鍼で治療をしている鍼灸師として、患者さんが鍼に対する恐怖心を必要以上に抱いていることに、驚くことがあります。
「今日は、鍼をしましょうか?」
の一言で、顔は凍りつきカラダは縮み上がる60才代の男性患者Bさん。
「鍼だけは、やめてほしい・・・まして、頭なんか・・・・・腰とか、背中はあまり痛くなからええけど・・・・鍼は、人から聞いた話じゃと、かえって悪なってしもうた、なんちゅう話をようけ聞くし・・・・頭の鍼だけはやめてください。」
「・・・・よおく考えてください、頭は頭蓋骨に守られて、非常に安全なところです。しかも、頭皮に深さ1mm程度、横に刺すだけなんです・・・」
といっても、Aさんの思考回路は停止しています。
「分かりました、今日もお灸だけにしましょう。」
嫌がる患者さんに嫌がる治療を押し付けることは、絶対許されません。そこで、素早く方向転換をします。前回は、見つけた足の治療点7か所にお灸を15壮し、それが効いたようです。そこで、今回は、左足に8壮、右足に3壮お灸をして、終了としました。
Aさんは、立ち仕事をされているので、腰痛持ちです。
今のところ、腰の痛みはなくなりましたが、継続のためパイオネックス(円皮鍼)を貼ることにしました。
「パイオネックスという小さな鍼を刺しましょう、これは全然痛くありません。」
「何ですか、それ?ピップエレキバンみたいなやつですか?」
「ちょっと違いますけど、0.6mmの痛くない鍼です。」
「いつまでつけるんですか・・・風呂に入ってもええんですか?」
と、少々拒絶反応気味・・・それでも、試しに2個貼って終了としました。これで、成果が出れば少しは鍼に対して理解していただけるかも知れません・・・