気持ち良くしてあげる

 

3ヶ月ぶりに来院の60才代男性患者Aさん。

「硬球5個で毎日カラダほぐしよるけん、調子良かったんじゃけど・・・・最近、仕事頑張りすぎて・・・来たんです。」

確かに硬式を購入した患者さんが、来院していない事実があります。それほど、硬式ボールは効果があります・・・・経営的には、ちょっと寂しいのですが、当院は健康になっていただく場所ですから、これでいいのです。Aさんは屋根に上がって瓦を直す職人さんなので、局所に痛みが出るようです。写真で分かるように肘、膝、足首などの関節と頭頂部、腰部に痛みがあります。

合谷診:左(左上腕診、左膝診を行います)

上腕診:左頚椎(1)、左胸椎(0)、左腰椎(1)、脳幹(1)、大脳(0)、小脳(0)

膝診:左頚椎#1、#2(1)、左胸椎#12(1)、

首診:右膀胱(1)、右肝(0)、右胆(1)、右心包(0)、右心(0)、右大腸(1)、右三焦(1)、右胃(1)、右脾(1)、右小腸(0)、左膀胱(1)、左大腸(1)、左三焦(1)、左脾(1)、左小腸(0)、( )内は置鍼の数。

Aさんは、感覚が鋭く反応が早いので、治療していて楽しくなります。

「先生、そこ電気が走った・・・・あれ?肩(三角筋前部繊維)がフニャフニャになった。」

「鎖骨に来た・・・・・鼻がぬける!」

「そこじゃ(おでこ)・・・・仕事中に痛なったところじゃ!」

「ひどいな~そこ(膝ウラ)もう、フワフワじゃ」

などと実況中継してくれるので、嬉しいのです。素直にご自身の感覚を言葉に出せるのは、一つの才能です。私にもこのような素直な感覚があれば・・・・と羨(うらや)ましくなります。ニューヨークでナムジュンパイクという天才アーティストのアシスタントをしていた時、

「佐伯さん、素晴らしい!天才!天才!」

と良くいわれていました。天才に天才と言われるのですから、嬉しくなってしっかり働いたものです。人を気持ち良くしてあげる・・・・これが全てなのかもしれません。Aさんは、その事をしっかり身に付けておられるようです。毎回、患者さんから学んでばかり・・・良い仕事についたものです。

さてAさん、足首以外は鍼治療で良くなりました。足首痛は、足にみつけた治療点に紫雲膏をしっかり盛って、やや大きめの艾炷(がいしゅ)を置いて火をつけるのですが、これは殆ど熱さが伝わりません。それでも、良くなります。そのため、鍼が嫌いな人には足のお灸だけで鍼治療をしない事もあります。Aさんの場合は、8壮の熱くない灸で両足首痛が治りました。ちょっと面白い可能性を感じています。

鍼の重み

60才代の男性患者Aさん。10年前、犬の散歩中に左膝が抜けるような感覚になり、しかも野球でキャッチーをして膝を痛めてしまいました。昨年末から、膝にヒアルロン酸を注射して一時しのぎをしていましたが、ついに手術の予定日が決まりました。しかし、私の友人の紹介により、Aさんが通院され始め徐々に回復し、ついには手術をしなくても良くなりました。2ヶ月で12回の通院、今回の様子をご紹介します。

「前回の治療で調子よく帰ったんじゃけど、車から降りたとたん、左膝の内側が痛くなって・・・そして、翌日朝起きたら治っとたんよ。どしたんじゃろか?その後は、ずうっと調子がええんよ。」

「どうしたんじゃろ・・・・よう分からんね・・・」

前回の治療では、膝の外側を中心に治療をしたため、本来あった内側の痛みが出てきた可能性がありますが、翌日にすっかり治るのがよく分かりません。いずれにせよ、初期治療では、2日間痛みがなく3日目で痛み始めるパターンでしたが、今回は1週間痛みが出ませんでした。野球好きのAさん、5月末からの練習再開を目標にしていますが、かなり現実的になってきました。

合谷診:左(左上腕診、左膝診を行う)

上腕診:圧痛点無し

膝診:左頚椎#7、左胸椎#1、#2、#3、左腰椎#5、#6

首診:右大腸、右三焦、右脾、左三焦、左脾

上記に5本の置鍼で圧痛点消滅。左膝の治療点(G点)→耳ウラにあります・・・ここに2本置鍼して鍼治療は、終了。

最近、私の鍼に変化が生まれました。埼玉県におられる合気道とカタカムナ文字を融合された先生のセミナーを受けてから、1本の鍼に重さが生まれたようです。患者さんにとっては痛みが増しますが、その分本数が少なくなる傾向があるようです。今回も12ヶ所の圧痛点に対して5本の鍼で済みました。

また置鍼中、足に見つけた膝の治療点に紫雲膏をたっぷり塗った間接灸を7壯施術。これはやんわりと温かい感じがするだけですが、よく効きます。鍼が怖い患者さんには、これだけでいいと考えています。今後の展開が楽しみです。

お灸で膝が良くなった!

 

整形外科では、左膝の手術を予定していた60才代の男性患者Dさん、当院に2ヶ月前から週1回のペースで通われ手術をしなくてもよくなりました(最近、医師に診てもらい、膝の可動域が広がったので手術の必要がないと言われたそうです)。1回目の治療で膝ウラのシコリが消えたので、確かな手ごたえがありました。治療後、2日間は痛みが全くないのですが、3日目から膝の痛みが再発する状態が続いていました。今回は3日間痛みがないので芝刈りをしていたところ、左膝を捻(ひね)り以前の様な痛みが戻ってしまいました。

そこでDさんは、耳ウラの膝治療点(G点)を刺激し、肘と足の治療点にお灸をしたところ、随分回復したそうです。Dさんには、お灸でセルフケアする様に伝えており、その事が身についているのが嬉しくなりました。

「Dさん、それはえらい!大したもんじゃわい。」

と言って、いつもの様に治療を始めました。

合谷診:左→左の上腕診、膝診を行う

上腕診:左頚椎

膝診:左頚椎#2、#3、左胸椎#1、#2、左腰椎#1、左大脳

首診:圧痛点なし

4本の置鍼。

上記の基礎治療の後、耳ウラのG点に2本置鍼すると、膝痛は無くなりました。これで、治療を終了してもいいのですが、置鍼30分の間に見つけた膝の治療点にお灸をすることにしました。繊細な感覚をしているDさんは、カラダの微妙な変化を教えてくれます。最近の試みで、治療点に紫雲膏をたっぷりつけ、やや大きめのお灸をするようにした間接灸(じかに皮膚を焼かない灸)の治療をしています。そのため、灸の熱をDさんは感じない時もあるのですが、

「・・・・あれ?膝のここんとこが、温なった。」

「・・・・微妙に膝が動きよるのが、分かる。」

「紫雲膏をつけただけでも、膝が動いた!」

などと、実況中継をしてくれます。この熱くない灸治療は、繊細な感覚を持っている患者さんだけに効くのかどうか、症例を数多く作っていかなければならないようです。とかく、鍼(はり)は、怖い、灸は熱すぎるといって毛嫌いする人が多いのですが、明治時代になるまでは、鍼灸、漢方薬が日本の医療として発展していたのです。我々鍼灸師は効果、有効性をしっかり分かりやすく紹介する必要があるようです。

やっと書けます!

2ヶ月近く、購入したipad の調子が悪く、文書を書けない状態でしたが2回に渡る初期化でなんとかメドが立ちそうなので、ボチボチと文章を書き始めます。バックアップが完全に出来ているのか心配なのですが・・・

これを機会に、治療に関する文章のみを(あじさいの杜鍼灸院)のフェイスブックに、個人的な出来事は(Hiromu Saiki)のフェイスブックに載せるようにします。

さて、このブランクの間、治療方法に進歩が見え始めましたので、お伝えします。

本日来院の70才代の男性患者Aさん、昨日の朝から急に左臀部に痛みが走り、母趾球を踏み込んだ歩行が出来なくなりました。かろうじて、踵(かかと)だけを着いて歩くことは出来るそうです。Aさんの発言から、踵歩行で使う筋肉→前脛骨筋(ぜんけいこつきん)には異常がなく、母趾球で蹴(け)るときに使う脚の裏側にある筋肉群に異常があるのでは・・・と、推測してみました。

左の臀部に痛みがあるのですから脚ウラ以外にも背中側に異常があると考えてもいいでしょう。

いつものように、合谷診、上腕診、膝診を行い首診で内蔵の診断を行ったのですが・・・

合谷診:左→左の上腕診、膝診を行う

上腕診:左頚椎、左胸椎、左腰椎

膝診:胸椎#1、#2、腰椎#1~6、大脳

首診:省略

上記の頚椎治療点に1本、胸椎治療点に2本置鍼をして、膝診で腰椎の診断点を触れると、

「・・・・あれ?フニャフニャ・・・・Aさん、ちょっと歩いてみてもらえませんか?」

「・・・・・???痛ない・・・・楽!楽に歩ける???!」

「まだ、腰の治療点に鍼を刺してないんです・・・首と胸椎を緩めたんですが、かなりこっていたようですね・・・ついでに、お尻の痛みまで取れたようです。」

どうやら、首と背中の張りが、臀部の張りと拮抗して引っ張り合いをしていたようです。首と背中の張りがなくなったことで、臀部の張りもなくなったようです。もう、お尻は全く痛くないとのことでしたが、念のために耳ウラの腰椎治療点に1本置鍼をしました。今回は4本の置鍼で終了としたのですが、Aさんは鍼よりもお灸の方が好きなので、4本の置鍼をして30分休憩する間に、足に見つけた臀部の治療点に「痛くないお灸」をすることにしました。

最近のお灸では、紫雲膏(しうんこう)をたっぷり皮膚につけ、やや大きめの艾炷(がいしゅ=円錐形のもぐさ)を乗せて火をつけています。すると、やんわりとした暖かさか、気持ちいい熱さが伝わります(時に、全く熱さを感じないのに、効くこともあります)。

続きを読むやっと書けます!

カラダと向かい合う

1日に3回もキャンセルが続くと、さすがに心が折れるものです。特に、連絡がなくキャンセルになっていると、外出(買い物)することも出来ず・・・・こういう時は、文章を書いて心を落ち着かせるのが良い様です。今日最初の60才代の女性患者Aさんは、目が疲れています。そのため、オデコにある目の治療点に2本置鍼して・・・・それからは、おしゃべりだけ・・・前回は、硬式ボールを畳に置いてAさんがその上にカラダを乗せ、ゆっくり気持ち良さを味あっていただきました。

Aさんは、何事も言葉で理解しようとするタイプでご自身のカラダに向き合っている時も、言葉で頭を通して理解しようとしているようです。別にそれが悪いことではないのですが、少し疲れるのでは・・・・・もっと、楽な方法もありますよ・・・・と、提案するのも治療の一つ。

前回は、硬式ボールを通してご自身のカラダに向かい合っていただきました。どうやら、この方法がAさんにとって、真新しいことだったようです。今回は、その体験から、ご自身に納得できる言葉による治療を望まれたようです。つまり、言葉による理解ではなくカラダに向かいあうという事がいかに大切であるかという事を、言葉で表現したかったようです。とにかく、私はお話を聞き、AさんがAさんの答えを見つけるまでお付き合いする・・・・そんな時間を過ごしながら、私の体験談も話したり・・・

気がつくと、次の患者さんがやや早めに来られたので、オデコの鍼を取り治療をして終了となりました。今後はどの様な治療になっていくのでしょう・・・なる様になるのでしょう・・・

鍼と灸をしないでも鍼灸治療ができる

 

4ヶ月前は、全身が凝ってしまい、どうしていいのか分からない状態で来院された70才代の女性患者Aさん。週に一回のペースで通院されているので、随分安定した状態をキープしておられます。本日は左腕を上げようとすると肩(三角筋)が痛いそうです。

「そしたら、それを先に治しましょう・・・・畳の部屋で、硬球を使ってみましょう。」

と、Aさんには仰向けになってもらい、左臀部の圧痛点を探しそこに硬球が当たるように畳に置きます。Aさんの右膝を立ててもらい、右母指球を畳に押し付けると体重移動で左臀部の押圧を調整できます。これをしばらく続けて、

「Aさん、左腕を上げてみてください。」

「・・・・上がる・・・痛みは、ちょっとあるだけです。」

「そしたら、ベッドを暖かくして左を上にして横向きに寝てもらいましょう。」

今度は、臀部の圧痛点に私が中指を軽く置くだけの操法。これを5分ほどして、

「Aさん、左腕を上げるとどうですか?」

「・・・・痛くない!」

「そしたら、いつものようにしましょうか・・・Aさん、お灸は好きですか?」

「痛いし、嫌・・・・鍼も痛いし・・・・」

「そしたら、指当てるだけでやりましょうか?」

ということで、指先を足(靴下をはいたまま)に触れるだけの治療にしました。鍼灸師になる前は、指先を触れるだけの治療をしていたので、Aさんには最適だと分かりました。足に見つけた治療点は間違いないので、足に数分間中指を置き、膝診、首診の圧痛点を取ることができます。その結果は下記の通りです。

合谷診:左(左上腕診、左膝診を行う)

上腕診:胸椎(膝診と同時に圧痛点消滅)

膝診:頸椎#5〜7(2回の指置きで圧痛点消滅)、胸椎#1(1回の指置きで圧痛点消滅)、脳幹(圧痛点自然消滅)

首診:左腎(自然消滅)、左膀胱(自然消滅)、左肝(自然消滅)、左胆(1回の指置きで圧痛点消滅)、左心包(1回の指置きで圧痛点消滅)、左大腸(自然消滅)、左三焦(1回の指置きで圧痛点消滅)、左脾(1回の指置きで圧痛点消滅)右脾(自然消滅)、右小腸(自然消滅)

人工骨と鍼・・どっち選ぶ?

60才代の男性患者Cさん、10年前に犬の散歩中に膝の力が抜けるようになり、膝の内側が痛くなりました。野球でキャッチャーをした時に悪化させ、それ以来コラーゲンを膝に打ち、だましだまし膝痛と付き合っていましたが、昨年末からは、コラーゲンも効かなくなり、ついに人工骨の手術をすることになりました。

しかし、友人の勧めで手術の前に、当院で治療を受けることになり来院されました。一度人工骨にすると、その部分の骨の再生は無くなり、カラダは異物が入ったと認識します。こんな不自然な治療は、お勧めできません。山を見ずして木ばかり見ている治療は、その場限りのものです。

私が上腕診と併用して膝診という脳、頸椎、胸椎、腰椎の状態を診る診断法(これは、私が勝手に行っているもので、学会で認められているものではありません)をしているので、膝痛のCさんにとっては、好都合だったようです。早速、いつもの手順で合谷診から行っていきます。

合谷診:(人差しと親指の間の触診)左→左の上腕診と膝診を行う

上腕診:

膝診:

首診:

膝診でも、胸椎の1番~3番がもの凄いコリ・・・・・・とここまで書いて、Cさんのカルテを見ると・・・・・いつの間にか、他の人のカルテに置き換わっていました・・・・こんな事は初めてなのですが・・・・やはり、Ipadのカルテは、触りどころが悪いと、消えたりするのでしょう・・・・ただ、毎回記録として写真で置鍼の状態を残しているので、大まかなことを記述できるので、続けます。

膝診の膝窩横紋(膝の内側にある横線)は胸椎の1~12番の状態を示しており、その治療点は眉毛の上にあります。そこで、1本眉毛の上に置鍼して、膝を触ると・・・・柔らかくなっています。まだ胸椎1番のところに圧痛点が残っているので、もう1本置鍼して触れると、ふにゃふにゃになっています。

「Cさん、これで膝はどうですか?」

「・・・・・ええええっ痛ない!画期的・・・何があったんですか?」

「いやいや・・・・たった2本でこんなに変わるのに・・・・まだ手術する気ですか?」

と、やや強気で説得に行く私。後は頸椎の治療点に2本置鍼して、膝に関する治療点に3本、トルコのテキチ先生の見つけた治療点に2本置鍼して終了。

「これで、どうですか?」

「・・・全然大丈夫・・・・正坐も出来るし・・・・・キャッチャーの格好しても大丈夫・・・・こんなに膝が曲がる(立った状態で膝を鋭角に曲げて胸に着けることができます)・・・・手術やめとこう!」

という事になり、1週間後に来院する事となりました。次回はしっかりとカルテ作成します。

孫、大集合でお疲れ

60才代の女性患者Bさん、年末年始はお孫さんが大勢里帰りし、大忙し。そのため、右下肢の外側がしびれ、股関節に痛みが生じ、左足は足首、膝に痛みがあり歩くのも大変な状態になりました。最近は月1回の通院で 健康管理が出来ていたのですが、今回だけは、早めに来院しようとしました。しかし、年始が忙しくてやっと本日来院となりました。

「先生、もう大変よ・・・・しびれた右足をかばうけん、左足も痛うなって、おばあさんがひょこっひょこ歩きよろ・・・あんなに、なってしもうて、まあ私もばあさんじゃけど・・・」

「まあ・・それは大変じゃなあ・・・・でも、お孫さんが集まって来て、楽しかったろう?」

「そりゃあ、賑やかで楽しかった・・・・でも、お世話するんもまあまあ大変よ。」

「そりゃ、そうじゃわいな・・・・お疲れ様でした。」

などと会話をしながら合谷診のため、Bさんの両手を軽く握ると、

「冷たい!」

「先生の手、温いなあ!」

「そりゃ、毎朝水浴びしよるけん・・・・これだけ冷たかったら、足も冷たいんじゃないん?」

「冷たい、冷たい・・・どうにもならんのよ」

「・・・・そしたら、今日は足にお灸をしようか?」

ということになり、上腕診、膝診は頭の置鍼、首診は足へのお灸で治療することになりました。

合谷診:(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診と左膝診を行います

上腕診:頸椎(0)、胸椎(0)、腰椎(0)、脳幹(0)、小脳(0)

膝診:頸椎#1(1)、#6(0)、胸椎#1、#2(1)、#12(0)、腰椎#1(0)

首診:右腎(0)、右膀胱(0)、右小腸(0)、左腎(0)、左膀胱(お灸3)、左大腸(お灸3)、左三焦(0)、左胃(0)、左小腸(0)

冷え切った足には、糸状灸で皮膚まで焼き切るのが効きます。最近始めたのが、ヤケドに効く紫雲膏という軟膏を皮膚の上に乗せ、糸状灸で焼き切る方法です。これだと、紫雲膏を塗る量と糸状灸の太さ加減を調整することで、患者さんの感性に合わせて治療できます。例えば、Bさんの様に、幼い頃からお灸に慣れている場合、紫雲膏は薄く塗り、やや太めの糸状灸がベストです。

「先生、これ(肘中央部、曲池というツボ)見て・・・白なっとろ、私がお灸しよった跡よ。」

「凄いな・・・そしたら、少々熱うても、かまんなあ。」

「かまんかまん、熱いぐらいが効いたちゅう感じで、ええんよ。」

とBさんには、かなりの熱さが通る糸状灸を、見つけた左足の膀胱と大腸の治療点に1カ所3壮ずつ施術。すると、首診で他の診断点も圧痛点が無くなっていました。右の首診でも圧痛点が無くなっていたので内臓治療は終了となります。後は、痛みの残っている左膝と右股関節の見つけた足の治療点に3壮ずつ施術して、ほぼ痛みを取り終了となりました。

紫雲膏登場

「今日は、佐伯君ここの親指が手袋をしようとしても、痛うて痛うていかんのよ。」

みかん、大根、カブのお土産を持って来院するや否や、右手を見せながら説明してくれる男性患者は、高校の同級生Aさん。毎週来院され、治療をしながら世間話をするのですが、今回はどうもそんなことになりそうもありません。いつもなら、合谷診をして上腕診などをしていくのですが、いきなり右親指の治療に取り掛かりました。

オデコのC点、右側頭部(Iソマトトープという治療点)に1本ずつ2本置鍼して、右ふくらはぎのヒラメ筋の圧痛点に鍼をして、右手の親指の痛みを取りますが、勿論十分ではありません。そこで、Aさんが来院するまで私自身に人体実験をしていたお灸を早速してみることにしました。その人体実験というのは、紫雲膏というヤケドに効く軟膏を足の治療点につけ、その上に大小様々なお灸(実際には艾炷=がいしゅといいます)を乗せて焼き切り、その熱さを体感調整していたのです。

こういう時、同級生であるAさんは、患者さんとしては最高でした。焼き切るのですが一瞬で終了るため、なんとか耐える事が出来ます。しかも紫雲膏の量を多くすれば、程よい熱さにもなります。お灸をする度、素直に状態を教えてくれるので、微妙なさじ加減が分かってくるようになりました。

どこにお灸をするかというと、右手親指に対応する右足親指です。丁寧に圧痛点を調べていくと、猛烈に痛いところがあります。そこに合計20~30壮はお灸をしました。すると、右手親指の痛みが8割無くなりました。後は、右ふくらはぎのヒラメ筋の圧痛点に鍼を刺し微妙に上下に動かします。

「ううううう・・・今まで経験したことのない感覚・・・・電気が足先まで走る・・・今度は、カカトに来る・・・これは絶対に効いとる・・・・・もう、手の方はいいみたいよ。」

という事で、終了となりました。鍼とお灸と紫雲膏の併用は効果があるようです。

山元式新頭鍼療法の凄さ

70才代の男性患者Aさん、趣味の乗馬で馬の背中に鞍(くら)を乗せようとしても、途中から力が入らず乗せることが出来なくなりました。その日は、周囲の人達に手伝ってもらいやっと乗馬が出来ました。

「先生、急に腕が上がらんようになって、重いもんを上げようとしたら、カックンと全然上がらないことになってしもたんです・・・・年が来てしもたんやろか?」

自信のない声の電話をお受けしました。

「・・・・・・分かりました・・・明日、お越し下さい。」

ということで、Aさんの来院が本日となりました。いつものように、自律神経と内臓を整えて最後に両肩の治療点に置鍼することにしました。下記がその結果です。

合谷診:(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診と左膝診を行う

上腕診:脳幹(0)

膝診:左頸椎#6、7(1)、左脳幹(1)、左大脳(1)

首診:右肝(1)、左肝(1)、左心(0)、左大腸(0)、左脾(0)

5本の置鍼で自律神経と内臓が整いました。

自律神経と内臓を整えるだけで、Aさんの肩周辺がかなり改善されました。そしてC点というオデコにある肩(三角筋)の治療点に置鍼すると、

「先生、(肩が)上がります・・・・力も入ります。」

とAさんが心配していた加齢による可動域低下は考えなくても良くなりました。山元式新頭鍼療法の凄さを改めて感じました。