森下恵一先生の本を読んでいると、「目からウロコ」のような文章に出会います。その中の1つをご紹介いたします。
『穀菜食は肉食に優る
少々古い話になりますが、肉食については、かつての第一次世界大戦のときに、ドイツとデンマークは正反対の政策をとったという面白い事実があります。両国ともイギリスなどによる海上封鎖の影響で食糧事情が逼迫(ひっぱく)したのですが、その対応策が全く異なりました。デンマークで食料政策を司った大臣的存在は、ヒントヘーデという栄養学者でした。彼は「動物の肉を1キロを得るために穀物や野菜などの飼料を10キロも食べさせなければならない。これはあまりにも非効率だ」としてデンマークの家畜をすべて殺してしまいました。その分の飼料、つまり動物のエサになるはずだった穀物や野菜を人間が食べるようにしたのです。そうしたところ、デンマーク人の死亡率が劇的に下がり健康になりました。
一方、ドイツの食料政策をになったルブナーという栄養学者は、肉を食べて肉を作り出す出すという考えでした。19世紀の栄養学者・モレシャットが唱えた「肉は肉から」と言う考えの信望者だったからです。
このため、穀物や野菜を食べていたんじゃぁ戦争に勝てない、とばかりに、従来以上に大量に動物を飼育し、人間にはその肉を食べさせたのです。しかし、その結果、肉を食べさせられた兵隊は肉体的に重労働に耐えられなくようになって、戦意を喪失してしまいました。この肉食の害を示す第一次世界大戦のエピソードは、私がいつもあちらこちらでお話ししている歴史的事実です。
結論的に言えば、肉を食べなくても良いのです。なぜなら、健全な腸壁の細胞は炭水化物から個体性の体タンパクを合成してくれるからです。腸壁のこの力を強化すれば、元気な体細胞ができます。それには穀菜食が必要なのです。肉食をやめると、タンパク質が不足するというのは大間違いなのです。』
デンマークのヒントヘーデ氏は、家畜の皆殺しという大英断をしました。今の日本にもこの様な大英断ができる人物が必要です。