父親は全て分かっていた

小学校の時から、本が嫌いで、国語の成績が悪かった私。父親が心配をして、少年少女世界の名作文学という分厚い本を買っくれました。例えば「日向が丘の少女」など、

「面白いのう~」

と読んではいくものの・・・・「あ~しんど!」

途中で、外に飛び出して日が暮れるまで遊びました。近所には子供たちが、クモの子を散らした様にあふれかえっていたので、木登り、川遊び、ビー玉、ボール遊び何をしても楽しかったのです・・・・あれから50年以上も経ちましたが、相変わらず本読みが嫌いなままです。それから、子供のころ出来ていた算数が、今では苦手。数字を見ると頭が凍りついてしまいます。

そんな私ですから、文章を書くのが最も苦手。手紙を書くのに半日費やすこともありました。前の嫁が、フリーライターだったため、文章を書けない私に呆れ果てていました。

私の事を一番よく分かっていたのは、父親だったようです。2か月で大学をやめ、アルバイトをしていた私に芸術の道を進めてくれました。また、小学校の時、神経性胃炎だった私を指圧で治してくれたのは、父親でした。その原体験で、私が鍼灸師への道を選んで行ったのです。

こんなに不甲斐ない私ですが、辛抱強く見守ってくれた父親に、感謝しかありません。

「とうちゃん、本当にありがとう。」

頭蓋骨⇄仙骨

 

3年前から、頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

「先生、先週はあんまり、調子よくなかった・・・・でも、この2日間は調子が良くなった。」

前回は、

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰椎

の相関関係で、左下顎骨が痛いCさんに対して、左腸骨の圧痛点に鍼を刺し、頭頂部Kソマトトープ(小さな人型)の下顎骨に対応する個所に8本置鍼したのですが・・・・少し、本数が多すぎたのかもしれません。

今回のCさんは、左あご(左下顎骨)以外に、後頭部と首にも痛みがあります。

合谷診(人差し指と親指の間の触診)から上腕診(肘窩横紋の触診)をし、左頭部に7本置鍼。

その後、ベッドに移動し、うつ伏せになって戴きます。

頭骸骨⇄仙骨

の相関関係から、後頭部(頭蓋骨)に痛みのあるCさんの仙骨圧痛点に鍼を刺します。3本ほど刺すと、

「先生、効いてる。痛みが取れました。」

後頭部の痛みは取れたので、今度は、左下顎骨。

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

この関係から、左腸骨の圧痛点に鍼を刺していきます。

「先生、効いてる。ナンカいいみたい。」

という事で、仙骨と腸骨の圧痛点にパイオネックス(円皮鍼)を貼り終了としました。

今回は、今まで以上に手ごたえがあります。来週の来院が楽しみです。

やわらかおもちお尻

鍼が嫌いなのに鍼灸院に来てしまった40才代の女性患者Aさんの続報です。今日は、左の肩コリがひどいそうです。鍼を使わない治療を行います。

山元式新頭鍼療法(YNSA)を導入しながら・・・と思い、鍼を刺す代わりに指先をAさんのオデコに置き、4~5分経過。

肘の内側が、柔らかくなっているはずです・・・・が、硬くて触れると痛みもあるそうです。

もう一度、やっても変わりません・・・こういう時は、あきらめます。

座ったままの姿勢が、やや緊張を呼ぶのかもしれません。ベッドに移動してもらい一番楽な姿勢になってもらいます。

「うつ伏せが楽です。」

Aさんの左肩、確かに大きなコリがあります。

仙骨⇄肩甲骨の関係で、バランスを取っているので、左肩コリがあると、左仙骨の近くに必ず圧痛点があります。

「痛い!」

仙骨中央部ある圧痛点に軽く中指を置きます。

「Aさん、カラダに変化が出てきたら、教えて下さい。眠くなったら眠って下さいね~」

仙骨周辺の圧痛点を探し、5~6分おきに指の位置を変えていきます。

「Aさん、肩こりどうですか?」

「楽です・・・いい感じです。」

こうなってくると、気が付いたところに指を置いていき、全身が緩むようにしていきます。

Aさんのお尻がトンガっていたのですが、徐々に緩み柔らかいおもちの様になりました。

この時点で、終了。

この治療法、Aさん気に入っておられます。

「気持ち良かった!」

と、笑顔で帰られました。

肩甲骨⇄腸骨 頭蓋骨⇄仙骨

体調崩すと来院される60才代の男性患者Aさん。朝起きると、腰に張りがあり前屈すると骨盤の上が痛いそうです。午前中に電話があり、夜8:30からの治療となりました。

「先生、今日は鍼じゃのうても、ええけん。治して下さいや。」

『よっぽどのことが無い限り、鍼以外はしません・・・』と思いつつも、言葉には決してしません。

合谷診(人差し指と親指の触診)の後、とくに眉毛の上の圧痛点に左右合計6本置鍼。Aさん

は、三叉神経痛の持病を持っていたこともあり、眉毛の上を丁寧に診ると、mm単位で圧痛点があります。この置鍼だけで、腰痛はかなり軽減しました。

「先生、痛みが点になった来た・・・今は、ここじゃわい!」

仙腸関節の出っ張り(上後腸骨棘:じょうごちょうこつきょく)の上にゴリゴリがあります。

肩甲骨⇄腸骨

と考えると、肩甲骨下角(かかく)あたりが、仙腸関節の上に対応します。丁寧に探すと、

「先生、そこじゃ!痛い!」

Aさんの圧痛点は、あちこちに移動するので、それに合わせて

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰椎

の見方を追加しながら、鍼を刺していきます。頭骸骨⇄仙骨の見方から、頚椎1番あたり(天柱:てんちゅう)で、腰の圧痛点が取れていけます。

最近では、天柱に鍼を刺すという意識ではなく、腰に対応する頚椎の圧痛点に、鍼を刺すという感覚で治療しているようです。

「先生、そこじゃ~~、爆弾が破裂した・・・・ハアアハ・・・頭まで電気が走るし、腰に来た~~」

Aさんの実況放送は、生々しいしいので、テープで録音したいくらいです。まあ~よくもこんなに言語化できるものだと、感心してしまいます。

「先生、もうこれで十分じゃ。」

いつものように、治療の終了をAさんが決め、

「また痛なったら、突然電話しますけん、よろしくお願いします。」

ニコニコ顔のAさん、スタスタと帰られました。

大反省

今回の山元式新頭鍼療法(YNSA)中級セミナー1を受講して、大反省しているところです。

最も大切な、基礎治療の意味合いを知っていなかった。なぜ、基礎治療というのか・・・

なぜ、講師の加藤直哉先生が、中級セミナーでもしっかりと、初級セミナーの復習をしっかりとされるのか?

それは、脊椎と脳=自律神経で最も大切な「カラダの自動調整装置」だからです。

主訴、疾患名に関わらず、かならず基礎治療として、自律神経を改善させるために、脊椎と脳は最優先治療として、行うのです。

ベテランの先生方は、何を今さら・・・と思われるでしょうが、認識不足の私にとっては、目からウロコでした。改めて、テキストを読み込むことの大切さが分かりました。

いつの間にか、我流になっている置鍼も、もう一度、テキストに沿ってやってみます。

一人で、患者さん相手にやっていると、いつの間か勝手な思い込みが一人歩きして行くので、我流になっていくのだと思います。多くの先生方との勉強会に参加する必要性を感じました。

そういう姿勢と、「やれる、できる、大丈夫」の心構えで、楽しくやります~~

私の祖父、佐伯惟揚(これあき)は、背筋を常に伸ばして、颯爽(さっそう)としていました。あれが、生き方なのでしょう。私には出来ません。私は一人でいると、うつむき加減になってしまいます。

祖父は、俳人で180名の弟子を持っていました。そういう立場も姿勢を作り上げるのだと思います。また、書家でもあった祖父は、正しい姿勢から書が生まれる事を知っていたのだと思います。私が小学校3年生くらいだった頃、祖父が参観日に来てくれました。おちょうしものの私は、キョロキョロと落ち着かない様子だったそうです。舞い上がってしまい、左膝をペロペロなめていたそうです。

それ以来、長い物差しを背中に差され、正座で机に向かう練習をさせられました。また、鉛筆の持ち方、箸の持ち方もしつこく注意されました。型から入る日本の習い事は、必要な事だと、今になって感じます。

今、御茶ノ水のソーラーシテイーという高いビルの2階で、山元式新頭鍼療法(YNSA)の中級1セミナーに参加しています。講師の加藤直哉先生が、セミナーの最初にされるのが、全員起立して、両手の甲を腰に当て、スーパーマンのポーズ。

「やれる、できる、大丈夫!」

を、3回叫びます。これが型から入る自己啓蒙。祖父が示していた型の現代版だと思います。もう、すっかりスーパーマンです!

蘇れ生命の力

昨年まで、現役の小児科医として東京の吉祥寺で開業されいた真弓定夫先生(88才)のドキュメンタリー映画「蘇れ生命の力」をみました。真弓先生は、生活習慣のアドバイスをする事で、動物として本来持っている生命力を蘇らせる治療をされています。対処療法である、薬投与や注射はしません。

いずれは、書いていかなければならないテーマ。今回、このドキュメンタリー映画を見て、少しずつ書いてみようと思います。「生き方」です。

私のような、芸術活動中途半端、子供3人育てられなかった鍼灸師が、生き方をいう資格はありません。何一つ成し遂げていない男が、生き方を言えない。

ただ、身近な人で凄い生き様をさらしてくれた人がいたので、その人を語ることから、少しずつ「生き方」を語ってみたいと思います(明治生まれの日本人は、そこかしこに凄い人がいたのです)。

私の祖父、佐伯惟揚(これあき)が死を前にした時、むく~っと渾身の力で起き上がり、親族が見守る中を、最敬礼し一人一人に挨拶をしてくれました。

「じいちゃん~~・・・ありがとう・・・」

「じいちゃん、じいちゃん、じいちゃん!」

あの姿こそ、「生き方」です。あの死に方が「生き方」。

この世に生を受け、死を直前にした時、同じ血を分けあった親族に見守られ、次の世界・・・

じいちゃんは、我々の知らない世界に行く先駆者・・未知の世界を生きることが「生き方」

次回に続く

操体法とYNSA

鍼治療が嫌いな40才代の女性患者Bさん。最近、休息を十分とっているので、体調が比較的良いそうです。ただ左肩がやや上がりづらい。

鍼治療封印中のCさんは、操体法で治療します。

Cさんに左側を上にして横向き(左側臥位といいます)になってもらいます。左肩が悪いと、左腰に圧痛点があります。

「Cさん、左足をベッドの外に、ゆっくり投げ出していただいてよろしいですか?」

「はい・・・・こんな感じですか?」

Cさんの左足がベッドより低い位置に下り、足の重さで徐々に螺旋を描くような動きが生まれてきます。Cさんの足先を右手で軽く包み込み、踵(かかと)を左手で支えるように軽く触れます。

Cさんは、これだけで気持ちいいのですが、この状態から、元の状態にもどる動きをしてもらいます。

「はい、そうしたら・・・この状態から、ゆっくりと足先を、元の方向に戻していただいて

よろしいでしょうか?・・・実際には、私が足を持っているので、動くことはないのですが、カラダの中がゆっくり動きます・・・・決して無理しないで・・・・カラダの中心・腰を使いながら・・・気持ち良く・・・・・・・・痛かったら、やめてください。」

このような言葉がけをしながら、動きの操法を続けます。

「Cさん、左肩はどうですか?」

「あっ・・・上がりやすくなっています。」

次に、皮膚に触れる操法。Cさんに左肩の圧痛点を聞き、それに対応する左下肢の圧痛点に軽く指先を触れるだけです。約10分くらいで、カラダに変化が現れます。最後は、左肩に対応する頭の部位に指先を置き、Cさんは仰向けでゆっくりしてもらいます。

「あ~~、気持ち良かった・・・頭に触れもらうの、気持ち良かったです。」

これで、Cさんの左肩が、す~と上がりました。

操体法と山元式新頭鍼治療法(YNSA)は、うまく融合出来そうです。次回は、Cさんの言われたように、頭に指先を触れる操体法を多くしてみましょう。

首のコリを腰で治す


体調崩すと来院される60才代の男性患者Aさん。今回は、左の首に硬いコリを感じ体全体が火照(ほて)って仕事もできない状態です。まず合谷診(人差し指と親指の間の触診)をして、A点(おでこ中央部の生え際)に5本置鍼。

以前、下記のような相関関係を述べたことがあります。

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰椎

Cさんの場合、左頚椎1~2番にコリがあります。ということは、左腰椎4~5番にコリ、圧痛点があるはずです。

「Cさん、ここ・・・・どうです?」

「痛った‼️そこじゃ、先生そこじゃ‼️」

やはりありました。よくよく見ると、その圧痛点の2cm内側の腰椎に、5~6cmの手術の跡がありました。10年前、脊柱管狭窄のため、チタン合金のプレートを埋め込み、ボルトで止める手術をされたそうです。その周辺の筋膜は、著しく歪み、頚椎を引っ張っているはずです。頚椎はその引っ張りに対して、コリを作っていると考えます。

寸6の3番鍼(長さ50mm直径0.2mm)で、圧痛点に直刺。

「ひやーーー来た‼️背中がのけ反る・・・星がチカチカ出た‼️・・・・カラダが熱い・・・・汗がバーッと出てきた・・・・先生ここじゃ、ツボに入ったんじゃ。今度は、足のウラがジンジンしてきた・・・・こもった熱が出よる❗️先生、足首がよう動く、左ももの痛みも無くなった」

Cさんは、カラダに起こっている変化を的確な言葉で実況放送してくれます。

「先生、今日はこの1本だけでええ。もう十分じゃ。」

「目がよう見える、首のこりも無いなった。」

Cさんが、治療の終了も決めてくれます。ありがとうございます。

惚れる&惚ける

「これからの人生を楽しく笑って行きましょう」と書かれた紙には、

いたわりも、耳が遠くて、怒鳴り声

忘れ得ぬ、人はいるけど、名を忘れ

医者と妻、急にやさしく、なる不安

驚いた、「惚(ほ)れると、「惚(ぼ)ける」は同じ文字

これを下さったのは、80才代の女性患者Aさん。

いつもニコニコ冗談を言って治療を受けられます。今日は、人工関節の右膝が痛み、腰(胸椎12番~腰椎2番くらい)が痛いそうです。

まず右膝は、右肘で診ます。右肘の圧痛点に3本置鍼。

「どうですか?歩いてみてください。」

「あら?いいみたい・・・」

今度は合谷診(人差し指と親指の間の触診)で右の胸椎、腰椎のコリを確認。右耳の上にある胸椎12番に対応する圧痛点に置鍼2本。耳ウラの腰椎2番に対応する圧痛点に置鍼1本。

「どうですか?」

「いいみたいです~~」

「それでは、ベッドでゆっくり横になって、フォークソングを楽しんでください。」

Cさんは、フォークソングを聴きながら、当時の事を思い出すのが大好きです。

ゆっくりと時間が経って行きます。

「先生、1週間前から口内炎が舌にできて、痛いんですけど・・・・」

「じゃあ~、鍼刺しますよ。」

「口内炎にも、効くんですか・・・・やっぱり言ってみるもんだわ。」

という事で、オデコのツボに置鍼2本。

Cさんには、30分ゆっくりと横になってもらい終了。

「先生、舌はまだ痛いです。」

「そうですか・・・そしたら、パイオネックス(皮内鍼)を貼っておきましょう。」

置鍼したオデコに2個貼って様子をみることにしました。来週の報告がたのしみです。