聴こえる歌が大きなった

80才代の女性患者Aさん、前回の耳なりの治療点に7本置鍼したのが効いたそうです。左耳から聴こえる人の声が籠(こも)った声だったのですが、普通の肉声になったそうです。そこで今回は、左だけでなく右の耳治療も加えて合計13本の置鍼を最初に行いました。

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、治療の基本ルールがあります。まず左右の合谷診(人差し指と親指の間の触診)をして、痛い側の上腕診と膝診をします。そのあと、首診をして内臓の診断をし治療します。しかし、耳なりの治療はこれらの基本ルールとは関係なく存在するので、Aさんには最初から13本の置鍼をしました。そのあと、合谷診、上腕診、膝診をしました。

合谷診:左(左の上腕診、膝診を行う)

上腕診:圧痛点なし

膝診:胸椎#4、#5(1)

首診:圧痛点なし

一本の置鍼で膝が緩みました。

置鍼を終えて、雑談をしていると、

「・・・・今聴こえる歌が、大きくなった。」

どうやら、耳なり治療点の置鍼が効いたようです。耳なりの置鍼は耳の中央部に向けて丹田(私の)から鍼(はり)を刺すことを念頭に置いています。少しその意識が効いているのかもしれません。天才山元敏勝先生が見つけられたこれらの治療点は、常に患者さんの感覚に従い押圧して、最も痛いところに置鍼することが大切です。

それにしても、どのようにしてこの耳なりの治療点を見つけられたのか・・・そのプロセスを考えることは、山元式新頭鍼療法(YNSA)を実践している鍼灸師として、新たな治療点を導き出すヒントになると思います。

あぐらをかく

 

「あぐらをかく」とは・・・・

脚を左右に開いた形で、足首を交差させる座り方。男性的な座り方とされる。そこから転じて、堂々と、あるいはずうずうしくも居座っているさまにも用いる。「胡坐をかく」とも書く。

とあり、ずうずうしく努力をしない様を表現した言葉と捉(とら)えられています。これは西洋文化が日本に入ってくる前の言葉で、今の生活様式で「あぐらをかく」の意味あいなら、「テーブルに足を投げ出す」でしょう。そこで、「あぐらをかく」の意味あいではなく、あぐらをかいている状態を想像してして下さい。私は黒澤明の時代劇のシーンが浮かんできます。膝が床についた頭を頂点とした綺麗(きれい)な三角形で安定した状態。これが出来ない人が多くなったのは、やはり畳に座ることが少なくなったせいでしょう。

現在、患者さんに回転式の籐座椅子(高さ35cmくらい)に座ってもらい、私は床であぐらをかいて診断しています。治療時は片膝を立て、もう片方の脚は膝をついた状態で置鍼しています。これだと体重移動が簡単で、丹田に力が入ります。

「先生、1本1本の鍼がずしんと重い感じがする。」

とある患者さんから言われたことがあるのですが、きっと置鍼の姿勢が変わったせいでしょう。紺色の白衣にジーンズと足袋の様な黒い靴下を履いているので、ちょっと忍者風の鍼灸師になっている私ですが、忍者になったつもりで、丹田からエネルギーを送る意識はしています。

あぐらをかくと、足裏やふくらはぎを触ることが出来ます。カラダとの対話は大変大切です。イス生活に慣れた方は、もう一度畳で「あぐらをかく」生活を心がけるのも良いと思います。

フラクタル

 

「これは、全く個人的な考え方なんですが、受精卵から人間のカラダを形成する発生学的な過程で最終形態の人型をイメージするのではないか・・・・と思うのです。そのため、随所に人型のイメージが相似形で現れてくるのではないか・・・と思うのです。山元先生(山元式新頭鍼療法の創始者)は、それを頭に見つけ治療点とされました。ですから、まだまだこの相似形がカラダの随所にあるはずです。」

と、患者さんに説明します。これを、フラクタルという現象と考えてもいいと思います。葛飾北斎の富嶽三十六景の大波がリアルな描写になっているのは、波の先端に相似形の波を描いているからです。葛飾北斎は波をじっくり観察して、フラクタル現象を見出し絵にしていったのです。人間の存在を含めた宇宙の現象にはこのフラクタルが存在しているようです。下記にフラクタルの説明を抜粋しておきます。

『フラクタルの具体的な例としては、海岸線の形などが挙げられる。一般的な図形は複雑に入り組んだ形状をしていても、拡大するに従ってその細部は変化が少なくなり、滑らかな形状になっていく。これに対して海岸線は、どれだけ拡大しても同じように複雑に入り組んだ形状が現れる。

そして海岸線の長さを測ろうとする場合、より小さい物差しで測れば測るほど大きな物差しでは無視されていた微細な凹凸が測定されるようになり、その測定値は長くなっていく。したがって、このような図形の長さは無限大であると考えられる。これは、実際問題としては分子の大きさ程度よりも小さい物差しを用いることは不可能だが、理論的な極限としては測定値が無限大になるということである。つまり、無限の精度を要求されれば測り終えることはないということである(海岸線のパラドックス)。』

カラダと鍼(はり)の説明 その2

「カラダは常に良くなろうとしています。そして悪い方向に向かって行くと痛みというブレーキを掛けて気付かせてくれています。ですから、痛みはありがたいんです。痛みを感じない病気もあります・・・・残念ながらこの病気の人は、早く亡くなってしまいます・・・・痛みを感じないので、無理ばかりするからです。私が、治療点を探す時、必ず患者さんの最も痛い場所を探します。痛みがなければ、治療が出来ないんです。」

山元式新頭鍼療法(YNSA)は、首診で12の内臓の状態を痛みの有無を診断します。上腕診では、大脳、小脳、脳幹、頸椎、胸椎、腰椎状態をやはり痛みの有無を診断します。なぜそんな事が出来るのか、私なりに患者さんに説明しています。

「内臓は平滑筋という自分の意志とは関係なく動く筋肉が働き、腕や脚などは骨格筋という自分の意志で動く筋肉が働くのですが、それらは、筋膜を通してつながっています。ですから、カラダの内と外は繋がっていて、首の様な薄い筋肉があるところは、内臓の状態が現れているのです(診断点)。その治療点がやはり筋膜を通して側頭部や頭頂部にあり、鍼を1本刺すだけで筋膜を通して内臓を緩(ゆる)めるのです。YNSAの創始者である山元先生は、首の診断点を見つけた後に、上腕の圧痛点を通して、大脳、小脳、脳幹、頸椎、胸椎、腰椎状態が分かる上腕診を見つけたのです。」

「そして、大切なことは治しているのは、患者さんのカラダであって、決して私が治しているのではないということです。私の鍼(はり)は、あくまで刺激を与えて補助をしているだけで、カラダが治しているのです。」

と説明しています。

カラダと鍼(はり)の説明

 

「60才以上の人は、90%以上椎間板に異常が認められるので、気にしなくてもいいです。椎間板のヘルニアは、マクロファージという大食細胞が、食べてくれますし、人は60~70%水で出来ているので、皮膚という水袋に骨が浮いていて、筋肉が支えていると考えた方がいいです。筋肉の周りに筋膜という主にコラーゲンで出来た膜があって、その筋肉は、細い筋肉の束が詰まっていて、その束も筋膜で覆われていて、その細い束にも、もっと細い筋肉の束があって、それも筋膜に覆われているんです。ですから、筋肉は立体的な筋膜に覆われているんです。」

 

私は、患者さんにカラダの説明をする時、まず骨は水袋に浮いているので骨は動くという認識を持ってもらいます。そして、立体的な筋膜がそれを支えてるとイメージしてもらいます。

「その筋膜は、カラダの浅いところや深いところを流れていて、その流れは12あります。丁度、東洋医学でいうツボの流れ、経絡と一致するんです。筋膜はコラーゲンで出来ていて、これは電導体ですから、鍼(はり)を刺すことで電気が走るのだと思います。よく東洋医学では、気という概念が使われますが、これは電気だと思います。電気はプラスとマイナスがあり、東洋医学の陰陽五行という基本概念と関係があると、私は考えています。」

と私見を述べて、さらに・・・

「カラダが凝(こ)ったり、血流が悪くて痛みがある個所は、筋膜がねじれています。一ヶ所にねじれが起こると、他の個所でねじれを作って、綱引きの様に引っ張りあうんです。ですから、遠くの患部とは全く違うツボに鍼(はり)を刺すと、一瞬で緩んでしまうんです。山元式新頭鍼療法(YNSA)は、そのツボ(治療点)を頭に見つけ出しています。」

と、鍼1本で痛みをとる事が出来るYNSAの説明をしています。

もっと自然にオープンに

患者さんのアドバイスで、待合室兼治療室の松板(まついた)壁面に子供達の幼い頃の写真を飾ったのは、本当によかったです。これを機に、治療の姿勢を変更しました。患者さんは籐(とう)の回転イスに座っていただき、私はそれより少し高いイスに掛けて治療をしていたのですが、今回から、私が床に座る事にしました。すると、壁に飾った子供達の顔が、私が患者さんの頭部に鍼を刺す時、壁に飾った子供達の顔が、しっかり見え応援してくれている様に思えるのです。

また、患者さんより目線が下の方が威圧的でなく、しかも従来のイス座りよりも下半身を安定させ丹田を使う武術をしている様になります。これは、意外な発見です。より一層、姿勢を意識して指針し、1本1本の威力を増していきたいと思います。

患者さんのアドバイスに耳を傾け、実行すると思わね展開もあります。例えば、フルスイングをしている私の写真から、私が松山東高等学校で野球部であったことが分かり、

「それじゃ、私の大先輩だ・・・私も松山東出身です!」

となり、今までの患者さん対鍼灸師という立場プラス松山東OB同士という関係も生まれて来ました。これは、「私とはこんな人間です」と、心を開いた結果の産物です。元々オープンな性格だったのが、コロナ禍で萎縮していたのかもしれません。もっと自然にオープンに!

実家で「たんぽぽクリニック」話

 

昨日は、東温市の実家で出張治療でした。小学校、中学校の同級生の女性患者Aさんとは、懐かしいのと同じ医療関係の仕事ということで、結構長話となりました。そこで、医療法人ゆうの森という在宅医療という形態での治療を行っているクリニックの話になりました。この法人は、「たんぽぽクリニック」という病院を設立し、あじさいの杜鍼灸院と徒歩5分くらいのところにあります。

この「たんぽぽクリニック」は、外来や入院は一切行わず、すべてのマンパワーを在宅医療に集中。計3箇所の在宅専門クリニックのほか、居宅介護、訪問介護の事業所を併設し、グループ診療やWebを活用した多職種連携など機動力に優れた対応態勢で、地域の在宅医療を牽引しています。四国で最初に在宅医療を行ったパイオニアです。今は、全国から研修に来るほどのクリニックになっています。

パソコンを前に数値を見る医療は、大切な医療です。それを元に、今後の方針を立てて行き、自己免疫力を上げる治療をする必要があります。鍼灸は確実にその成果を上げることができます。西洋医学と鍼灸などの東洋医学が、今後はもっと融合する必要があります。それを実現しているのが、山元式新頭鍼療法(YNSA)です。「たんぽぽクリニック」の医師がYNSAで施術出来れば、患者さんは幸せだと思います。

当院から歩いて5分ほどの所にある「たんぽぽクリニック」ご縁を感じます。

 

治すのはご自身のカラダ

70才までシャンソン歌手として活動し、フランスでも歌ったこともある女性患者Aさん。当院に通うきっかけは、妹さんの助言でした。妹さんは他県に住んでおられるので、電話での会話です。

Aさんの妹さんは、肺が弱く酸素吸入をしているとの事。そこで、妹さんの住んでおられる県の山元式新頭鍼療法(YNSA)認定鍼灸師を紹介したのです。しかし、鍼治療を勧めた妹さんは、鍼を信じていないことが分かりました。

まだ、鍼(はり)治療とはこの程度の認識なのです。こんなに優れた治療法であるYNSAがなぜ普及しないのか・・・・私自身毎日のように文章を書き、発信しているのですが、全く届きません。患者さんには、硬式ボールを使ったセルフケアを指導して効果が随分上がっているのに・・・・YouTubeも見てもらえていません。なぜでしょう?・・・・よく分かりません。

改めて、松山市針灸師協会が作ったチラシの一部を掲載します。

1 整形外科系の病気

肩こり症、変形性脊椎症、頸肩腕症候群(手のしびれ感と痛み)、寝ちがい、むち打ち症、五十肩、テニス肘、変形性膝関節症、捻挫、打撲、腰痛症、ぎっくり腰、椎間板ヘルニアなど

2 脳神経科系の病気

神経痛(三叉神経痛・肋間神経痛・坐骨神経痛)、顔面神経麻痺、自律神経失調症、頭痛、めまい、不眠症など

3 循環器科系の病気

どうき、息切れ、心臓神経症、高血圧症、低血圧症、不整脈など

4 呼吸器科系の病気

風邪ひき、せき、気管支炎、気管支喘息など

5 消化器科系の病気

胃炎、胃下垂、胃酸過多症、食欲不振、下痢、便秘など

6 耳鼻咽喉科系・口腔器科系の病気

急性扁桃腺炎、アレルギー性鼻炎、慢性副鼻腔炎、耳鳴り、中耳炎、難聴、メニエール症候群、歯痛、歯肉炎、口内炎など

7 泌尿器科系の病気

排尿困難、膀胱炎、尿道炎、前立腺炎、インポテンス、遺尿症、尿失禁など

8 眼科系の病気

仮性近視、眼精疲労、ものもらい、白内障など

9 産婦人科系の病気

生理痛、更年期障害、乳腺炎、冷え性、逆子など

10 小児科系の病気

夜泣き、夜尿症、小児喘息、虚弱体質など

11 内分泌科系の病気

糖尿病、バセドウ病、肥満症など

12 皮膚科系の病気

じんましん、帯状疱疹など

西洋医学とは違い専門的に分かれていません、何でもやります(手術やガン治療以外)。カラダは常に治ろうとしています。鍼治療は、その補助をしているだけです。治しているのは、ご自身のカラダであることをしっかり認識してください。興味ある方は、いつでもご連絡ください。

 

突然の患者さん

午前中は、2本のYou tube制作。その後は、11月7日「森の中に秘密基地を作ろう」という滑川渓谷の楓荘という場所でのコンサート参加のための練習・・・・と、決め込んで、普段着でくつろいでいたのです。すると、見覚えのない女性が突然入ってこられました。

「ちょっと、ご相談があるので・・・よろしいでしょうか?」

「はい、どうぞ。」

「最近、左膝と右の手首が痛くなって・・・・・そこで、月に1回通っている内科医の先生に相談したところ、それは、外科じゃ・・・と言われんです。それで、外科に行って診てもらったんじゃけど、どこも悪ないと言われて、何もしてもらえんかったんです。それを、妹に言ったら、鍼(はり)がええと言われて・・・・看板を見て来たんです。」

「どこも悪ないと言われても、痛いのは事実ですからねえ・・・・・ここで打つ鍼(はり)は、患部に直接打ちません。まず、肘や上腕を診て、脳や背骨の状態を知って頭にある治療点に鍼を刺します。すると内臓を司(つかさど)る自律神経が整います。次に首の圧痛点を探して、頭の治療点に鍼を刺します。すると内臓が整ってきます。これだけで、今まで痛かった腰や肩が良くなることも多いんです。そして、今痛い個所の治療をすることになるのです・・・・しかも、患部ではなく頭に刺すので非常に安全です。」

「私は、それまでは、元気じゃったのに・・・70才を過ぎて、急に痛いところが出てきて・・・・何とか自分で治したいと思っています。」

「私は、鍼灸師になる前は、操体法という体の歪(ひず)みを取る民間療法を行なっていたので、それは、お教えできます。」

などという会話をしながら、彼女の左膝痛の投影している足の圧痛点を、押圧。

「痛い・・・・痛過ぎ!」

「こういうところに、痛みがあってそれを取ると・・・膝が良くなったりするんです。」

と、実際に体感していただきました。それで、ある程度納得していただき、明日のご予約をお取りすることが出来ました。明日が楽しみです。

素直なカラダ

背筋や腹筋を鍛えるローラーでエクササイズをしていた50才代の女性患者Aさん。頑張りすぎて「ギックリ背中」の重くもないけれど、軽くもない程度の症状があります。特に右肩甲骨あたりが痛くて仕方がありません。そこで、自律神経を整えたあと、B点というオデコにある治療点に置鍼することにしました。

合谷診:右(右側の膝を診ることになります)

膝診:頸椎#5

胸椎#3、#4、#8

上記に対応する治療点に置鍼2本(オデコと右眉の上)すると、診断点の圧痛が無くなりました。今度は、B点という肩の治療点(正中線から2cmほど右の生え際)に1本置鍼。これがずいぶん効いたようです。

「痛い・・・・・・・・痛くて、顔の筋肉を動かせない・・・・・・・痛い・・肩が緩んでいくのが分かる・・・・けど、痛い。」

もうこの3本の置鍼で十分です。このままの状態でゆっくりしてもらいます。Aさんは、健康管理に気をつけているためか、とても素直なカラダをしています。鍼(はり)という異物が入ると、カラダがその異物を取りのぞこうと押し出し始めます。過去に2~3回鍼が飛んで床におちることだありました。今回も顔面の痛みが無くなった時は、鍼の先がわずかに皮膚にくっついているだけの状態になっていました。

「顔を振ったら、落ちそう・・・・」

と、Aさん。

普段から、水や食べ物を研究して、カラダに悪いものを入れていないAさんは、どこかちがうようです。そんな素直なカラダのAさん、「ギックリ背中」は治ったようです。久しぶりにたった3本の置鍼で終了となりました。