操体法と置鍼3本

「先生、10日くらい前じゃったろか?畑を耕して・・・・慣れんことしたんよ。そしたら、それからここ(右股関節)が痛うて、痛うて・・・」

籐(とう)の治療用回転イスに座るや否や、私と同い年の女性患者Aさんが、痛い個所を教えてくれました。そして、骨盤の右側を引くと痛みが出るそうです。いつものように合谷診(人差し指と親指の間の触診)、上腕診(肘内側の横紋付近の触診)、首診(左右の内臓診断点の触診)を行いました。

「今日は、操体法でカラダの歪(ひず)みを取ってみましょう・・・奥のベッドで仰向けになってもらいましょう。」

骨盤がずれて左右の脚の長さが違うだろうと、推測したのです。案の定、左脚が2cm長くなっています。これは、左側の骨盤が2cm下がっているからです。Aさんにも2cmの差異を感じてもらいます。

「ほらっ・・・・ここ(上前腸骨棘=じょうぜんちょうこつきょく=骨盤の前上の出っ張り)の位置が違うじゃろ?」

「・・・・うんうん、分かる、分かる。ずいぶん違うね~」

「そしたら、長い方の左のカカトに抵抗を与えるけん(私が親指でAさんのカカトを押し込みます)、ゆっくり踏み込んでください・・・・カラダの中心腰を使って・・・決して力まないで・・・」

などと、言葉で誘導していきます。上手くいくと、一回で元に戻ります。素直なカラダのAさんは、一回で長さが整いました。その後、つま先をすねに上げる操法、両膝を左右に傾倒する操法を行いました。

「ちょっと、これで股関節どうなったか・・・・歩いてみてください。」

「あれっ・・・・痛ない・・・・治った、先生!」

「良かった、良かった!・・・後は、鍼(はり)で治療しましょう・・・めまいがするって、どうするとなります?」

「何か・・・下向くとふわふわっと、なったり・・・」

「なるほど、腕(上腕診)を診た時、ここ(小脳診断点)が痛かったでしょう・・・・どうですか?」

「痛い痛い・・・・ものすごく痛い。」

「ここは小脳じゃけん、小脳はバランス感覚に関係があるんよ・・・ここをしっかり治しましょう。」

後頭部にある小脳治療点に置鍼し、ハリを保持したまま2~3分。小脳の診断点の状態をAさんに聞くと、痛くないそうです・・・・そこで、小脳以外の圧痛点を聞いていきます・・・全て圧痛点がなくなりました。1本の置鍼で5カ所の圧痛点がなくなったことになります。

次に首診で1番痛い個所を見つけると、首中央部の肝点でした。耳の上にある治療点に置鍼し、やはりハリを保持したまま2~3分保持。すると、肝点は柔らかくなり、他の診断点が4カ所柔らかくなりました。まだ、大腸診断点に痛みがあります。大腸治療点(耳の後ろ側)に置鍼して2~3分保持。これで、全ての診断点の痛みがなくなりました。

この方法の方が、効率がよいようです。