艾(よもぎ)

 

寒くなってきたので、最近の治療にお灸をすることが増えて来ました。基本的に山元式新頭鍼療法(YNSA)はお灸をすることはありません。全て鍼のみで治療します。私なりに見つけた足の治療点に爪を立てると、患者さんが飛び上がるほどの痛みがあり、鍼を刺しても痛みが出る時も多々あります。あまりに痛いため、申し訳ない気持ちになってくるのも事実・・・何かいい方法は・・・と考えていた時、「何じゃ!お灸があった!」。そして、ある女性患者さんにお灸をしてみました。すると、

「・・・気持ちいいです♪」

といい答えが返ってきました。続いて、70才代の男性患者さんにお灸をしてみると、

「昔は、じいさんばあさんが、艾(よもぎ)を取ってきて、干して乾燥した後、石臼でなあ引くんよ。そしたら、綺麗なモグサが出来よったぜ・・・・そしてなあ、昔は薬なんかなかったけん、腹が痛かってもお灸、肩がこってもお灸。何でもお灸で治しよった・・・」

そうなんです。私が幼いころ、ケガをすると父親が、

「よもぎの汁をつけたら治るけん、つけとけ。」

と言われて、石の上によもぎを置いて、別の石で叩いてお汁を出し、それを傷口につけていました。大人になってもその教えが頭にあったため、夜にケガをした時、よもぎの汁をつけ、翌日病院に行ったところ、

「傷口が汚れていて、良くない・・・こう言う時、傷口を汚したらダメです。」

と言われてしまいまい、よもぎの汁伝説が無惨に崩れ落ちたのでした・・・・

耳鳴りで思ったこと

こと

 

「はじめてのおつかい言う番組があろう・・・・あれ、面白いんよ。あれは、祖谷の橋造りしとるお父さんの子供が、買いもんするんじゃけど、大きなお豆腐を、間違えて2つ買うたりして・・・・(中略)・・・・そして、最後にお父さんバンガッテ(がんばっての意味)ちゅうて言うんよ、それが聴こえるようになったんよ、間違うとるんが分かるようになったんよ。」

週に一度の通院で、4回連続して耳治療をした結果、徐々に聴力が回復しているのは、80才代の女性患者Aさんです。現在は、両耳治療で13本の置鍼をしていますが、次回は第8脳神経(内耳神経)の治療点にも2本合計15本の置鍼に変えてみようと思います。この文章を作成中にも、耳鳴りでお困りの患者さんからの予約電話がありました。耳鳴りでお困りの方は、結構おられます。

健康にはかなり自信がある私も、実は耳鳴りなのです。もう10年くらいセミが鳴り続けているのですが、あまり気にしていません。年相応なんだと諦(あき)らめています・・・ただ、私が置鍼している個所に鍼をさせる鍼灸師がいれば・・・・と、考えた時、初めて患者さんの立場が分かりました。「よっぽど腕のいい鍼灸師でないと行かん!」そんな思いが浮かんで来ました。

患者さんは、痛い思い、遠いところから通院など様々なマイナス要素を、はるかに上回る効果を望んで鍼灸院に来られるのです。一本一本の置鍼、問診、空間管理全てを大切にしていこうと、意を新たにしました。

音楽

 

昨日は、あじさいクラブのメンバー4名と、知人3人でmoon glow(ムーングロー)という生演奏できるバーに行きました。滑川渓谷での大失敗の経験から、しっかりチューニングして、2曲間違うことなく気持ち良くベースギターを弾けました。My wayと愛の賛歌・・・これから徐々に増やしていきます。

それにしても、アメリカ・ロサンゼルスでプロのミュージシャンとして成功しているAさんの演奏は圧巻でした。どんな曲でも楽譜を見ないで迫力ある楽しい演奏をされます。松山という地方都市にいながらこんな時間を過ごせるなんて・・・これからは、松山です!

最近の患者さん、何故か音楽関係者、音楽愛好家が増えてきています。私は全く音楽とは縁がない人間で、音楽にコンプレックスさえ感じていたのです。それがどうでしょう・・・大好きになってきています。鍼治療と音楽が融合できれば面白いですね。実際、患者さんには好きな音楽を

「OK グーグル◯◯の曲をお願いします。」

で、患者さんの好きな曲を聴いてもらいながら、治療をしています。患者さんに様々なことを伺っていくと、鍼と音楽の融合治療が生まれてくるかも知れませんね。楽しみです♪

オデコのA点紹介

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、A点という額(ひたい)の正中線より1cm外側にある治療点があります。これはA1からA7まであり、A1は頸椎#1に対応し、A7は頸椎#7に対応します。A1は生え際から1cm上になり、A7は生え際から1cmあるため、A1からA7の長さは2cmほどになります。

宮崎のセミナーで山元敏勝先生が治療をされていたのを、見学した時全ての治療においてこのA点を使っておられました。全てA点だけで治療されていたこともありました。そのため、鍼(はり)は、オデコの生え際に密集していました。そこで、教科書に書いてあるA点の適応症を紹介します。

1)外傷、捻挫、または術後の除痛

2)頭痛、偏頭痛

3)頸椎症

4)頸椎捻挫

5)めまい

6)肩甲部痛

7)脳障害によるいろいろな症状

8)顔面麻痺

と多岐に渡ってあります。1)の外傷、捻挫があることを知りませんでした。改めて、この教科書を勉強する必要があると痛感しました。次回から、確認を含めて内容をご紹介しようと思います。

己を知る

ハリ、やいと、お灸、鍼灸・・・一般の方には、取っつきにくい、そして敷居の高い、非科学的で胡散臭(うさんくさ)いものと思われているかも知れません。ましてや、頭に鍼(はり)を刺すなんて・・・と、なります。そこで、山元式新頭鍼療法(YNSA)の鍼灸師として、いかに敷居を低くするかを考える必要があります。

例えば、季節が良い時期に野外で行われるエコをテーマとしたフェスティバルなどに、参加しテントを設置して、施術をするのは良いかも知れません。人々の前で施術を見ていただくことが大切なのかも知れません。特にYNSAは、即効性があるので現場で立ち会った人々に実感していただく良い機会だと思います。

また、頭に鍼を刺すことに恐怖を感じる初診の患者さんは、YNSA学会に認定されていませんが、足に見つけた治療点にパイオネックス(皮内鍼)を貼る治療の選択もあり・・・とするのも一案。

実際、今日初診の患者さんで鍼に恐怖心を持っている50才代男性患者Bさんに頭か足か選択してもらいました。やはり痛くない足のパイオネックスの治療となりました。診断点がある肘周辺の圧痛点がなくなっても、Bさんの訴えている個所の痛みが軽減しても、どこか不安、疑問を感じている様子でした。そこで今年亡くなられた野村克也元監督の言葉が、浮かびました

「よい仕事をするには、「己を知ること」が大切。その上で、さらに相手を圧倒する何かを考えることが大事」

私は、己をまだよく知っていないようです。今日の私の態度、治療姿勢のがどうも変だったのかも知れません。最近床に敷いたマットの上であぐらをかいての診断をしていたのですが、初診患者Bさんには、その事がすでにに変で胡散臭(うさんくさ)い状態だったのかも知れません。そこで、写真のように患者さんと座って向かい合うようにし、マットを共有することにしました。初診の患者さんに対する第一印象にもっと気をつけなければなりません。

敷居を低くする前に、敷居を高くしている己の態度を改めて見直す必要があったようです。

聴こえる歌が大きなった

80才代の女性患者Aさん、前回の耳なりの治療点に7本置鍼したのが効いたそうです。左耳から聴こえる人の声が籠(こも)った声だったのですが、普通の肉声になったそうです。そこで今回は、左だけでなく右の耳治療も加えて合計13本の置鍼を最初に行いました。

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、治療の基本ルールがあります。まず左右の合谷診(人差し指と親指の間の触診)をして、痛い側の上腕診と膝診をします。そのあと、首診をして内臓の診断をし治療します。しかし、耳なりの治療はこれらの基本ルールとは関係なく存在するので、Aさんには最初から13本の置鍼をしました。そのあと、合谷診、上腕診、膝診をしました。

合谷診:左(左の上腕診、膝診を行う)

上腕診:圧痛点なし

膝診:胸椎#4、#5(1)

首診:圧痛点なし

一本の置鍼で膝が緩みました。

置鍼を終えて、雑談をしていると、

「・・・・今聴こえる歌が、大きくなった。」

どうやら、耳なり治療点の置鍼が効いたようです。耳なりの置鍼は耳の中央部に向けて丹田(私の)から鍼(はり)を刺すことを念頭に置いています。少しその意識が効いているのかもしれません。天才山元敏勝先生が見つけられたこれらの治療点は、常に患者さんの感覚に従い押圧して、最も痛いところに置鍼することが大切です。

それにしても、どのようにしてこの耳なりの治療点を見つけられたのか・・・そのプロセスを考えることは、山元式新頭鍼療法(YNSA)を実践している鍼灸師として、新たな治療点を導き出すヒントになると思います。

あぐらをかく

 

「あぐらをかく」とは・・・・

脚を左右に開いた形で、足首を交差させる座り方。男性的な座り方とされる。そこから転じて、堂々と、あるいはずうずうしくも居座っているさまにも用いる。「胡坐をかく」とも書く。

とあり、ずうずうしく努力をしない様を表現した言葉と捉(とら)えられています。これは西洋文化が日本に入ってくる前の言葉で、今の生活様式で「あぐらをかく」の意味あいなら、「テーブルに足を投げ出す」でしょう。そこで、「あぐらをかく」の意味あいではなく、あぐらをかいている状態を想像してして下さい。私は黒澤明の時代劇のシーンが浮かんできます。膝が床についた頭を頂点とした綺麗(きれい)な三角形で安定した状態。これが出来ない人が多くなったのは、やはり畳に座ることが少なくなったせいでしょう。

現在、患者さんに回転式の籐座椅子(高さ35cmくらい)に座ってもらい、私は床であぐらをかいて診断しています。治療時は片膝を立て、もう片方の脚は膝をついた状態で置鍼しています。これだと体重移動が簡単で、丹田に力が入ります。

「先生、1本1本の鍼がずしんと重い感じがする。」

とある患者さんから言われたことがあるのですが、きっと置鍼の姿勢が変わったせいでしょう。紺色の白衣にジーンズと足袋の様な黒い靴下を履いているので、ちょっと忍者風の鍼灸師になっている私ですが、忍者になったつもりで、丹田からエネルギーを送る意識はしています。

あぐらをかくと、足裏やふくらはぎを触ることが出来ます。カラダとの対話は大変大切です。イス生活に慣れた方は、もう一度畳で「あぐらをかく」生活を心がけるのも良いと思います。

フラクタル

 

「これは、全く個人的な考え方なんですが、受精卵から人間のカラダを形成する発生学的な過程で最終形態の人型をイメージするのではないか・・・・と思うのです。そのため、随所に人型のイメージが相似形で現れてくるのではないか・・・と思うのです。山元先生(山元式新頭鍼療法の創始者)は、それを頭に見つけ治療点とされました。ですから、まだまだこの相似形がカラダの随所にあるはずです。」

と、患者さんに説明します。これを、フラクタルという現象と考えてもいいと思います。葛飾北斎の富嶽三十六景の大波がリアルな描写になっているのは、波の先端に相似形の波を描いているからです。葛飾北斎は波をじっくり観察して、フラクタル現象を見出し絵にしていったのです。人間の存在を含めた宇宙の現象にはこのフラクタルが存在しているようです。下記にフラクタルの説明を抜粋しておきます。

『フラクタルの具体的な例としては、海岸線の形などが挙げられる。一般的な図形は複雑に入り組んだ形状をしていても、拡大するに従ってその細部は変化が少なくなり、滑らかな形状になっていく。これに対して海岸線は、どれだけ拡大しても同じように複雑に入り組んだ形状が現れる。

そして海岸線の長さを測ろうとする場合、より小さい物差しで測れば測るほど大きな物差しでは無視されていた微細な凹凸が測定されるようになり、その測定値は長くなっていく。したがって、このような図形の長さは無限大であると考えられる。これは、実際問題としては分子の大きさ程度よりも小さい物差しを用いることは不可能だが、理論的な極限としては測定値が無限大になるということである。つまり、無限の精度を要求されれば測り終えることはないということである(海岸線のパラドックス)。』

カラダと鍼(はり)の説明 その2

「カラダは常に良くなろうとしています。そして悪い方向に向かって行くと痛みというブレーキを掛けて気付かせてくれています。ですから、痛みはありがたいんです。痛みを感じない病気もあります・・・・残念ながらこの病気の人は、早く亡くなってしまいます・・・・痛みを感じないので、無理ばかりするからです。私が、治療点を探す時、必ず患者さんの最も痛い場所を探します。痛みがなければ、治療が出来ないんです。」

山元式新頭鍼療法(YNSA)は、首診で12の内臓の状態を痛みの有無を診断します。上腕診では、大脳、小脳、脳幹、頸椎、胸椎、腰椎状態をやはり痛みの有無を診断します。なぜそんな事が出来るのか、私なりに患者さんに説明しています。

「内臓は平滑筋という自分の意志とは関係なく動く筋肉が働き、腕や脚などは骨格筋という自分の意志で動く筋肉が働くのですが、それらは、筋膜を通してつながっています。ですから、カラダの内と外は繋がっていて、首の様な薄い筋肉があるところは、内臓の状態が現れているのです(診断点)。その治療点がやはり筋膜を通して側頭部や頭頂部にあり、鍼を1本刺すだけで筋膜を通して内臓を緩(ゆる)めるのです。YNSAの創始者である山元先生は、首の診断点を見つけた後に、上腕の圧痛点を通して、大脳、小脳、脳幹、頸椎、胸椎、腰椎状態が分かる上腕診を見つけたのです。」

「そして、大切なことは治しているのは、患者さんのカラダであって、決して私が治しているのではないということです。私の鍼(はり)は、あくまで刺激を与えて補助をしているだけで、カラダが治しているのです。」

と説明しています。

カラダと鍼(はり)の説明

 

「60才以上の人は、90%以上椎間板に異常が認められるので、気にしなくてもいいです。椎間板のヘルニアは、マクロファージという大食細胞が、食べてくれますし、人は60~70%水で出来ているので、皮膚という水袋に骨が浮いていて、筋肉が支えていると考えた方がいいです。筋肉の周りに筋膜という主にコラーゲンで出来た膜があって、その筋肉は、細い筋肉の束が詰まっていて、その束も筋膜で覆われていて、その細い束にも、もっと細い筋肉の束があって、それも筋膜に覆われているんです。ですから、筋肉は立体的な筋膜に覆われているんです。」

 

私は、患者さんにカラダの説明をする時、まず骨は水袋に浮いているので骨は動くという認識を持ってもらいます。そして、立体的な筋膜がそれを支えてるとイメージしてもらいます。

「その筋膜は、カラダの浅いところや深いところを流れていて、その流れは12あります。丁度、東洋医学でいうツボの流れ、経絡と一致するんです。筋膜はコラーゲンで出来ていて、これは電導体ですから、鍼(はり)を刺すことで電気が走るのだと思います。よく東洋医学では、気という概念が使われますが、これは電気だと思います。電気はプラスとマイナスがあり、東洋医学の陰陽五行という基本概念と関係があると、私は考えています。」

と私見を述べて、さらに・・・

「カラダが凝(こ)ったり、血流が悪くて痛みがある個所は、筋膜がねじれています。一ヶ所にねじれが起こると、他の個所でねじれを作って、綱引きの様に引っ張りあうんです。ですから、遠くの患部とは全く違うツボに鍼(はり)を刺すと、一瞬で緩んでしまうんです。山元式新頭鍼療法(YNSA)は、そのツボ(治療点)を頭に見つけ出しています。」

と、鍼1本で痛みをとる事が出来るYNSAの説明をしています。