YNSA創始者・山元敏勝先生の著書からの抜粋です。生命力の素晴らしさを教えていただける症例です。
『脳梗塞によって6年間続いていた両手両足の麻痺が8ヶ月の治療によって、自分で食事ができるまでに改善した
脳梗塞による全身麻痺(女性 30代 主婦)
この患者さんはドイツ人の女性で、6年前に発症した脳梗塞による後遺症で、手足に麻痺がありました。梗塞を起こした脳の場所が、脳幹と言う生命維持に重要な部分だったため、発症後は数週間昏睡状態が続いていたそうです。麻痺は両手両足に及び、呼吸も表面的な浅い呼吸で、深呼吸はもちろん、ろうそくの火を消すこともできない状態でした。
この女性は私がYNSAの講演でドイツに行ったときに、ある病院に入院されていました。そしてドクターから「6年間リハビリを行ってきたが、何にも変化がないので診て欲しい」と頼まれたのが、この患者さんとの出会いのきっかけでした。
頭部に針を刺し治療を行うと、その直後に手足がわずかに動くと言うことが起こりました。そして、私の滞在中に、麻痺した手足に大きな動きが見られるようになったことから、ご本人とご家族の強い希望で日本に来られ、日南の私の病院に入院をして治療を続けることになったのです。私も毎日、休まず治療を続けました。
日を追うごとに順調な回復をみせ、3週間後には左手にいくらか力が入るようになってきました。その力は日々強くなり、2ヶ月後にはペンをにぎり、形になりませんでしたが文字を書くことができるようになりました。8ヶ月後には、自分で体を支えながら座ることもできるようになり、左手を使って自分で食事もできるまでに大きく改善しました。表情にも笑顔がうかぶようになり、書く文字もはっきりと読み取れるようになりました。
そして、10ヵ月後には、両足に補助装具をつけ、つかまりながらであれば1人で立つこともできるようになったのです。左手で書いているため、やや不自由そうな文字ではありましたが、通常とほとんど変わらない8行の長い文章で書いてくれた言葉には、全く動かなかった体が動くようになった喜びと、ドイツで待っている子供たちに会いたいのでクリスマスには帰りたいが、日本に戻ってまた治療を続けたいと書かれていました。
ここまで大きな改善が見られた患者さんですが、脳のMRI画像は、入院当初の画像と全く変化は見られませんでした。このことから障害の起こった脳の部分が改善されたわけではなく、その他の部分で改善をもたらす力が働いたことがわかります。
まったく体が動かなかった6年もの間、ご本人にとってもご家族にとっても、大変につらく苦しかったことでしょう。脳幹に起こった梗塞による重度の麻痺であっても、ここまで回復をもたらすことができた事は、私にとっても貴重な体験といえます。』
山元先生が、さらりと書いておられますが、もの凄い症例です。脳の状態が表面の頭皮に現れていることがよくわかります。頭皮に触れることは、脳に触れること・・・・そんな思いで治療をしたいです。