鍼が入らん

あじさいの杜鍼灸院では、換気、消毒を頻回に行い、私自身は雨合羽(あまがっぱ)にフェイスシールドで、防備しています。とにかく、目に見えないコロナヴィールスとの遭遇だけは、避けようと思います。雨合羽(あまがっぱ)とゴム長靴は、脱いだあとは消毒して、通路に干しています。

当院に来られる患者さんで、バスをご利用の方もおられます(当院は、伊予鉄バス10番線の終着駅、津田団地前から徒歩1分と、大変便利です)。その方が、

「バスは、ガラガラの4人。途中からは、私1人になってしまいました。それから、運転手さんの後ろの席は、座れないようにテープで仕切られていました。」

と様子を教えてくれました。こんななか、60才代の肩こりと腰痛の男性患者Bさんが来院されました。最近は、忙しい合間に時間を見つけ、1週間に1回のペースで来られています。大変ありがたいことです。

早速、合谷診(人差し指と親指の間の触診)を始めます。右手の方に痛みがあったので、右側から治療を始めます。次に、進化系合谷診(人差し指につながる中手骨を6等分し腰椎、胸椎、頸椎、大脳、脳幹、小脳の診断)を行い、慢性の肩こり、腰痛のBさんには、後頭部に置鍼を行いました。

左:胸椎(1)、小脳(1)

右:腰椎(1)、大脳(1)

(  )内は圧痛点が無くなり治療できた置鍼の数。これで基礎治療が終わり、自律神経が整いました。次に首診ですが、下記のような結果になりました。

首診

左:腎(0)、膀胱(1)、胆(0)、心(0)、大腸(1)、胃(1)、小腸(0)、肺(0)

右:心(1)、脾(1)

(0)は、大腸点と膀胱点に置鍼した影響で圧痛点が随分なくったことを示しています。

高校時代の同級生のBさんに、

「今、腰どんなん?」

「まだ、ちょっとはっとらい。」

「そしたら、今から鍼さすけん。」

「・・・・痛っっっった!」

「なかなか鍼が入らん・・・何かなあ・・細かい砂が固まってしもて、ゴムみたいになっとらい・・・まあ~、そんな感じ・・・・今、腰・・・どんなん?」

「何か・・・すっ~とゆるんだみたいじゃ。」

「うん、よかった、よかった・・・痛いほどよう効く・・四つんばいになって、お日さんがあたる所が陽で、影のできる所が陰なんよ。後頭部は、日に当たって砂漠状態になっとるんよ・・・じゃけん、鍼抜いても、後頭部は血があんまり出んわい。顔の方は陰じゃけん、血が出る傾向があるなあ。」

「・・・人間になっても、四つんばい状態が続いとるんじゃね・・・・体は・・」

などと話ながら、治療は終わっていきました。

Bさん、来週もお待ちしております。

左肩が痛い!

60才代の男性患者Aさんは、左肩と左肩甲骨周辺、そして二の腕(上腕三頭筋)が痛くて仕方がありません。仕事を終えて車を1時間30分走らせて、奥様と共に来院されました。10日ほど前のことです。そして、今回で4回目の治療となります。

「どうですか・・・肩・・」

「だいぶ良くなったんですけど、肩甲骨の内側にピンポイントで痛みがあるのと、二の腕(上腕三頭筋)にシビレがあります。」

「・・・・うん~そうですか・・・ちょっと、これを見ていただけますか?」

と取り出したのは、経絡人形(写真参照)です。

「この黄色のラインがあるでしょう?これが丁度、肩甲骨辺りを走っているんです。これは小腸経という流れなんです。」

「あっっ、ここ、シビレているのは、この黄色のラインです、ピッタリ!」

「そうしたら、ここ(第7頸椎と第1胸椎の間で、左よりの圧痛点)痛くないですか?」

「痛っった!」

「今日は、ここにも鍼を刺してみますね。」

先日の山元敏勝先生のブラジル人女性患者の治療ビデオに、すっかり影響を受けていたため、瞬間的にこんな言葉が出たように思います。前回から、Aさんの置鍼は後頭部にしています。後頭部は、四つんばいになった時、日が当たる側。陰陽では、陽にあたります。陽は慢性的な疾患に効くので、最近は後頭部への置鍼が多くなっています。

合谷診(人差し指と親指の間の触診)では、明らかに左手に痛みがあります。そのため、治療は左側から行います。

首診で左右の前面で鎖骨付近の圧痛点を押圧。

「どちらが、痛いですか?」

「左が痛い!」

「そしたら、今度は・・・ここ、どうですか?」

「痛っっっった」

「ふ~~ん、やっぱり・・・ここ小腸の治療点なんです。」

と、左後頭部の小腸点を確認しました。

さて、これから治療開始。

進化系合谷診(人差し指につながる中手骨を6等分し腰椎、胸椎、頸椎、大脳、脳幹、小脳の診断)

左:頸椎(2)、胸椎(1)、腰椎(1)

右:なし

(  )内は圧痛点が無くなり治療できた置鍼の数。これで基礎治療が終わり、自律神経が整いました。次に首診ですが、左側に圧痛点が多いので、左側のみとします。

首診

左:腎(0)、膀胱(0)、胆(0)、三焦=消化器(0)、胃(0)、小腸(1)

(0)は、小腸点に置鍼したため、その影響で圧痛点がなくなったことを示しています。

やはり、小腸経の流れを押さえたのが効いたようです。次に、頭頂部にある小腸点と第7頸痛と第1胸椎の間の圧痛点に置鍼して終了。

「肩甲骨の痛みどうですか?」

「全くありません・・・シビレもありません。」

後は、マスクをした状態のお二人と、防御服(あまがっぱ)とフェイスシールドの完全防備状態で、静かな楽しい会話をしてすごしました。

コロナヴィールス感染拡大に思う

先日、患者さんの奥様から、

「先生、これさし上げます。夏の日避(ひよ)けになりますよ。」

と、ハヤトウリを戴きました。ちょうど、コロナヴィールス感染拡大という時代の転換期に遭遇し、自らの生き方を改めて見つめ直している時の素晴らしいプレゼント。

一極集中の時代では人類が破滅しやすい。最先端を走っているニューヨークの様子をみると、ついついそう思ってしまいます。

テレワーク、リモートワークが叫ばれ、もうすでに実施されているところもあります。コロナヴィールス感染収束は、素人の私でさえ1~2年はかかるだろうと感じます。そうなるとテレワーク、リモートワークが当たり前の世の中になるでしょう。人工頭脳の導入にも拍車がかかり、医療、介護の世界も徐々に変化していくでしょう。

コロナヴィールスの押さえ込みに成功した南京(中国)では、薬をロボットが運んでいるという情報がありました。人工頭脳との共存(時代遅れの私には、ちょっと難しい・・・)が進み、病院も接触の機会を減らす方向を示すように思います。ただ、それだけでは、治療は成り立ちません。医師が触診をしなければ、なりません。また鍼灸を中心とした代替医療を、今一度見直す必要があると思います。江戸時代では、鍼灸がしっかりとした医術だったのですから。

人と会う機会が少ない今、土に触れることがどんなに心を癒(いや)すことか!

駐車場のすみにある土地の草引きをしただけで、エネルギーをいただきました。こんな時代こそ自然と触れ合うことの大切さを改めて感じました。

野菜大好きな私、とりあえず植木鉢から野菜作りに取り掛かることにしました。幸い、農業従事の患者さんが多いので、少しづつ教えてもらいます。

私の実家がある東温市河之内は、自然いっぱいの休耕田いっぱいの限界集落(65才位上の人口比が50%以上)都会からリモートワークできる人、お越し下さい。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E6%B8%A9%E5%B8%82

山元敏勝先生イン サンパウロ 2007

2007年、山元敏勝先生がサンパウロでブラジル医師にセミナーを開いた映像を紹介します。

53才女性(Aさんと呼ぶことにします)、2年前から右肩の痛みと痺れを感じるようになりました。そしてその年の6月から痛みが激しくなり、右上半身が動かなくなり、感覚もなくなりました。顔もシビレ始め、顔の感覚もなくなりました。その後、右半身がシビレ歩行困難。

山元先生の前で、イスに腰掛けていますが、右腕、右足が全く動きません。

そこで山元先生、合谷診(人差し指と親指の間の触診)。右側が触れると痛いそうです(そのため、今回は右側のみの治療となりました)。

次に山元先生はAさんの前面に立ち、首診。左右の胸鎖乳突筋と鎖骨の間(腎の診断点)に触れ、右側が硬くて痛いことを確認します。その後、右側の首の診察点を、触診。

小腸、肺、膀胱以外は、全て圧痛点があります。

「さあ、これから普通のやり方で治療します。」

と山元先生が、

①1番脳神経(臭神経と腎臓に関連しています)ねらいで、オデコ中央部の生え際に置鍼。

②腰椎ねらいで、右耳の前やや上に置鍼。

③頸椎ねらいで、オデコ中央部の生え際に置鍼。

④脳(多分大脳だと思います)ねらいで、オデコ中央部生え際のやや上に置鍼。

首診察で右首中央部の胆の圧痛点をしっかり確認されて、

⑤11脳神経(胆)ねらいで、頭頂部に置鍼。

その後、診断点(大腸、三焦=消化器、胃、脾)が柔らかくなったのを確認され、

「手を動かしてごらん?」

今まで、全く動かなかった右手が、動き始めました。そして、右足がスムーズに動きました。

山元先生は、Aさんに足を上げる時、痛い個所を聞いておられます。Aさんは、右股関節を指差しました。その後、腕を上げる時の痛い個所をAさんに伺います。すると、

「ここ(肩甲骨)!」

「あ〜あ」

山元先生は、小腸経のツボの流れを感じられたのだと思います。小腸経は、肩甲骨から頸椎7番を流れるため、山元先生は、首の小腸点の圧痛点を確認され、頸椎7番と胸椎1番の間の圧痛点に置鍼されます。ここに、置鍼された理由は、もう一つあるように思います。

それは、山元式頸椎/胸椎ソマトトープ(小さな人型)。これは、背中に逆さまの人型が2人(写真参照してください)の上の人型の頸椎7番と胸椎1番の間は、股関節に当たります。Aさんの足が動いた時、山元先生は、Aさんに痛い個所を聞き、Aさんは股関節を指差しました。その時、山元先生は右手をしっかり上げられました。「分かった。」という感じでした。

つまり、左半身の上半身、下半身の接点が頸椎7番と胸椎1番の間だと確信されたのではないでしょうか・・・・思い込みかも・・・

⑥頸椎7番と胸椎1番の間で、やや右横の圧痛点に置鍼。

これで、右腕の動きが大きくなりました。

⑦山元先生が、もう少し⑥の鍼を深く刺します。

すると、足の動きが大きく楽に。そして、手が軽く動き始め、暗い顔のAさんから、笑顔が見えました。そして、その後は涙が流れ始めました。

⑧山元先生は、胸部ソマトトープ(小さな人型)の頸椎に当たる個所(ネクタイを絞めた時の結びの逆三角形の下の頂点より、少し右の圧痛点)に置鍼。Aさんが苦渋の顔を見せます。ものすごく痛かったそうです。

すると、Aさんの腕が、徐々に上がっていき・・・頭まで到達し、ナデナデ出来ました。すると、出席されている医師から、拍手と感嘆の言葉。ただただ感動です。

30分置鍼の後、鍼を抜くと、Aさんは、自分自身で起き上がりスタスタと、普通に歩いて退出して行かれました。山元先生は・・・・

「おおお〜ナイスオーク(いい歩き)」

治療時間は10分ほどでした。

私のコロナ対策 その3

雨合羽(あまがっぱ)を着ての治療を開始しています。患者さんは、私の格好を見て、

「先生、びっくりした!部屋で雨が降りよるんじゃないかと、思うたわい。」

とか、

「あ~あ~、それはいいですね。先生も自分を守らないと・・・・気を付けくださいね。」

などと、様々な反応があります。いずれにしても、危機感を煽(あお)ることは、まちがいありません。コロナヴィールス拡大は、日に日に増してきて、長期化してくるでしょうから、鍼灸院での雨合羽(あまがっぱ)は普通になると思います。ただ、改良の余地があります。雨合羽(あまがっぱ)の上から200円で作ったフェイスシールドをかぶると、視野がぶれたり、呼気でくもったりして、中々思うようになりませんでした。

そこで、雨合羽(あまがっぱ)にフェイスシールドをホッチキスで貼り付けて、一体化することにしました。これだと、着て首のボタンを閉めるだけで、顔の前にフェイスシールドが来て便利です。そして、全くくもりません。なぜなら、フェイスシールドと雨合羽(あまがっぱ)の間にすき間があるからです。

これは、くもらない代わりに性能は良くないものとなります。すき間からコロナヴィールスは入る可能性があります。そこで、マジックテープを使って固定。バッチリです!マジックテープで、自由にフェイスシールドの角度を加減できるので、くもりません。

今のところは、何とかやれています❣️

へそ曲がり


左と右で体温が1度以上も違う!

70才代の女性患者Aさん、呼吸困難で来院されました。やせ型で肩が前に丸まって出ています。

2年前から息を吸う時に、ヒイヒイといってうまく吸えないそうです。

合谷診(人差し指と親指の間の触診)をすると、必ず左に反応があります。

Aさんの場合は、極端に左が反応するので、進化形合谷診(第2中手骨=人差し指と親指の間にある手の甲の骨を6つに区分し、頸椎、胸椎、腰椎、脳幹、大脳、小脳の診断ができます)では、ほぼ左手が反応し、首診(腎、膀胱、肝、胆、心包=心臓部周辺、心、大腸、三焦(消化器)、胃、脾、小腸、肺の診断ができます)でもほぼ左手に圧痛点があります。

初診、2回目の診察で、9番脳神経(舌咽神経)、10番脳神経(迷走神経=多くは副交感神経)、12番舌下神経(舌の運動)ねらいで置鍼したのが効いたのか、呼吸がしやすくなり、今回5回目の治療となります。4回目の治療時、Aさんが突然おっしゃったのです。

「先生、天ぷら油が右腕にかかり入院したことがあるんですよ。その時、点滴を左腕からやっていると、途中から液が入らなくなるので、右腕ばかりで点滴するようになったんです・・・・おかしいな~っと思って、左右の体温を測ったんです。そしたら、左の方が、1度以上も低いことが分かったんです。」

「すごいですね!左右の体温を測る発想が素晴らしいです❣️」

柔軟な発想のAさん、今日はこんなことを話してくれました。

「先生、左の体温が36℃になっているんで、びっくり!ひどいときは34度代の時があったくらいじゃったのに・・・汗もかけるようになった。それと、おへそが左に曲がっとったんが、真ん中に戻ってきたんよ!」

「はっはっは!へそ曲がりじゃったのが、治ったん?それは、ええこっちゃ❗️」

「そうよ、強烈なへそ曲がりじゃったけん・・・タンはまだちょっとあるけど、両肩が楽になった。」

随分良くなっているようです。今回は、後頭部にある治療点をねらい置鍼していきました。これは、慢性的な患者さんに適しています。

左:頸椎(1)、胸椎(3)、腰椎(1)、脳幹(1)、大脳(1)、小脳(1)

右:小脳(1)

(  )内は圧痛点が無くなり治療できた置鍼の数。これで基礎治療が終わり、自律神経が整いました。

左:腎(1)、膀胱(0)、肝(1)、胆(1)、心包(1)、心(1)、大腸(1)、三焦(1)、胃(1)、脾(1)、肺(1)

右:小腸(1)

( )内が0の場合は、他の鍼の影響を受け圧痛点がなくなったことを表しています。上記の置鍼以外に9番脳神経(舌咽神経)に置鍼して30分、山元敏勝先生の治療ビデオを見てもらい終了しました。

次回の報告が楽しみです。

私のコロナ対策 その2

緊急事態宣言が、全国一斉になりそうです・・・遅い!

北海道大学の西浦教授が、自らを「8割おじさん」と名のり、日本国民全員に人との接触を8割減らすことを要請されました。そうすれば、1ヶ月で感染者が減ってくるというのであれば、やってみようじゃありませか!

一人一人が自覚してやれる事を実行すればいい。

もう、今はコロナとの闘いの真っ只中。待ったなしです。

私の仕事は、鍼灸師。当然1日に4~5人の濃厚接触はあります。これを8割減らすということは・・・無理。

ールスとの接触機会を8割減らす、と解釈するしかないように思います。そのためには、患者さんがコロナヴィールスを保有していると想定して、治療にあたることだと思います。私は、雨合羽(あまがっぱ)を購入して院内でも長靴を履(は)くようにしました。

今日来られた患者さんも、

「先生、こっちの方が、安心する。」

と言っておられました。この状態でやりながら、改善していこうと思います。

とにかく、換気が大切です。少々寒くても換気をしています!

私のコロナ対策

2日前の記者会見で、愛媛県の中村知事が、1ヶ月の給与を返上するから、「不要不急の外出」を止めるように、我々愛媛県人に要請がありました。松山市の中心部にあるカード会社から「集団感染」の発生があり、しかも市中感染の疑いがあるからです。

いよいよ、愛媛県にも市中感染・・・時間の問題でした。中村知事の素早い行動を、私は称賛します。これを機に、愛媛県民一人一人の自覚が高まることを期待します。

私で出来る治療時のコロナ対策。

①朝の掃除では、次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)を薄めた水でトイレだけでなく、床拭きもしています。コロナ・ヴィールス拡大からは、特に入念に丁寧に拭いています。

②来院された玄関で、患者さんの手を消毒(次亜塩素酸ナトリウムを薄めた液)し、ついでに、玄関の引き戸も消毒。また、患者さんが触れるであろうと思われるところは、マメに消毒します。

③診断及び治療時は、患者さんはマスクをかけたまま(持参していな患者さんには、手作りマスクを差し上げます)、私は、マスクをした顔をおおうフェイスシールド(100均で200円使い作りました)をかぶります。そして、最近では飛沫感染を避けるため、患者さんと正面での会話を避け、

横向きあるいは、後ろ向きでの治療を多くしています。

④患者さんの使用した毛布のようなタオルは、洗濯プラス乾燥が出来る洗濯機で洗い、熱処理をする。

今後も改良点があれば、どんどん改良し患者さんに安心して来ていただける鍼灸院にしたいと思います。

あきらめなければ、痛みも、麻痺も必ず治る!抜粋26

 

YNSAの創始者・山元敏勝先生の著書からの抜粋です。

(絵と本文とは、全く関係はありません)

『乳がんにより乳房を切除後、自由のきかなくなった腕が、2週間で完全に動くようになった

乳房切除による運動機能障害(女性 60代 主婦)

乳がんのため左乳房切除手術を受けられた患者さんが、退院後すぐに私のところにみえました。乳房を切除するということは大変につらい決断が必要だったと思いますが、がんの手術そのものは成功し、前向きに回復にとりくまれていました。

この方は、手術で左の乳房を切除したことによって、左腕の動かせる範囲が狭くなり、腕を伸ばした状態でも胸の高さほどまでしか上がらない状態でした。

そのため生活も不自由で、早く腕を元のように動かせるようにしたいと治療にみえたのです。

YNSAの首診を行うと、腕や肩関節に関わる点と、2つの内臓と関わる点に反応を認めました。そこで、頭部のこの3つの点に針をさし、そのまま様子をみました。YNSAの治療では、通常30分ほどしてから針を抜きますが、20分たった頃、左腕に動きが出てきました。肘をやや曲げた状態ではありますが、左の手のひらが、頭の少し上にくる位にまで腕が上がるようになりました。

1週間に2回治療を行い、ちょうど4回目の治療で、腕の動きが自由になり、左腕も右腕と同じように真上まで上がるまで改善しました。

このような手術後のケースでは、通常のリハビリでもある程度までは動くようになります。ですが完全に動くようになるまでには相当の長い時間が必要になります。YNSAには、大変早くに改善が見られると言う特色がありますが、この患者さんが2週間と言う速さで改善されたのには、もう一つ大切な要素が関わっています。

それは、腕が動かなくなってから、早い段階でYNSAの治療を受けた事です。手術の傷跡はとても新しく、普通であれば家でゆっくりと休養していてもおかしくはない状態でした。

YNSAでは、このように、症状が出てから早い段階で治療を受けることで、より大きな改善がみられます。』

現在、手首の骨折手術をした患者さんを診ているのですが、その方は針嫌いでまだ1本も刺したことがありません。指で軽く触れるだけの施術をしているのですが、手術後は、全く成果が上がっていません。次回の治療では、何とかこの本を患者さんの前で読み説得しようと思います。

あきらめなければ、痛みも、麻痺も必ず治る!抜粋25

YNSA の創始者・山元敏勝先生の著書からの抜粋です。

『顔の左側に麻痺があり、左の目がつぶれない、口の左側も硬直した症状が改善した

顔面麻痺(女性 60代 主婦)

この患者さんは顔面麻痺の治療でみえました。「顔面麻痺」は顔の筋肉の働きを司っている神経にトラブルが起きることで発症する症状です。

原因は人によってさまざまですが、この患者さんの場合は、最も多いウィルスの感染によるもので、麻痺は顔の左側に起こっており、左側の目はつぶることができず、唇も左側が硬直している状態でした。そのため、来院された時には、顔が右側にややゆがんでおられました。

日南からはやや離れたところに住んでおられ、これまでにいくつかの病院で治療を受けてこられたとのことですが、全く改善が見られないということで、私のところにみえました。

普段の顔とだいぶ変化していることから、人に会うのもつらい様子で、また、目と口が思うように動かないことから、睡眠や食事、会話にも障害が起こっていました。

首診を行うと2つの内臓に関わる点に反応が見られたため、頭部のその2つの点に針を刺し治療を行いました。そして30分、針をさしたままの状態を保つと、ややこわばりが取れ、いくらか表情にも違いが見えてきました。

通院に時間がかかることから1週間に1回の治療を行いましたが、積極的に週2回来られる時もありました。

そして、8回目の治療で、目をつぶることができるまでに改善が見られたのです。患者さんはとても喜んでおられましたが、唇の硬直は残ったままで、顔のゆがみもまだ完全には改善されていませんでした。

そこで、そのまま治療を続けたところ、3ヶ月後の20回目の治療のときには、ほぼ正常の状態にまで改善がみられました。日常生活に支障がなくなったこともありますが、女性の患者さんのため、顔の変化がだいぶつらかったのでしょう。人前で普通にいられることにとても喜んでおられました。』

この患者さんのビフォーアフターの写真が、英語版の教科書に載っていましたが、その変化に驚きました。山元先生が置鍼された内蔵点は、左胆(左側の胆)と左腎(左側の腎臓)です。

写真のツボの流れでは、オレンジ色が胆(瞳子髎=どうしりょう、という目に関するツボが出発点)。茶色が膀胱(睛明=せいめい、という目に関するツボが出発点)で腎臓の表裏なので非常に理にかなっています。

また、この患者さんは、ウイルス性のものですので、ハント症候群と思われます。これは、帯状疱疹(たいじょうほうしん)のように、普段はおとなしく膝神経節(写真の指で、示しているところ)にいる水疱瘡(みずぼうそう)のウイルスが、患者さんの自己免疫力がおちてきたときに、現れて悪さをするのです。

山元先生は、これ以上詳しい治療点を紹介されていませんが、オデコにある目の感覚点、頭部正中線沿いの顔面神経点などに置鍼されたと思います。先生の症例を想像しながら紹介するのは楽しく、勉強になります。