やめてください!

 

インターネットで当院を調べ来られた40才代の男性患者Bさん。パソコン画像を1日5~6時間見続けるため、ストレートネックになり、肩こりと頭痛の症状があります。また、太ももの外側とふくらはぎに変な疲れがあります。いつもの様に、合谷診から始まり、膝診、首診を行いますが、太もも外側とふくらはぎの変な疲れが気になるので、デルマトーム(皮膚分節)の図をしっかり見てもらい、L5、L2、S2のデルマトームが関与しているのを確認しました。

合谷診:左(左外側の基礎治療を行う)

膝診:左頸椎#5~6(1)、左胸椎#5(1)、左腰椎#6(1)、左大脳(1)

首診:右大腸(1)、右三焦(1)、左腎(1)、左膀胱、左心(1)

(   )内は置鍼数

ところが、いざ置鍼をしようとすると、

「ちょっと、やめてください・・・怖い!」

と私の手を払いのけようと必死のBさん。こんなことは、初めてです。そこで、痛みの意味を知っていただくための説明をすることにしました。

「カラダを良くしようと思ったら、危機感が必要なんです。例えば、交通事故に会って大怪我をしたとします。その時、βエンドルフィンという脳内モルヒネを脳幹の視床下部というところから、中枢神経を通して、頸椎から尾骨までの31本ある脊髄神経の必要な個所に、神経伝達物質として運ぶのです。それによって、痛みを感じないようにしているのです。これは生命維持をするための最も大切な活動です。それと同じことを鍼治療で行っているのです。」

「・・・・・」

「例えば、オデコに親指の爪を立てるだけで、もの凄い痛みを感じをことがあります。これだけで、カラダは危機感を感じて、βエンドルフィンを用意するのです。そして、鍼を刺すことによってβエンドルフィンが運ばれて、痛みやコリなどがなくなるのです。私のホームページには山元式新頭鍼療法(YNSA)のことを書いているのですが・・・・ご覧になりましたか?」

「ああ・・・読んだ気がします・・・確か、頭に・・・」

Bさんは、具体的なイメージがないままホームページを読まれたのだと思います。最近、治療するにあたって痛みの重要性がはっきり分かるようになってきました。実際には、てい鍼という「銀棒の刺さない鍼」を押圧するだけで、診断点が緩むことが多いのです。てい鍼押圧は「異常な痛み」を伴う時があります。これだけでカラダは危機感を感じ、βエンドルフィンを出すのだと思います。とにかく、Bさんに何とか納得していただき、置鍼をすることにしました。

「どうですか?足(ふくらはぎ内側)の痛みは?」

「・・・あれ?無い・・・・凄い!これ・・凄いですね!」

「今度は、どうですか?」

「・・・痛くない!えええ・・・・どうして?これ、本当に凄いですね!」

やっと理解していただきました。そして、気になっていた太もも外側とふくらはぎの変な疲れは、デルマトームL5を狙って置鍼をすると、一気に左右の患部が緩み治療終了となりました。デルマトームの威力は凄いです。