森下敬一先生、国会へ その6

 

昭和44年、衆議院科学技術振興対策委員会「食品添加物問題」に、森下敬一先生が、学術参考人として証言されています。

『○森下参考人 去る五月の十四日にNHKの「生活の知恵」の番組でいわゆる危険食品をテーマにしで問題が取り上げられたわけであります。私もこのとき、資料提供という形で四、五本血液を持ってまいりました。この血液は、一つは、紅しょうがで血液の水の部分、つまり血漿の部分が赤く染まっている血液であります。もう一つは、ウズラ豆をたくさん食べて、やはり同じように血漿が緑色に染まっている血液でございました。もう一つは、粉末ジュースを飲み過ぎてやはり血漿が黄色くなっている、そういう血液を何本か皆さん方にごらんいただいたわけであります。 

私自身は、日本人の血液がこういうふうに食品添加物によってひどく汚染されているということに十二、三年前に気がつきまして、以来、加工食品をとらないように、自然食品に切りかえるべしということを唱えまして、いわゆる自然食運動を展開してまいったわけであります。現在静かなブームといわれております自然食運動、これはたいへんけっこうなことでありまして、この運動を十数年前から推進してまいりました私どもの立場から申し上げますと、たいへん喜ばしいことだというふうに考えるわけであります。 

しかし、よく考えてみますと、現在一般大衆の中で、こういう形で自然食運動が盛り上がってきているということは、ここまで一般大衆の食生活を追い込んできた国の無為無策という点から考えますと、大いにこれは責められていい問題ではないかというふうに考えております。 

最近のいわゆる有害食品であるとか、あるいはうそつき食品の横行というものは、ほんとうに目に余るものがございます。現在国で許可されております食品添加物は三百五十八種類ばかりございますが、さっき郡司参考人が申しておられましたように、わが国だけで使用が許されているという食品添加物がかなりたくさんございます。外国では毒だと認められていながら、わが国では毒物として取り扱われていないものが相当数あるということにぜひ御注意を願いたいと思います。 

それから、医学的な立場から申し上げますと、こういう食品添加物がわれわれのからだの中で一体どういう働きをなしているか、どれぐらいの量が吸収されて、どれぐらいの量が排せつされるのか、あるいは一つ一つの食品添加物がわれわれのからだの中でまざり合って、複合的にあるいは相乗的な有害作用を発揮するという可能性すらあるわけでありますが、こういう点が現代医学では全く解明されていない、そういう時点において、公然とこういう食品添加物が公認されているというところに私は大きな問題を感ずるわけであります。こういう言い方は少しオーバーかもわかりませんが、私は一億反健康状態を招いた一つの大きな原因は、この食品添加物にあるというふうに考えております。 

たとえば、私どもの一般家庭の食餌の内容をながめてみますと、晩酌の酒の中には、御存じのように、サリチル酸が入っております。ソーセージには着色料であるとか保存料であるとかあるいは増量剤であるとか、あるいはつくだ煮の中には着色料、人工甘味料あるいは保存料、漂白剤、それから、御飯の米には防虫剤が入っている。そして、みそ汁には変色防止剤であるとかあるいは保存料、しょうゆの中にも保存料が入っているというような状態でありまして、少なくとも私どもは一日に大体八十種類から百種類の食品添加物を、これは好むと好まざるとにかかわらず体内に入れているわけであります。これがわれわれのからだに対して全く無影響であるということはとうてい考えられない。因果関係をはっきり証明することはかなりむずかしいにしても、何らかの形でわれわれの健康に対して有害な影響を与えているということは当然想定されるところであります。 

わが国では、この食品添加物の開発は、大体食品工業会社であるとかあるいは製薬会社あたりが開発をいたしまして、そして、政府にその使用の許可を働きかけて認可されるわけであります。ところが、外国の場合には、非常に厳格でございまして、特にドイツあたりでは、食品添加物は国が開発をいたしております。国が食品添加物というものを開発いたしまして、業者に、この添加物はこういう性質のものであるからこういうふうに使用しなさいということで指導をしております。そういうふうに食品添加物の認可の取り扱いにつきましても相当大きな違いがあるわけであります。 

それからもう一つ、わが国の場合には、一たん許可されたものは、有害だということがわかりましてもなかなか使用禁止にならない。一つの例を申し上げますと、たとえばオーラミンという、あの黄色い発ガン色素が長い間使用されておりました。これが有害だということがはっきり証明されましても、使用禁止に至るまでにはかなり長時間を要しておりまして、有害だということがわかっても、なおかつ禁止に踏み切れないというようなところにも、一つわが国の食品衛生行政の何か特徴みたいなものがあるようにうかがわれるわけであります。 

これは事われわれの生命に関する問題でありますから、有害だということがはっきりわかりましたならば、ぜひ英断をもってこれを禁止するという方向、そういう姿勢をとっていただきたいというふうに考えます。 

もっとも、現在、有害食品の取り締まりをきびしくしろというようなことがしきりにいわれるわけでありますが、現在の食品衛生監視員の数というのはたいへん少なくて、この人手では厳重な監視の目はとうてい行き渡りません。 

それともう一つは、現在の食品加工の技術といいますか、これがどんどん前進しておりますのに対して、監督あるいはその指導をする機関の体制というものが旧態依然である。この差は広がる一方でありまして、この辺の問題を国としてもぜひ考えていただかなければならないんではないかというふうに思います。 

さらに、加工食品業者がもうけ主義一点ばりで、不必要な添加物をやたらに使いたがる傾向がございます。食品の見ばえをよくするというような意味で、要らない食品添加物をやたらに使う傾向があります。業者自身に、この食品添加物というものがわれわれの健康に対して有害であるという認識が不足しております。この辺もぜひ国として、業者に対する指導を怠ってはならないのではないかというふうに考えます。 

もう一つ、これは一般消費者にも実は責任の一端がございまして、消費者は王さまといわれますけれども、この王さまはもっと賢くならなければならないというようなことを私ども考えまして、いわゆる啓蒙運動を展開しておるわけであります。国も食品業者も一般消費者も、この際われわれの健康問題あるいは生命問題をもっと最重点的に考えまして、そして、これからの新しい食品衛生の基本的なルールというものをつくっていかなければならない。そういう時点に差しかかっているように思います。疑わしき加工食品を国としてはつくらせてはいけない、また、業者はつくってはいけない、消費者はそれを買ってはいけないというような原則をこれから築き上げていく必要がある。そうしなければ、われわれの健康状態は今後一そうなしくずしにされていく可能性があるという状態でございます。 

私の意見は一応この辺で終わりにいたします。』

50年以上前から、このように食品添加物の制限を訴えておられるのに、全く改善出来ていない日本って・・・・情けない・・・