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以前、ガニ股の患者さんの考察を下記のように記しました。
『ガニ股と右臀部痛を考える
70才代の男性患者Cさんは、右に側屈すると右臀部に痛みが出ます。Cさんは、仰向けに寝ると足の小指側全体がベッドにつき横一線になるほどのガニ股です。右側の深部にある筋肉が縮むことで坐骨神経を刺激している可能性はあると思います。理由は、Cさんが右側に側屈すると、 坐骨神経の流れにそって痛みとシビれが出るからです。
骨盤の外には、小臀筋、中臀筋、大臀筋といった筋肉があります。Cさんのこれらの筋肉はガニ股のため、かなり収縮していると思います。これらの筋肉を緩めるには、おヘソを中心にして対応する筋肉である上腕の三角筋前部繊維、三角筋中部繊維、三角筋後部繊維を緩めることです。つまり、中臀筋が痛いようだったら、上腕の三角筋中部繊維の圧痛点に刺鍼して痛みをとります。このように、おヘソを中心にして上半身と下半身が対応しそれぞれの治療点が存在します。しかし、小臀筋、中臀筋、大臀筋は、それほど深部の筋肉ではありません。
梨状筋(りじょうきん)を始めとする仙骨、恥骨、坐骨辺りの筋肉の方が内蔵に近く深部(骨盤の内側)にあります。それでは、これらの筋肉に対応する上半身の筋肉はどこでしょう?梨状筋は胸鎖乳突筋と対応しているように感じます。胸鎖乳突筋の深部には様々な筋肉があります・・・・これらの筋肉が仙骨、恥骨、坐骨辺りの筋肉と対応しているかも知れません。』
本日はCさんの診察日。やはり、右側に側屈をするとお尻の深部(梨状筋辺り)に痛みがあります。そこで、右側を上にして横向きになってもらいます。Cさんの胸鎖乳突筋を軽くふれると、
「痛った!」
硬く平たい感覚を感じられます。どうやら、「ここが緩むと梨状筋が緩む」と、確信めいたものを感じました。そして、今日は指圧だけで治そうと思ってしまいました。私が松山で開業する以前は、新宿の歌舞伎町にある「あしカラダ」というリラクゼーション店で2~3年働いており、指名客を抱えていたことがあったのです。鍼灸師だったので、リラクゼーションというより治療をしていました。その為、店長から「佐伯さんは、奥のベッドでやってください・・・皆んなとは違うことをしているので・・・」と言われていたものです。
ただ、鍼灸院を開業してからは、指圧の技は封印していました・・・・しかし、今回だけはどういう訳か、やってみたくなったのです。しばらくCさんの胸鎖乳突筋をほぐし、かなり柔らかくなった時、
「ちょっと、これでどうなるか・・・チェックしてみてください。」
「・・・・あれ?お尻の奥は痛ない・・・けど、ここ(臀部の表面)が痛なった。」
やはり、思った通り梨状筋と胸鎖乳突筋は相関関係にあるようです。そこで痛みがある大臀筋、中臀筋、小臀筋と相関関係にある三角筋の前部繊維、中部繊維、後部繊維を指圧。
「これでどうですか?ちょっとチェックをしてみてください。」
「あれ?痛ない・・・・けど、左のお尻が痛なった。」
「そしたら、今度は左を上にして横向きになってみてください。」
今度は、左三角筋の前部繊維、中部繊維、後部繊維をゆっくりと指圧。
「これで、どうですか?」
「左の痛みは無くなったけど、また右に少し痛みが・・・」
左、右と忙しく痛みが移りますが、今度で終わるだろうと思いながら、Cさんに右を上にして横向きになってもらい、再び三角筋の前部繊維、中部繊維、後部繊維を指圧。
「さて、これでどうですか?」
「・・・ああどうもない、全然違う」
ということで、終了となりました。Cさんには、硬式野球ボールを使って胸鎖乳突筋や三角筋に刺激する方法をお教えしました。次回は1週間後の来院となりますが、どうなっているか楽しみです。