自力自療

夜行バスに乗って7~8時間。畳の間で3~4人患者さんの治療をすると、中腰になるため、腰に負担がかかります。腰痛の一歩手前 ・・・

こういう時は、畳でゴロゴロします。どこに張りがあるかチェックし、その部位を可動域ギリギリまで伸ばし、軽くその部位が動かないように抑えます。

その後は、その部位にある筋肉をゆっくりと動かし、一番気持ちのいい力加減で味わいます。

これは、とても気持ちがいいので、ダラダラと続けます。

この動きに、ゆっくりとした腹式呼吸を加えると、非常に効果的です。

現在、私は京都市内のパン屋さんで食事をしながら記事を書いています。この時も、骨盤の調整を気持ちよくおこないなが、iPad に向かっているのです。

いつの間にか、自力自療が身についているようです。

腹式呼吸法

患者さんの中には、呼吸法が苦手で浅い呼吸になる方がいます。

そこで、イラストを描いて見ました。

私は、呼吸法の専門ではありませんが、毎日呼吸をしているので、呼吸法を語ることはできます。

浅い呼吸をしている人は、肋骨周りの肋間筋を使って肋骨を上下する胸式呼吸になっています。

深い呼吸が出来ている人は、横隔膜が大きく上下する腹式呼吸をしています。

横隔膜は、胸と腹を横断しているアーチのような筋肉です。この筋肉の上には、肺と心臓、下には肝臓と大変重要な臓器があります。ですから、腹式呼吸をすることが臓器に影響を及ぼすことは、容易に想像できます。

そんな事、分かっている・・・・けど、出来ない!

そんな方のお手伝いになれば、幸いです~~

膝をケガして、骨盤ズレた!

フラダンスをしている70才の女性患者Cさん。今回は、大きな剪定(せんてい)ばさみを使って、草刈りをしていたところ、右膝から地面に転び、右膝下に怪我。

その拍子で骨盤がずれ、良くなっていた右腰部に痛みが再発しました。

「明らかに、骨盤がずれていますね~~」

立ち姿から一目瞭然でわかります。左脚が2cmほど長くなっていました。

仰向けになってもらい、両膝を左右に倒し、やりづらい方からやりやすい方へと、両膝を戻してもらいます。ただし、私が軽く両膝に両手を添えているので、実際にはCさんの両膝は動かず、カラダの奥にある筋肉が動き、筋膜がゆるんできます。これを何度か繰り返し、脚を伸ばしてもらいます。

「は~~い、脚がそろいました!」

2cmも差のあった両足が、ぴたっとそろいました。

今度は、仰向けのまま、片膝づつを胸元に持っていきます。やりやすい膝を胸元からゆっくり伸ばしてもらいます。ただし、私が片膝に手を添えているので、Cさんの膝は動かず、カラダの奥が動きます。これも何度か繰り返します。

「あれ?ずいぶんいい感じ。」

今回は、どう言う訳か、治りが早いようです。しかし、まだ右腰部に張りがあります。

うつ伏せになってもらい、右ふくらはぎの圧痛点に鍼を刺します。服の上からでも、右腰部のゆるみは分かります。

「どうですか? 起き上がってチェックしてみてください。」

「あれ?痛くない!」

これで、治療終了ですが、打撲した右膝の治療も・・・

対角の左肘下に圧痛点を見つけ、そこに鍼とお灸をして終了となりました。よかった、よかった!

軽いギックリ腰

軽いギックリ腰になった40才代の女性患者Aさん。2回の治療ですっかり良くなりました。

一回目、痛みが腸骨の上、脊柱の両側が、前かがみすると痛みます。

典型的な、ギックリ腰だと感じたので、ふくらはぎの圧痛点、太もも内側の圧痛点に鍼とお灸で治療。

前かがみをしてもらうと、

「まだ、痛みはありますが、前かがみが楽になりました。」

3日後、二回目の来院。

「今度は、左のお尻が痛くなりました。」

「・・・ん~、チョット触っていいですか?」

Aさんの左足薬指(第4趾)を軽く引っ張りました。

「痛った~~(*≧∀≦*)」

これを天城流では、脊柱管狭窄の症状と捉(とら)えます。そして、下半身の外側の絡(から)んだ筋膜をほぐします。これを、鍼灸師の色眼鏡でみると、胆経の経脈(写真の人形・ワタ助のオレンジ色の流れ)と考えます。そこで、今回は、お尻にも長い鍼を刺し置きすることにしました。

Aさんに左を上にして、横向きになってもらいます。お尻に2カ所、腸骨の上に1カ所、足の甲に1ヶ所、置鍼。後はAさんに痛いところを聞きながら、鍼を指していきます。お灸もポイントだと感じたところに、3~7壮します。

「じゃ~、起きていただいて、チェックしてみてください。」

「あっ!お尻の痛みが取れました。でも~、腰の上に痛むが・・・」

1回目の治療で痛かったところに、まだ痛みがあるようです。うつ伏せになってもらい、左右のふくらはぎに「響き」を感じる一穴を鍼で刺します。

「今度は、どうですか?ゆっくり起きてみてください。」

「あっ、大丈夫だ!痛くない(*゚▽゚*)」

こぼれる様な笑顔のAさん。「この仕事を選んで、本当に良かった❣️」と思う瞬間です。

鍼(はり)が大嫌い!

剣道大好きな中学生B君、練習中に右足甲の靭帯(下伸筋支帯)障害。2週間前のことです。

右足首にギブスをしながら、練習をしています。その分、反対の左足に負荷がかかり、左ふくらはぎ

に痛みがあります。

また、ギブスをした右足の小指に痛みがあります。

まず、左足ふくらはぎから始めます。

ふくらはぎの筋肉を十分に伸ばして、軽く圧力をかけ、気持ちいい状態を味わいます。

その後は、痛いところに手の平を当てる「お手当」治療。

「B君な~、生まれて来て一番最初の記憶は、なに?」

「あんな~、テレビの画面につぶされた!」

「・・・ん?」

「先生、この子が2才の時、大きなテレビの画面によじ登って、テレビが倒れ、下敷きになったんですよ。」

と、お母さんが説明してくれました。

「その次の記憶は、何?」

「大阪」

「UFJか?」とお母さん。

「うん!」

などと、B君の昔話を聞きながらお手当を施しました。10分ほど経ったあと、左ふくらはぎのチェックをします。

「B君、歩いてみて?!・・・どう?」

「ん~と・・・痛くない!」

どうやら、上手くいきました。

次に、ギブスをした右足小指の治療です。親指を除く4本の指は、長趾伸筋という膝から伸びる筋肉の作用を受けます。この筋肉を覆っている筋膜をゆるめるため、散鍼(さんしん)をします。

散鍼とは、左の指先で、B君の皮膚をさすりった後、2本の鍼を皮膚とほぼ平行に持った右の指先をさすり、今度は、左の指先でさすり・・・と交互に素早く皮膚を優しく刺激する方法です。これは気持ちいいので、B君はご機嫌です。

さて、次が問題です。

B君は、お灸は大丈夫なのですが、大の鍼嫌い。鍼と聞いただけで、注射を思い出すようです。その上、痛みにたいしての感受性が大。

「痛った、痛~~~~い(≧∇≦)」

大声で叫びます。

以前、お灸施術で眠っているB君に、鍼治療をした時は、スヤスヤと眠っていたのに・・・

治療を終えて、

「はいB君、歩いてみて?」

スタスタと待合室まで歩いて行き

「痛~~~~!」

鍼を刺したスネ辺りをしきりにさすっています。

「B君、スネじゃのうて、痛かった小指は、どう?」

「・・ん?・・・痛ない。」

「ほんなら、ええわい。お着替えして下さい。」

ということで、ちょっとにぎやかな治療が終了しました。

操体法は、素晴らしい!

京都出張治療4日目。

フラダンスをしている70才の女性患者Cさん。脊柱管狭窄、坐骨神経痛と診断され右腰部が、常に凝っています。

そのため、2週間に一度ブロック注射をしています。

仰向けになり、両膝を立てて左右に倒し、どちらが倒しやすいか比べます。右腰部が凝っており、左に倒したとき、引っ張られるため右腰部に痛みを感じます。そこで、操体法治療。

右手甲を右臀部の下に置き、ゆっくりと大きく呼吸をしながら、左に倒した両膝をゆっくりと右側に戻してもらいます。しかし、介助をしている私はCさんの両膝を軽く押さえているので、実際にCさんは、動きません。カラダの内部が動き、筋膜を伸ばします。

これを何回かやり、右腰部をチェック。

「アレ?柔らかい。なんか、いい!」

ということで、7割程度は、治療が終わったような気分です。後は、右下肢圧痛点に鍼治療を行ない、ご自身で操体法を毎日行うように、お願いしました。

ブロック注射の回数を減らし、最終的には、「ブロック注射が必要なくなった!」とご報告したいものです。

一穴一撃

京都出張治療2日目

一か月半前、お尻の右側が痛くなり、長時間の運転ができず、休み休みの運転をしていた30才代の男性Cさん。次に痛みが太もも(大腿二頭筋)に移動して、立っているのが辛くなりました。

その後、痛みは治りましたが、まだふくらはぎに違和感があり、趣味のバスケットをこわごわやっています。

話を伺っているうちに、右下腿の外側に筋膜の極端なねじれがある様に感じました。

そこで、ボヤ~~と右足を見ていると、外くるぶしの20cmくらい上に、硬そうでくすんだ箇所が現れました。軽く押さえると、

「痛った~~~!」

ここだ!と思い鍼を刺ししばらくすると、右下腿がピクッと動きました。これが、ひびきです。

「もういいんじゃないかな~~、チョット歩いてみてくれますか?」

恐る恐るあるくCさん、

「・・・・ん? 大丈夫かな・・あっ大丈夫です!」

ということで、わずか5分の治療。私の最短治療がこのCさんの一穴 一撃です。

ホトケテカタツムル

5月の京都出張治療、初日。

プロのピアノ演奏者として、数十年活躍されている60代の女性患者Bさん。

長年、鍵盤を叩き続けいるため、指の可動域が極端に狭く、手自体が硬く、特に右前腕の外側に

元気がありません。

そこで、右手首から肘にかけてゆっくりと押圧。色白のBさんは、皮膚の変化が見分け安いので、右前腕の回復状態が、すぐさま分かります。くすんでいた皮膚が徐々に明るくなって来ました。

「血が通っているというか、だんだん暖かくなっていく感じです。」

今度は、母指球を丁寧にほぐします。次に、親指のストレッチ。

これは、私のオリジナル手技で行います。その名を、「ホトケテカタツムル」といいます。

ホトケテは、仏手。仏様が玉を持つ時の手の形は、微妙に中指と薬指で包み込むようになります。脱力しつつ玉を確実に持っています。ホトケという響きは、ほどけるにつながり、力みのない解放された状態を表します。

カタツムルは、カタツムリからくる全くの造語です。仏手の中指と薬指を親指に近づけると、カタツムリに似てるいるので、脱力した握り方をカタツムルという動詞にしてしまいました(*゚▽゚*)

指一本一本、手首をホトケテカタツムっていきました。その後は、Bさんの希望によりお灸を中心にの治療。

二の腕(上腕三頭筋)、肩甲骨、胸(大胸筋)にお灸をしました。

「お灸は、気持ちええわ。新京極の方で、いろんな香りのお灸売ってんのよ。お灸女子がはやってるらしいですよ~~」

「そういや~、聞いたことあります。京都にいる間、行ってみますわ!」

やはり、京都に来た甲斐がありました。最終日、是非とも新京極で買います(*゚▽゚*)

治療後、Bさんから下記のメールがありました。

佐伯先生

今日の施術ありがとうございました。

継続していけば確実に良くなる、と確信しました。

練習中のものを弾いてみましたが、指、腕の軽さが格段に違います。柔軟性も変わった感じです。特に右手が。

イラスト処方箋

患者Aさんから、突然の電話。

「先生に教えてもろた所にお灸をしよるけど、まあ~調子は、よろしい。あと、どんな体操をしたらええか、今度診てもらう時に、教えてくれんですか?」

「分かりました。そうしたら、イラストをかいてお渡しします。」

「あ~それはありがたいですわ。治療とは別に、払いますわ。」

「・・・・」

月に1回の京都出張治療だけでは、間に合わないので、毎日の体操を考えて、処方箋としてお出しすることにしました。このバリエーションは、沢山できそうです!

ツボと筋膜

臓器に対応したツボの流れは、12あります。その12の流れと、背中(後正中線)とお腹(前正中線)を流れる督脈と任脈をあわせると14の流れになります。
これらのツボには、名前がついており、361あります。それらのツボのうち、要穴(ようけつ)と呼ばれる大事なツボのほとんどは、肘から下と膝から下にあります。また、これらの部位のツボは、全体のツボの約1/3をしめています。その中でも、手首足首には、重役級の大切なツボが、集中しています。
また、首から上の頭部には、全体の1/5のツボが密集しています。1/3+1/5=8/15 ツボの半分以上は、首から上と肘、膝から下にあります。
半袖、半パンの夏姿ならば、肌が見えているところに半分以上のツボがあることになります。これは大変便利なこと。その部分に適度な刺激を与えるだけで、体調が良くなるわけですから。
さて最近、筋膜という言葉をよく耳にします。これは、カラダ全体を覆っているコラーゲンを主成分とした繊維の集合体です。骨、筋肉、内臓、神経、血管などを覆い、表層から深層まで立体的に支えています。ヘチマタワシをイメージすると分かりやすいでしょう。
この筋膜には、12の浅層、深層の流れがあり、12のツボの流れとほぼ一致しています。数千年の歴史ある東洋医学が見出したツボの流れは、近年話題になっている筋膜のながれのことかも知れません。
患者さんに鍼を刺すと、刺したところからカラダの末端まで電気が走るような「ひびき」と呼ばれる現象が起こる時があります。この「ひびき」の後、カラダが緩みます。
「ひびき」の後のゆるみ現象はなぜ起こるのか?
ここからは、私の勝手な推測です。
これは、深層のからまった筋膜に鍼が触れ筋膜がゆるみ、引っ張りあっていた末端のからまりがゆるむのだと思います。なぜゆるむのか・・・どうも、カラダに含まれている水と関係があるように思うのです。
最近、肩コリの部位に、エコー(超音波装置)に映し出された筋膜のからみに、生理食塩水を注射する治療法が紹介されています。筋膜の主成分であるコラーゲンに水が加わると、ジェル状になるため筋膜がゆるむのです。
「ひびき」もこの生理食塩水に似た現象ではないか・・・筋膜のからみに鍼が入ることで、水の移動があるのではないかと推測します。
一方、15分程度ツボに鍼を刺したままにする治療は、軸索反射を利用しています。
軸索反射とは、ツボにある感覚神経同士に刺激が伝わり、神経性化学物質「サブスタンスP」と「CGRP」という2種類の化学物質を放出する現象。
「サブスタンスP」は、組織間の水分の移動を円滑にし、筋膜をゆるめます。また「CGRP」は、血管を拡張し血液循環を良くします。しかし、この刺激は脊髄や脳には伝わりません。
お灸における刺激も、この軸索反射を利用しています。
また、熱を感知したカラダは、「サブスタンスP」以外にも物理的に水を呼びます。摩擦熱が生じると、冷ますために、カラダは水を集めマメを作ることでも容易に想像できます。お灸の熱を感知し、集まってきた水が、からまった筋膜のコラーゲンと融合し柔らかくなり、コリが解消していく・・・
このように、筋膜とツボの流れ、水と血流は深い関係があるように思います。ここで、もう少しカラダの作りについて説明いたします。多くの人々は、骨格の位置は変わらず建物のように強固なものと思っているのでは、ないでしょうか?
実際には、骨の位置は簡単に動きます。カラダの60〜70%は水で出来ています。この水袋に骨が浮いていると考えた方が良いと思います。そして、その骨をコラーゲン立体的網タイツ様筋膜が支えているとイメージしましょう。このコラーゲン立体的網タイツ様筋膜が、からまると骨も歪みます。
歪んだ骨を元に戻すのは、筋膜をゆるめればいいことになります。
そう考えると、坐骨神経痛とか脊柱管狭窄症などという診断名の呪縛(じゅばく)から解放されるでしょう!