お灸は、きさじい

「今日は、(お灸を)足にして!」

と、80才代の女性患者Aさんが、来院するや否やおっしゃいます。前回は「鍼が合う」とおっしゃっていたのですが、意外な言葉に軽い驚きがありました。Aさんは、痛みに対して非常に敏感で鍼灸治療は本来あまり好きではありません。ところが、半年前から、左膝が痛くて歩けなくなりそうになり、親族の勧めで通院するようになり、現在は膝の痛みはありません。

体調管理のため、週に1回のペースで治療しています。私が足にやっている灸は、糸状灸という糸のように細い灸と米粒大(米粒の大きさ)の中間くらいの大きさです。そして、紫雲膏という火傷に効く軟膏を皮膚に塗り、その上にお灸をのせ線香の火をつけて焼き切るようにしています。紫雲膏の量とお灸の大きさと、患者さんの感性を見極めながら施術します。8割方は、1壮(1回のお灸)だけで、診断点の圧痛はなくなります。見つけた足の治療点は、今月から、お灸の残りカスを写真に残し治療点として記載しています。1日に1~2の症例が出来るので年内には、数百の症例は出来上がると思います。

私自身にも、このお灸をするのですが、一瞬だけ「ドン!」と熱さが来ます。その熱さからエネルギーをもらえるのです。ほんのちょっとの火が、とてつもないパワーをもたらす・・・・何という効率の良さなのでしょう!患者さんの様子を見ていても、狙った診断点のところが異常に緊張し、その後緩むのが見て取れます。ですから、治療点と確信しているのです。

これは、頭部の治療点を押圧した時の、診断点の緊張と同じ感覚です。

「お灸は、きさじい。」

ポツンとAさんが帰られる時に漏らした言葉・・・?

「きさじい???・・・・何という意味?」

「・・・あの人の仕事は、きさじい・・・なんか言うんよ。」

「きさじい・・・効率がええとか、早いとか?そしたら、お灸は即効性があるいうこと?」

「そうそう!」

伊予弁・・・・恐るべし!

患者さんから学ぶ

20年前に交通事故で右半身がマヒし、現在も右手に痺れとふるえがあり、右足も感覚が鈍っている60才代の男性患者Bさん。5回の治療をしましたが、全く良くならず、今回で終了となりました・・・・完敗です。

前回の治療では足にお灸をして、かなり成果を出したのですが、翌日には元に戻っていたそうです。私の力はこの程度です。もう一段階アップする勉強が必要です。山元式新頭鍼療法(YNSA)の創始者山元敏勝先生は、Bさんのような患者さんを、当たり前のように治しておられたのですから・・・・道は長くて遠いです。Bさんに「もっと勉強して!」と説教をしていただいたようで・・・改めて、患者さんから学ぶ事に感謝。先日は、別の患者さんから、

「先生、このYouTubeは凄いよ!」

と、世古口裕司さんを紹介してもらいました。これは、ショッキングで目からウロコがどっさりでした。これを機に、洗剤や洗濯用石鹸を重曹に変えることにしました。歯磨き粉は、重曹にココナッツミルクを混ぜたものにしていますので、重曹が生活の中心にドッカリと根付き始めています。興味ある方はYouTubeで世古口裕司さんを検索してみてください。

今から、世古口裕司さんのYouTubeを見てから寝ようと思います。

自然素材で治す

モグサは、よもぎの葉の細かい毛を集めた自然素材。モグサに火をつける線香もまた、﨓(タブ)の木の樹皮を粉末にしたものに、白檀(びゃくだん)や伽羅(きゃら)といった香木の粉末や他の香料、炭の粉末、その他の材料を加えて練り、線状に成型・乾燥させたもので、自然素材です。特に鍼灸師用の線香は、煙と灰が少なく太めの線香になっており、使い勝手がいいのです。

冬場になり、手足が冷えて仕方がない患者さんには、鍼とお灸の治療でどちらがいいのか伺うようにしています。足に焼き切るお灸をしているにも拘(かか)わらず、お灸を望む患者さんが多いのです。今回の60才代の女性患者Aさんも足のお灸を希望されました。

「お灸からは、痛いけど元気をもらえるんです。」

私も最近、糸状灸(糸状になった細いモグサの艾炷→ガイシュ)と紫雲膏(火傷に効き、艾炷を立てる土台になる)の形状と量の関係を自分のカラダを通して人体実験しています。Aさんが言われるように、あの火から瞬間的にエネルギーをもらえます。カラダがシャキッとするのです。自然素材と火だけで、カラダが良くなる療法を素晴らしいと思いませんか?石油で出来た病院の薬に頼っているカラダを不自然と思いませんか

見つけた足の治療点に、糸状灸を1~2壮すると肘、膝、首の診断点が緩みます。Aさんの様子を観察すると、糸状灸の火が皮膚に到達した瞬間、診断点の首が緊張するのが分かります。その次の瞬間に緩むのだと思います。首は内臓の状態が分かるので首が緩むことで内臓が整い、治療点のある足も暖かくなるのです。

今後もAさんのような症例をしっかりと集めて行こうと思います。

シモヤケにお灸

40才代の女性患者Bさんに、硬式ボールを使ったセルフケアやお灸の仕方などを指導しました。Bさんは真面目にセルフケアをしているので、息子さんまでお灸をする様になったそうです。

「先生、息子が面白いこと言うんです。足先が紫色にシモヤケになってしまたので、私がしていたお灸を自分でやってみたそうです。そうしたら、気持ち良くて続けてやってお風呂にはいると、足の色が随分よくなったんです。」

お灸は血流を良くするので、シモヤケにはピッタリです。また、紫雲膏(シウンコウ)がシモヤケに効くことを説明したので、真面目なBさんは私の紹介した漢方薬局で買うことでしょう(Bさんはもうすでに、この漢方薬局で生活指導、アドバイスを受けておられました)。Bさんの息子さんのように家族でお灸を体験し結果を出すのは理想的です。このような形でお灸が広がっていくことを願っています。

次回Bさんは、3週後に来院されますので、息子さんのシモヤケがどうなったのか伺うのが楽しみです。

紫雲膏とシミ

患者さんや付き添いの方から、色々教わります。今回は紫雲膏(しうんこう)について学びました。付き添いの方が、漢方薬局を経営されており、70才代で患者さんとして来られている奥様のマスクを外して、

「ね、綺麗な肌しているでしょう?」

元々色白の奥様ですが、陶磁器のような透(す)き透る肌に、驚きました。そしてシミが全くありません。これに2度驚きました。とても、70才代の肌ではありません・・・・・実は私、コメカミ付近に大きなシミがあり、少々気になっていたのです。その瞬間、紫雲膏信仰者となってしまいました。それと同時に30才代の時、鍼灸師のS先生から、紫雲膏の素晴らしさを教えていただいたにもかかわらず、使わなかった自分に情けなくなったのです。ですから、これから毎日使ってみます。数ヶ月後にシミがどのようになるのか・・・・楽しみです。下記は、インターネットからの引用です。

『江戸時代の医師 華岡青洲が、中国の明代に作られた「潤肌膏(じゅんきこう)」に豚の脂を加えて命名されたと伝わっています。

【紫根(シコン)】

数年前に、その美肌効果が注目され、肌のシミが消える!と紫根の化粧水が流行りました。その他の効能としては、解熱、解毒、抗菌、炎症を鎮める、傷の治りを早める、抗腫瘍作用などが言われています。

【当帰(トウキ)】

婦人病に良く使用される生薬ですが、外用として使用すると、傷の治りを早めたり、肌の血行を良くして潤す働き、鎮痛作用があると言われています。

【胡麻油(ゴマユ)】

紫雲膏の基剤として使われており、それぞれの生薬を馴染ませる役割があります。作用としては肌を潤す働きがあると言われています。

【蜜蝋(ミツロウ)】

ミツバチが巣を作る為に分泌する液体を固めたもの。化粧品やキャンドルなどにも使用されます。肌の保湿や抗菌作用などがあると言われています。

【豚脂(トンシ)】

豚の脂肪。肌を潤し、解毒する働きがあると言われています。』

小波津式神経筋無痛療法

治療の世界に身を置くと、今まで全く知らなかった世界にで会う事があります。山元式新頭鍼療法(YNSA)創始者、山元敏勝先生に宮崎でお会い出来、頭に鍼を刺すだけで脳梗塞などの難病を治す世界を知りました。残念ながら、私はYNSAを習得してから3年目ですので、まだ難病を治せません。それでも、腰痛、五十肩、頭痛などの治療はできます。セルフケアの指導も出来ます。

先日、友人から小波津式神経筋無痛療法という治療法を教えてもらいました。この小波津先生は、プロ野球選手を目指して沖縄の名門興南高校に入学するも、怪我で大学、社会人野球の道を閉ざされ、柔道整復師になられます(この生き方が、チャランポランに生きている私との大きな違いです・・・・もっとも、先生と比較すること自体、おこがましい!)。そして、20年位前から神経と神経を繋く手技を見つけられ、大怪我、難病を次々治されました。まだお若いのに50万人の症例をお持ちです。特に有名なのは、広島カープ元監督の金本氏が棘上筋完全断裂の際、棘下筋を正常にする事で、野球選手として復活させた逸話です。この様な例は、日本プロ野球でもアメリカメジャーリーグでも初めての症例だそうです。

この小波津式の手技は、患者さんに軽く皮膚に触れるだけで、不随運動を起こさせ、神経伝達を正常に戻すようなのです。現在、小波津先生のセミナーは圧倒的支持を得ており、私もやっとギリギリでセミナー参加に滑りこみセーフでした。今週には、鈴木医師(様々な難病の患者さんの治療をされています)が、医師の立場から小波津式神経筋無痛療法を語るセミナーがリモートで開かれるので、参加します。本当に楽しみです。

目の前の積み木

先日、山元式新頭鍼療法(YNSA)の全国大会のリモート会議の録画を拝見しました。加藤直哉先生始めとする幹部の諸先生方が、医学論文を発表され本当に勉強になりました。また、山元敏勝先生の脳梗塞の患者さんに対する治療動画を拝見出来たのは貴重な体験でした。諸先生方のレベルは、YNSAで治療を始めて3年目の私に比べると次元が違いすぎるのがよく分かります。

ただ、私のレベルでも私の前にぶつかる壁を自分なりに解決することで、少しずつレベルアップしていけば、それで良いのです。そして、つくづく感じるのは四国という離島で、1人手探りの治療をしている幸せ。ほとんどマダガスカル島になっています。元々、木を積み上げる芸術活動をしていた少し変な人。鍼灸医療の世界に入っても目の前の積み木を、精一杯積み上げようとしているようです。無理せずやって行こうと思います。

足だけで治療できます

頭に鍼を刺すのが嫌いな女性患者Aさんには、見つけ出した足の治療点にパイオネックス(皮内鍼)を貼る治療で対応しています。これだけで自律神経と内臓を整えることが出来ます。また、下肢、上肢の圧痛も治療出来ます。今回のAさんは、右肩甲骨内側に痛みがあったのですが、なくなりました。但し、足は頭に比べ小さいので、治療点を見つける爪の角度や位置がより繊細になります。そのため、集中力がかなり必要となります。今回の治療では、脇に初めて汗が流れて来ました。治療後、Tシャツ、長袖、白衣(本当は紺色)の全てが濡れていたのには驚きました。

足の圧痛点の痛みはもの凄く激しいので、ピッタリとパイオネックスを貼れると、診断点の痛みはウソのように無くなります。パイオネックスと同様に、お灸を据(す)えることで診断点の痛みを取ることも出来ます。今日はAさん以外にも80才代の女性患者Bさんに、足だけの治療を行ったのですが、全てお灸治療となりました。今月病院でレントゲン撮影をし、腰椎4番の圧迫骨折と診断されたBさんですが、お灸だけで腰の痛みが全くなくなりました。

実は、Bさんには「頭の鍼と、足のお灸どちらがいいですか?」と伺っていたのです。Bさんは、足のお灸を選択されたので、足にお灸をしたのです。今後、このように患者さんが選択できる治療が出来ると鍼灸治療がもっと浸透していくように思いました。

はり師ときゅう師

 

私は鍼灸師ですが、国家資格として「はり師」と「きゅう師」の2つを持っています。ところが、はりときゅうの使い分けをあまり考えていませんでした。そこで、ヒントになる文献に当たったので、掲載します。

 

『 では、お灸と鍼はどうやって使い分けていると思いますか?

お灸は血の流れを良くし、鍼は気の乱れを調整する医術として発生したと古来より考えられています。東洋医学の専門家は血と気の言葉の背景にある意味がわかりますからこの説明が一番簡潔なのですが、それ以外の方には良くわからないと思いますので、私なりの簡単な言葉での解釈を付け加えます。

ヒトは体の調子が崩れてきたとき元に戻りたいという現象として「症状」が表れます。この時はまだ体力があります。鍼治療で大丈夫です。

身体を休めずに同じ生活を続けると体内で熱を作る力が衰え冷えを受けやすい状態になります。灸治療が必要です。

体力のある病気の人に対しては鍼治療単独で緩解しますが、体力を消耗し身体が冷えを感じている人や長期間患っている病気の人は、灸治療が必要だという事です。体調が少しくずれた患者からガン患者まで鍼灸治療が幅広く適応なのはこんな理由からです。』

このことから、足が冷えている患者さんにはお灸が最も必要であると感じました。置鍼した後、足が冷えている患者さんにお灸をするという治療システムを作ってみようと思います。

お灸のイメージ

患者さんとお灸の話をしていて、イメージのギャップに驚きます。お灸=やけど・悪いことした時のお仕置きという負のイメージを多くの患者さんが持っています。私は、こんなに安くて手軽な健康促進剤はそんなに無いと思っています。しかも、作ろうと思えば5月にヨモギを採取、乾燥し、石臼で細かくし、ヨモギの葉ウラにある細かい毛を集めれば、モグサになります。不純物が少なくなればなるほど、上質のモグサになります。上質のモグサは高温になりにくく、米粒か半米粒の大きさで使われ、皮膚に火が届く前で、火を消すので、間接灸なのです。

粗悪なモグサは、高温になるので、大きな固まりにしてニンニクのスライスやビワの葉の上に乗せ間接灸として使用されます。この大きな固まりが多く人のイメージでしかも、皮膚まで焼き切る直接灸だと思い込んでいるはずです。

お灸には大きく分けて間接灸と直接灸に分類されます。多くの人がイメージしているのが直接灸、つまり皮膚まで火が付くヤイト。これは、今の鍼灸師はしていません。全ての鍼灸師が行っているのは間接灸です。ただ、カガトのように分厚い部位には直接灸をすることもあります。また、糸状灸という糸のような細いモグサで焼き切る直接灸もありますが、それは間接灸といってもいいほどの灸です。

ここで、科学的な灸の効果を紹介します。

①心地よい温熱刺激で、鎮痛と、筋緊張の緩和の効果

これらは、血流改善の効果の結果です。

②免疫機能の活性化の効果

お灸をすることで、白血球数が増加したり、

また、アレルギー体質を改善したりする効果があります。

③灸の香りにより、心身をリラックスさせる効果

お灸の材料のヨモギには、シネオールという、リラックス効果

のある、香りの物質が含まれていることがわかっています。

④動物実験では、お灸により免疫に関係する細胞(NK細胞、サイトカイン)

が活性化し、生存率を高めることが報告されています。