30数年前、胃の摘出手術したのが原因なのか、5~6年前、腰椎の圧迫骨折された70代の女性Bさん。
「背骨の出っ張とるところが、チクチク痛うて、仰向けで寝られんのです。咳するんでも、腰を抑えんと、痛うてできんのです。」
暗い表情で元気のないBさんの治療に入る前に、
「今、石原裕次郎が、流れていますが、(前の患者さんのリクエスト)演歌お好きですか?」
「女の歌手じゃったら、ええんですけど。」
「じゃ〜、美空ひばりで行きましょうか?」
「ハイ、お願いします。」
やはり、この年代の方々は、美空ひばりに勇気づけられ、元気をもらったのです。ひばりさんの話になると、生き生きとしてきます。音楽の持つパワーは大したもの。しかし、初回の治療では、なかなか腰痛は、取れません。3日後に来てもらうことにしました。
2回目の来院。寝ていて起き上がる時、右腰に電気が走るような痛みが来るそうです。右前腕が硬く押すと痛いので、ゆっくりほぐします。少し腰が楽になったので、短時間だけ仰向けになってもらいます。お腹の手術跡を、2本のダイオード鍉鍼をお箸のように使ってほぐします。これが効いたのか、腰が柔らかくなりました。
3回目の来院(5日後)。まだ、背骨の出っ張りがチクチク痛いそうです。いつものように太ももの内側と、ふくらはぎに鍼やお灸。
背骨が痛いので、手首の母指球の下の圧痛点にお灸を5壮。美空ひばりの話をポツリポツリと話しながら、ゆったりと時間が流れ、腰が随分ゆるみました。
「先生、靴下が履きやすくなりました。」
4回目の来院(1週間後)。何が効いたのか分かりませんが、
「先生、だいぶ良うなりました。自然と咳ができます。前じゃったら、腰を抱えとかんと、できんかったのに。」
そこで、前回と同じように治療して終了。
5回目の来院(1週間後)。
「先生、もう腰のチクチクは、なくなりました。」
うつ伏せで、ふくらはぎと膝裏に鍼。Bさん、とても気持ちいいそうで、美空ひばりの唄を楽しんでいます。
6回目の来院(10日後)。
「看護婦さんに、以前よりしゃんとしとる、と言ってもらいました。先生、ここ触ってください。背骨の出っ張りが少なくなってきました。骨って動くんですね〜。」
仰向けになっても全く大丈夫になりました。
7回目の来院(3週間後)
いつものように、太ももの内側とふくらはぎを中心に、鍼とお灸。
「凄い、凄い立ってズボンがはける!」
更衣室から大きな声が聞こえました。
それからは、調子がいいので、1ヶ月後に8回目の来院。
今回は、肩こり。
もう杖をつかなくても、歩けます。様々な行事にも積極的に参加できるようになりました。
やっぱり、「美空ひばりは凄い」