TSUMIKI
1979年、私は彫刻科大学院1年生(最終的には、中退)。彫刻科のアトリエでは木彫作品を自由に制作出来ます。私は、「瞬間的に作れる作品はないだろうか?」とブラブラと何もしないで歩いていたのですが・・・・
『あれっ、この木端(こっぱ)面白い!』
と、制作過程で生まれ、いらなくなった木端(こっぱ)をクラスメートから譲ってもらいました。それを何気なく積み上げてみました・・・・・『うわ~、これ瞬間的に作れる彫刻作品じゃ!』
っと、大興奮!
それ以来、校内の木端(こっぱ)収集の日々が続きます。そして、アトリエの一角(いっかく)に作品を積み上げて楽しみ、結構たくさん出来ました。クラスメートと別室で雑談していた時のことでした。
「佐伯!すまん・・・お前の作品、壊してしまった。」
と、強面(こわおもて)の1年先輩Gさんが、まっ青な顔で私のところへ走って来られたのです。そのうろたえている姿が面白く『この作品は、素直に人柄出るし、挑発的で・・・よし、これいける!』と、早速展覧会を開くことにしました。
大学のギャラリーで1週間展示したのですが、予(あらかじ)め作っていた作品を改めて同じように作って展示することにすっかり飽きてしまいます。中学、高校の非常勤講師(美術)をしていたので、授業の一環(いっかん)として生徒に見学してもらい、生徒には、
「これは、クギや接着剤を使っていないので、絶対、触(さわ)ってはいけません!」
と、言っておきます。生徒は・・・ハラハラ、ドキドキ小声で恐々(こわごわ)見ています。10分程経(た)って生徒をシーソーのような作品の前に集めます。
「さて、この木端(こっぱ)を取ると・・・・どうなるでしょう?」
「ワイワイガヤガヤ・・・・・・・ああああああ、あああ・・こわれた‼️」
「ここにある作品、こわしたい人?」
「ハイ、ハイ、ハイハイハイ・・・・」
「こわせ~~~‼️」
ということで、メチャメチャになりました・・・・・この一部始終を丁寧に抜群の感覚でビデオに収めてくれたのが、ルームシェアしていたIさん。この素晴らしい映像がきっかけで、今後の作品の方向性が見えてきたのです。そして、2回目の個展でもIさんは、映像を担当してくれました。それを私が編集し、作品が、ニューヨーク公立図書館に所蔵することになりました。Iさんのその後活躍は凄まじく、世界中の人々が知るヒーローを作り出しました・・・・・おしまい。