40年前、木霊療法と呼ばれた積み木(その4)
女医さんが、顔を近づけて絵を覗きこむので、うっとうしいと感じながらも、ドンドン色を塗っていきました。
『アレ?、この人オレの事、患者さんだと思ってる!』
と感じるのに、少し時間がかかりました。
『まあ~~いいか、患者さんに成り切ろう!』と、普段通りに塗る私・・・もっとも、一番変な格好をしているのが私・・・誰だって、正真正銘の患者さんだと思います。
途中からは、女医さんを無視して2人で夢中になって塗っていきました。
その時の会話が、楽しかったのです。
「この靴もう少しピンク色が欲しいなあ~」
「そうやな~~」
「私なあ~、チェッカーズのフミヤが好きなねん!」
「フミヤのセンスは、抜群やねん!」
「へ~~!」
まあ~、たわいもない話です。いつの間にか、女医さんもいなくなり何となく色塗りが収まり始めた頃、
「もう、ええんちゃう?」
という彼女の一声で終了。
その日の症例検討のミーティングでは、職員全員と見学に来られた先生方が集合します。私も、変な格好をしていますが、職員なので参加します。とは言っても、端っこで先生方の意見を拝聴するだけです。そのため全員が集まったころ、最後にコッソリと、ナースステーションに入ります。
ドアを開けると、真っ先に目に入ったのは、あの女医さん。ドアと向かいのコーナーに立っておられました。目と目が合った瞬間、女医さんは一瞬目を疑う表情をするも、直ぐに全てを理解されたようでした。
『すみません、別にだますつもりではありませんでした・・・』とポツリ。 (つづく)