陰と陽

造園業を営まれている患者さんから、クスノキの瘤(こぶ)について色々教えていただきました。瘤(こぶ)は、切った枝が1cmくらい残っていると、そこからポツポツとイボのような隆起が出来、そこから新芽が出て来るそうです。その新芽を摘み取ると次の年に新たなイボが出来、少しずつ底上げしていきます。この連続周期が数十年続いてこの瘤(こぶ)が出来上がるそうです。

という事は、この瘤(こぶ)は、新芽を作り出すイボの集団。イクラやタラコのような生命の塊(かたまり)とも考えられます。

それで、この瘤(こぶ)に触れた時、パワーの様なもの、あるいは、じんわりとした温かみを感じるのだと思います。同じ瘤(こぶ)でも切り取った断面の部分は、温かみが全くありません。ひんやりと冷たいのです。これは、木に含まれる水分が、断面から蒸発しているためだと思います。

つまり、この瘤(こぶ)という部分が、もうすでに陰(断面部)と陽(イボの表面)の全体を表現しているのです。その事を理解した上で、患者さんのカラダの虚実陰陽を探り治療することが大切になります。

今回の京都出張治療では、丸住和夫先生はじめ操体仲間、そして、患者さんやロンドクレアントに集う人々から多くの事を学びました。出会いに感謝❣️

正座が出来た❣️

昨年の4月から正座が出来なくなった60才代の女性患者Bさん。変形性膝関節症と診断され、今回の治療で8回目となります。徐々に回復し正座した時、太ももと踵(かかと)が接触するぐらいになっています。初診の時は、14~5cmくらいは空いていたと思います。

山元式新頭鍼療法(YNSA)で、膝、下肢に対応する頭部に鍼を刺し置きします。

あとは、松山から持ってきた2個のクスノキの瘤(こぶ)をBさんの両膝うらに置き、3個目の瘤(こぶ)を太ももの内側に置き、ユックリと揺(ゆ)するだけです。

「どうですか?」

「気持ちいいです。最初痛かったところが、徐々に痛くなくなって、気持ちいいです。先生、このイボイボ、絶妙ですね~~」

「これ、私に合っていると思います。」

15~20分くらいは揺(ゆ)すって、太ももが随分ゆるんできました。

「頭に鍼を刺したままですが、ユックリ起き上がって、正座をしてみてください。」

「・・・よっこらしょ!・・・アレッ、正座できた❣️❣️・・・・何ヶ月ぶりやろ?(10ヶ月ぶりです)」

確かに、しっかりとお尻が踵(かかと)について体重が乗っています。ただ、両膝の内側にまだ痛みがあります。そこで、対角の両肘内側の圧痛点を探してみます。

「痛った!先生、そこ痛い。」

肘と膝はお互い影響し合っているため、対角に位置する部位(右膝←→左肘)を治療すると連動して良くなることが、あります。そこで、両肘圧痛点に鍼を刺してみました。

頭に刺した鍼を抜いて、

「ユックリ起き上がって、正座してみてください。」

「・・・・張りがあるけど、痛みはありません❣️・・・これなら、お茶(茶道)できそう❣️」

とニコニコ顔のBさんでした。

玉杢(たまもく)?

昨日(2月6日)19時から、京都市内の「ひと・まち交流会館」で操体法勉強会がありました。そこで、私が使用しているクスノキの瘤(こぶ)をお披露目しました。

「玉杢(たまもく)や!これは、貴重ですよ。」

とお声が上がりました。瘤(こぶ)を輪切りにすると小さな年輪の集合体が平面になって現れます。これを玉杢(たまもく)というそうです。木の愛好家にとってはお宝もののようです。この事を知らなかった私は、まだまだ・・・です。

H「佐伯さん、どのくらい乾燥させているんですか?」

と質問があり、とっさに1年くらいと答えたのですが、よくよく考えてみると、3年近く経っていました。

実家の神社にあるクスノキを伐採し、それを弟(神主)が燃やしていたのですが、その木があまりにも面白い形をしていたので、

「これ、欲しい。積み木の作品か何かになりそうじゃ!」

ということで、保管していました。その後、友人から新たに譲り受けた木が約1年半くらいの乾燥状態です。ところが、良く調べてみると、自然乾燥は3年位必要です。

特にクスノキは、木目が交差しやすく、しっかり乾燥していないと割れてしまいます。

今使用している大きな瘤(こぶ)は、乾燥が1年半ほどですから、途中からひび割れが生じる可能性があります。特に伐採時期を間違うと、虫を寄せないクスノキでさえ、虫が集まって来ます。12月から2月初旬までの樹皮が水を上げない期間に伐採をします。

これも全て自然の摂理です。しっかりと学ぶ必要があるようです。

勉強会では、腸内細菌、唾液と虫歯の関係、裸足生活等、多岐(たき)にわたり話しあわれ、

ついていくのに精一杯。

博識でしかも、ご自身のカラダを通して研究実行されている丸住和夫先生に、心より尊敬いたします。

来月の勉強会が楽しみです❣️

追伸、弟からメールがあり、今回切って、研磨した瘤(こぶ)は、1年半前から乾燥したクスノキだったそうです。作業は全て弟がしています。ありがとう?

 

縄文の土偶とクスノキの瘤(こぶ)

縄文の土偶とクスノキの瘤(こぶ)というタイトルで、治療に使っているクスノキの瘤(こぶ)を縄文人はどのように捉(とら)えていたのか想像してみました。

 

 

これから喋ることは、全くいい加減な話です。

聞き流してください。

私は、縄文のファンで縄文人が、カヌーでカムチャッカ半島を渡り、アメリカ大陸に到達し、なおも南下を続け、マヤ文明など中南米にも影響を及ぼしたのではないかと、勝手な想像をしています。

また、ニカラグアで縄文土器が見つかり、ポリネシアの神話には、土器を持つ民族が突然現れたとあるそうです。

ですから、縄文人がカヌーで南下したのではないかと勝手に想像しています。

学者ではないので、想像はいくらしても罪ではないでしょう。

そこで、縄文の土偶がなぜあの様なハート型の顔や、遮光器土器の目、生命力溢れるフォルムを作り上げたのか?・・・・・・を想像してみました。

縄文人の作ったカヌーは、杉とクスノキを使用しています。クスノキの割合は少ないようです。ということは、クスノキの方が貴重だったのでしょう。クスノキは虫が寄り付かず、腐らないのでカヌーには最高の素材です。しかし、杉と違ってクスノキは枝別れをしていくので、まっすぐな材が少なく貴重だったのでしょう。

以前述べたようにクスノキからできる樟脳は、カンフルと呼ばれ強心剤にもなるほどの成分を持っています。感覚の鋭い縄文人なら直感的にそのことは理解していたでしょう。

その感覚で、クスノキの瘤(こぶ)の生命力に触れた時、ハート型の顔、遮光器土器の目、生命力溢れるフォルムが出来上がったのでは・・・・

まあ~~勝手なもんです・・・

写真を載せておきますね~

クスノキの瘤(こぶ)で胸椎一点押し

スキー大好きな60才代の男性患者Aさん。いつものように温泉に入ってからの来院。

「ここへ、来るようになって、よく歩けるようになるでしょう。そうすると、翌日右股関節が痛くなって・・・プールに行って歩くと良くなって・・・そんなのを繰り返しながら良くなっています。」

「先生、今日は、胸椎の一点に来ています!」

Aさんは、スキーの最中に頭から飛び込んで埋まり、スキー板が雪面と平行になる事故を起こした事があります。その時、胸椎の一点が「ギック!」と来たそうです。

カラダが良くなってくると、その古傷が顕著に出て来るそうです。

「先生、一番大きなクスノキの瘤(こぶ)を、ここにお願いします❣️」

ということで、今回もAさん主導の治療です。腹診をするとおヘソの左右そして上にコリがしっかりあります。そのため、手首、足首の大事なツボに刺し置きします。ある程度柔らかくなったので、鍼を抜き、Aさんの指示通り大きなクスノキの瘤(こぶ)を胸椎の一点に合うように置きます。

枕もクスノキ。胸にもクスノキを置き、その上にAさんは、両手を置いて自分で圧をかけています。

「イボイボが気持ちいいですね~~。押しながら、手も胸も背中も気持ち良くなる❣️」

「胸椎の一点を押すと、顔面の左側に刺激が来る~~」

「先生、お腹触って❣️・・・・」

「アレッ、柔らかい、お餅みたいになってる!」

あまりに柔らかくなっているので、思わず声が出てしまいました。今のAさんには、この療法が一番あっているようです。

米寿を迎えた男性患者Aさんの続報(その2)

米寿を迎えた男性患者Aさんの続報(その2)

「先生、腕と肩はもう治った。じゃがの、左耳に水がたまって、よう聞こえんのよ。」

前回まで痛がっていた腕と肩はもう気にならないそうです。

ということで 、腹診をして、足に鍼を刺しお腹を柔らかくした後、山元式新頭鍼療法(YNSA)の耳に対応する部位に鍼を3本刺し置きします。

「先生、肩が治ったら思い出したんじゃけど、ココ(右股関節)が痛いんじゃ。」

確かに右太ももの裏側に板状の大きなスジがあります。右足首も冷(ひ)んやりしています。

そこで、右膝うらに手を当て、Aさんの皮膚を軽く刺激します。

この皮膚にアップローチする手技は、京都の丸住和夫先生が、仙台の温古堂で橋本敬三先生から操体法を学んでおられる時に、編出(あみだ)されました。

私は、東京で橋本敬三先生の弟子である三浦寛先生の門下に入り10年、身体運動の法則(基礎的なカラダの動かし方)と、皮膚の手技をはじめ様々な手技を学びました。この皮膚にアプローチする手技は、まだまだ発展途上です。山元式新頭鍼療法(YNSA)も頭皮へのアプローチで新たなツボが次々と見つかっています。

1個の受精卵が分割し内胚葉、中胚葉、外胚葉となり、そこから徐々に胎児となりますが、外胚葉の一部が窪(くぼ)み神経系、感覚器となりそれらの中心となる脳ができます。

そのため、皮膚と脳とは密接な関係があります・・・と、これくらいは何とか言えるのですが・・・なぜ?軽く皮膚に触れるだけで、患者さんのカラダが良くなるのか分かりません。

Aさんの右膝うらが、すっかり柔らかくなりました。今度は、冷えた足底を両手でつつむように触れることにしました。Aさんは爆睡中です。足底が温まったころに、起きてもらいました。

「・・・うんん・・・ちょっと、寝たようじゃのう・・・」

「ここ(右股関節)どうですか?」

「おおおう~~、軽い軽い、楽じゃ❣️」

娘さん運転する車で元気良く帰られるAさんでした。

追伸:左耳の状態を聞き忘れました。次回伺うことにします。

クスノキの瘤(こぶ)で揺(ゆ)する

変形性膝関節症で右膝に人工骨を入れる手術を1年半前にした80才女性患者Aさん。

半年前から、当院を月に3回程度利用されています。

現在では、膝痛はなくなり、腰痛、肩凝りが気になっている程度です。

テニスのバックボレーを打つ格好をすると肩の三角筋中央部が、ピリピリと痛みが走るそうです。最初に腹診をして、お腹のコリをチェックし、足に鍼を刺してお腹をゆるめます。

「先生、不思議ですね~~、足とお腹が繋(つな)がっているなんて・・・」

毎回この治療をしているのですが、いまだにカラダの神秘に驚いておられます。

次に、右肩に対応する頭部に鍼を一本刺し置きします。右耳先端のやや斜め前上に

圧痛点を見つけました。

「クスノキの瘤(こぶ)で揺するの好きですか?」

「先生、あれ大好き? すっごく気持ちいい❣️」

仰向けの状態で、ポイントとなる肩甲骨や、膝うらにクスノキの瘤(こぶ)を置きます。あとは、手のひらサイズの瘤(こぶ)をAさんの右胸において、揺(ゆ)するだけです。

操体法の手技に、足指を一本一本丁寧に揺(ゆ)らす方法があります。その感覚で行うため、相当効果があるようです。

今度はうつ伏せで、右胸にクスノキの瘤(こぶ)が当たるようにして、腰にやや大きめの瘤(こぶ)を当て、揺(ゆ)すります。

「先生、肩もう楽楽楽~~❣️」

ということでAさん、気持ちよく帰られました。

米寿を迎えた男性患者Aさんの続報

米寿を迎えた男性患者Aさんの続報です。

Aさんは、両膝の人工骨手術、腎臓摘出、心臓には3本のステントの手術と、西洋医学の恩恵を被(こおむ)って現在、88才。

10人の従業員を抱(かか)える鉄工所を経営しながら現役で働いておられます。

「先生、もうワシャ薬飲まん!薬飲んだら、肩が、いとうのうて(痛くなく)、ついつい無理して働くじゃろう。そしたらの、翌日いとうて、いとうてたまらん様になるんじゃけん。いっちょも(少しも)治っとらん。ワルなるだけじゃわい。」

「薬でだまされとるだけじゃ。ここ(当院)に来てからは、薬飲まんようにしとる。」

当院に入って来られるや否や、一気にまくし立てるAさん。大変お元気です。

よくよくお話を伺うと、Aさんは機械修理のエキスパートで、どんな機械でもバラバラの状態から組み立てる事が出来ます。そのため、鉄工所の難しい機械修理は、Aさんしか出来ません。今日も一日修理をしていたそうです。

一番痛いのが、右肩(三角筋という肩から上腕外側の真ん中くらいにある筋肉)。よっぽど肩が痛かったのでしょう。痛いところに大きな黒々とした「やいと」の跡が、かさぶたで残っています。

三角筋は前部繊維、中部繊維、後部繊維と3つの筋肉に分かれています。

前部繊維は、母指球の屈筋が、中部繊維は、胸の大胸筋が、後部繊維は、親指と人差し指の間にある母指内転筋が、それぞれ関係しています。肩甲骨や脇の下にある前鋸筋(ぜんきょきん)も関与しています。

また、Aさんは、機械修理で指の屈筋を酷使しているので、それぞれの指を丁寧に診なくてはなりません。

まず、右手の親指から小指まで一本一本ストレッチ。ゆっくり気持ちよく・・・

「おおおっ~、これはよう伸びるのう~~イタ気持ちがええわい❣️」

あとは、右母指球や母指内転筋に鍼。指の圧痛点にお灸。肩甲骨や脇の下にお灸をして終了。3日後の予約をして帰られました。

次回はどんな話をしてくださるのか、楽しみです。

来院の前に治ってた⁉️

二日前にギックリ腰の30才代女性患者Cさん。

昨日、お尻に痛み止めの注射(ブロック注射ではないと本人の弁)をし、温泉でゆっくり。

そして理学療法士の先生に習ったストレッチが良く効いたようです。

温泉がたくさんある松山ならではの湯治法❣️

来院した時は、笑顔が爽やかで、ギックリ腰のイメージはありません。

ただ、背中を触ると骨盤の上に張りがあります。しかし、ふくらはぎはユルユル。足首の張りも感じられません。

『・・・んん・・・腹診をすると、何か分かるじゃろ・・・』

両膝の下に、長細いクッションを置いてやや立膝の状態で仰向けになってもらいます。

「腰痛くないですか?」

「大丈夫です。楽です!」

腹診をしても、どこも痛くありません。こういう時は・・・・山元式新頭鍼療法(YNSA)。

ダイオード鍉鍼(ていしん)という長さ14cmの棒で圧痛点を探しますが、結局見つかったのは、おでこの2か所だけです。そこに鍼を刺し置きします。

左側の腰が痛いので、左の太ももにクスノキの瘤(こぶ)を置き、軽く揺すります。

「痛った!」

どうやら、太ももは敏感です。そこで、丁寧に揺すること5~6分。何となく落ち着いて来たと感じたので、太ももに被(かぶ)せたタオルの上に軽く手のひらを添えます。

「ゆっくりしてくださいね~。どこか気になるところあります?」

「左の鍼、刺されてるところから、引っ張られてる感じがします❣️」

「あ~~、なるほど~~嫌な感じですか?」

「いや、そんな事はないです。引っ張られてる感じです。」

「じゃあ、そのままにしておきましょう。」

途中、太ももから膝うらに触れる場所を移し、10分くらい経ちました。もう太もも膝うら共に痛みはそれ程ありません。

「それじゃ、鍼を刺したままでユックリ起きてください・・・・・どうですか?」

「あれ? 痛くない・・・痛くないです❣️」

「うん~~良かった!じゃあ、鍼を刺したままでもう一回横になって休んでください。」

有線放送から流れる「ヒーリング・ベスト・セレクション」を聴きながらウトウトしてもらいます。

こんな感じでいつの間にか治療は終了。

「何が効いたのかよく分からないのですが・・・多分、温泉のストレッチが良かったんじゃないかと思います・・・」

湯治法は素晴らしい❣️

日本の鍼(はり)があまり痛くない3つの理由❣️

多くの人は、「鍼(はり)」といえば小学校の予防注射鍼(直径0.55~0.4mm)を想像し、いい印象はありません。大人になって血液検査を受ける採血注射鍼(直径0.8~0.4mm)にしても気持ちの良いものではありません。

皮膚に刺入した時の「チクッ」とした痛みが「鍼原体験」としてカラダにも心にも染み付いると思います。注射前日に眠れない恐怖を覚えた小学生(特に男の子)などは、大人になればなるほど、恐怖感が鮮明に蘇(よみがえ)ると思います。

また、鍼の発祥地中国は、直径が0.22~0.45mmの鍼が一般的です。ということは、注射鍼と同じ直径の鍼も使用している事になります。また、鍼先を直接皮膚に押し付けて刺入するため、痛みを伴います。私の想像では、一般の方がイメージする鍼が、この中国鍼ではないかと思います。

ところが、日本の鍼は患者さんに優しいのです。理由は3つあります。

①鍼の直径が中国鍼の半分以下。

現在、私が使用している鍼は、美容鍼直径0.12~0.14mm(これは、髪の毛の太さです)。治療鍼直径0.16~0.25mm。お相撲さんのようにガタイのしっかりした患者さんには、0.3mmを使う時もあります。以上のように直径が小さい上に、最新技術により先端に丸みを作って痛み軽減の努力をしています。

②鍼を鍼より5mm程短い管(くだ)に入れ、管(くだ)から出た鍼の柄(え)を軽く指さきで叩(たた)き皮膚に刺入。

この方法は、日本独自の技です。多くの鍼灸師は、使い捨てのプラスチック管とステンレス鍼を使用しています。このプラスチック管がポイント。

内径が3mmのプラスチック管に鍼を入れると皮膚には、角を丸く加工したプラスチック管とその中央部に鍼先が触れています。患者さんには、プラスチックの円形押圧の感覚だけが伝わっています。その瞬間、鍼を軽く叩(たた)いて皮膚に刺入すると、脳は痛みを感じない場合が多いのです。

 理由は、触圧を感じる受容器からは、太い神経(高速道路の感じ)を経由して脳まで伝達するシステムがあり、痛覚の受容器からは、細い神経(一般道路の感じ)を経由するシステムがあるため、脳は早く到達する触圧だけを感じる場合が多いのです。

もう少し、具体的にいうと、ほっぺを叩(たたか)れると、思わず手をほっぺに持っていきます。これで痛みの個所を触圧し、太い神経の高速道路経由の感覚を脳に伝え、痛みを和(やわ)らげます。このシステムを、鍼の刺入時に使っているのです。

③日本独自の押手(おしで)技法。

鍼灸師がツボを探す時は、左の人差し指をセンサーにして、手のひら全体を患者さんの皮膚に軽く添(そ)えます。これを押手(おしで)といいます。ツボに鍼を刺すまで柔らかい左手のひらが皮膚に触れているため、それだけで、患者さんは気持ちいいのです。そこへ、ド ンピシャの鍼が入るとカラダはゆるむのです。

最近、日本でやっと「東洋医学って実はすごい」などとテレビ言い始めました。

チョット悲しいです。

これには、鍼灸師である我々にも非があると思います。ですから、もっと普通に当たり前に発信しようと思います。

日本の鍼灸および漢方は、仏教伝来と共に日本に浸透し独自の展開をしています。これらの貴重な研究資料を中国は逆輸入していたのです。

実は、中国の鍼灸の歴史は、1822年清の時代から衰退し、1925年、中華民国では中国医学の禁止令がでました。貴重な資料や研究は日本に数多くあり、私の母校である東京医療専門学校(呉竹学園)を1934~35年に視察した承淡庵(1899 - 1957)は、帰国後すぐに中国鍼灸医学専門学校を設立し、その門下が、1956年から各地に設立された中医学院で教鞭をとったという驚くべき事実があります。つまり現在の中国鍼灸の歴史は新しいのです。

もう少し、日本の鍼灸に興味を持って頂きたいものです。