「今年は、今日しかやってないんでしょ?」
と、突然の電話がありました。どうやら、腰が痛くて仕方がないようです。
「夜の8時にお越しください。」
松山も、年末になって急に寒くなり、近所とはいえ歩いてこられるのは、大変です。
部屋をあたたかくし、遠赤外線のベットを40℃にしてお待ちしまた。
少し足を引きずるように、入ってこられました。左腰(仙腸関節の上)と右腰の側面(大転子)辺りが痛いそうです。左右の腰が痛いと歩行は辛かったと思います。
「それじゃ、右の腰から診ましょう。右肩を上にして横になってください。」
70才の女性Sさん、ゆっくりと横になります。Sさんは、鍼が怖くて、お灸ならガマンが出来るという
痛み熱さに敏感な方です。また、治療中、感想を常にしゃべってくださるありがたい患者さんです。
腰の側面が痛いということは、側面の筋肉(大腿筋膜張筋、腸脛靭帯、長腓骨筋、短腓骨筋)が緊張し引っ張って、悪さををしていると考えます。圧痛点を10カ所見つけ、お灸をしていきます。
「ふくらはぎの方、熱さがきていません。」
「ハイ・・・こんどは、どうですか?」
「きました・・・でも、熱くてウトウトとは、出来んですね〜」
たしかに、「ゆっくりしてくださいね。」と言葉掛けはしたものの、常に『熱っ』と感じていれば、
眠れません。モグサの大きさを加減したり、火を消すタイミングを微妙に変えてみたり・・・
高温になる粗悪モグサを固くし、小豆くらいの大きさで皮膚まで焼き切るのが好きな患者さんから、
細い糸のようなモグサが好きな患者さんまで、感性は様々です。
また、足裏とゆび先では、感性が異なります。考えてみると、かなり高度なテクニックが必要です。
「何回か、ポッと気持ちがええ時が、ありますね〜〜これが続くとウトウトできると思いますわ〜」
という言葉をいただくと、『ヨッシャ!』と思う反面、『数回しか無いのか』と挫折感も味わいます。一通り終えたので、
「それでは、チェックしてみましょうか?」
ゆっくりベットから起き上がり、腰をひねってもらいます。
「まだ、痛いです〜〜」
『アリャ〜〜、予想外じゃ!待てよ〜〜太ももの後ろ側じゃな〜』
再び挫折感を味わうと、カンがさえてくるようです。
先程と同じ体勢になったもらい、別の圧痛点を探します。丁寧に診ていると、ありました!
太ももの真ん中にあるスジ(腸脛靭帯)の後ろ側に、3カ所。
「痛っ((((;゚Д゚))))))) ・・・・鍼でやる方が、効くんですか?」
どうやら、痛がりのSさん、観念したようです。
「鍼とお灸を交互にすると効きます。じゃ〜鍼やってみましょうか?」
最も細い1番鍼(直径0.16mm)で刺入に気をつながら行います。途中で静かになるSさん。
鍼の場合、風船を膨らましたような表皮に刺せば、痛くありません。ただ、深層の絡まった筋膜に触れると痛みを感じる時があります。これを「ひびき 」といい、一気に筋膜がゆるみます。
Sさんは、「ひびき」を感じることなくウトウトしているようです。鍼の気持ち良さは、格別で一瞬で眠りに落ちます。
お灸を併用しながら、圧痛がなくなるまで施術。再びチェックすると、
「痛くない!」
これで調子に乗り、左腰痛を一気せめます。うつ伏せになって頂き、左ふくらはぎの圧痛点3カ所に、
鍼を刺します。これだけで、左腰痛は消えました。
どうやらSさん、鍼の食わず嫌いだったようです。
めでたし、めでたし!