臀圧の威力

 

 

50才代の女性患者Cさん。肩甲骨あたりが、いつも痛みがあり気になります。そこで治療の前に、あることをやってもらいました。

「Cさん、そしたら硬式ボールをお尻に当てて、その痛みを取ってみましょうか?」

と畳部屋でうつ伏せになっていただき、臀圧(でんあつ)というツボに私が親指で押圧。

「Cさん、腰の横にある出っ張り(大転子といいます)と、お尻の上の方の出っ張り(上後腸骨棘といいます)のちょうど真ん中を押しますよ・・・・どうですか?」

「痛い!」

「Cさん、この痛み覚えていてくださいね。」

とCさんには、痛みを覚えていただいて、今度は仰向けになっていただきます。そして、硬式ボールをお尻に当てて、同じ痛みのところを探していただくのですが、直ぐに見つかりました。

「ここです!」

「痛気持ちがいい程度の状態を作ってくださいね・・・・どうですか、その状態で3分は持ちそうですか?」

「大丈夫・・・・全然・・・いけます。」

「そしたら・・・・OKグーグルタイマー4分お願いします。」

と、1分オーバーの4分に設定して、気持ち良さを味わってもらうことにしました。そして、4分が過ぎ、Cさんにゆっくり立っていただきます。

「肩どうですか?」

「・・・・・・あれ?痛くない!・・・・ホントに痛くない!」

大きな目をもっと大きくして絶句されるCさん。という訳で臀圧(でんあつ)の威力をお伝えしました!

先は長い!

40才代の女性患者Cさん。ギックリ腰で腰を折り曲げて来院されました。イスに座っていると腰に痛みが出てくるため、仰向きになっての治療となりました。私は上腕診の代わりに膝診を行なっています。推測ではありますが、山元式新頭鍼療法(YNSA)の治療をなさっている医師、鍼灸師の先生方は、やり慣れている上腕診をされていると思います。

膝診に慣れてしまっている私にとっては、上腕診だけでは情報不足を感じます。理由は、膝診では、頸椎1番から仙骨までの状態が分かるからです。例えばCさんの場合、

頸椎診断点は全て圧痛があり、胸椎診断点は、1番と8、9番、腰椎診断点は5番と仙骨に圧痛があります。そのため、Cさんの首、背中中央部、仙骨あたりに痛みがあると推測できます。これらの診断点を緩めるのに7本頭に置鍼。

そのあとトルコのテクチ医師に教わった治療点に2本、後は後頭部のKソマトトープに3本の置鍼で痛みがほぼ無くなりました。後は、左を上にして側臥位で休んでいただきました。最近、腰痛にはKソマトトープを多用しています。皮膚の観察、触診で治療点が明確になるという当たり前のことが、やっと分かってきました。先は長い!

右薬指

 

高校野球部のA君、右肘痛が長引いていたのですが、3週間前から通院されボールを普通に投げることが出来るようになりました。ただ、先日ボールを投げた時、右薬指が引きつるような感じになり、肘にかけて違和感があるそうです。今回でA君の治療は4回目。

いつものように背骨を整え(頭の置鍼4本)、自律神経の働きを良くした上で、A君にデルマトーム(皮膚分節) の絵を見てもらい、頸椎から出ている7番と8番の神経が、右薬指に関係あることを理解してもらいました。

ここで、膝診が非常に役に立つことが分かったのです。一般的に山元式新頭鍼療法(YNSA)では膝診ではなく上腕診で、脳、頸椎、胸椎、腰椎の状態を診断します。しかし、上腕診に全く反応をしめさなかった患者さんに対し、膝診を試みた結果、上腕診と同様の反応を示し、それを去年の学会で発表し、認めていただきました。また、膝診の特徴は、下腿三頭筋という膝ウラから始まる幅広い筋肉があり、頸椎から腰痛までを点でなく線で診断出来るため、頸椎1番から仙骨までの状態を診断出来るという利点です。

A君の右薬指が引きつった神経が出る場所が、頸椎7番と胸椎1番あたりになります。このあたりの診断個所が、右膝ウラの内側1~2点になるのですが、触診するとしっかり圧痛硬結点として存在していました。

そこで、右眉毛の上にあるE点の胸椎1番と、右耳横のIソマトトープ頸椎7番に2本置鍼。すると、右膝ウラの胸椎1番と頸椎7番の診断点がゆるみ、右薬指の引きつった感覚が、ほとんどなくなりました。

なぜ、このような結果が出たのか・・・・だいたい分かるのですが、もう少し深掘りしたいので、次回説明致します。

先が見えてきた!

20才代の男性患者Bさん、2週間前から腰痛で通院され5回目の治療となります。山元式新頭鍼療法(YNSA)の治り方は、良くなって、少し後戻りし、再び良くなって、また少し後戻りを繰り返しながら、完治に向かうというのが一般的だと思います。Bさんの場合、初診で来られた時の痛みが10で全く痛みがないのが0だと、本日の腰の痛みは3~5くらいだそうです。

Bさんに17本頭の置鍼を行い、今回も前回同様に、ベッドでうつ伏せになってもらい、肩甲骨の治療を始めることにしました。最近は、「肩甲骨周辺の重要なツボ(経穴)に置鍼し、腰痛を治す」を行っています。どうも、これが効いているようでBさん、

「肩甲骨に貼っていただいた鍼(パイオネックスという0.6mmの円皮鍼)が効いているように思います。」

と、素直な感想を喋ってくれました。

「・・・そうですか、そうしたら、この上から指先で触れるだけの治療をしましょう。」

と、当初予定していた鍼とお灸を変更することにしました。鍼灸師になる以前、操体法の指先で触れるだけの治療をしていました。今回は、皮膚に貼ったパイオネックスの上に指先を軽く触れるだけの治療を15分ほど行いました。

「・・・・・先生、なんかカラダが緩んでくるんですが、これって良いんですか?」

「良いですね!緩んでくるなんて最高です、ゆっくりその感じを味わってくださいね。」

ゆっくりしてもらった後、足裏やくるぶしにお灸をして終了となりました。

「不思議な体験をしました・・・・」

「そうでしょう、脳と皮膚は、元々外胚葉という受精卵で同じ場所から分裂したものなので、繋がりが強いんです。皮膚に軽い刺激を与えるだけで、脳が反応し治癒へと向かうんです。人によっては、無意識の動きが出たり、光や色が見えたりして良くなって行くんです。」

などと話しながら、今回は痛みが「2」となり終了しました。Bさんは、熱心なので、今週もう一度来院されます・・・・先が見えてきました!

腕組みしなくなったA君

高校野球愛媛県大会が始まり、野球部員が学校の枠を超えて来院されています。患者さんの好きな音楽をYouTubeから流すので、「ワンヲクラーク」「ノーベルブライト」「official髭男dism」などと、普段聴くことのない音楽が新鮮です。怪我の傾向として、肘や肩に負担がかかる選手が多いようです。私の頃といえば50年以上も前なので、比較のしようもないないのですが、肘肩が痛いという選手は余りいませんでした。私自身、高校大学と野球をしたのですが、故障をしたことがありませんでした。多分、練習量が今の半分くらいだったからでしょう。

で、前回ご紹介した腕組み野球部員A君、2回目の来院。

今回は、笑顔で入って来られました。

「どう、調子は?」

「ずいぶん良いです。投げられそうな気がします。」

と随分前向きな言葉が返ってきました。頭に9本置鍼した中でも、Jソマトトープという頭頂部の治療点2本が効いたようです。その後は、足に見つけた治療点を、鍉鍼(ていしん)という銀の細い棒で気持ち良い程度で押圧すること3分。

「これでどう?」

「めっちゃ、軽いです。」

その後、同じ個所にお灸を8壮。

「そしたら、今度は、右の膝ウラに鍼をするよ。」

A君は右肘内側側副靱帯に痛みがあります。右肘内側側副靱帯に対応するのが、右膝弓状膝窩靱帯です。右膝弓状膝窩靱帯が緩むと、右肘内側側副靱帯が緩むという原則があります。そこで、右膝ウラに3本置鍼し、その後、お灸をして終了。

膝と足にマジックペンで4ヶ所跡をつけて、お灸をするように指導しました。毎日お灸をして次回の治療を受ければ、完治する予感がします。A君は、4日後に来院されるので、楽しみです。

腕組み

10日ほど前から、右肘内側に痛みがある高校野球部の新3年生A君。当院に来られる前、何ヶ所かの治療院に行かれたそうですが、結果が出ず医療不審を多少感じておられたようです(それは、後日分かったことです)。そんな事とは知らずに診断を進めていると、無意識のうちに腕組みをしているA君。腕組みという行為は、「おい、治してみろ !俺は、信用していないからな!」という思いが作り出すものです。

『あらら・・・拒絶してる・・・まあ、体験してもらおう!』

と、お気楽モードで治療を始めました。山元式新頭鍼療法(YNSA)では、上腕診と呼ばれる脳から脊柱の状態を診断する方法を、膝診(去年の学会で発表し、認められました)で行っているため、頸椎の1番から仙骨までの状態把握が可能になりました。A君の場合、胸椎の2番、11~12番に圧痛点があることが分かります。それを2本の置鍼で無くしたため、腕組みの姿勢が一気に緩んでしまいました。

それからは、私のいつものペースで治療を終えて、2日後の予約をして帰宅されました。来院された時の痛みが10で痛みが全くないのが0。それが10→2になりました!次回の治療が楽しみです。

おみそれしました

「先生、ワシなあ・・・実は五十肩なんよ。」

「えっっえ、聞いてないよ・・・・何で教えてくれんかったん?」

「一回五十肩やった時、ヒアルロン酸の注射して治ったんで、そこにまた行って、治療受けたんじゃけど・・・今回は、治らんでそのままにしとった。」

「鍼で五十肩は治るんよ。」

どうやら、70才代の男性患者Bさん、「下肢の痺れ」は、当院で治して、「五十肩」は病院で治すと決めて通院されていたようです。そこで早速、頭頂部の治療点に3本置鍼。

「Bさん、肩どうですか?」

「・・・・・あれ?右腕と同じに後ろへいく・・・・五十肩が、嘘みたいに治った!・・先生、おみそれしました!」

「・・・まあまあ。」

というわけで、少し信用を得たようです、おしまい。

即効性

 

50才代の女性患者Aさん、2日前に風邪をひき鼻水が出ています。そこで、山元式新頭鍼療法(YNSA)の鼻、舌咽神経、肺に関する置鍼を3本。そのあとは、自律神経と内臓を整える置鍼を11本行いました。

「鼻水が出なくなったんですけど・・・・」

「あああ・・・即効性があるでしょう?」

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、 感覚点という治療点が診断しないでも存在しています。つまり、患者さんの訴えに対して、即対応できる治療点ということになります。Aさんの場合、鼻水がでるのが気になるので、オデコにある鼻の治療点に2本置鍼しました。実際には、鼻水が出たがっているのだから、出して上げる方がいいのかも知れませんが、鍼の即効性を感じていただけるのなら良しとします。30分の置鍼を終了して、鍼を抜いていると、

「あれ?ノドのイガイガを感じていないって、今感じました。何かされました?」

「あああああ~、最初、頭の天辺に打った鍼は、舌咽神経に効くので、良くなったんでしょう。」

と、AさんはYNSAの即効性を身を持って体感されたようです。良かった、良かった!

心房中隔欠損症

 

80才代の女性患者Bさん、今回が初めての来院です。

「私は、心臓に穴が空いていて、くっついているの。」

とおっしゃられました。そこで、インターネットで調べてみたところ、「心房中隔欠損」という病名で紹介されていました。

『心房中隔欠損症(Atrial septal defect :ASD)とは、心房中隔(右心房と左心房を2つの空間に分けている壁)に穴が開いている状態を指します。心臓は、右心房、右心室、左心房、左心室の4つの部屋から構成されています。右心房と左心房は、それぞれ全身と肺からの血液が戻ってくる部屋です。この両者の部屋は心房中隔と呼ばれる壁により隔てられています。

心房中隔欠損症は、先天性心疾患(産まれつきの心臓の病気の総称)の1つであり、その中でも一定の割合を占めています。また、心房中隔欠損症は女児に多いことが知られています。

先天性心疾患ではあるものの、無症状であることが多いため、新生児や乳児期に発見されることは少なく、就学時検診やそのほかの理由で小児科を受診した際などに発見されることが多いです。大きな穴では自然閉鎖は期待できず、年齢を経てから心不全による症状が徐々に現れることもあります。心臓や肺への負担状況を判断しながら、治療が行われる病気です。

胎児期、左右の心房を隔てる心房中隔には、卵円孔(らんえんこう)と呼ばれる生理的な穴が存在しています。胎児は胎盤を介して酸素を取り入れるため、肺で酸素を取り入れる必要がありません。そのため、胎児の右心房に返ってきた血液は肺へ流れることは少なく、卵円孔を介して左心房へと移動します。

出生後、赤ちゃんは自分自身の肺で酸素を取り込まなければならなくなるため、右心房に帰ってきた血液が肺に流れるようになり、卵円孔は不要になります。そのため生後、卵円孔は自然閉鎖します。

心房中隔欠損の多くは卵円孔の部位に認めますが、タイプによって穴が生じる場所は異なります。それぞれのタイプに応じて、症状の現れ方や自然閉鎖するかどうかの傾向、治療法も異なってきます。』