科学が証明した、針の6つの効果のうちの3つ
『では、針から刺激を受け取った脳は、体のためにどんなよいことをするのでしょうか。
その答えが、アメリカのハーバード大学の研究所を始め、世界中から報告され、明らかになっています。
わずか直径0.25ミリの針の刺激は、脳に、驚くような働きを起こさせるのです。
1)痛みを抑える働きのある物質を、脳から放出させる
針は、脳から全身に、痛みを抑える物質を放出させます。
あまり知られていませんが、人間の体は、痛み止めの薬と同じ働きをする物質を作り出すことができます。
この物質は「エンドルフィン」といい、「脳内モルヒネ」とも言われています。
モルヒネと言うのはご存知の通り、がんなどの強い痛みを止めるときに使われる物質です。
突発的な事故にあった直後など、怪我があるにもかかわらず痛みを感じなかったという話をよく聞きます。これは脳が瞬時にエンドルフィンを分泌して、激しい痛みや苦しさをから体を守っているのです。
針は脳の茎である脳幹の上の部分、視床下部などからこのエンドルフィンを放出させ、痛みを抑えることが明らかになっています。
2)痛みを脳が感じないように、情報の通り道をブロックする
針には、体から脳への情報の通り道をブロックする、つまり通せんぼをして、痛みの原因を脳に伝えないようにする働きもあります。
痛みや怪我などをした部分で起こっているように見えますが、そのメカニズムは大変におもしろく、実は、痛みは脳がつくり出しているのいるのです。
たとえば、腕を机にぶつけたとしましょう。その瞬間、「机にぶつけた!」という情報が瞬時に腕から脳に伝えられます。すると、ぶつけてしまった腕の部分が痛いと言う感覚を、脳が作り出すのです。
わざわざ痛みを作るなんて、なんてのは意地悪なのだろうと思ってしまいます。ですが、その反対です。痛みを感じることで、その部分にトラブルが起きていることや治療が必要なことを知らせたり、それ以上怪我をしないように守ってくれているのです。
尖ったものを踏んだときに「痛っ!」と飛びのくのも、この情報伝達の働きが大きく関係しています。痛みでその場を瞬時に離れさせ、体を守っているのです。
では、手や足などから遠く離れた脳へ、どのように情報が伝えられるのでしょうか。
その情報の通り道となるのが、「神経」です。神経は、白く細い繊維で、脳から体中にはりめぐらされています。
針には、怪我などをした部分と脳との間にある神経をブロックする働きがあります。情報が脳に届かなくなり、脳は痛みを作り出せなくなるのです。
また針には、神経を通して脳からトラブルの起きている部分に、ダイレクトに痛みを抑える物質を遅らせて、痛みを止める働きがあることもわかっています。
3)自律神経のバランスを保つ
針は、自律神経に直接働きかけ、体調をコントロールします。
先ほどお話ししたように自律神経は、心臓を動かす、呼吸をする、食べたものを消化する、排泄をうながすなど、自分の意思とは関係なく体を動かす働きをしています。針は、その自律神経の働きをスムーズにするのです。
自律神経は、交感神経と副交感神経の2つが交代勤務制で働いていることもお話ししました。この2つの働きのバランスが、体の健康にはとても重要です。
どちらか一方が、仕事はしたくないと休んでしまうと、もう一方が本来休み時間でありながら働かなければいけなくなります。また交代の時間になっても仕事をゆずらずに働き続けていると、相手の仕事内容に支障が出てきます。
このように交代勤務のバランスが崩れてくると、体調が乱れてくるのです。
針には、この交感神経と副交感神経のバランスを整え、胃、腸、膀胱など、内臓の機能を整える大切な働きがあります。』
針麻酔で2000件の手術をされた山元敏勝先生の言葉は、分かりやすく重く響きます。明日は、残りの3つの効果を紹介します。