マッサージを受けている感覚

月に一度通院の50才代の女性患者Cさん、今回は右首から右肩甲骨にかけて凝ってしまい、他人のカラダの様な感覚になっています。デルマトーム(皮膚分節)ではC3 ~T6くらいの部位になります。Cさんは、5年くらい前、更年期障害で週1回の通院をされ、徐々に良くなられ現在は、月に一度となってはいるのですが、ギリギリまでカラダの痛みに耐えているのが分かります。

合谷診:右(右側を診断する)

膝診:右頸椎#1~5(2)、右胸椎#3、4(1)右腰椎#3、4(1)、右脳幹(0)、右大脳(1)

首診:右膀胱(1)、右大腸(1)、右三焦(1)、右胃(1)、右脾(1)、右小腸(1)

:左腎(1)、左心(1)、左三焦(1)

(   )内は置鍼数

今回は、置鍼した後も鍼柄(しんぺい=親指と人差し指で持つところ)を持ったまま、気を入れる感じでしばらくじっとしていました(頸椎2本のみ)。

「あっ、気持ち良くなってきました。」

Cさんくらい首から肩甲骨まで凝っている患者さんには、置鍼した後少しこの様な時間を取ったほうが方が良いように感じました。今後は、他の患者さんで、必要だと感じたならばやってみようと思います。

「今は、どんな感じですか?」

「鍼をしたところが、マッサージを受けている様な感じで、気持ちいいです。」

山元敏勝先生の名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」の一節です。

『針は、硬くなった筋肉をほぐし、血液の流れを良くします。針をさすと、筋肉の中の血管が広がり、筋肉の中に血液が多く取り込まれます。すると血液の中にある酸素や様々な成分に よって、痛みや緊張で硬くなっていた筋肉が緩み柔らかくなるのです。筋肉が柔らかくなることによって、さらに血液の流れがよくなる効果も生まれます。』

とあります。Cさんの置鍼している頭皮の血流が良くなり、マッサージを受けている感覚になったのだと思います。実に効率の良い治療法だと思います。もう少し鍼に対する理解が進むことを願っています。

4年ぶりの来院

 

4年ぶりに来院の40才代の女性患者Aさん。今回は、右腕のシビレと右肘の痛みが1週間前からあるので来られました。そこで、デルマトームの図を見てもらい、C6、C5にシビレがあることを確認しました。それからは、いつものように合谷診から始まる診断と治療になります。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎(1)、左腰椎(0)、左大脳(1)

首診:右腎(0)、右膀胱(1)、右三焦(1)、左三焦(1)

(   )内は置鍼数

C6、C5あたりの治療点は、口を開けてもらい、耳の前に出来た凹みにあります。てい鍼という銀で出来た棒状の鍼でピンポイントの狙いをつけ、跡を残します。そして、そこに直径0.25mm、長さ3cmの鍼を刺し、しばらく気を入れます。

「今、シビレはどうですか?」

「・・・・無い!なくなりました・・・・肘は触れるとまだ痛いです。」

そこで、耳の前上部の肘の治療点(Iソマトトープ)に置鍼。

「肘の痛みはどうですか?」

「・・・・大丈夫です・・・痛くないです。」

と、この2本でシビレと痛みが取れました。やはり、デルマトームとIソマトトープの威力は絶大です。

視床下部からのブロック注射

70才代の男性患者Aさん、2ヶ月半前から1週間に1~2回通院され徐々に歩く姿勢がしっかりし始めました。当初は、腰が引けヨチヨチ歩きの状態でしたが、背筋が伸び始めました。臀部からふくらはぎにかけての痛みの範囲が1/5くらいに減って来ています。

最近では、デルマトームの図を見てもらい、痛みがどこにあるか確認したあと、耳の前にあるD点の#1~6のピンポイント置鍼を行います。Aさんの場合、右臀部S#3、右L#5にピンポイントで置鍼すると痛みが随分取れました。

「脳幹というところが脳の中央部にあって、ここから神経が腰に向かって走っています。これを中枢神経といいます。その脇に脊髄神経という末梢神経が、頸椎から8本、胸椎から12本、腰椎から5本、仙骨から5本、尾骨から1本の合計31本出ています。その神経の影響を受けている皮膚が地図の等高線のように区枠(くわく)されています。これをデルマトームというんです。例えば、Aさんのお尻の下あたりが痛いところは、デルマトームではSの3になります。このポイントに神経伝達物質のエンドルフィンを送り込むと、お尻の下の痛みが無くなります。そのスウィッチをオンにする治療点が頭にあるのです・・・・頭に鍼を刺すことで、脳幹の視床下部というところから、ピンポイントでブロック注射をすることになるのです。」

と最近は患者さんに説明しています。

肺と舌咽神経

 

「セイタカアワダチソウなのかな?くしゃみが激しくて・・・」

と、来院されてすぐに60才代の女性患者Cさんがおっしゃいます。後で、セイタカアワダチソウと花粉症の関係を調べてみると、セイタカアワダチソウに似たブタクサが花粉症の原因だと説明がありました。Cさんは、このブタクサのアレルギーの様です。こんな時、山元式新頭鍼療法(YNSA)の鍼灸師はどうするでしょう?

それは、かんたんです。まずCさんの手のひらを見て、血色の悪い側を頭に入れます。Cさんは左側です。オデコの中央部の正中線から1cm左の正中線に平行な線上にその治療点はあります。「耳の一番高いところの延長線上」と「正中線から1cm左の正中線に平行な線上」の交差した点を12番とします。そして「生え際」と「正中線から1cm左の正中線に平行な線上」の交差した点を1番とします。その9番目にあたる治療点が、ブタクサアレルギーの治療点となります。ここは、肺と舌咽神経の治療点なので、一発で効きます。Cさんに1本置鍼すると、くしゃみはそれ以降全く出なくなりました。

「鼻水が出てたのに・・・・ぜんぜん出なくなりました!」

と、Cさんがニコニコ顔でおっしゃいます。以前、ご夫婦で来院されていた患者さんで、奥様が夜中に喘息発作をすることがあると言われいたので、ご主人にこの治療点をお教えしました。

「先生、あのツボが効きました。お陰さまで救急車を呼ばずにすみました!」

とのお言葉をいただきました。この治療点を覚えておくと便利です。親指の爪で刺激するだけで、効きます。また、YouTube のように、タッピングをしても効きます。

鍼が怖い

鍼で治療をしている鍼灸師として、患者さんが鍼に対する恐怖心を必要以上に抱いていることに、驚くことがあります。

「今日は、鍼をしましょうか?」

の一言で、顔は凍りつきカラダは縮み上がる60才代の男性患者Bさん。

「鍼だけは、やめてほしい・・・まして、頭なんか・・・・・腰とか、背中はあまり痛くなからええけど・・・・鍼は、人から聞いた話じゃと、かえって悪なってしもうた、なんちゅう話をようけ聞くし・・・・頭の鍼だけはやめてください。」

「・・・・よおく考えてください、頭は頭蓋骨に守られて、非常に安全なところです。しかも、頭皮に深さ1mm程度、横に刺すだけなんです・・・」

といっても、Aさんの思考回路は停止しています。

「分かりました、今日もお灸だけにしましょう。」

嫌がる患者さんに嫌がる治療を押し付けることは、絶対許されません。そこで、素早く方向転換をします。前回は、見つけた足の治療点7か所にお灸を15壮し、それが効いたようです。そこで、今回は、左足に8壮、右足に3壮お灸をして、終了としました。

Aさんは、立ち仕事をされているので、腰痛持ちです。

今のところ、腰の痛みはなくなりましたが、継続のためパイオネックス(円皮鍼)を貼ることにしました。

「パイオネックスという小さな鍼を刺しましょう、これは全然痛くありません。」

「何ですか、それ?ピップエレキバンみたいなやつですか?」

「ちょっと違いますけど、0.6mmの痛くない鍼です。」

 

「いつまでつけるんですか・・・風呂に入ってもええんですか?」

と、少々拒絶反応気味・・・それでも、試しに2個貼って終了としました。これで、成果が出れば少しは鍼に対して理解していただけるかも知れません・・・

なんじゃけん

昨日は、ジャズの好きな男性患者Aさんの誘いで、お隣の伊予市の「IYO夢未来館」というところで行われた「マドンナJAZZ FESTIVAL 2022」に参加しました。Aさんの愛車は高級車で乗り心地が最高。私には無縁な車です・・・一生の内に何度この様な車に乗ることができるだろう?・・などと、思いながらも、初めて向かう伊予市への道。カーナビ(これも最新の物でした)を見ながら、必死の思いで到着しました。

この未来館は、立派な建物で、図書館や料理教室ができる部屋もあります。その上、コンサートが出来るのですから、伊予市の人々は幸せです。

で、開演がぴったり14:00からスタートし、終演が予定通りぴったり17:20であったことに、まず感動しました。そして、今愛媛で活躍しておられるジャズ音楽家が一堂に会して演奏され、しかもそれをただ(入場無料)で拝聴できるなんて、本当に感動しました。Aさんのウクレレの師匠が、チェロのベースを担当されていたのですが、この師匠は、NHKの素人のど自慢大会のベースも担当されていました。また、ドラム担当のベテラン音楽学家は、NHKの素人のど自慢大会の鐘を叩く方でした。

愛媛にこんな凄い音楽学家がおられたのです。

そこで、もっとも感動したのが、最後に演奏された「なんじゃけん」。このバンドは18名の男女混合バンドで若い女性がまとめ役です。結構お年をめいた方のおられる中、堂々と指揮っておられるのには感心しました。「なんじゃけん」の由来は、南予・ジャズ・研究会から来ているとのこと、ちょうど、「そうなんじゃけん」=「そうなんです」という伊予弁をからめているのが素敵です。

大洲という歴史のある素敵な街でこの様な活動をされていることに感動しました。四国の愛媛の大洲で精一杯頑張っているバンドがあることに、勇気とエネルギーをいただきました。私も、「あじさいクラブ」のベースギター、しっかり練習しようと思ったのです。

胸部ソマトトープ

去年の暮れに、高いところから落ち、胸椎の2番、3番、4番を骨折した40才代の男性患者Bさん。1ヶ月前から、首痛、左上腕から前腕にかけてシビレがあります。ここで、デルマトーム(皮膚分節)から考えてみましょう。T2番のデルマトームが、上腕の内側から肩甲骨にかけて伸びていますが、これがポイントだと思います。

(山元先生が、ブラジル女性を治療された時の治療点をご注目!)

当初、Bさんは首痛が一番気になり、次に上腕から前腕にかけてのシビレでしたが、後頭部の首に慢性首痛の治療点があり、そこに置鍼すると首痛がなくなりました。すると、Bさんはシビレは肩甲骨下部にあると言い始めました。一番気になる首痛が消えると、シビレがはっきり分かるようになったと思います。すると、胸椎3番、4番、5番のデルマトームがポイントになります。

そこで、今回は胸部ソマトトープ(胸部の胸骨を体幹とみなしたキリスト像のような治療点)を使って、治療しました。頸椎1本、胸椎1本の置鍼で、ずいぶんとシビレが改善出来ました。特に胸椎の治療点は、デルマトームでも同じ胸部に位置します。それだけに、効果があるのかも知れません。

今後は、胸部ソマトトープにも注目していこうと思います。

デルマトームの威力

今年左膝の手術することになっていた60才代の男性患者Aさん、7ヶ月前から通院され、手術を回避出来ました。今では野球の練習も出来、全力で走ることも出来ます。Aさんは毎日ジムに通い、大沼四廊先生主催の自然医学総合研究所から購入したゴムバンドで下肢をグルグル巻きにして、一気に勢いよくゴムバンドを外し、血管内部を掃除しています。また、硬式野球ボールを頭のツボに当てることをしているので、ジムで有名人になっているようです。そんなAはもう1ヶ月に1回だけの通院となりました。

今回は、Aさんにデルマトーム(皮膚分節)を使った鍼治療をしました。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎#1(0)、#3(1)、#7(0)、左胸椎#1(1)、#8(1)、左脳幹(1)

首診:左心(1)、左大腸(1)、右三焦(1)

(   )内は置鍼数

上記の基礎、応用治療終了後、イスに座って左下肢が、あぐらをかくような体勢取ると、Aさんの左膝にまだ痛みがあります。そこで、右腰椎4番(デルマトームが右膝をにかかっているため)の置鍼を耳の前(D点4番)に置鍼。

「Aさん、これでどうですか?」

「・・・痛くない!」

あぐらをかいても全く痛くありません・・・デルマトームの治療を私の治療法にもう一つ追加することが出来たようです。

頭に鍼をさすと・・

 

 

なぜ、頭の鍼が効くのか?

私は、患者さんに説明していませんでした、不勉強でした。名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」を読み返し、学生時代の資料、教科書で調べていくと、徐々に分かってきました。ポイントは、神経伝達物質とデルマトーム(皮膚分節)。

神経伝達物質というホルモンは、血液を介して運ばれますが、急を要する時は、視床下部から中枢神経をへて脊髄神経(末梢神経)へと運ばれます。この神経伝達物質というのは、50種類以上あり、その中でも「脳内モルヒネ」と呼ばれるエンドルフィンは、視床下部から出て痛みを止める働きがあります。この時エンドルフィンを運ぶ場所を予測するのはデルマトームです。デルマトームとは簡単に言うと、どこの脊髄神経で障害が起こっているのかを教えてくれる「地図」のようなものです。この「地図」を活用するには、脊髄神経を知ることが重要です。脊髄神経は頸椎から8本、胸椎から12本、腰椎から5本、仙骨から5本、尾骨から1本の合計31本あります。これらの脊髄神経が通っているところの皮膚に痛みやしびれを感じれば、「地図」を読み取るように脊髄神経が具体的に分かります。

2日前、60才代の男性患者Aさんの右親指治療をしました。普段は、C点と呼ばれるオデコの右側に置鍼をするのですが、今回は、デルマトームを使って治療しました。右親指はデルマトームでは、頸椎の6番からの脊髄神経と「地図」が読めます。そこでCさんに口を開けてもらい、耳の前に出来た凹みのC6治療点に置鍼をしました。

「これで、どうですか?」

「・・・・いいんじゃない。」

この1本で親指の痛みが取れました。これからも、このデルマトームを一つの羅針盤として活用しようと思います。

追伸:名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」に下記の言葉がありました。

原因のある部分とつながるYNSAの点(診断点)から情報を受け取った脳が治療すべき確かな場所(治療点)に治療に必要な確かな命令を送っているといえます。

ウソみたい

60才代の男性患者Cさん、2日前に重い物を持って 階段を降りたのがアダとなり、ギックリ腰となりました。前かがみが出来ないため、靴ヒモも結べない状態です。また、体幹をひねる時は、ゆっくりと慎重にしないとできません。寝返りが出来ずその痛みで夜中に起きることがあるそうです。ガッチリとした体型のCさんは、頸椎ヘルニアや、左アキレス腱断裂などの怪我で病院に行くことはありましたが、今回は、ギックリ腰のため初めて、鍼灸治療を受けられることになりました。やはり、鍼灸治療は、痛い熱いといったイメージがあるようで随分緊張されています。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎#1~4(2)、左胸椎#1(1)、#8(1)、脳幹(1)

上腕診:左腰椎(4)

首診:左膀胱(1)、左三焦(0)、右三焦(0)、右脾(0)

(  )内は置鍼数

膝診では、腰に圧痛点が見受けられませんでした。こういう時は、上腕診を行います。圧痛点が見つかったので、4本(腰痛治療点=D点に)置鍼をしました。

「どうですか?」

「・・・・・言葉は、悪いですけど、ウソみたいですね。イスから立ち上がることが出来なかったのに、出来る・・・早い動きができなかったのに、出来る・・・・前かがみも・・・出来る。これだったら、靴ヒモが結べます。」

「そうしたら、もう少しやりましょう。」

まだ、首診からの治療点へ置鍼がされていないので、膀胱狙いで1本置鍼すると、他の圧痛点もなくなりました。そこで、トルコの先生に習って側頭部の治療点に2本置鍼。

「これで、どうですか?」

「ちょっと、寝返りしてみます・・・・・出来る!ここへ来る前は、後ろに反らすことしか出来なかったのに、反らす方がちょっと痛いくらいです。」

後は、足に見つけた治療点に5壮お灸をしました。

「これでどうですか?」

「・・・・ひねりが、もっと楽になりました。来た時が10の痛みとしたら、今は1です。」

4日後の予約をされて、軽快に帰られるCさんでした。