待合室の本の紹介(その7)

「先生、本物はわかりやすいですね。この本はいいです。」

といつもご夫婦で来られる患者さんがポツンとつぶやいてくれました。そこで、改めてその本を見直しました。確かに素晴らしい。この著者は丸住和夫先生とおっしゃる操体法創始者、橋本敬三先生の元で学ばれた方です。京都府在住の丸住先生の勉強会には度々参加いたしましたが、先生は常に実験的な試みを重ね、進化し続けておられます。

また、丸住先生は、素晴らしいイラストを描かれるので、絵本を出版されています。今回ご紹介する一節がその絵本の冒頭です。ゆっくりと読んでみてください。

『なぜ病気になるのだろう

からだは動く建物だ

私たちのからだは、一軒の建物のようなものです。背骨は棟木であり、四本の手足は隅柱、また血管や神経は水道管や電気配線のようなものです。そして内蔵は、家の中身です。

構造の歪みが病気のはじまり

建物と同じように、人間のからだも生活の仕方が自然の法則からはずれたり、強い外力を受けたりすると、骨格や筋肉の構造が歪んできます。これを放っておくと血や体液のめぐりや神経の働きが悪くなり、次第に中身の内臓まで痛んで病気にすすんでしまいます。

コリや痛みは歪みのサイン

こうして、体の構造が歪んでくると、コリや痛みなどの不快感が現れます。これは、今からだに歪みがあり、このままだと病気になるぞと言う警報なのです。ですから、痛みや不快感を抑えたり消したりして警報だけを止めても、関心の体の歪みを直さなければ健康は取り戻せないのです。

からだは親切で病気出しているんだ

からだは元にもどろうとしている

野生動物はなかなか病気をしないように、すべての生き物には本来、自ら正しい構造にもどる力があります。

例えば猫は気持ちよさそうにノビをしますが、それによって歪みをなおして全身のバランスをとっています。

このようなバランスをとる動きは痛みや気持ちよさなどの簡単な原始感覚によって導かれます。私たち人間も無意識の動作によってバランスをとって生きているのです。』

バケツ1杯を運ぶ時、左手?右手?

風呂の冷めた残り湯を、20ℓのバケツ2杯、15ℓのバケツ4杯畑まで運びます。

15ℓのバケツには8割近く水が入っており、左右にそれぞれバケツを提(さ)げてゆっくり歩きながら・・・80~90歩(そのうち、14歩は階段)あるきます。このパターンでもう1回歩くと、15ℓのバケツは4杯運べます。つまり2回で15ℓバケツ運び完了。

と言っても、そんなにカンタンではありません。バケツの水面を波立て無いように、そろそろ、しっかりとしかも、脱力した姿勢で能舞台を歩くように160~180歩を歩き切らなければなりません。難所は、やはり階段。転ぶと大怪我につながります。バケツを持つ手は小指に力を入れ、脇を固め、足は親指に重心を移します。綱渡りをするような感覚です(もっと、綱渡りをしたことはないのですが・・・)。

さて今度は、20ℓの大きなバケツ。これは7割も水が入ると重くて1杯しか運べません。20ℓバケツは2個あるので、結局2往復しなくてはならず15ℓのバケツと同様160~180歩、合計320~360歩毎回あるくことになります。これを、朝夕2回するので、640~720歩水をこぼさないように気を使った筋トレが、スポーツジムに行かなくても出来るのです。

私は右利きです。右利きは左に重心を置くと安定します。そのため、大きなバケツを持つ手は右にすべきです。右手で持つとカラダが右に傾くので、自然と重心を左側に傾けようとします。この動きは右利きにとっては楽なのです。

ところが、左手でバケツを運ぼうとすると右側の不安定な動きを強(し)いられるので、フラフラします。階段では、特に不安定、怪我につながります、気をつけましょう!・・・と私にいうのでした。

操体法とYNSA

 

操体法をメインで治療している60才代男性患者Cさん。前回は、両肩が痛かったので鍼治療となりましたが、今回は操体法で治療します。仰向けになり両膝を立てもらい、左フクラハギの外側を触ると、圧痛点があります。そして、膝内側の中央部にゴロっとした圧痛点があります。この圧痛点を探ることを「膝蓋(ひかがみ)」と呼ぶこともあります。

この膝蓋(ひかがみ)で見つけたゴロっとした圧痛点を一瞬で、柔らかくする操法があります。それが、「つま先上げ」という操法です。これは、前脛骨筋(ぜんけいこつきん)という膝下から足の甲にかけての筋肉に縮んでもらい、ヒラメ筋に圧力をかけて膝ウラを緩めます。この操法は、操体法の基本操法としてよく紹介されています。

これを、山元式新頭鍼療法にあてはめると、上腕診(肘内側の横紋周辺の触診)による治療となるように思います。上腕診は、頸椎、胸椎、腰椎、脳幹、大脳、小脳の状態を圧痛点を探ることで知り、頭の治療点に置鍼し、圧痛点を消していきます(治療)。頸椎、胸椎、腰椎、脳幹、大脳は、カラダの基本。ここが整うと自律神経が整います。

また、山元式新頭鍼療法のカラダの見方に、おへそをクモの巣の中心と考え、レオナルド・ダビンチの描いた両手、両脚を開いた人体デッサンをイメージし、同心円の肘と膝、手首と足首が対応。膝を同側の肘で治したりします・・・・私はこのように理解しています。

そのため、操体法で基本操法となっている膝ウラの圧痛点消しは、肘ウラの圧痛点消しとなり、自律神経神経を整えていることになります。

さて、Cさんの続きです。左右の膝の圧痛点を取ったあと、上腕診と首診をしました。すると、上腕診には、圧痛点がありません。やはり、「つま先上げ」の操法が効いたようです。

次に、首診。

左:肝、胆、大腸、三焦

右:心、三焦

上記の診断点に圧痛点がありました。その中でも、三焦の診断点が最も痛いので、Cさんには仰向けになってもらい側頭部にある三焦の治療点に軽く指を置く操法。

「今、どんな感じですか?」

「いや~、気持ちいいです・・・カラダ中が暖かいです・・・ゆるんでいます。」

こんな会話をしていると・・・Cさん、熟睡。15分ほど寝ていただき、首診をしてみると、首の圧痛点は全て無くなっていました。Cさんには、この治療法が合っているようです。

小指

元横綱・北の富士さんの自由奔放な解説が、大好きです。聞いているだけで楽しくなるのですが、時に真面目な解説をすることもあります。昨日の大一番「朝の山VS照ノ富士」の解説では、

「照ノ富士は、小指でまわしを持ってるね・・・・・そして、最後は腕(かいな)を返している。」

これは「足は親指、手は小指」という重心安定の法則を見事に物語(ものが)っています。

今回は、「小指」について。

写真は照ノ富士が朝の山を寄り切った瞬間です。照ノ富士が左上手(うわてとは、四つに組んで相手の差し手の上から相手のまわしを取ること)で、まわしを浅く取った時、小指でしっかり引きつけると、徐々に相手の体が浮き上がってきます。

そして、下手(したて)の右腕は肘を上げて相手の体が浮くようにしています。これが「腕(かいな)を返す」というワザです。

元横綱・武蔵丸が、「技の神髄」というYouTube で「腕(かいな)を返す 」を分かりやすく説明しています。武蔵丸は26~7才の頃、頸椎を痛め、右手小指に力が入らなかったため、右腕でまわしを持たないで、腕(かいな)を返す相撲に変えたそうです。力士にとって小指が使えないという致命的な欠点を武器に変えたところが凄い。

技のポイントは、「時間をみる」という所作・・・・何?って思います・・・・右手にした時計の時間をみる所作・・・・・右手首を内に回すこと!そして同時に、武蔵丸の場合は、大きなお腹に相手を乗せて運ぶと負けることはなかったそうです。

「足は親指、手は小指、小指がダメなら手首」です。

操体法だけで治療

朝9:00から開院なので、5分前に治療所に行くと、70才代の男性患者Cさんが待合室で本を読んでおられました。

「この本だけでは、よく分かりません・・・・イラストが少ないし・・・」

Cさんは、操体法の本を開きながら、つぶやいてくれました。『きっと、操体法を受けたいんだな』

と感じ、

「今日は、操体法で治療しましょう。」

という事になりました。まずベッドに仰向けになってもらいます。すると左脚が緊張して尖(とが)った感じで、しかも右脚より2cm程長い。これは、骨盤が左下がりになっているためです。

こういう時は、長い左脚のカカトを押し込むと骨盤が元に戻ります。

「Cさん、今私が左のカカトを親指で押し込んでいます、これに対して、ゆっくりと踏みこんでもらっていいですか・・・・決して無理しないで、気持ちいい力加減を聴き分けながらやってみて下さい・・・・・・痛かったら、やめてください・・・そうです・・・カラダの中心腰を使って、背中で・・・・肩甲骨で・・・・」

などと、動きを誘導します。結果、一回の操法で左右の脚の長さが整いました。その後、4つの操体法を治療として行い、それぞれの操法に1人で出来る方法を指導。Cさんは、両膝痛で悩んでおられるのですが、歩行時の痛みがなくなりました。

「私は、操体法の方が合ってるみたいです。」

とおっしゃるので、今後Cさんには操法法を中心で治療することにしました。Cさんには、操体法の併用、融合を考えるいい機会を与えていただきました。ありがとうございます😊

後頭部刺激体操

今月に入り、慢性の患者さんに対して、後頭部に置鍼するようにしています。そして、患者さんに前頭部と後頭部どちらが効くか、伺うのですが、全員が「後頭部の方が、効く。」と言われるのです。そして、鍼刺入時に感じるのは、手ごたえがありすぎる反発力。なかなか入って行きません。これは、カルシウムが固まって軟骨のうになっているからです。

身体に含まれるいるカルシウムは、ほとんど骨にありますが、ほんの一部のカルシウムが、筋肉の表面に筋小胞体という平たい袋にを蓄えられています。これが、筋肉が縮(ちじ)むとき、使われます。それが、縮(ちじ)みっぱなしだと、カルシウムが袋からはみ出して、カチンコチンとなってしまうのです。

後頭部などは、あまり動きのない後頭筋で覆(おお)われているので、カルシウムがたまりやすいのでしょう。そこで、動画のように体操を紹介しました。動画では、クスノキ のコブを使いましたが、何でもいいです。ご自身のこぶしで十分です。まあ、ボチボチ・・・

動画は、重くて載せることができませんでした。フェイスブックでHiromu Saiki掲載してます。

自力自療

 

 

最近、夜行バスでの移動が続き、腰に張りがあります。そこで、1時間半ほど時間

をかけて「自力自療」随分楽になりました。そのレポートです。

①指先(中指あるいは、薬指)を軽く皮膚に置く操法

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、腰の治療点は色々ありますが、今回は、もみあげの耳側の生え際D点の圧痛点に軽く中指尖端を触れる事にします。

右側臥位(右側を上に、横向きで寝ます)右中指尖端をD圧痛点に軽く置き、右肘を左手の平でささえ、左肘はベッドに直角に置きますので、非常に安定します(イラスト参照)。

この操法時、足首がゆるんでくる感覚がありました。10分程で、左側臥位に向きを変え、同じ様に10分程操法を行います。

②仰向けで体重と陶石(ゴルフボールより小さい球)を使って、手と肩甲骨押圧の操法

韓国の柳泰佑博士が「人体と手の平」の相応関係を用いて、治療法を確立されました。これは、手をソマトトープ(小さな人型)と見なし腰痛を手の甲を刺激する事で治します。仰向けになって、体重で手の甲(イラスト参照)をゆっくり押圧。ポイントは、手をベッドに対して直角に置く事(親指を上、小指を上の2種類)です・・・痛いですよ・・・無理しないで、痛気持ちがいい程度に刺激します。操法のあと、すぐに動かないでゆっくりと間を作り余韻を味あうのがポイント。

山元式新頭鍼療法(YNSA)では、骨盤と肩甲骨が対応部位です。肩甲骨をゆるめ骨盤のゆるみを誘導します。そのために、陶石(ゴルフボールより小さい球)をベッドに置き、肩甲骨圧痛点に当たるように仰向け(イラスト参照)になり、体重で押圧します。操法のあとは、余韻をゆっくり味わいます。

③ ①②でカラダがゆるんだ後、クスノキの瘤(こぶ)と陶石の上を歩き、無意識の動きでカラダの歪みを取って終了。

65才になった私、自力自療の時間もっと増やします。

ありがとうカラダ


今,京都向かっています。夜行バスは、私にとって快適空間。この限られた空間で、いかに気持ちよく過ごせるかを考え、試すことは楽しいのです。消灯され真っ暗な空間ならば、なんでも出来ます。気付くと、手首足首を気持ちよく可動域ギリギリ伸ばしたり、縮めたりしています。重要なツボが手首、足首に集中しているのが良く分かります。手首足首を気持ちよく動かしているうちに、いつの間にか眠ってしまいました。

目が覚めると、大阪です。右膝をゆっくり伸ばし、気持ち良さを味会います。カラダの歪みは、誰でもあります。その歪みを正すとき、気持ちがいいのです。その気持ち良さを味会うことが、治療です。そんなカラダの仕組みに感謝しながらボーっと味合うと、益々効果がでてきます。

ありがとうカラダ。

 

 

今年を振り返って(その2)

やはり、基本は操体法だとつくづく思います。

自己責任の営み・・・息(呼吸法)、食(何を、どう食べる、食べない)、動(カラダの動かし方)、想(どういう思いで生きるか)

操体法では、これら全て自然の法則があるとしています。その法則に従って気持ちよく生きれば、良いだけのこと。しかも、100点満点はいらない、60点でいい。

決して、「欲張らない、威張らない、頑張らない、縛らない」。

これらのことは、常に気を付けています。

山元式新頭鍼療法(YNSA)の刺鍼は鍼管(しんかん=プラスチックの管)を使わないで、直接やや太めの鍼を刺します。この刺し方、そして圧痛点の探し方は、操体法の動(カラダの動かし方)が基本だと思っています。

親指の爪を使って圧痛点探しをするのですが、これは指先の作業ではありません。ゆっくり重心移動をしながら、同じ圧力を患者さんの表皮に当てなければ、圧痛点を見つけることはできません。次に、圧痛点に刺鍼するのですが、特に、山元式新頭鍼療法(YNSA)の刺鍼は、丹田の力を体重移動で鍼に伝えるような意識が必要だと思っています。そうすることで、鍼1本のエネルギーが出るのだと思います。

操体法をやってて良かった❗️

腰痛体操の続報

腰痛体操の続報

昨日、陶石を右肩甲骨内側に置いて、右仙腸関節の上の張りを取る操法を紹介しました。もう腰痛はないのですが、右耳ウラのパイオネックス(円皮鍼)付近にまだ圧痛点があります。

そこで、ゆっくり前屈すると、やや右腰背部に張りが残っていました。

右耳ウラの圧痛点に軽く指先を置き、右肘を右膝に置きます。この体勢でゆっくり「高校駅伝」を見て時間が経つのを待ちます。途中で、イラストの様に左手をゆっくり押し込み、右肩甲骨の内側を伸ばす様な動きや、ベッドでゆっくりしたりで、1時間。

これで、ゆっくり前屈すると、全く張りがありません。

カラダと向き合うことが大切です❣️