鍼が怖い

鍼で治療をしている鍼灸師として、患者さんが鍼に対する恐怖心を必要以上に抱いていることに、驚くことがあります。

「今日は、鍼をしましょうか?」

の一言で、顔は凍りつきカラダは縮み上がる60才代の男性患者Bさん。

「鍼だけは、やめてほしい・・・まして、頭なんか・・・・・腰とか、背中はあまり痛くなからええけど・・・・鍼は、人から聞いた話じゃと、かえって悪なってしもうた、なんちゅう話をようけ聞くし・・・・頭の鍼だけはやめてください。」

「・・・・よおく考えてください、頭は頭蓋骨に守られて、非常に安全なところです。しかも、頭皮に深さ1mm程度、横に刺すだけなんです・・・」

といっても、Aさんの思考回路は停止しています。

「分かりました、今日もお灸だけにしましょう。」

嫌がる患者さんに嫌がる治療を押し付けることは、絶対許されません。そこで、素早く方向転換をします。前回は、見つけた足の治療点7か所にお灸を15壮し、それが効いたようです。そこで、今回は、左足に8壮、右足に3壮お灸をして、終了としました。

Aさんは、立ち仕事をされているので、腰痛持ちです。

今のところ、腰の痛みはなくなりましたが、継続のためパイオネックス(円皮鍼)を貼ることにしました。

「パイオネックスという小さな鍼を刺しましょう、これは全然痛くありません。」

「何ですか、それ?ピップエレキバンみたいなやつですか?」

「ちょっと違いますけど、0.6mmの痛くない鍼です。」

 

「いつまでつけるんですか・・・風呂に入ってもええんですか?」

と、少々拒絶反応気味・・・それでも、試しに2個貼って終了としました。これで、成果が出れば少しは鍼に対して理解していただけるかも知れません・・・

なんじゃけん

昨日は、ジャズの好きな男性患者Aさんの誘いで、お隣の伊予市の「IYO夢未来館」というところで行われた「マドンナJAZZ FESTIVAL 2022」に参加しました。Aさんの愛車は高級車で乗り心地が最高。私には無縁な車です・・・一生の内に何度この様な車に乗ることができるだろう?・・などと、思いながらも、初めて向かう伊予市への道。カーナビ(これも最新の物でした)を見ながら、必死の思いで到着しました。

この未来館は、立派な建物で、図書館や料理教室ができる部屋もあります。その上、コンサートが出来るのですから、伊予市の人々は幸せです。

で、開演がぴったり14:00からスタートし、終演が予定通りぴったり17:20であったことに、まず感動しました。そして、今愛媛で活躍しておられるジャズ音楽家が一堂に会して演奏され、しかもそれをただ(入場無料)で拝聴できるなんて、本当に感動しました。Aさんのウクレレの師匠が、チェロのベースを担当されていたのですが、この師匠は、NHKの素人のど自慢大会のベースも担当されていました。また、ドラム担当のベテラン音楽学家は、NHKの素人のど自慢大会の鐘を叩く方でした。

愛媛にこんな凄い音楽学家がおられたのです。

そこで、もっとも感動したのが、最後に演奏された「なんじゃけん」。このバンドは18名の男女混合バンドで若い女性がまとめ役です。結構お年をめいた方のおられる中、堂々と指揮っておられるのには感心しました。「なんじゃけん」の由来は、南予・ジャズ・研究会から来ているとのこと、ちょうど、「そうなんじゃけん」=「そうなんです」という伊予弁をからめているのが素敵です。

大洲という歴史のある素敵な街でこの様な活動をされていることに感動しました。四国の愛媛の大洲で精一杯頑張っているバンドがあることに、勇気とエネルギーをいただきました。私も、「あじさいクラブ」のベースギター、しっかり練習しようと思ったのです。

胸部ソマトトープ

去年の暮れに、高いところから落ち、胸椎の2番、3番、4番を骨折した40才代の男性患者Bさん。1ヶ月前から、首痛、左上腕から前腕にかけてシビレがあります。ここで、デルマトーム(皮膚分節)から考えてみましょう。T2番のデルマトームが、上腕の内側から肩甲骨にかけて伸びていますが、これがポイントだと思います。

(山元先生が、ブラジル女性を治療された時の治療点をご注目!)

当初、Bさんは首痛が一番気になり、次に上腕から前腕にかけてのシビレでしたが、後頭部の首に慢性首痛の治療点があり、そこに置鍼すると首痛がなくなりました。すると、Bさんはシビレは肩甲骨下部にあると言い始めました。一番気になる首痛が消えると、シビレがはっきり分かるようになったと思います。すると、胸椎3番、4番、5番のデルマトームがポイントになります。

そこで、今回は胸部ソマトトープ(胸部の胸骨を体幹とみなしたキリスト像のような治療点)を使って、治療しました。頸椎1本、胸椎1本の置鍼で、ずいぶんとシビレが改善出来ました。特に胸椎の治療点は、デルマトームでも同じ胸部に位置します。それだけに、効果があるのかも知れません。

今後は、胸部ソマトトープにも注目していこうと思います。

デルマトームの威力

今年左膝の手術することになっていた60才代の男性患者Aさん、7ヶ月前から通院され、手術を回避出来ました。今では野球の練習も出来、全力で走ることも出来ます。Aさんは毎日ジムに通い、大沼四廊先生主催の自然医学総合研究所から購入したゴムバンドで下肢をグルグル巻きにして、一気に勢いよくゴムバンドを外し、血管内部を掃除しています。また、硬式野球ボールを頭のツボに当てることをしているので、ジムで有名人になっているようです。そんなAはもう1ヶ月に1回だけの通院となりました。

今回は、Aさんにデルマトーム(皮膚分節)を使った鍼治療をしました。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎#1(0)、#3(1)、#7(0)、左胸椎#1(1)、#8(1)、左脳幹(1)

首診:左心(1)、左大腸(1)、右三焦(1)

(   )内は置鍼数

上記の基礎、応用治療終了後、イスに座って左下肢が、あぐらをかくような体勢取ると、Aさんの左膝にまだ痛みがあります。そこで、右腰椎4番(デルマトームが右膝をにかかっているため)の置鍼を耳の前(D点4番)に置鍼。

「Aさん、これでどうですか?」

「・・・痛くない!」

あぐらをかいても全く痛くありません・・・デルマトームの治療を私の治療法にもう一つ追加することが出来たようです。

頭に鍼をさすと・・

 

 

なぜ、頭の鍼が効くのか?

私は、患者さんに説明していませんでした、不勉強でした。名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」を読み返し、学生時代の資料、教科書で調べていくと、徐々に分かってきました。ポイントは、神経伝達物質とデルマトーム(皮膚分節)。

神経伝達物質というホルモンは、血液を介して運ばれますが、急を要する時は、視床下部から中枢神経をへて脊髄神経(末梢神経)へと運ばれます。この神経伝達物質というのは、50種類以上あり、その中でも「脳内モルヒネ」と呼ばれるエンドルフィンは、視床下部から出て痛みを止める働きがあります。この時エンドルフィンを運ぶ場所を予測するのはデルマトームです。デルマトームとは簡単に言うと、どこの脊髄神経で障害が起こっているのかを教えてくれる「地図」のようなものです。この「地図」を活用するには、脊髄神経を知ることが重要です。脊髄神経は頸椎から8本、胸椎から12本、腰椎から5本、仙骨から5本、尾骨から1本の合計31本あります。これらの脊髄神経が通っているところの皮膚に痛みやしびれを感じれば、「地図」を読み取るように脊髄神経が具体的に分かります。

2日前、60才代の男性患者Aさんの右親指治療をしました。普段は、C点と呼ばれるオデコの右側に置鍼をするのですが、今回は、デルマトームを使って治療しました。右親指はデルマトームでは、頸椎の6番からの脊髄神経と「地図」が読めます。そこでCさんに口を開けてもらい、耳の前に出来た凹みのC6治療点に置鍼をしました。

「これで、どうですか?」

「・・・・いいんじゃない。」

この1本で親指の痛みが取れました。これからも、このデルマトームを一つの羅針盤として活用しようと思います。

追伸:名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」に下記の言葉がありました。

原因のある部分とつながるYNSAの点(診断点)から情報を受け取った脳が治療すべき確かな場所(治療点)に治療に必要な確かな命令を送っているといえます。

ウソみたい

60才代の男性患者Cさん、2日前に重い物を持って 階段を降りたのがアダとなり、ギックリ腰となりました。前かがみが出来ないため、靴ヒモも結べない状態です。また、体幹をひねる時は、ゆっくりと慎重にしないとできません。寝返りが出来ずその痛みで夜中に起きることがあるそうです。ガッチリとした体型のCさんは、頸椎ヘルニアや、左アキレス腱断裂などの怪我で病院に行くことはありましたが、今回は、ギックリ腰のため初めて、鍼灸治療を受けられることになりました。やはり、鍼灸治療は、痛い熱いといったイメージがあるようで随分緊張されています。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎#1~4(2)、左胸椎#1(1)、#8(1)、脳幹(1)

上腕診:左腰椎(4)

首診:左膀胱(1)、左三焦(0)、右三焦(0)、右脾(0)

(  )内は置鍼数

膝診では、腰に圧痛点が見受けられませんでした。こういう時は、上腕診を行います。圧痛点が見つかったので、4本(腰痛治療点=D点に)置鍼をしました。

「どうですか?」

「・・・・・言葉は、悪いですけど、ウソみたいですね。イスから立ち上がることが出来なかったのに、出来る・・・早い動きができなかったのに、出来る・・・・前かがみも・・・出来る。これだったら、靴ヒモが結べます。」

「そうしたら、もう少しやりましょう。」

まだ、首診からの治療点へ置鍼がされていないので、膀胱狙いで1本置鍼すると、他の圧痛点もなくなりました。そこで、トルコの先生に習って側頭部の治療点に2本置鍼。

「これで、どうですか?」

「ちょっと、寝返りしてみます・・・・・出来る!ここへ来る前は、後ろに反らすことしか出来なかったのに、反らす方がちょっと痛いくらいです。」

後は、足に見つけた治療点に5壮お灸をしました。

「これでどうですか?」

「・・・・ひねりが、もっと楽になりました。来た時が10の痛みとしたら、今は1です。」

4日後の予約をされて、軽快に帰られるCさんでした。

調子がいいんです

60才代の女性患者Aさん、今回で3回目の来院です。

「先生、目が変わったと思いません?」

来院するや否や、Aさんがおっしゃいました。確かに、目が大きく優しい感じになっています。

「調子がいいんです。特に治療を受けてから2~3日経った方が調子がいいんです。効いているんですね。それから、前向きになってきました。」

1~2ヶ月前、ショックなことがあり、気分が滅入っていたAさん、少々うつ気味だったのでしょう。名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」から引用します。

『うつ病

以前は、性格や気持ちのあり方に原因があると思われていた「うつ病」も、ここ数年の間に、この神経伝達物質の働きが深く関わっていることがわかってきました。気持ちや意欲などに関する「セロトニン」や「ノルアドレナリン」と言う神経伝達物質が不足することによって、気持ちが落ち込む、不安な気持ちになる、集中力が下がる、また体調不良などの症状が起こることが明らかになってきたのです。精神の強さなどが原因とされる事は全くの誤解で、大きなショックを受けたことがことなどがきっかけとなり、神経系の働きに障害が起きる1つの病気であるということがわかってきました。』

とあります。Aさんは、ショックを受けたのを機に、セロトニンやノルアドレナリンが不足したのです。それを、カラダの訴える声を聞き、治療点に置鍼する事で神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリンが出始めたのだと思います。これからも1週間に1回のペースで通院されます。これからどのように変化していくのか楽しみです。

顎関節症

山元敏勝先生の著書「あきらめなかれば、痛みも、麻痺も、必ず治る!」は、さすがに150万人の患者さんを診て来られた叡智が凝縮されています。さらっと述べておられる言葉の重みにやっと気づくことができるようになりました。これには、顎関節症の中学生が一回の治療で治った事例が載っています。下記に紹介します。

『この患者さんは日南に住む中学生の女の子でした。突然口が開かなくなり、その日のうち、すぐに来院されました。ショートカットの快活そうな女の子でしたが、急に口が開かなくなったことへのショックと不安から、とても元気がなく心配そうな顔をしていました。

口はわずか指が1本入るくらいにしか開けることができず、「口を開けて口を動かしてごらん」と言うと耳の付け根あたりにカクカクすると言う違和感と顎の痛みを訴えました。なんとか会話はできるものの、ままならない状態で、もちろん、何かを食べると言うことも全くできる状態ではありません。

私の西洋医学としての診断は、顎の関節に障害の起きる「顎関節症」でした。YNSAの首診を行うと、脳神経に関係する4つの点に明らかな反応が見られました。「顎関節症」が起こる原因は人によってさまざまですが、顎の関節の動きは脳神経がコントロールをしているため、この女子の場合には、この4つの脳神経に何らかのトラブルが起きていたと考えられました。』

「顎の関節の動きは脳神経がコントロールをしている」ということがポイントです。脳神経というのは、脳から末梢神経が出ている12種類の神経をいいます。例えば、2番=視神経、3番=動眼神経、5番=三叉神経etc.

それらの治療点は、生え際の正中線に1cmずつ左右の平行線を引いて頭頂部に行く線上に12点ならんでいます。まず私は、顎関節症がこれらの脳神経と関わりがあるという知識がありませんでした。次に、その脳神経を首診で探ることができることを知りませんでした・・・これを知っておれば・・・まあ~後ろを見ない、前身あるのみ!

デルマトーム その3

2ヶ月前から週1回の通院をされている70才代の男性患者Bさん。立ち上がるとお尻から太ももの内側にかけて痛みが走ります。お灸や操体法を日常的にされるようになり、徐々に痛む個所が狭まってきています。今までデルマトームを意識しないで治療していたことを恥ています。というのは、デルマトームを念頭に置いて行った今日の治療で、効果が出たからです。問診をよく調べてみると、風呂場で尾骨を打ったことがあったのです。これがどうやら影響していたようです。もう少し問診を見直す必要があります。

Bさんは、特に右側のお尻から太ももにかけて痛みがあります。S2~3のデルマトームに当たる個所となります。そこで、耳の上部付け根から頬骨弓(きょうこつきゅう)にかけ腰椎仙骨の治療点が並んでいます。その中で仙骨治療点が狙いになります。最大圧痛点に置鍼していくと、ものすごい硬さを感じたので、

『これは、雀啄(じゃくたく=鍼を上下する方法)でいくしかない!』

と2~3分行います。

「これで、お尻はどうですか?」

「・・・・軽なった・・・まだチョット芯がある感じじゃけど、ようなっとる。」

そこで、左のS2~3のデルマトームを狙って左耳前の圧痛点に置鍼すると、右ほどの硬さはなく、スムーズに置鍼できました。

「今度は、どうですか?」

「・・・・・軽い、左は痛みがなくなった。後は、右だけ。」

「そしたら、後はお灸をして終わりましょうか?」

右足にお灸を5壮して終了となりました。

デルマトーム その2


先日来院された70才代の男性患者Cさん、今年頸椎の手術をされたにもかかわらず左手の2指、3指、4指にシビレがまだあります。そこで様々なアプローチで置鍼7本、左足2趾、3趾、4趾にお灸をしたのですが、結局シビレは取れませんでした。それ以来、連絡がないのでもう来院はないと思います。

デルマトーム(皮膚分節)を考えていなかった・・・・と、反省しています。頸椎7番が丁度左2、3、4指にあたります。私が膝診で頸椎は2番、3番を狙ったのはどうやら間違っていたようです。

私が色を付けたデルマトームですが、頸椎をあらわすCは、Cervical Spine、胸椎をあらわすTは、Thoracic Spine、腰椎をあらわすLは、Lumbar Spineです。私は色で覚えるタイプなので、Cは、clear(澄み切った)のイメージで白色、Tはお茶のイメージで緑色、Lはland (土地)のイメージで茶色、Sはsky(空)のイメージで青色として覚えます。数字は1は、王貞治さんか、エントツ(1こんな形のイメージだから)とにかく、イメージで覚えるので年を取っても簡単に覚えられます。

ただ、顔面がVの意味が良くわかりません。三叉神経は英語ではtrigeminal  nerveで違います。多分、三叉神経は脳神経の5番=V、なのでVだと思います。Vはviolet(すみれ色)のイメージで塗りました。今日からの患者さんには、常にデルマトームを頭に入れようと思います。