ホトケテカタツムル

5月の京都出張治療、初日。

プロのピアノ演奏者として、数十年活躍されている60代の女性患者Bさん。

長年、鍵盤を叩き続けいるため、指の可動域が極端に狭く、手自体が硬く、特に右前腕の外側に

元気がありません。

そこで、右手首から肘にかけてゆっくりと押圧。色白のBさんは、皮膚の変化が見分け安いので、右前腕の回復状態が、すぐさま分かります。くすんでいた皮膚が徐々に明るくなって来ました。

「血が通っているというか、だんだん暖かくなっていく感じです。」

今度は、母指球を丁寧にほぐします。次に、親指のストレッチ。

これは、私のオリジナル手技で行います。その名を、「ホトケテカタツムル」といいます。

ホトケテは、仏手。仏様が玉を持つ時の手の形は、微妙に中指と薬指で包み込むようになります。脱力しつつ玉を確実に持っています。ホトケという響きは、ほどけるにつながり、力みのない解放された状態を表します。

カタツムルは、カタツムリからくる全くの造語です。仏手の中指と薬指を親指に近づけると、カタツムリに似てるいるので、脱力した握り方をカタツムルという動詞にしてしまいました(*゚▽゚*)

指一本一本、手首をホトケテカタツムっていきました。その後は、Bさんの希望によりお灸を中心にの治療。

二の腕(上腕三頭筋)、肩甲骨、胸(大胸筋)にお灸をしました。

「お灸は、気持ちええわ。新京極の方で、いろんな香りのお灸売ってんのよ。お灸女子がはやってるらしいですよ~~」

「そういや~、聞いたことあります。京都にいる間、行ってみますわ!」

やはり、京都に来た甲斐がありました。最終日、是非とも新京極で買います(*゚▽゚*)

治療後、Bさんから下記のメールがありました。

佐伯先生

今日の施術ありがとうございました。

継続していけば確実に良くなる、と確信しました。

練習中のものを弾いてみましたが、指、腕の軽さが格段に違います。柔軟性も変わった感じです。特に右手が。

A君に和らぎ操体治療

 

軟式野球部のA君、前日に続き連続来院。
昨日の治療が効いているようで、ボールを投げる動作では、痛みはほとんどありません。
ところが、ひねると左脇腹に痛みがあります。

背中の状態は・・・

『あれ?やわらかい!』

前日の背中とは、全く表情が違います。何が効いたのか分かりませんが、穏やかな背中になっています。
A君の素直な原始感覚がカラダを本来の姿に導いているようです。
ここまで良くなっていると・・・

『左太ももの内側を探れば、もっと良くなる。』

と、チョット根拠のある自信。
左太ももの内側に鍼を刺していきます。ベットから下りて、ボールを投げる動作をしてもらいます。

「あっ、投げた時はもう痛くないです!けど、ひねるとまだ痛いです。」

そこで、グラップラー刃牙のモデルで和らぎ操体の創始者、平直行さんの治療を試みました。
この治療法は、近日中に株式会社カイロベーシックからDVDが販売されます。
そのため、詳細は述べません。興味ある方は、購買されることをお勧めします。
施術後、

「あれ⁉️ひねっても、脇が痛くない‼️」

和らぎ操体、恐るべし!

軟式野球部A君の続編

軟式野球部A君の続編

前回の治療から5日経って来院。
左腰にまだ痛みが残る(ボールを投げた時)そうです。前回同様、氷水袋で冷やすことにしました。
うつ伏せになってもらい、直接皮膚に氷水袋。

「冷たくない?」

「大丈夫です。」

「気持ちええ〜?」

「ハイ!」

しばらく、トントンと小刻みに氷水袋を弾(はず)ませていたのですが、右腰を触ると、熱っぽいので、

「右の方もやってみるね〜〜」

その瞬間、カタツムリに触れたように、右腰が縮みました。

「冷たい?」

「ハイ!」

「ごめん、ごめん?」

『う〜ん、左腰は、深層に熱がこもっとる。それにしても、カラダは正直じゃね〜!』

少年の原始感覚に感心しながらも、チョット冷静な私でした。3〜4分冷やしていると、

「もう大丈夫です。」

充分冷えたようです。今度は、ベットに座ってもらい、背中を改めて見てみます。
脊柱を上から下へ中指で辿っっていくと、腸骨の上あたりが、右に歪んで、左腰の膨隆が
顕著です。そして、同側の左肩甲骨上部も膨隆した分、反対の右肩甲骨下部が張っています。

カラダは、歪みを作り合いながら、バランスを保っています。この背中のバランス関係が、腕や足に反映しています。左の二の腕(上腕三頭筋)、右肘(前腕内側)、左ふくらはぎ(腓腹筋外側)に鍼とお灸。

「ハイ起きて下さい〜。ボールを投げる格好してみて!」

「治療前の痛みが10、全く痛くないのが0。今、どのくらい?」

「3」

再び、ベットに寝てもらいます。今度は、左を上にして横向き(側臥位)。A君が、しきりに、

「ここが、痛いです。」

一番下にある肋骨は、浮いていて触ると、結構痛いのですが・・・A君、その周辺を押さえています。

「よし、そこにお灸をしよう!」

左の首と左の足首の圧痛点に鍼を刺し置き、A君が指定した2カ所に、お灸。

「ハイ、起きて下さい〜〜。さあ、またボール投げてみて〜、今度はどう?」

「うお〜〜、軽い!」

「限りなく0に近い1」

お灸が効いたようです!

ゴジラ発見

全国でも強豪として知られている軟式野球部のA君。
ボールを投げた時(A君は、右利き)、左の腰(骨盤の10cm程上)が、

「ブチッ」

と音がして、背骨が移動した感じ。腕を戻した時にも、同じ音がして背骨が戻ったような感覚だったそうです。凄い感性です。
病院では、炎症と診断されました。左の腰には、湿布が貼られています。炎症している時は、氷水が一番効きます。これは、師匠の今昭宏先生からの教えです。

お灸は火の力を利用しているのですから、氷水の力をお借りするのは、考えてみれば当然のことです。
A君はまだ15才。感性豊かな少年には特に効きます。氷と水を入れたビニール袋を用意します。

「A君、湿布の上に氷水の袋を置いて、突っつくけど気持ちが、ええかい?」

「ハイ!」

「気持ちええのが、のうなったら、言うてや?」

「ハイ!」

右の腰を触れると、同様の熱を感じたので、右腰に氷水袋を置いてみました。

「こっちは、気持ちええ?」

「いいえ!」

「冷たい?」

「ハイ!」

比較する事で、左腰に熱がこもっているのが分かります。しばらく、氷水袋で突いていると、

「もう、いいです!」

少年の感性は、本当に正直です。これだけで、元気をもらえます。次は、腰痛の原因探しです。
あくまで腰痛は、結果です。腰痛の原因は、足あるいは前腕だと推測します。ふくらはぎと太ももの内側に押圧。

「痛いかい?」

「いいえ!」

『・・・・?』

全く痛がりません。『これだけ、反応しないのもそうそう無いな〜〜』と感心しながら、今度は、左腰痛の同則、左前腕を押圧。

「痛い!」

ありました。
肘内側の横紋(肘窩といいます)の下に海底を泳ぐゴジラのような塊。思わず、

「ここじゃ、ここに鍼じゃ!A君、鍼は初めてかい?」

「ハイ!」

「そうか?!・・・そしたら、怖いのう〜〜?」

付き添いで来られているお母さんが、

「何でも、経験よ〜〜!」

と、ニコニコ顔。ついつい、こちらもニコニコ顔。

「あのな〜、一番細い鍼にするけんな〜」

ゴジラの心臓部めがけて、刺します。全く痛みを感じていないA君、拍子抜けの顔をしています。
しばらく鍼を上下に移動させます(これを、スズメがエサを食べるときの仕草に似ているため、雀啄
ジャクタクといいます)。
ゴジラの尻尾や腕にも刺していき、今度はお灸です。

「お灸も初めてじゃろ〜、ちょっとチクッとするけんの。」

「どうじゃ?大丈夫かい?」

「ハイ!」

初めて尽くしのA君ですが、もうすっかり安心しているようです。ゴジラが居なくなってので、今度は、ミニラ探し。左母指球の下の手首付近を泳いでいました。

そこにも、鍼とお灸。

「先生、ボールは右で投げるのに、何で左腕なんですか?」

とお母さんが、素直な質問をされました。

「バットは、左腕を使って振るんです。素振りしよる?」

「ハイ!学校ではやっています!」

正直に答えてくれるA君、家では素振りはしてないようですが、監督さんの前では、しっかり素振りをしているようです。右腕には、ゴジラもミニラもいませんでした。
バットを返す時、左手首と左肘にかなりの負荷がかかります。右腕は、添えてバットコントロールをするだけで、それほど負荷はかかりません。どうやら素振りが原因の一つようです。

ベットから起き上がってもらい、A君に、

「どうしたら、痛いの?」

「ボールをなげたら痛いです。」

「そしたら、投げる格好をしてくれる? どう?痛い?」

「ハイ、痛いです。」

「こっちに来た時の痛みが、10で、全く痛くないのが0としたら、いくつぐらい?」

「2」

「おっ、そしたら、今日は、終了!」

美空ひばりは、凄い

30数年前、胃の摘出手術したのが原因なのか、5~6年前、腰椎の圧迫骨折された70代の女性Bさん。

「背骨の出っ張とるところが、チクチク痛うて、仰向けで寝られんのです。咳するんでも、腰を抑えんと、痛うてできんのです。」

暗い表情で元気のないBさんの治療に入る前に、

「今、石原裕次郎が、流れていますが、(前の患者さんのリクエスト)演歌お好きですか?」

「女の歌手じゃったら、ええんですけど。」

「じゃ〜、美空ひばりで行きましょうか?」

「ハイ、お願いします。」

やはり、この年代の方々は、美空ひばりに勇気づけられ、元気をもらったのです。ひばりさんの話になると、生き生きとしてきます。音楽の持つパワーは大したもの。しかし、初回の治療では、なかなか腰痛は、取れません。3日後に来てもらうことにしました。

2回目の来院。寝ていて起き上がる時、右腰に電気が走るような痛みが来るそうです。右前腕が硬く押すと痛いので、ゆっくりほぐします。少し腰が楽になったので、短時間だけ仰向けになってもらいます。お腹の手術跡を、2本のダイオード鍉鍼をお箸のように使ってほぐします。これが効いたのか、腰が柔らかくなりました。

3回目の来院(5日後)。まだ、背骨の出っ張りがチクチク痛いそうです。いつものように太ももの内側と、ふくらはぎに鍼やお灸。
背骨が痛いので、手首の母指球の下の圧痛点にお灸を5壮。美空ひばりの話をポツリポツリと話しながら、ゆったりと時間が流れ、腰が随分ゆるみました。

「先生、靴下が履きやすくなりました。」

4回目の来院(1週間後)。何が効いたのか分かりませんが、

「先生、だいぶ良うなりました。自然と咳ができます。前じゃったら、腰を抱えとかんと、できんかったのに。」

そこで、前回と同じように治療して終了。

5回目の来院(1週間後)。

「先生、もう腰のチクチクは、なくなりました。」

うつ伏せで、ふくらはぎと膝裏に鍼。Bさん、とても気持ちいいそうで、美空ひばりの唄を楽しんでいます。

6回目の来院(10日後)。

「看護婦さんに、以前よりしゃんとしとる、と言ってもらいました。先生、ここ触ってください。背骨の出っ張りが少なくなってきました。骨って動くんですね〜。」

仰向けになっても全く大丈夫になりました。

7回目の来院(3週間後)
いつものように、太ももの内側とふくらはぎを中心に、鍼とお灸。

「凄い、凄い立ってズボンがはける!」

更衣室から大きな声が聞こえました。

それからは、調子がいいので、1ヶ月後に8回目の来院。
今回は、肩こり。

もう杖をつかなくても、歩けます。様々な行事にも積極的に参加できるようになりました。

やっぱり、「美空ひばりは凄い」

巨刺(こし)という治療法

4日前から、膝屈伸をすると右のお皿(膝蓋骨)の下が痛いA君(17才)。
180cm、70kgの筋肉質な体型です。

太ももや足首の筋膜が縮み、引っ張りあう事で、膝痛が起こると考えます。そのため、写真の様に
鍼を刺し置きします。

刺し置きしている間に、巨刺(こし)と呼ばる古代からの治療法を行います。これは右膝の痛みを、左肘で治す治療法。 丁寧に左肘の圧痛点を探し、鍼とお灸。お灸は、20壮以上。

治療を終えて、

「A君、治療前の痛みが10、全く痛みが無いを0としたら・・・今は?」

「1(いち)」

「もう少し、治療したいので、もう一回おいでよ!」

と言ったところ、

「えっえ〜〜・・・・・」

「あっあ、膝が痛なったら、また来てや。」

と押しが弱い院長でした。

ニコニコ顔のCさん

5年前から、内臓疾患。
手術後、坐骨神経痛と診断され長時間のイス座位が出来ない70才代の男性Cさん。

「どこへ行っても薬か、けん引だけ。しっかり治らないので来ました。」

ご自身のカラダ事情を的確に説明出来る知性派。
色々触診をしているうちに、右足の内くるぶしと左太もも内側に飛び上がるほどの痛み。
丁寧に押圧し、鍼をその箇所だけに、9本と8本、合計17本刺し置き。

途中で気持ちよく眠りについたCさん。

『気持ち良さそうだし、もう治療は終わり!』

治療時間40分。

「足がポカポカして、初めて治療を受けた気がします。 」

とニコニコ顔で帰るCさんでした。

首をかしげる程良くなった症例(続報)

首をかしげる程良くなった症例(続報)

3週間に6回通院されたAさん。顔色も良く手足も温かくなりました。
そのため、腹診をしながら、カラダ全体のバランスを整える治療となります。

「本当に、良くなりましたね〜、お家で操体法をされていますか?」

「操体法?・・・・あゝ、指一本ずつ伸ばしたり、それから、水を飲んで、咀嚼(そしゃく)をしっかりとするようにしています。指摘されて、納得しましたから。ストレッチのような事も、毎日しています。」

「中々治らなかったものですから、これを機会に、しっかり治そうと思って・・」

やはり、Aさんは初回の診察でお教えした操体法を、毎日やっておられたのです。学習意欲と能力が非常に高い患者さんです。

几帳面な性格の方ですから、徹底的にしておられるのを、感じ取ることができます。必ずしもAさんのように上手くいくということは、ありません。今回は、むしろ珍しいケースだとは思いますが、「3週間に6回集中し施術、しかも毎日操体法を行う」というのは、治療パターンの一つとして考えられます。

改めて、操体法の素晴らしさを確認できた症例です。

人生は即興です

大学時代、共同生活をしていた親友Aさんが、患者さん。
世界ツアーをしている舞踏グループのメンバー。腰痛と古傷の膝が気になるそうです。

治療をしながら、昔話がポロポロ。

「石井さん(伝説の舞踏家)を大学に呼んだのは、Aじゃったろ?」

「違う、違うUだよ・・・ワークショップをアクアク(ジャズ喫茶)でする様になって・・・あの頃、転形劇場をやったり・・・大杉漣さんも来たよ、近藤等則さん、田中泯さん、そのポスターを作ったのが、畠山直哉。」

ポロポロ出てきます。訳が分からない勢いのある流れに飛び込み、遊び、もがき共に過ごした友。
その友のカラダを丁寧に触れる時、石井満隆氏のワークショップがよみがえります。

「人生は、即興です」

の一言で、石井満隆ワークショップが始まりました。その言葉の波動が、カラダに火をつけ、今までの生き様と、これからの生き様を踊って表現していったのです。

「お〜〜い、ここ痛いじゃろ」

私が触れたのは、膝の内側にあるしこり。丁寧に探り鍼を刺します。普段からカラダの手入れをしている
舞踊家の筋肉は、素晴らしく柔らかい。触れていくうちに、段々と頭が下がっていきます。何か神々しい
ものに触れている感覚。

治療しているにもかかわらず、私が治療を受けているような感覚になります。カラダは小宇宙。その小宇宙で表現している舞踊家は、神の域に近づいて行くのだろと思います。Aさんは、舞台に上がっただけで、観衆から拝まれような舞踊家になって行くことでしょう。大野一雄さんのように。

いつの間にか、治療は終わっていました。

即興ライブ

即興ライブ

料理人のAさんは、仕事柄立ちっぱなし。休日は、大好きなテニスで汗を流します。調子がいいと、
ドライブにも出かけます。ところが、運転中に、膝から足の甲にかけて筋肉が引きつってしまいました。
Aさんは、高校時代からカラダのケアを人一倍しているので、常に痛みの原因を、追求しています。

「膝の下の前側が、つってしもたんよ。それがな、日曜日じゃろ〜。火曜日になったら、もっとひどなったんよ!」

「こりゃあ、いかんとおもて(思って)必死でストレッチしたら、だいぶ、よおなったんよ。ほじゃけど、ここら辺(膝下)がな〜、はっとんよ。それと、左手でモノを持ったら、すべり落ちる時があるんよ。」

引きつった膝下も大変ですが、左手も大変そうです。料理人らし太い親指が、硬く腫れ気味です。
仰向けになってもらうと、やはり、左手首が浮き上がって硬くなっています。骨盤は、左が15mm程下がっています。

左母指球を丁寧に時間をかけて、ほぐします。すると、浮いていた手首が柔らかく沈み、骨盤も整い左右の足の差がなくなりました。手のひらと骨盤は、つながっています。手の甲には、腰痛点というツボが2つもあるくらいですから。

気になっている膝下には、直接鍼とお灸をします。かなりほぐれましたが、背中にひっかかりが出てきました。これには、肘下の張りとふくらはぎの圧痛点に鍼。すっかり良くなりました。

Aさんのように、常にカラダと向き合っている患者さんは、刻々と変化するカラダの状態を教えてくれます。その変化を追ったり、追わなかったりは、施術家の即興ライブです。