかんぞ。これはご先祖様が残してくださったお店や田畑があるおかげで、たまたま我が家にお金が集まっているだけじゃ。このお金は、決して自分のものではなく、みんなのものだから、世の中のお役に立つことに使わねばならん。そのためにはけん約し、一文たりとも無だに使ってはいかん。お米は神様からいただいた食べもので、大切なお金に代わるのだから、一粒も無だにしてはいかんぞ』

頭がさがります。

YNSAの紹介

 

 

 

下記のようなYNSAの紹介文を書き、会社経営で成功している患者さんに見てもらったのですが、イラストを入れて、会話形式にして読みやすいようにしたら?

と、ご意見を頂きました。全くその通りでした・・・・やり直しです。

『YNSAの成り立ちと、普通の鍼(はり)との違い

山元式新頭鍼療法(YNSA)は、1968年、麻酔科のドクターだった山元医師の失敗から始まりました。ドクターは、麻酔液を入れるの忘れて無菌水を60才代の女性患者さんに打ってしまったのです。すると患者さんは、注射を打ったところはもちろん、それ以外にも激しい痛みが生じました。ところが、患者さんのもともと治療を望んでいた部位の痛みが、しばらくすると全く無くなってしまったのです。

この失敗を、ドクターは「東洋医学のツボと関係がある」というお告(つ)げだと直感し、東洋医学を研究されます。当時(1960年代後半)、中国で発表された頭鍼療法を取り入れながら試行錯誤したのですが、効果はあがりませんでした。そんなある日、脳梗塞の後遺症で麻痺を起こされた60才代の男性が来院されました。左半身麻痺で左の側に全く感覚がなく、動かない状態でした。しかし、この患者さんの右側のこめかみの少し上あたりをに触れたとき、患者さんが「左腕に何かを感じる」と言うのです。再び頭部のそのポイントに触れると、今度は全く動かないはずの左腕がわずかに動く事が起こったのです。

ドクターはこの時、「頭部には腕以外にその他の体や内臓にもつながるポイントがある」と直感したのです。それからは、仮説を立てながら次々と治療ポイントを見つけ出していきました。そして、ウワサがウワサを呼び、1日に200人もの患者さんが来院するまでになったのです。この治療方法を1974年海外で発表すると瞬(またた)く間に広がり、現在までに、ドイツでは19万1000人、アメリカ合衆国では16万3000人、ブラジルでは14万9400人の医師が研修を受けました。この治療を数十年続けたので、ドクターは、のべ150万人の患者さんを診ることになりました。そして次々と治療点をみつけていき、今では14カ国以上の国々で補完代替医療として使用、研究されています。

日本では、2013年に学会が発足し、現在約600名の会員がいます。

YNSAの特徴

1)ツボが40ほどしかない←→経絡のツボ(361+たくさんのツボ)

2)西洋医学の知識の上に東洋医学の考えを加えているので、普及しやすい

3)服を着たまま、座ったままで治療できるので、手間がかからない

4)即効性がある

5)再現性が高い(秘技ではない)

6)治療率が高い

7)クスリのような副作用がない

8)新しい治療点、治療法が見つかる可能性がある』

国家試験

今月26日には、鍼灸師の国家試験があります。私が受験したのが平成24年ですから11年前になります。簡単に国家試験といいますが、それはそれは、厳しい試験でした。

医療概論(医学史を除く。)、衛生学・公衆衛生学、関係法規、解剖学、生理学、病理学概論、臨床医学総論、臨床医学各論、リハビリテーション医学、東洋医学概論、経絡経穴概論、はり理論及び東洋医学臨床論

上記のように12科目中、西洋医学が9科目もあるのです。多くの方々は、鍼灸師だから東洋医学ばかり勉強するように思われているようですが、逆です。テストの量も西洋医学の方が多くなっています。のんべんだらりと勉強していると、国家試験には受かりません。私の場合は、早朝学校(東京医療専門学校)に行き、休憩所で一人勉強していたのですが、徐々に仲間が増え始め、みんなで情報交換する勉強会へと発展していきました。

あの勉強会で国家試験に受かったと、今になって思います。専門学校には18才から定年過ぎた人まで色々な人々が集まってくるので、楽しい3年間を過ごすことができました。大学と専門学校を経験した私、どちらが勉強したか?と冷静に考えると、圧倒的に専門学校でした。それくらい、国家試験という壁が巨大にそびえていたのです。

ところが、国家試験に受かることは序の口であることが分かるのです。鍼灸をこれからどのように展開していくのか・・・・幸い、私は山元式新頭鍼療法(YNSA)という道を選ぶことが出来、私なりに歩んでいます。これからも、患者さんの感覚を頼りに少しずつ進んでいこうと思います。

リウマチの患者さん

 

50才代の女性患者さんが、初めて来院されました。この方は30才代から全身のリューマチになられ、苦労されておられます。そこで、山元勝敏先生の著書「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」の関節リウマチの患者さんの症例を記載し、治療方針を確認しようと思います。

『YNSのリウマチ治療の体験談を読んで、香港から来院。2年間、苦しんだ痛みが改善された

「関節リウマチ」で体中に痛みがあり、とくに腰の強い痛みを治してほしいと治療に見えた患者さんです。日本の方ですが、現在住んでおられる香港から、ご主人と一緒に来られました。

「実は、リウマチの治療体験記の本を読んでいたら、先生のところでリウマチの痛みが治ったと書かれているのを見て、香港から飛んできました。」

だいぶ前になりますが、同じようにリウマチで体の痛みに悩んでおられた奈良に住む30歳代の女性の患者さんが、3日間、私のところに治療に見えたことがあります。1回目の針で痛みは軽減し、翌朝起きたときに、すっかり痛みや消えていたことから、大変に喜ばれて、「なんで効くんですか」「どうやって見つけたんですか」といろいろ質問をしてこられた、とても楽しい患者さんでした。この患者さんは、リュウマチの治療をとても熱心にされていて、自分で体験談をまとめ本を出されていたのです。

香港から日南まで治療にこられたのは、この本を読まれての事でした。2年前に関節リウマチと診断を受け、その後もずっと強い腰の痛みに苦しんでおられたそうです。1回目の針で、痛みはだいぶ改善し、日南に一泊された翌日の2回目の治療で全く痛みがなくなり、大変に喜ばれて香港に帰られました。

私のところには、リウマチの患者さんも多く見えます。リュウマチには痛みだけでなく、手の指が固まってしまう硬直の症状もあります。私はYNSAの長い研究の間に、頭部だけでなく、体の部位にも症状を改善する店を発見してきました。

足のふくらはぎのやや下あたりに発見した点は、手の指の硬直の改善にとても大きな効果をもたらします。針をした直後に固まった指がパッと開くという、患者さんも大変に驚かれる反応があるのです。YNSA』によるリュウマチの治療は、痛みにおいても、硬直においても、治療を続けることで大きな改善が見られます。