三冠王3回の落合博満氏とホームラン王の山川穂高選手の対談で、スランプになった時の、治療法を落合氏が山川選手に教えるシーンがありました。
「人間って面白い動物でね。光があって何かが見えれば、そこに気を持っていかれる。明るいと、そのものに左右されて、来るんだから待っとけよって言ってもそこ打ちたい、あれ打ちたいっていろんなスイングになっちゃうから。直すんだったら暗闇の素振り。オレの中ではね」
「暗闇の素振り」さすが、三冠王の言葉だと、重く重く受け取りました。
治療もこれは、当てはまるように思います。
例えば山元式新頭鍼療法(YNSA)で、上腕診という触診を行います。
「これ、痛いですか?」私が、親指でやんわり触れながら聴きます。この時、多くの患者さんは、目を閉じてご自身の感覚、カラダに向かい合います。特に、鍼を刺す個所を探す時は、親指の爪をmm単位で動かし、患者さんの感覚にゆだね、伺います。この時、全ての患者さんは、目をつむるはずです。
触覚という原始感覚を研ぎ澄ます時、目からの情報は邪魔になります。
三冠王の落合氏は、バーチャル化が進んだ映像世界が氾濫している現代社会に対し、一つの警告として、自分と向き合う事の大切さを諭してくれているように思えます。