紫雲膏登場

「今日は、佐伯君ここの親指が手袋をしようとしても、痛うて痛うていかんのよ。」

みかん、大根、カブのお土産を持って来院するや否や、右手を見せながら説明してくれる男性患者は、高校の同級生Aさん。毎週来院され、治療をしながら世間話をするのですが、今回はどうもそんなことになりそうもありません。いつもなら、合谷診をして上腕診などをしていくのですが、いきなり右親指の治療に取り掛かりました。

オデコのC点、右側頭部(Iソマトトープという治療点)に1本ずつ2本置鍼して、右ふくらはぎのヒラメ筋の圧痛点に鍼をして、右手の親指の痛みを取りますが、勿論十分ではありません。そこで、Aさんが来院するまで私自身に人体実験をしていたお灸を早速してみることにしました。その人体実験というのは、紫雲膏というヤケドに効く軟膏を足の治療点につけ、その上に大小様々なお灸(実際には艾炷=がいしゅといいます)を乗せて焼き切り、その熱さを体感調整していたのです。

こういう時、同級生であるAさんは、患者さんとしては最高でした。焼き切るのですが一瞬で終了るため、なんとか耐える事が出来ます。しかも紫雲膏の量を多くすれば、程よい熱さにもなります。お灸をする度、素直に状態を教えてくれるので、微妙なさじ加減が分かってくるようになりました。

どこにお灸をするかというと、右手親指に対応する右足親指です。丁寧に圧痛点を調べていくと、猛烈に痛いところがあります。そこに合計20~30壮はお灸をしました。すると、右手親指の痛みが8割無くなりました。後は、右ふくらはぎのヒラメ筋の圧痛点に鍼を刺し微妙に上下に動かします。

「ううううう・・・今まで経験したことのない感覚・・・・電気が足先まで走る・・・今度は、カカトに来る・・・これは絶対に効いとる・・・・・もう、手の方はいいみたいよ。」

という事で、終了となりました。鍼とお灸と紫雲膏の併用は効果があるようです。

山元式新頭鍼療法の凄さ

70才代の男性患者Aさん、趣味の乗馬で馬の背中に鞍(くら)を乗せようとしても、途中から力が入らず乗せることが出来なくなりました。その日は、周囲の人達に手伝ってもらいやっと乗馬が出来ました。

「先生、急に腕が上がらんようになって、重いもんを上げようとしたら、カックンと全然上がらないことになってしもたんです・・・・年が来てしもたんやろか?」

自信のない声の電話をお受けしました。

「・・・・・・分かりました・・・明日、お越し下さい。」

ということで、Aさんの来院が本日となりました。いつものように、自律神経と内臓を整えて最後に両肩の治療点に置鍼することにしました。下記がその結果です。

合谷診:(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診と左膝診を行う

上腕診:脳幹(0)

膝診:左頸椎#6、7(1)、左脳幹(1)、左大脳(1)

首診:右肝(1)、左肝(1)、左心(0)、左大腸(0)、左脾(0)

5本の置鍼で自律神経と内臓が整いました。

自律神経と内臓を整えるだけで、Aさんの肩周辺がかなり改善されました。そしてC点というオデコにある肩(三角筋)の治療点に置鍼すると、

「先生、(肩が)上がります・・・・力も入ります。」

とAさんが心配していた加齢による可動域低下は考えなくても良くなりました。山元式新頭鍼療法の凄さを改めて感じました。

皮膚に触れるだけの治療

 

私が鍼灸師になる前は、操体法を治療手技にしていました。特に皮膚に触れるだけの操法は、全身が緩み気持ち良いので、ずいぶん効果がありました。70才まで歌手として活動をしていた女性患者Aさん、右前腕に痛みがあるそうです。前回操体法での治療を少し加えたところ、非常に効果があったので、今回は全て皮膚に触れるだけの治療にしました。

下記のようにいつもの診断をして、頭に刺す鍼の代わりに、足に見つけた治療点に触れるだけの治療となりました。

合谷診:(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診と左膝診を行う

上腕診:頸椎、胸椎、脳幹

膝診:胸椎#9~12、脳幹

首診:右膀胱、右肝、右胆、右胃、右脾、左腎、左肝、左心包、左三焦、左小腸

上記診断点に圧痛がありましたが、6カ所に中指を2〜3分ずつ当てる治療で圧痛点が無くなり、頭に置鍼するのと同じ効果がありました。

「・・・息が深くなって、腹式呼吸になって・・・力が抜けていく感じ・・・」

「何か、血液が浄化されていく感じ・・・・ほら、濾過(ろか)して、少しずつ水がきれいになるでしょう・・・あんな感じ。」

歌手をしていたAさん、豊かな感受性ある言葉使いをしてくれます。時折、自分の意志とは関係なく無意識の不随運動が出ているAさんですが、とても気持ち良さそうです。カラダの歪みが元に戻る時に、カラダは気持ち良さを感じ、それがお薬となります。実際、脳内ホルモンが出てカラダの生命維持力を上げています。Aさんの右前腕の痛みも無くなってきました。Aさんには、次回の治療でも操体法を取り入れてやっていこうと思います。

医学的説明が出来ない

 

針金細工で花を作る趣味をお持ちの40才代の女性患者Aさん。首、肩がパンパンに張っています、そのため、腕の回りも良くありません。また、足ウラ、ふくらはぎにも張りがあります。

合谷診:(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診、左膝診を行う

上腕診:頸椎(0)、胸椎(0)、腰椎(0)、脳幹(0)、大脳(1)、小脳(1)

膝診:頸椎#1~7(2)、胸椎#8(1)、腰椎#5(1)、大脳(0)、小脳(0)

首診:右肝(0)、右胆0)、右心(0)、右大腸(1)、右三焦(1)、右胃(1)、右脾(1)、右小腸(1)、右肺(1)

左腎(1)、左膀胱(1)、左心包(1)、左大腸(0)、左三焦(1)、左胃(0)、左脾(1)、左小腸(1)

上記の治療で随分首が緩みました。ただ、右の首元と左肩(三角筋)と肩甲骨の下が痛みます。そこで、見つけている右足にある頸椎治療点に糸状灸(しじょうきゅう→糸のように細い灸で焼き切ります)をすえると、首元の痛みが無くなりました。ただ右三角筋の前側に痛みがあるので、その治療点に糸状灸をすると良くなりました。

今度は、左の肩甲骨の下が気になります。そこで、左足の治療点に糸状灸。糸状灸の威力は絶大で1~3回で十分効きます。しかも、量的には非常に少量で、誰でも作ることが出来ます。こんな便利で安価な医療品はありません。鍼灸師として普及していきたいです。

さて、Aさん今度は左肩(三角筋)に痛みが残っています。その治療点に2カ所糸状灸をすると、

「肩がポカポカする・・・・それに、足ウラの強張りが無くなってふくらはぎも柔らかくなりました。」

「あああそうか・・・ついでに、足まで良くなったんだ・・・・やっぱり、頭の鍼と足のお灸はセットにすると、良く効きますね。」

Aさんには、お灸の艾炷(がいしゅ→米粒大の円錐形)作りを指導しているので、今度はもっと簡単な糸状灸をやってみるようにお伝えしました。ただ、見つけた治療点の症例をあげることは出来るのですが、その医学的説明が出来ません・・・これから1年は、この勉強に費やされるようです。

1週間に2回通院されていた40才代の男性患者Aさん、年末は忙しく1ヶ月半ぶりの来院となります。いつも通り上腕診、膝診、首診の自律神経と内臓の診断をして、オデコや側頭部の治療点を見つけます。そこで、膝診の頸椎#5診断点の圧痛を確かめ、オデコの治療点に爪を押圧。するといつもなら、膝診の頸椎#5の圧痛が無くなるのですが・・・・

「ここはどうですか?」

「痛い・・・全然変わらん。」

「おかしいな・・・これは?」

「全然!」

「え・・・・どしたんじゃろ・・・そしたら、慢性化しとるかもしれん、陽(陰陽の陽)かもしれん・・・後ろ向いてくれますか?」

「多分、そうじゃわい。」

Aさんは私の治療を120回以上受けておられるので、陰と陽の違いも良く分かっています。

「そしたら、僕が膝下の痛いところ(診断点)を触っとるけん、(後頭部を)押してみて。」とAさん。

「・・・ここどんな感じ?」

「・・・・うん、消えた、痛ない。」とAさん。

と2人で後頭部の頸椎治療点を見つけました。1ヶ月半の空白が今までの治療点を変えたようです・・というか、Aさんにとって1ヶ月半頸椎の治療をしていないと、慢性化してくると考えた方がいいのかも知れません。

「やっぱり、山元先生はすごいね・・・慢性化したら陽に出ると分かったんじゃけん。」と私。

「そらそうじゃわい、臨床経験が全然違うんじゃけん。」とAさん。

Aさんは、私の経験不足を知った上で私を叱咤激励してくれました。こんな治療を経験出来る私は、本当に幸せです・・・・・・ありがとうAさん。

糸状灸

糸状灸って・・・威力絶大

90才代の男性患者Aさん。温泉旅行に行って脱衣所で転び、その3日後から肩甲骨内側が触れるだけで痛くなりました。実際、軽く触れると、

「痛い!!!」

と、無意識の動きが出てきます。

合谷診:(人差し指と親指の触診)左→左の上腕診、膝診をする

上腕診:左頸椎(1)、左大脳(1)

膝診:左胸椎#7~9(1)、左腰椎#6(1)

首診:左腎(1)、左膀胱(1)

6本の置鍼で自律神経と内臓が整いました。これから、肩甲骨内側の痛みをお灸で取ることに挑戦。見つけた足の治療点に、リップライナーで印をつけます。リップライナーは、印が付く上に、油脂が付くため艾(もぐさ)が簡単に乗り倒れません(京都の患者さんのアイデアです・・・ありがとうRさん)。糸状灸(しじょうきゅう)という艾(もぐさ)を糸のように細くした状態にし、その印に乗せて線香の火を付けます。

鍼灸師がお灸をする時は、お灸の火が皮膚に到達する前に、2本指でかぶせて火を消します。ところが糸状灸の場合、焼き切ります。この威力は相当なものでズド-ンと響くような熱を感じます。本当に目が覚めます。また、これは短時間ガマンすれば済むので・・・・一般の人々がイメージする大きな艾(もぐさ)に火を付けて火傷(やけど)するのと、真逆になります。

Aさんもその威力に驚き、思わず無意識の動きが大きく出ます。5壮の糸状灸でAさんの肩甲骨内側を触っても痛みを感じることはありません。実際、触ると柔らかくなっていたのに驚きました。なぜ、その治療点が存在するのかよく分かりません。それを、これから説明出来るように勉強していきたいと思います。

14本の置鍼

 

耳鳴りの治療点に14本置鍼します。これは加齢による老年性難聴にも効果があります。90才代の男性患者Aさんの家族の方から、

「最近テレビの音が大きくなったので、耳が良くなるようにしてもらえませんか?」

と要望があり14本置鍼したところ、テレビの音量が38→27になったそうです(デジタルのリモコンは便利です)。ところが今回は、2週間治療日が空いたので、2~3日前からテレビの音量が再び大きくなり33にまでなったそうです。つまり、耳の鍼治療では、1週間良い状態が続くけれども、それを超えると少しずつ元に戻る様相を呈しているように思えます。もちろんこれは、Aさんに関して言えることです。

そこで、今回もしっかり14本置鍼しました。次回のリモコン数字がいくつになるか、楽しみです。

今年も、本日をもちまして令和3年が終わります。私の拙いフェイスブックを読んでいただき誠にありがとうございました。来年も、無理せずボチボチやっていきたいと思います。今後とも宜しくお願い致します。良いお年をお迎えください。

痛ったたた

前日に続いて、足と頭との併用で首肩こりの痛みを取ったお話です。

60才代の男性患者Cさん、ドライバーの仕事で、首肩のコリが激しくなり来院されました。ドライバーをしていると、水分補給が疎(おろそ)かになりがちで、膀胱は気になるとのことでした。首診でやはり膀胱診断点に激しい痛みがあります。そこで、膀胱の治療点に爪を立てて押圧すると、いつもなら首の診断点の圧痛が消えるのですが、消えません。慢性化しているようで、耳ウラの治療点(陰陽では、陽になります)に1本置鍼。多少効いたのですが、まだ痛みがあります。そこで、見つけている足の治療点に爪を立ててみました。

「痛ったたたたた・・・・」

当院の外ででも聞こえそうな大声。これだけ痛いと効き目があると判断して、お灸をすることにしました。10壮ほど据(す)えると首診断点の痛みがとれ、緩みました。首の根元にある消化器系の診断点(三焦といいます)にも、しつこい圧痛があります。これも10壮ほどのお灸で消えました。

このように、頭と足の併用は非常に有効的であると思っています。今後とも試行錯誤しながら新たな治療法を探していきます。

足だけで治療できます

頭に鍼を刺すのが嫌いな女性患者Aさんには、見つけ出した足の治療点にパイオネックス(皮内鍼)を貼る治療で対応しています。これだけで自律神経と内臓を整えることが出来ます。また、下肢、上肢の圧痛も治療出来ます。今回のAさんは、右肩甲骨内側に痛みがあったのですが、なくなりました。但し、足は頭に比べ小さいので、治療点を見つける爪の角度や位置がより繊細になります。そのため、集中力がかなり必要となります。今回の治療では、脇に初めて汗が流れて来ました。治療後、Tシャツ、長袖、白衣(本当は紺色)の全てが濡れていたのには驚きました。

足の圧痛点の痛みはもの凄く激しいので、ピッタリとパイオネックスを貼れると、診断点の痛みはウソのように無くなります。パイオネックスと同様に、お灸を据(す)えることで診断点の痛みを取ることも出来ます。今日はAさん以外にも80才代の女性患者Bさんに、足だけの治療を行ったのですが、全てお灸治療となりました。今月病院でレントゲン撮影をし、腰椎4番の圧迫骨折と診断されたBさんですが、お灸だけで腰の痛みが全くなくなりました。

実は、Bさんには「頭の鍼と、足のお灸どちらがいいですか?」と伺っていたのです。Bさんは、足のお灸を選択されたので、足にお灸をしたのです。今後、このように患者さんが選択できる治療が出来ると鍼灸治療がもっと浸透していくように思いました。

ノドの痛みを取る

ツバを飲み込むとノドが痛く、不眠が続いているため頭痛に悩んでいる19才の男性患者Cさん。今回が初めての治療です。私が治療点に爪を立てて押圧するだけで、診断点の痛みがなくなることに、驚くCさん。若いので反応が早いようです。

「ええええ、何で、何でなん?」

置鍼をし、診断点の圧痛がなくなるとお決まりの言葉が飛び出します。

合谷診:合谷診(人差し指と親指の間の触診)左→左上腕診と左膝診を行う

上腕診:頸椎(1)、胸椎(0)、腰椎(0)

膝診:胸椎#1、#6、#9、#11、#12(2)、腰椎#1~6(1)、大脳(1)

首診:右膀胱(1)、右肝(0)、右胆(0)、右心包(0)、右大腸(0)、右三焦(1)

左腎(0)、左膀胱(1)、左肝(0)、左胆(1)、左大腸(1)、左三焦(1)

11本の置鍼。

上記の自律神経、内臓の調整だけで頭痛が消えました。あとはノドの痛みです。頭頂部の舌咽神経の治療点に1本置鍼。そして耳タブの下がノドの治療点になるので、触れると5mmほどの板状の張りがあります。それで4本置鍼し、しばらくたって、

「今、ノドはどんな感じですか?」

「・・・・・ツバ飲み込んで・・・痛みが小さくなってきました・・・ええええ何で?」

「そしたら、足にも治療点があるので、そこにお灸をしてみましょう。」

「お灸?・・・・・」

「お灸知らない?ヤイトのことなんだけど・・・・知らないよね。」

そこで簡単に説明をして、納得していただき足の治療点にお灸を10壮。

「これでどうですか?」

「ノドもう軽くなっています。」

若い患者さんの反応の良さに驚きました。これで、治療は終了。