完敗?

「先生、今度の予定日を1週間遅らせていいですか?」

と、連絡があったのは、連日完敗(ギックリ腰で2日間結果を出せない)の女性患者Cさん。

「はい、いいですよ。どうですか・・・今?」

「それが、先生の鍼が効いてるみたい。痛み止めの薬の効果が切れているはずの今・・・あのね、痛みがなくなっているの・・・・だから、1週間様子見ようと思って。」

「あああああ~、それは良かったねえ!次は、いつがいいですか?」

「◯◯日、空いてますか?」

「はい(ガラガラ)、いつでも(残念ながら)いいですよ。」

「じゃあ、朝一でお願いします。」

「はい、そしたら9時でお取りしますね・・・足、暖かくしてる?」

「はい大丈夫、やってます。」

「それは、よかった・・・そしたら◯◯日の9時でお待ちしています。お電話ありがとうございます。無理しないでくださいね。」

と、突然の嬉しい電話のやりとりがありました!Cさんのこれからの1週間、一体どうなるのでしょう?◯◯日の9時が楽しみです。

引き出し

4日前、ギックリ腰寸前のため来院された60才代の男性患者Aさん。今回で3度目の治療となります。1回目の治療時では、腰全般に痛みがあり19本の置鍼、2回目の治療では12本置鍼しました。

「だいぶ良くなり、普通に歩けるんですけど、座った状態から起き上がる時、ここ(上前腸骨棘という腰の前側の出っ張り)が痛むんです。」

「そうですか・・・そしたら、今日はここから始めましょう。」

と痛みのある左側の腰の出っ張りに対応する治療点=左三角筋前部繊維(左肩の前側)を軽く押圧。

「痛っっった!」

「痛いでしょう!・・・・ここが、治療点なんですね。ここの筋膜を軽くはがしていきます。痛くない程度で気持ち良くやっていきますね。」

杉本練堂先生と、Dr.Kerry D’Ambrogioに筋膜はがしを習っているので、今回は筋膜はがしで治療することにしました。数分後、

「これで、どうですか?」

「・・・・・あれ?いい感じ、こんなに素早く立てなかったのに・・・痛みも少し気になる程度になってますね。」

ある程度良くなった場合、ヘソを中心として手足を大の字として同心円状に広がる治療点を使うことが多くなります。具体的いうと、右足首が痛い場合は、右手首。左肘なら左膝。Aさんの場合は、左側の腰の出っ張りの痛みなので、左三角筋前部繊維(左肩の前側)が治療点となります。筋膜はがしのあとは、パイオネックス(円皮鍼)を、左三角筋前部繊維に4個貼り終了となりました。

引き出しを多く持っていると役に立ちます。

 

完敗理由

50才代の女性患者Cさんは、1年ぶりの来院です。同じ姿勢で、長時間の移動もあって年末から腰痛を感じ、生まれて初めてのギックリ腰に見舞われました。夜勤の多い仕事で無理をしていても、腰痛の体験はなかったそうです。

かなり重症の腰痛でも、山元式新頭鍼療法(YNSA)で治す自信はあったのですが、Cさんは、手強いのです。結局11本の置鍼で、痛みの改善はあまり見受けられず・・・・ほぼ完敗。そこで、色々話を伺っていると・・・・

「先生、農業のアルバイトって面白いのよ。この間、みかんの収穫アルバイトをして、気持ちよかった!休憩時間には、紅マドンナを自由に食べられるし・・・・でも、この間のアルバイトは、七草の出荷・・・これは、大変だったの、コンテナに座って同じ姿勢で1日中の作業・・・・起きあがろうとしたら、あまりの痛さ!・・・で、こんなになったの。」

「えええええっ、アルバイトもしていたの?それで、腰痛になったの!夜勤もして、アルバイトをして・・・しかも、この冬に!あのね、冬は季節として陰、そして夕方遅くまでの作業・・・これは、陰中の陰。冷えてしまうのよ。」

「え、そうなの!皆んなは、座布団の上でやってたけど、私だけコンテナに直接座ってた!」

「きっと、原因はそれだは!」

この時期に暗くなるまで、同じ姿勢での仕事。しかも、腰を冷やし続けるという準備不足が今回の完敗理由だったようです。寒さ対策をしっかりしましょう!

肩の痛みを足でとる

アキレス腱から下に、山元式新頭鍼療法(YNSA)の治療点があると信じて、7通りの治療方法を見つけつつあるのです(これは、まだ学会に発表していません)が、今回ご紹介する治療点は、YNSAとは関係があまりないのでYouTubeで公開いたします。

サブタイトルに、肩こり、五十肩、変形性肩関節症、腱板断裂とあるのは、私の患者さんにアフターケアの方法として紹介しているために表記しています。たとえ腱板断裂と診断を受けた患者さんでも、この治療方法で、上がりにくい腕が痛みなしで上がることがあるので、ご紹介しています。

身体は常に治ろうと健気に働きかけています。そのことに感謝です。

持つべきものは友

能登半島地震という大災害に続き、羽田空港での大惨事、被害にあわれた方々及び関係者の方々に心よりお悔やみ申し上げます。

昨日は、松山東高校野球部OBの紅白戦が正午からありました。私は、のボール野球(明治時代の野球)のユニフォームで参加し、1打席だけバッターボックスに立つことが出来ました。バッターボックスの上に大きなネットを屋根の様に設定し、そのネットに打球が触れると、ファールボールとなります。一振りで、ネットに当たる打球を打ってしまい、ファールボール。次は見逃しのボール、続いて高めのボール球を空振り。今度は、低め真ん中のボールを、強振。ボテボテのサードゴロで、アウトとなりました・・・・・残念。

午後3時からはOB総会があり、前会長の一色隆士氏から母校OBの秋山真之の「ふんどし論」の話がありました。これは、「あじさいクラブ」のメンバーカッパちゃんの著書「秋山真之の謎を解く」にしっかり書かれていました。また、後日ご紹介しようと思います。

その後、昭和48年卒業の同窓会があり、のボール野球の格好のまま参加し、その後2次会、3次会と楽しい正月を過ごしました。やはり、持つべきものは友です!

右足親指が痛い

右足の親指が痛い中学生のA君が初めて来院されました。サッカー部で、毎日ボールを蹴っているので仕方がないことかもしれません。しかし、1ヶ月も歩いたり走ったりすると痛むのですから大変です。幸い年末、年始で練習がお休みなので、今、治しておく必要があります。左右の足を見ると、やはり右足親指が腫れています。そこで、氷水を入れたビニール袋で、気持ちよく冷やしてあげる治療から始めました。

「(氷水を)当ててて、気持ちいい?・・・・OK・・・そしたら、気持ちいいから、冷たいだけに変わったら、教えてくださいね。」

「・・・・冷たくなったです。」

で、氷水治療は終了。

次は、足に見つけた治療点を銀で出来た鍉鍼でほぐし、その治療点に指先を軽く触れるだけの治療を行いました。

「これで、歩いてみて・・・・どう?」

「痛くないです。」

これで、治療を終了してもいいのですが・・・・やはり、鍼治療に来られたのでA君に聞いてみました。

「鍼は、やったことないのよね・・・・どう?やってみる?」

「・・・・はい。」

ということで、3本頭に置鍼。その後、右手(足では、ありません)親指の圧痛点を見つけ、私の中指を軽く触れる操法を15分程行いました。

「どう?歩いてみて?!」

「・・・・痛くないです。」

A君の両足を比べてみると、右親指がスッキリしているのに気がつきました。そこで、右手親指にパイオネックスを貼り治療を終了しました。中学生なので、この1回の治療だけで良くなるといいのですが・・・・

一体走り

日本人本来の歩き方、姿勢(踵重心)を初診の患者Bさんに話ていると、

「私の地元では、一体走りという無形文化財があるんですよ。これは、神輿を担いで走るんですけど、鈴を鳴らさないで地面と水平に神輿を運ぶんです。これは、踵重心ですね。」

と教えてくださいました。魂合気の創設者、大野朝行先生の著書「カタカムナの姿勢と動き」には下記の一節があります。

『歩きの本質は、腰から上の体をいかに大事に運ぶかです。腰から上ですから、神輿と呼びましょう。「神輿を揺らさずに、転倒させずに、丁寧に大切に運ぶ」。そんな気持ちで歩けば、自ずと良い歩きになってきます。』

これこそ真実であり、一体走りの本質は神様を大切に運ぶこと。自らのカラダの神様を大切にすることなのだと思います。

五輪書 2

 

五輪書の一節、一節を少しずつ読んでいるのですが、刀を持って相手に臨む宮本武蔵の姿、生き方が伝わってきます。その一節を載せます。

『平法(戦い)における心の持ち方。平法の道において、心の持ちはようは平常の心と変わってはならない。平常のときも、戦いのときも少しも変わらず、心を広く素直にして、緊張しすぎず、少しもたるまず、心に偏りがないように、心を真ん中に置き、心を静かに揺るがせて、その揺るぎの中にも、一瞬たりとも揺るぎを失わせないように、よくよく吟味すべきである。』

これは、私が鍼を手にして患者さんに刺鍼するときの指針です。

五輪書

宮本武蔵の五輪書、現代語訳(大倉隆二訳)を購入して、水の巻を読むと心のあり様、姿勢、目の付け方、刀の持ち方など事細かく述べてあります。全て興味深いのですが、前回剣道6段のお客様が「踵重心では、スポーツはできません」と、剣幕を巻いておられたので、足の運び方について記載してみます。

足使いのこと。足の運びようは、爪先を少し浮かせて、踵を強く踏むようにすべきである。足使いは、場合によって大小、遅速はあるけれども、普段歩くようにすること。足使いのうち、飛び足・浮き足・踏み据(す)える(固着する)足というのがあるが、この3つは嫌う足である。この道(兵法)の大事にいう「陰陽の足」、これが大切である。陰陽の足というのは、片足だけを動かさないことである。切るときも、引くときも、受けるときも、つねに陰陽といって、右・左、右・左と踏むのである。くれぐれも片足だけを踏むことがあってはならない。よくよく吟味すべきである。

とあります。つまり、爪先を少し浮かせて踵を強く踏むことが大切なのです。これは、普段歩くようにとあることから、普段の歩き方が踵重心であることも分かります。現代剣道の足が、嫌う足→飛び足・浮き足・踏み据える足であることがよく分かります。そして、「くれぐれも片足だけを踏むことがあってはならない。よくよく吟味すべきである。」と念を押して書かれています→現代剣道は、片足だけで踏み込んでいるのです。

次回、踵重心の話をする時は、五輪書を持っていくことにします。