てい鍼は効きます

左股関節が痛く、40分間の通勤歩行が出来なくなり、和式トイレも使用出来なくなった50才代の女性患者Aさん。知人の紹介で来院されました。痛い箇所は、左臀部と左股関節でデルマトーム(皮膚分節)では、S2、L2辺りになります。

合谷診:左(左の膝診を行います)

膝診:左頸椎(1)、左胸椎(1)、左腰椎(2)、左脳幹(0)

首診:右膀胱(2)、左膀胱(1)、左心包(1)、左三焦(1)

(  )内は置鍼及びお灸の数

腰椎をねらう時、デルマトームのS2、L2をねらった置鍼を行い、和式トイレのスタイルが出来るようになりました。首診での治療は足に見つけた治療点に、てい鍼で押圧するだけで首の圧痛がなくなったり、柔らかくなったりするので、お灸は1回だけで十分だということに気づきました。

そして、最後に見つけた股関節の治療点にお灸を2壮ずつ3か所にすると、可動域が上がり、痛みもなくなりました。Aさんには、この治療点にせんねん灸をするよう、お勧めしました。

やめてください!

 

インターネットで当院を調べ来られた40才代の男性患者Bさん。パソコン画像を1日5~6時間見続けるため、ストレートネックになり、肩こりと頭痛の症状があります。また、太ももの外側とふくらはぎに変な疲れがあります。いつもの様に、合谷診から始まり、膝診、首診を行いますが、太もも外側とふくらはぎの変な疲れが気になるので、デルマトーム(皮膚分節)の図をしっかり見てもらい、L5、L2、S2のデルマトームが関与しているのを確認しました。

合谷診:左(左外側の基礎治療を行う)

膝診:左頸椎#5~6(1)、左胸椎#5(1)、左腰椎#6(1)、左大脳(1)

首診:右大腸(1)、右三焦(1)、左腎(1)、左膀胱、左心(1)

(   )内は置鍼数

ところが、いざ置鍼をしようとすると、

「ちょっと、やめてください・・・怖い!」

と私の手を払いのけようと必死のBさん。こんなことは、初めてです。そこで、痛みの意味を知っていただくための説明をすることにしました。

「カラダを良くしようと思ったら、危機感が必要なんです。例えば、交通事故に会って大怪我をしたとします。その時、βエンドルフィンという脳内モルヒネを脳幹の視床下部というところから、中枢神経を通して、頸椎から尾骨までの31本ある脊髄神経の必要な個所に、神経伝達物質として運ぶのです。それによって、痛みを感じないようにしているのです。これは生命維持をするための最も大切な活動です。それと同じことを鍼治療で行っているのです。」

「・・・・・」

「例えば、オデコに親指の爪を立てるだけで、もの凄い痛みを感じをことがあります。これだけで、カラダは危機感を感じて、βエンドルフィンを用意するのです。そして、鍼を刺すことによってβエンドルフィンが運ばれて、痛みやコリなどがなくなるのです。私のホームページには山元式新頭鍼療法(YNSA)のことを書いているのですが・・・・ご覧になりましたか?」

「ああ・・・読んだ気がします・・・確か、頭に・・・」

Bさんは、具体的なイメージがないままホームページを読まれたのだと思います。最近、治療するにあたって痛みの重要性がはっきり分かるようになってきました。実際には、てい鍼という「銀棒の刺さない鍼」を押圧するだけで、診断点が緩むことが多いのです。てい鍼押圧は「異常な痛み」を伴う時があります。これだけでカラダは危機感を感じ、βエンドルフィンを出すのだと思います。とにかく、Bさんに何とか納得していただき、置鍼をすることにしました。

「どうですか?足(ふくらはぎ内側)の痛みは?」

「・・・あれ?無い・・・・凄い!これ・・凄いですね!」

「今度は、どうですか?」

「・・・痛くない!えええ・・・・どうして?これ、本当に凄いですね!」

やっと理解していただきました。そして、気になっていた太もも外側とふくらはぎの変な疲れは、デルマトームL5を狙って置鍼をすると、一気に左右の患部が緩み治療終了となりました。デルマトームの威力は凄いです。

 

なぜ痛みが取れる?

山元式新頭鍼療法(YNSA)で頭に鍼を刺すと、なぜ痛みが取れる即効性があるのかの説明をします。

脳幹は生命維持(体温調節、血糖値、摂食、飲水、生殖などの本能行動、防衛反応など)の中枢。脳幹の視床下部からは、神経伝達物質が出されるますが、カラダ(特に頭皮)に鍼を刺すことで、βエンドルフィン(脳内モルヒネ)が出ることが分かっています。

患者さんの感覚を羅針盤として、山元敏勝先生が見つけ出した治療点(特に頭皮)に鍼を刺すと、診断点が緩み、治療すべき場所にβエンドルフィンが届くシステムになっているのです。

このシステムの基礎になっているのが、デルマトーム(皮膚分節)だと思っています。デルマトームは、31の脊髄神経(抹消神経)に支配された皮膚の境界線で、カラダに等高線の様に描かれた地図と考えればわかりやすいと思います。脳幹から尾骨まで背骨を通る中枢神経から、31本の脊髄神経が末梢神経として出ています。

山元敏勝先生は、これら脊髄神経が出るポイントの点を見つけ出されました。これを頭のスイッチとおっしゃっています。例えば、第1腰椎から出る脊髄神経にβエンドルフィンを送ろうととすると、耳の前にある第1D点に鍼を刺します。これが頭のスイッチです。すると、βエンドルフィンが第1腰椎の脊髄神経に送られ、そこからデルマトームに沿った皮膚上のシビレや痛みに効くこととなります。

昨日来られた20才代の男性患者Aさんの例を出します。屈(かが)む時に左膝に痛みが走ります。その左膝のデルマトームは、腰椎4番になります。そこで、左耳のD点にあるD4の治療点に置鍼。物凄い痛みが耳に走ったそうです。この痛みこそ大切です。危機感を感じた脳が、βエンドルフィンを出すのです。腰椎4番の中枢神経からでる脊髄神経が、βエンドルフィンを出して、膝の痛みを取るのです。

Aさんにその説明をすると、納得されていました。1ヶ月前に鍼治療をされたのですが、1ヶ月も調子が良かったのに驚かれたそうです。その理由をこのように説明することが大切だと感じました。

マッサージを受けている感覚

月に一度通院の50才代の女性患者Cさん、今回は右首から右肩甲骨にかけて凝ってしまい、他人のカラダの様な感覚になっています。デルマトーム(皮膚分節)ではC3 ~T6くらいの部位になります。Cさんは、5年くらい前、更年期障害で週1回の通院をされ、徐々に良くなられ現在は、月に一度となってはいるのですが、ギリギリまでカラダの痛みに耐えているのが分かります。

合谷診:右(右側を診断する)

膝診:右頸椎#1~5(2)、右胸椎#3、4(1)右腰椎#3、4(1)、右脳幹(0)、右大脳(1)

首診:右膀胱(1)、右大腸(1)、右三焦(1)、右胃(1)、右脾(1)、右小腸(1)

:左腎(1)、左心(1)、左三焦(1)

(   )内は置鍼数

今回は、置鍼した後も鍼柄(しんぺい=親指と人差し指で持つところ)を持ったまま、気を入れる感じでしばらくじっとしていました(頸椎2本のみ)。

「あっ、気持ち良くなってきました。」

Cさんくらい首から肩甲骨まで凝っている患者さんには、置鍼した後少しこの様な時間を取ったほうが方が良いように感じました。今後は、他の患者さんで、必要だと感じたならばやってみようと思います。

「今は、どんな感じですか?」

「鍼をしたところが、マッサージを受けている様な感じで、気持ちいいです。」

山元敏勝先生の名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」の一節です。

『針は、硬くなった筋肉をほぐし、血液の流れを良くします。針をさすと、筋肉の中の血管が広がり、筋肉の中に血液が多く取り込まれます。すると血液の中にある酸素や様々な成分に よって、痛みや緊張で硬くなっていた筋肉が緩み柔らかくなるのです。筋肉が柔らかくなることによって、さらに血液の流れがよくなる効果も生まれます。』

とあります。Cさんの置鍼している頭皮の血流が良くなり、マッサージを受けている感覚になったのだと思います。実に効率の良い治療法だと思います。もう少し鍼に対する理解が進むことを願っています。

4年ぶりの来院

 

4年ぶりに来院の40才代の女性患者Aさん。今回は、右腕のシビレと右肘の痛みが1週間前からあるので来られました。そこで、デルマトームの図を見てもらい、C6、C5にシビレがあることを確認しました。それからは、いつものように合谷診から始まる診断と治療になります。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎(1)、左腰椎(0)、左大脳(1)

首診:右腎(0)、右膀胱(1)、右三焦(1)、左三焦(1)

(   )内は置鍼数

C6、C5あたりの治療点は、口を開けてもらい、耳の前に出来た凹みにあります。てい鍼という銀で出来た棒状の鍼でピンポイントの狙いをつけ、跡を残します。そして、そこに直径0.25mm、長さ3cmの鍼を刺し、しばらく気を入れます。

「今、シビレはどうですか?」

「・・・・無い!なくなりました・・・・肘は触れるとまだ痛いです。」

そこで、耳の前上部の肘の治療点(Iソマトトープ)に置鍼。

「肘の痛みはどうですか?」

「・・・・大丈夫です・・・痛くないです。」

と、この2本でシビレと痛みが取れました。やはり、デルマトームとIソマトトープの威力は絶大です。

肺と舌咽神経

 

「セイタカアワダチソウなのかな?くしゃみが激しくて・・・」

と、来院されてすぐに60才代の女性患者Cさんがおっしゃいます。後で、セイタカアワダチソウと花粉症の関係を調べてみると、セイタカアワダチソウに似たブタクサが花粉症の原因だと説明がありました。Cさんは、このブタクサのアレルギーの様です。こんな時、山元式新頭鍼療法(YNSA)の鍼灸師はどうするでしょう?

それは、かんたんです。まずCさんの手のひらを見て、血色の悪い側を頭に入れます。Cさんは左側です。オデコの中央部の正中線から1cm左の正中線に平行な線上にその治療点はあります。「耳の一番高いところの延長線上」と「正中線から1cm左の正中線に平行な線上」の交差した点を12番とします。そして「生え際」と「正中線から1cm左の正中線に平行な線上」の交差した点を1番とします。その9番目にあたる治療点が、ブタクサアレルギーの治療点となります。ここは、肺と舌咽神経の治療点なので、一発で効きます。Cさんに1本置鍼すると、くしゃみはそれ以降全く出なくなりました。

「鼻水が出てたのに・・・・ぜんぜん出なくなりました!」

と、Cさんがニコニコ顔でおっしゃいます。以前、ご夫婦で来院されていた患者さんで、奥様が夜中に喘息発作をすることがあると言われいたので、ご主人にこの治療点をお教えしました。

「先生、あのツボが効きました。お陰さまで救急車を呼ばずにすみました!」

とのお言葉をいただきました。この治療点を覚えておくと便利です。親指の爪で刺激するだけで、効きます。また、YouTube のように、タッピングをしても効きます。

胸部ソマトトープ

去年の暮れに、高いところから落ち、胸椎の2番、3番、4番を骨折した40才代の男性患者Bさん。1ヶ月前から、首痛、左上腕から前腕にかけてシビレがあります。ここで、デルマトーム(皮膚分節)から考えてみましょう。T2番のデルマトームが、上腕の内側から肩甲骨にかけて伸びていますが、これがポイントだと思います。

(山元先生が、ブラジル女性を治療された時の治療点をご注目!)

当初、Bさんは首痛が一番気になり、次に上腕から前腕にかけてのシビレでしたが、後頭部の首に慢性首痛の治療点があり、そこに置鍼すると首痛がなくなりました。すると、Bさんはシビレは肩甲骨下部にあると言い始めました。一番気になる首痛が消えると、シビレがはっきり分かるようになったと思います。すると、胸椎3番、4番、5番のデルマトームがポイントになります。

そこで、今回は胸部ソマトトープ(胸部の胸骨を体幹とみなしたキリスト像のような治療点)を使って、治療しました。頸椎1本、胸椎1本の置鍼で、ずいぶんとシビレが改善出来ました。特に胸椎の治療点は、デルマトームでも同じ胸部に位置します。それだけに、効果があるのかも知れません。

今後は、胸部ソマトトープにも注目していこうと思います。

ウソみたい

60才代の男性患者Cさん、2日前に重い物を持って 階段を降りたのがアダとなり、ギックリ腰となりました。前かがみが出来ないため、靴ヒモも結べない状態です。また、体幹をひねる時は、ゆっくりと慎重にしないとできません。寝返りが出来ずその痛みで夜中に起きることがあるそうです。ガッチリとした体型のCさんは、頸椎ヘルニアや、左アキレス腱断裂などの怪我で病院に行くことはありましたが、今回は、ギックリ腰のため初めて、鍼灸治療を受けられることになりました。やはり、鍼灸治療は、痛い熱いといったイメージがあるようで随分緊張されています。

合谷診:左(左側を診断する)

膝診:左頸椎#1~4(2)、左胸椎#1(1)、#8(1)、脳幹(1)

上腕診:左腰椎(4)

首診:左膀胱(1)、左三焦(0)、右三焦(0)、右脾(0)

(  )内は置鍼数

膝診では、腰に圧痛点が見受けられませんでした。こういう時は、上腕診を行います。圧痛点が見つかったので、4本(腰痛治療点=D点に)置鍼をしました。

「どうですか?」

「・・・・・言葉は、悪いですけど、ウソみたいですね。イスから立ち上がることが出来なかったのに、出来る・・・早い動きができなかったのに、出来る・・・・前かがみも・・・出来る。これだったら、靴ヒモが結べます。」

「そうしたら、もう少しやりましょう。」

まだ、首診からの治療点へ置鍼がされていないので、膀胱狙いで1本置鍼すると、他の圧痛点もなくなりました。そこで、トルコの先生に習って側頭部の治療点に2本置鍼。

「これで、どうですか?」

「ちょっと、寝返りしてみます・・・・・出来る!ここへ来る前は、後ろに反らすことしか出来なかったのに、反らす方がちょっと痛いくらいです。」

後は、足に見つけた治療点に5壮お灸をしました。

「これでどうですか?」

「・・・・ひねりが、もっと楽になりました。来た時が10の痛みとしたら、今は1です。」

4日後の予約をされて、軽快に帰られるCさんでした。

調子がいいんです

60才代の女性患者Aさん、今回で3回目の来院です。

「先生、目が変わったと思いません?」

来院するや否や、Aさんがおっしゃいました。確かに、目が大きく優しい感じになっています。

「調子がいいんです。特に治療を受けてから2~3日経った方が調子がいいんです。効いているんですね。それから、前向きになってきました。」

1~2ヶ月前、ショックなことがあり、気分が滅入っていたAさん、少々うつ気味だったのでしょう。名著「あきらめなければ、痛みも、麻痺も、必ず治る!」から引用します。

『うつ病

以前は、性格や気持ちのあり方に原因があると思われていた「うつ病」も、ここ数年の間に、この神経伝達物質の働きが深く関わっていることがわかってきました。気持ちや意欲などに関する「セロトニン」や「ノルアドレナリン」と言う神経伝達物質が不足することによって、気持ちが落ち込む、不安な気持ちになる、集中力が下がる、また体調不良などの症状が起こることが明らかになってきたのです。精神の強さなどが原因とされる事は全くの誤解で、大きなショックを受けたことがことなどがきっかけとなり、神経系の働きに障害が起きる1つの病気であるということがわかってきました。』

とあります。Aさんは、ショックを受けたのを機に、セロトニンやノルアドレナリンが不足したのです。それを、カラダの訴える声を聞き、治療点に置鍼する事で神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリンが出始めたのだと思います。これからも1週間に1回のペースで通院されます。これからどのように変化していくのか楽しみです。

顎関節症

山元敏勝先生の著書「あきらめなかれば、痛みも、麻痺も、必ず治る!」は、さすがに150万人の患者さんを診て来られた叡智が凝縮されています。さらっと述べておられる言葉の重みにやっと気づくことができるようになりました。これには、顎関節症の中学生が一回の治療で治った事例が載っています。下記に紹介します。

『この患者さんは日南に住む中学生の女の子でした。突然口が開かなくなり、その日のうち、すぐに来院されました。ショートカットの快活そうな女の子でしたが、急に口が開かなくなったことへのショックと不安から、とても元気がなく心配そうな顔をしていました。

口はわずか指が1本入るくらいにしか開けることができず、「口を開けて口を動かしてごらん」と言うと耳の付け根あたりにカクカクすると言う違和感と顎の痛みを訴えました。なんとか会話はできるものの、ままならない状態で、もちろん、何かを食べると言うことも全くできる状態ではありません。

私の西洋医学としての診断は、顎の関節に障害の起きる「顎関節症」でした。YNSAの首診を行うと、脳神経に関係する4つの点に明らかな反応が見られました。「顎関節症」が起こる原因は人によってさまざまですが、顎の関節の動きは脳神経がコントロールをしているため、この女子の場合には、この4つの脳神経に何らかのトラブルが起きていたと考えられました。』

「顎の関節の動きは脳神経がコントロールをしている」ということがポイントです。脳神経というのは、脳から末梢神経が出ている12種類の神経をいいます。例えば、2番=視神経、3番=動眼神経、5番=三叉神経etc.

それらの治療点は、生え際の正中線に1cmずつ左右の平行線を引いて頭頂部に行く線上に12点ならんでいます。まず私は、顎関節症がこれらの脳神経と関わりがあるという知識がありませんでした。次に、その脳神経を首診で探ることができることを知りませんでした・・・これを知っておれば・・・まあ~後ろを見ない、前身あるのみ!