触覚アート

 

 

私の大学論文は、「触覚アート」でした。もう40数年前のことです。当時の世の中は、コンピュータによるヴィジュアルアートが、沸々と生まれ始めていました。その時点で、「俺はもう、追いていけない!」と観念しました。それでは、どう生き抜くか?

「必ず、触れるという原始感覚が必要となる」という確信がありました。そこで始めたのが木を積み上げる作品。触れると壊れる作品でした。触覚を異常に刺激する作品を作り続けたのですが、これでお金儲けが出来る訳なく・・・・辞めたのです。

それでも、触覚アートにこだわる私。触れることで生命力を引き上げる操体法を学び、頭に鍼を刺す山元式新頭鍼療法を仕事としています。

もう、これは触れるアートだらけなのです。

キャンペーン

本日は、興居島出張費。

8名の患者さんにお会いできる日なのです。島の光は海からの反射を受けて、まばゆいばかり!心が洗われます。1週間に1度こんな素晴らしい体験が出来るなんて、本当に恵まれています。これは、全て興居島診療所所長のおかげです。ありがとうございます。

最終8人目の80才代女性患者Cさんは、

「先生、朝起きた時から頭が痛くて仕方がないんです。」

と、悲痛な訴えをされます。そこで、痛みのある前頭部を丁寧に触れていくと、痺れるような痛みを感じました。

「ここじゃないですか・・・・痛いの。」

「そこです・・・・先生、今日は頭の鍼じゃのうて、お灸をしてください。」

「はい、分かりました・・・・でも、ここ痛くないですか?」

と、お灸をする前に、すべき事を感じた私。足に見つけた治療点に右中指がしっかりと居場所を決めていました。中指を触れるだけで、頭痛がなくなると分かっていたようです。数分して、

「頭の痛いの、どうなってます?」

「・・・・痛くない」

「・・・・じゃあいいか、今日は・・・終わりにしましょうか?」

「膀胱と腎臓を診てください!」

頭痛があまりにも激しいので、それがなくなるだけで良いと感じていたのですが、やはり、それ以外の患者さんが訴える声を、謙虚に伺う必要があります。そこで、いつものように膝診、首診を行います。すると、やはり腎、膀胱の診断点に圧痛があります。それを鍼ではなく、お灸で治療していくのですが、これはまだ学会に発表していない個所。治療していく間、足の指の歪みがひどいので、その理由を聞きたいと思っている私を察知したCさん。

「スリッパを履いていて転んで、こんな指になったんです。」

「スリッパ履くのを、やめましょう!布で出来た草履の方がいいです。足の指先は繊細なセンサーです。江戸時代、電気のない真っ暗な凸凹道を歩いていた日本人は、草鞋で足の指先を地面につけて、探りながら歩いていたから、転ばなかったんです。スリッパはそのセンサーを覆ってしまってるんです。」

と、大声で(Cさんは耳が悪いので)まくし立てる私。Cさんに伝わることが出来たかどうか・・・・老人のスリッパ履きはやめましょうというキャンペーンになりました!

記念日

 

 

昨日は、記念すべき日となりました。令和6年6月11日、「鍼1本の日」と制定いたします。

山元式新頭鍼療法(YNSA)を治療法として、5年。未だかつて1本の鍼だけで治療を完結したことはありませんでした。小学校5年生の捻挫を2本の鍼で治療したのが、最少本数でした。ところが、昨日は、1本の置鍼で頸椎から仙骨にかけての背骨が整ってしまいました。

60才代の男性患者Cさん。長時間歩行すると腰痛が発生する間欠性跛行(かんけつせいはこう)という病名で来院され、8ヶ月目になります。膝診、首診の基本的な治療を行なっていくうち、Cさんのカラダは徐々に良くなっていったようで、

「特に、痛いところはありません。」

という報告を受けることが多くなり、最近では3週間に1度の通院になっています。その結果、昨日の膝診は、頸椎、胸椎、腰椎の圧痛点が顕著にあるだけで、首診(内臓の状態を診断する)には反応がありませんでした。今考えると、鍼1本で良くなる条件は整っていたようです。そこで、1番気になったのが胸椎1~2番。膝ウラの内側がゴリゴリしています。

「これを取れば・・・・面白い!」

と思ったのでしょう、いつのまにか膝ウラ内側に手がいっていました。その治療点を見つけ置鍼。

「どうですか?」

「・・・・・っぱっ!ははは・・・痛くない!」

「そしたら、ここ(膝診の別にある診断点)は?」

「・・・あれ?ははは!」

診断点全てから圧痛点が消えてしまいました。

「Cさん、今日は記念すべき日です。初めて1本の鍼で治療終了となりました。」

この日は、これからの治療人生でのターニングポイントになるかも知れません。

セルフケア

 

40才代のとき、五十肩になった男性患者Bさん。ステロイド注射あるいは、ヒアルロン酸の注射だったのかも知れませんが、病院の注射で治ったそうです。70才代になったBさん、再び左肩が五十肩になり、病院で注射治療を受けたのですが、今回は治らなくなり、当院の治療を受けることになりました。少しずつ良くなっていますが、まだ完治していません。7本頭に置鍼して、

「どうですか?・・・・・チョットは、可動域が増えて来ました?」

「・・・・・・う~ん、確かに可動域は右と、さほど変わらんようになったけど・・・・肩の中の方が痛い。」

「そしたら、お灸をしましょう。」

と、足に見つけた肩の治療点にお灸をすることに、1ヶ所に4~5壮お灸。

「どうですか・・・肩?」

「・・・・・・あれ?痛くない!先生、そこに印つけといて、お灸そこにするけん。」

「結構、効くでしょう?毎日お灸をやってみてください。」

お灸のいい所は、患者さんご自身がやれるセルフケアにあります。そのため、積極的に灸治療をしているのです。治療家任せにしないで、ご自身の体をいたわりましょう!

若いと治りが早い

「4月に(治療を)してもろてからは、調子ええんよ。今回は息子、腰が痛いゆうんで診てやってや!」

と、親子で来院されました。治療室は、元々待合室だった所。服を着て、イスに座ったままで治療できる山元式新頭鍼療法(YNSA)に変更しため、ベッドが必要なくなり、自然と待合室が治療室となったのです。20才代男性患者Cさんは、治療用の籐回転座イスに座り、お父様は待合室の長イスに座って治療の様子を見学するという格好になりました。

「鍼とかお灸とか、初めてですか?」

「はい、初めてです。」

「そうしたら・・・怖いですか?」

「はい」

「そうですよね・・・しかも、頭に鍼さすんじゃけんね~」

などと話ながら始めました。頸椎から胸椎、腰椎、仙骨にかけての背骨を、頭への置鍼で整えます。5本置鍼して、

「これで、腰どうなっています?」

「・・・・・・あれ?痛くない・・・・・」

と、振り向いて父親を見つめるCさん。様々な動きを試して、少し痛みを感じたようです。そこで、Kソマトトープの腰部(後頭部)に1本置鍼。

「これで、どうですか?」

「・・・・・・痛くない・・・・全然痛くない。」

「これで、いいか・・・・OKグーグル、タイマー30分お願いします・・・・お灸したことあります?」

「いいえ、ありません。」

「そしたら、やってみようか?」

と、お灸の体験をして、終了となりました。若いと治りが早いのです!

モモ、3回目の家出

玄関のドアを開けて、仕事場に行くというミスのため、メス猫モモが家出をしてしまいました。過去の経験から戻ってくることは、分かっていたのですが、今が1番過ごしやすい季節。さて、いつになるやら・・・・と、至って楽観的に思っていたのです。ただ3日も経過するとチョット心配になります。雨でも降れば一目散に帰ってくるのですが、快晴で夜もそれほど冷えていないようです。

昨日は、友人の会社の新入社員歓迎会。多いに飲んで、久々に1階の鍼灸院で寝てしまいました。早朝、2階の我が家に帰ると、

「ニャーゴ、ニャーゴ(何しよったん、私怖かったんよ、もう!)」

と1番高いエアコンの上で、へばりついた格好のモモ。

「おおおおおおう~、モモちゃん、帰ってきたん!良かった良かった。こっちへおいで・・・・どしたん、怖かったん?イノシシも山にはおるけんね。」

普段は、甘えることをしないモモですが、何と頭をすりつけて甘えてくるのです。

「怖かったんじゃね~、お父さんおるけんね。良かった、良かった。」

と再会を喜ぶ猫と私のショートストーリーでした!

方向音痴

 

興居島で本格的に治療する初日にもかかわらず、朝7時25分発のフェリーを7時55分と勘違い!結局8時8分のフェリーで渡ることになりました。朝は、日中より便が多いので、何とか7名の治療をすることが出来ました。

ただ、方向音痴の私にとって、迷路のような小道を歩くのが苦痛です。中々道順を覚えられないのです。グーグルマップでしっかり家の位置とその道順を予習、復習しないと普通の感覚の人には、到底追いつけません・・・・かなり凹むのですが、こういう時は、「あのイチロー選手でも、方向音痴なんだから、ドンマイ、ドンマイ!」

今日は、これから帰って二人の患者さんを診ます。ありがたいことです。前向きに精一杯やろう!

事務処理

 

とにかく、事務処理が苦手・・・口内炎を作るほど、苦手。医師の同意書をいただき、公のお金を戴くとなると、きっちりした事務手続きが必要となります。治療の合間にやりつつ、結局なんとか出来たのが、午後10時30分。これから、食事をしてもう寝ます。

明日の興居島(ごごしま)出張治療、頑張るぞ!

シンクロ

 

60才代の女性患者Bさんに、膝診を行い頭に置鍼(これで、自律神経が整います)。その後、首診を行い、足に見つけた治療点にお灸をしながら雑談。

「先日、夜中の12時ころ突然電話があったんです。大学の友人の画家が、絵を描き終えて、酒飲んで人恋しくなったのかなあ~・・・・佐伯君、あのさ、色々考えたんだけど、佐伯君なら大丈夫か!とね、で、電話したの、元気?・・・・・という会話から始まったの。

まあ~、昔はしょっちゅう、こんなことばっかししてたの!楽しく会話して、いつでも電話かけてね!って終わったの。」

などと話していると、カルテとして使っているIpadに、同じく大学時代を共にした友人からLineを通して、30年以上まえの動画を送ってくれました。シンクロしています。

「えっっ!!!ちょっと待ってください・・・・何?・・・僕が映ってる・・・」

治療中にもかかわらず、ついつい大声を出してしまい、患者さんと一緒に30年以上前の私を覗きこんだのです。

下記が動画付きのメッセージです。

『皆さんご無沙汰しております。

私の知り合いのビデオ編集をしている八木さんが

この度、89年に藤枝の不動峡というところで行われた

岩下徹さんのイベントの記録を、

どこかから引っ張り出してきて編集してくれました。

なんとびっくりしたのは、3:55ぐらいのところから

黄色いTシャツを着た佐伯さんが

即興の貼り絵アート画を制作している模様が映ってます。

いやあ、みんなわかかったなあ!』

達人の眼力

 

「触れる時は、指の腹で触れるんよ。」

これは、友人からのアドバイスです。野口整体を若い時から勉強していた友人が、野口晴哉先生の口伝を教えてくれました。患者さんの皮膚に触れる時、一番繊細な指先を使っていた私には、「ハッ」と気づく助言でした。確かに自分自身の頬に、軽く指の腹を置くのと、指先を置くのとでは、優しさが違います。「お腹」の方が気持ちいいのです。

この瞬間感じたのは、達人の「部分に全体を見る眼力」でした。野口晴哉先生は、指先にカラダ全体を見ておられたはずです。指の第一関節から指先までがカラダ全体で、カラダの「お腹」=丹田が、指の腹に位置するのです。指の丹田を通して患者さんのカラダと施術者が優しい交感を行うことができるのです。

話変わって、山元式新頭鍼療法(YNSA)の創始者・山元敏勝先生(89才)の宮崎セミナーに参加した時のことです。私が、YNSAの初級コースを学ぶ以前のころでした。何も知らない私にとって、山元先生の施術を見ることだけで、ワクワク、ドキドキの連続でした。ところが、「少し変だなあ?」と初心者なりに感じることがありました。それは、全ての置鍼(腰、胸、首などの治療点)が、オデコの中央部だけというテキストのどこにも記述されていない個所だったからです。さすがに長年勉強されておられる先輩方も、しびれをきらし、

「先生、なぜ腰の治療なのにそこに置鍼するのですか?」

と、質問されました。先生は、しばらくポカーンとしたままで動かなくなりました。そして、

「よく分からない・・・・・・・でも、ほらココ(オデコの中央部)に渦巻いているでしょう!」

とおっしゃったのです。これこそが、達人の眼力。山元先生は、オデコをカラダ全体として見ておられたのです。治療をする上で、このことを理解し体現することが必要なのです。