お絵描き教室

小学校6年生の女の子Aちゃんが、来院。

「途中しんどくなってしまい、治療出来なくなるかもしれません。」

娘さんの体調を気づかい、心配されたお母様の来院早々の一言です。その時点で、どの様な治療にするか全く白紙の状態になりました。とりあえず、カルテに氏名、住所などを書いてもらいます。

「ペンの持ち方が、しんどそうじゃね。そうやって、書きよったら、疲れろ?」

「はい。」

「あんね・・・ペンは、軽く持って、手首や肘を使ってこうやって書いたらええんよ。」

ペンを指だけ使って握り締めながら書いているAちゃんに、ボールペンでクルクルと曲線を引いて、ペンの握り方指導をしました。

「あんね・・・指だけ使って握りよったら、カラダも自然とうつむいて来て・・・・気分も自然と落ち込んで来るんよ。」

「気分良くなろうと思ったらな・・・・・手開いて中指を軸にして、小指を外に向けて回して・・・・・そう、そうしたら、自然と上向いて顔が向いていくじゃろ・・・その方が、気持ちええじゃろ!」

まず身近な生活指導から始めることにしました。そして、Aちゃんには、ペンを軽く持って曲線を引く練習をしてもらいます。

「上手じゃね~・・・・そしたら、色鉛筆持ってきたけんな・・・これで、色塗っとおみい(色塗てみてね)。」

中学生になったら美術部に入りたいくらい絵が好きなAちゃん、一瞬で緊張がほどけ、好きな色を探して、塗り始めるました。その時の姿勢やペンの持ち方が、重要です。勿論、小学校でも習っているとは思いますが、私が小学生(50年以上前)頃に比べると、習い方の厳しさは違うと推測します。

私の場合は、明治生まれの祖父さん、祖母さん(2人とも学校の先生)に習ったので少しでも、変な鉛筆の持ち方をすると注意されました。姿勢が悪いと竹の物差しを背中に入れられ、背筋を伸ばす習慣を身につけました。お陰で正しい鉛筆の持ち方が身についたようです。今は、あの時の厳しい愛情に心より感謝しています。

「そうじゃ!上手なったな~」

小学校6年だと、教えてすぐ修正できます。Aさん、ゆるんだ手で楽しそうに色塗りしますが出来ています。手がゆるむと、カラダがゆるみ、心もゆるみます。ましてや、好きな色塗りを楽しみながら・・・途中から、私も色塗りを始め、2人で楽しくおしゃべりも出来ました。

その結果、出来たのが写真の絵です。ウラに日にちと、それぞれの名前を書き、Aちゃんに差しあげると、

「あれだけ(60分弱)鉛筆持ったら、いつもは手が痛なるのに、今日は痛くない。」

と言い、お母様は、

「次回にカラダを診ていただきます。」

の言葉を残されて、2人は帰られました。