操体法とYNSA

鍼治療が嫌いな40才代の女性患者Bさん。最近、休息を十分とっているので、体調が比較的良いそうです。ただ左肩がやや上がりづらい。

鍼治療封印中のCさんは、操体法で治療します。

Cさんに左側を上にして横向き(左側臥位といいます)になってもらいます。左肩が悪いと、左腰に圧痛点があります。

「Cさん、左足をベッドの外に、ゆっくり投げ出していただいてよろしいですか?」

「はい・・・・こんな感じですか?」

Cさんの左足がベッドより低い位置に下り、足の重さで徐々に螺旋を描くような動きが生まれてきます。Cさんの足先を右手で軽く包み込み、踵(かかと)を左手で支えるように軽く触れます。

Cさんは、これだけで気持ちいいのですが、この状態から、元の状態にもどる動きをしてもらいます。

「はい、そうしたら・・・この状態から、ゆっくりと足先を、元の方向に戻していただいて

よろしいでしょうか?・・・実際には、私が足を持っているので、動くことはないのですが、カラダの中がゆっくり動きます・・・・決して無理しないで・・・・カラダの中心・腰を使いながら・・・気持ち良く・・・・・・・・痛かったら、やめてください。」

このような言葉がけをしながら、動きの操法を続けます。

「Cさん、左肩はどうですか?」

「あっ・・・上がりやすくなっています。」

次に、皮膚に触れる操法。Cさんに左肩の圧痛点を聞き、それに対応する左下肢の圧痛点に軽く指先を触れるだけです。約10分くらいで、カラダに変化が現れます。最後は、左肩に対応する頭の部位に指先を置き、Cさんは仰向けでゆっくりしてもらいます。

「あ~~、気持ち良かった・・・頭に触れもらうの、気持ち良かったです。」

これで、Cさんの左肩が、す~と上がりました。

操体法と山元式新頭鍼治療法(YNSA)は、うまく融合出来そうです。次回は、Cさんの言われたように、頭に指先を触れる操体法を多くしてみましょう。

首のコリを腰で治す


体調崩すと来院される60才代の男性患者Aさん。今回は、左の首に硬いコリを感じ体全体が火照(ほて)って仕事もできない状態です。まず合谷診(人差し指と親指の間の触診)をして、A点(おでこ中央部の生え際)に5本置鍼。

以前、下記のような相関関係を述べたことがあります。

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰椎

Cさんの場合、左頚椎1~2番にコリがあります。ということは、左腰椎4~5番にコリ、圧痛点があるはずです。

「Cさん、ここ・・・・どうです?」

「痛った‼️そこじゃ、先生そこじゃ‼️」

やはりありました。よくよく見ると、その圧痛点の2cm内側の腰椎に、5~6cmの手術の跡がありました。10年前、脊柱管狭窄のため、チタン合金のプレートを埋め込み、ボルトで止める手術をされたそうです。その周辺の筋膜は、著しく歪み、頚椎を引っ張っているはずです。頚椎はその引っ張りに対して、コリを作っていると考えます。

寸6の3番鍼(長さ50mm直径0.2mm)で、圧痛点に直刺。

「ひやーーー来た‼️背中がのけ反る・・・星がチカチカ出た‼️・・・・カラダが熱い・・・・汗がバーッと出てきた・・・・先生ここじゃ、ツボに入ったんじゃ。今度は、足のウラがジンジンしてきた・・・・こもった熱が出よる❗️先生、足首がよう動く、左ももの痛みも無くなった」

Cさんは、カラダに起こっている変化を的確な言葉で実況放送してくれます。

「先生、今日はこの1本だけでええ。もう十分じゃ。」

「目がよう見える、首のこりも無いなった。」

Cさんが、治療の終了も決めてくれます。ありがとうございます。

惚れる&惚ける

「これからの人生を楽しく笑って行きましょう」と書かれた紙には、

いたわりも、耳が遠くて、怒鳴り声

忘れ得ぬ、人はいるけど、名を忘れ

医者と妻、急にやさしく、なる不安

驚いた、「惚(ほ)れると、「惚(ぼ)ける」は同じ文字

これを下さったのは、80才代の女性患者Aさん。

いつもニコニコ冗談を言って治療を受けられます。今日は、人工関節の右膝が痛み、腰(胸椎12番~腰椎2番くらい)が痛いそうです。

まず右膝は、右肘で診ます。右肘の圧痛点に3本置鍼。

「どうですか?歩いてみてください。」

「あら?いいみたい・・・」

今度は合谷診(人差し指と親指の間の触診)で右の胸椎、腰椎のコリを確認。右耳の上にある胸椎12番に対応する圧痛点に置鍼2本。耳ウラの腰椎2番に対応する圧痛点に置鍼1本。

「どうですか?」

「いいみたいです~~」

「それでは、ベッドでゆっくり横になって、フォークソングを楽しんでください。」

Cさんは、フォークソングを聴きながら、当時の事を思い出すのが大好きです。

ゆっくりと時間が経って行きます。

「先生、1週間前から口内炎が舌にできて、痛いんですけど・・・・」

「じゃあ~、鍼刺しますよ。」

「口内炎にも、効くんですか・・・・やっぱり言ってみるもんだわ。」

という事で、オデコのツボに置鍼2本。

Cさんには、30分ゆっくりと横になってもらい終了。

「先生、舌はまだ痛いです。」

「そうですか・・・そしたら、パイオネックス(皮内鍼)を貼っておきましょう。」

置鍼したオデコに2個貼って様子をみることにしました。来週の報告がたのしみです。

ガニ股を治そう

「やっぱり運転しよったら、どうしても、ケンビキ(肩甲骨内側)が、痛なるんよ。」と運送業を営む50才代の男性患者Cさんが、来院するなり、おっしゃいます。

「そしたら、また石の上を歩いてもらいましょか。」

今回は、石の数を1~3に途中で変えたり、クスノキの瘤(こぶ)にしたり(写真参照)して、なるべく長く歩いてもらいました。約10分、頑張ってもらいました。

「今、ケンビキは、どうですか?」

「足ウラが痛いけん、ケンビキは忘れとらい・・・・もう、痛ないな、ひどいもんじゃな~。ピリピリしよったんが、治っとらい。」

どうやら、8~9割の治療はこれで終了。この状態で、合谷診(親指と人差し指の間の触診)をしてみると、右腰椎点にコリがあるだけで、調子はいいようです。オデコの左上(C点) に2本置鍼。左耳ウラに1本の置鍼。

もう一度、ケンビキ(肩甲骨内側)を丁寧に診ると、少しコリが残っています。そこで、左腸骨と腰椎の間の圧痛点に鍼を刺し抜いて、

「Cさん、ケンビキどうですか?」

「ん・・・大丈夫じゃ。」

「ここで治っても、運転しよったら、左足がだんだんガニ股になって、気がついたら、クラッチを小指側で踏みよるんじゃけど・・・・」

「少し左足を引いてみたら?・・・・剣道の構えみたいに・・・」

「そうじゃね~、それがええかもしれん。」

Cさんは、ご自身のガニ股が、お尻の筋肉を縮めそれが、ケンビキ(肩甲骨内側)の痛みに影響している事を理解していますが、なかなか、ガニ股歩きを治すことが難しいようです。

仕事の姿勢で歪みを作っている患者さんが、非常に多いのでこまめに指摘し続けるしかないようです。

下顎骨と腸骨

3年前から、頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

「先生、先週は、調子が良かったんです・・・けど、昨日、好きな歌手のミニコンサートに福山(広島県)まで行って・・・ショッピングモールで立ち上がったら、床、天井がゆらゆら・・・・調子が悪くなりました。後頭部が重いし、こめかみ、アゴが痛いです。それから、目が疲れて、見えない時があるんです。」

「・・・・そしたら、バランス感覚に関係ある、内耳神経や、目のツボにまず、鍼をしまし、ょう。」

と、いきなり内耳神経、目、耳のポイントに置鍼。その後、合谷診をしながら、頭に置鍼します。

「どうですか?・・・まだ、痛いですか?」

「アゴが痛いです!」

そこで、治療室の骸骨のモデル(トンスケと言います)を、まじまじと見て、Cさんのアゴ(下顎骨)と、ダブらせます。ダブらせたトンスケののアゴに対応するのは・・・・腸骨。

「Cさん、お尻に痛いところがあるか、チェックしますね・・・・どうですか?」

「痛い!」

圧痛点に2寸の長い鍼を3本刺し置き。それでも、まだアゴの痛みが少し残っています。Cさんにその個所を教えてもらい、それが、腸骨のどこに当たるか見当をつけ押圧。

「痛い、先生、そこ痛い!」

Cさんの痛がる個所に2寸の鍼。すると、

「来た!・・・・アゴ・・・痛ない、大丈夫です。」

やはり、腰の腸骨と、アゴ の下顎骨はしっかり対応しているのです。

クモ巣とおへそ

60才代の常連の男性患者Aさん、体調が悪くなると、当日電話で来院。平均すると月に2回くらいの治療となります。本日は、左腰外側に痛みがあります。

合谷診をして、頭に置鍼した後、Aさんに左腰の痛いところを教えてもらいます。

最近は、左腰痛ならば、左肩の圧痛点に刺鍼する治療法で対応しています。山元式新頭鍼療法(YNSA)を治療の中心に置くと、明確な造形がイメージできます。

子宮内の赤ん坊は、おへそが中心で、渦巻き状に成長を続けます。これは、山元先生が見て閃(ひらめ)かれたクモの巣の造形につながります。

おへそがクモの巣の真ん中。Aさんを小さくして、大の字になってクモの巣にかかってもらいましょう。勿論、クモの巣中心に、Aさんのおへそがあります。

すると、Aさんの左腰圧痛点が、同じラインの左肩にも圧痛点として出ています。その左肩圧痛点に刺鍼すると、左腰圧痛点が消失していきます。すると、新たな圧痛点が出てきます。それも、このラインを見ながら刺鍼して治療していきます。

今回のAさん、最後の最後のに、

「先生、左の足の小指側に一カ所、もの凄く痛いところがある」

と右足親指で、場所を教えてくれました。そこで、Aさんの左手小指側に圧痛点を探します。

「痛い‼️先生、そこめっちゃ痛い‼️」

圧痛点に刺鍼。

「先生、痛ない‼️」

素直なカラダのAさん、ありがとうございます!

足ウラが大事なんじゃ

3日前に、「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」と来院された運送業を営む50才代の男性患者Cさん、本日も来院。

「どうですか?」

「やっぱり、ケンビキ(肩甲骨痛)が気にならい。」

「そうなん・・・また、ガニ股になっとるね~」

「気をつけとるんじゃけどな~~」

そこで、今回は人工芝の上に置いた陶器の球の上を歩いてもらう事にしました。ゴルフボール位の大きさ。この上に足ウラを置き、体重を乗せると、

「痛っっっった‼️・・・これは、無理じゃ・・歩けん」

「痛かろう・・けど、ちょっとガマンして・・・・やれる範囲でやってみて・・・」

痛かろが、どうであろうが、7分間自身のカラダと付き合っていただきました。その後、前回同様、肩甲骨に対応する腸骨周辺の圧痛点を探しますが・・・・なかなか見つかりません。

「前は、すぐに見つかったのにな~」

「あんまり、ここじゃ!ちゅうとこが、ない・・・」

などと言いながら、臀部に3本置鍼し、20分程ゆっくりしていただきます。鍼を抜いた後、

「Cさんもう一度、人工芝の丸い石、歩いてみます?」

「・・・・う~ん、歩いてみよか」

するとCさん、歩けなかった丸い石を、嫌々ながらも歩けました。

「歩けるようになっとる・・・やっぱり、足ウラが大事なんじゃ・・・」

「そうじゃろ・・・土台じゃけん。」

Cさん、足ウラが柔らかくなると、ケンビキ(肩甲骨痛)が気にならないようです

柳の下のドジョウ?

30才女性患者Aさん、右肩甲骨の内側に痛みを感じ、カラダをひねると痛みが増します。

合谷診では、やはり胸椎にコリがあります。左肩甲骨に対応する左生え際C点に3本置鍼。

前日、運送業を営む50才代の男性患者Cさんが「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」と来院されましたが、AさんもCさんと同じところに痛みがあります。ということは、Cさんと同じ治療法が考えられます。

肩甲骨と胸椎の間の痛みを、腸骨と腰椎の間にある圧痛点に置鍼し、肩甲骨の痛みを取る。

はたして、「柳の下のドジョウ」になってしまうのか・・・やってみないと分かりません。

Cさんの場合、腸骨の圧痛点は、比較的簡単に見つかりましたが、Aさんの場合、なかなか見つかりません。この場合、患者さんにどこが痛いのか、しっかりと聞くことが大切です。

その痛点に対応する腸骨と腰椎の間の位置を推測し、押圧すると見つかりやすいです。ようやく見つかり、置鍼。一カ所見つかると、徐々に見つかり始め、合計5本の置鍼となりました。

「ひねっても、痛みが無くなりました。ガムテープのノリの部分が少し残っている感じです。」

そこで、胸部ソマトトープ(小さな人型)の肩に対応する、胸骨柄の圧痛点(イラスト参照)に鍼をして、改善出来ました。どうやら、ドジョウは見つかったようです。

ケンビキが痛い

「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」

運送業を営む50才代の男性患者Cさん、入室するや否や、訴えて来られます。

松山市に戻り、開業したのは3年前。それまで、色々なところで生活していたので、記憶が定かでない方言があります。

ケンビキがそれです。これは、口内炎、肩コリ、歯痛等を指すようです。Cさんの場合、肩甲骨の内側を押さえながら喋っているので、肩コリと推測できます。ただ、鍼灸師ならば「腱引き」という民間療法を思ってしまいます。私も一時期、腱引き治療をしていた時もありました。これは、達人ともなると、凄い技です。

いずれにしろ、Cさんの肩コリ。何とかしなくてはなりません。

「また、ガニ股で歩いたり、運転も、ガニ股になっとるんじゃろ?」

「ほうよ、ほうよ、気にはしとるんじゃけど、気がついたらクラッチも小指側でな、こやって、こやって踏んどらい。」

「そんなことしよったら、ここで治しても、ついじゃろ(同じでしょう)。」

「分かっとるんじゃけどな~、ついつい楽じゃけん。」

「それが、いかんのよ。」

大した指導にはなっていませんが、一応注意だけはしておきます。

今回は、ケンビキという肩甲骨内側を指定し治療を願っているので、

「ケンビキだけじゃな~、そしたらな、痛いほうを上にして、横になってくれます?」

肩甲骨と骨盤の腸骨は、よく似ています。骨盤は、仙骨+尾骨と寛骨からなります。寛骨は、腸骨と坐骨と恥骨からなります。と文字で表すと混乱しますので、イラストで確かめてください。

よく似ている肩甲骨と腸骨は圧痛点も同様に現れます。Cさんは肩甲骨の内側の1点が痛くてしかたがありません。そこで、腸骨稜から内側の圧痛点を探します。

「痛った‼️そこじゃ。」

しっかり2寸の鍼で3本ほぼ同じ個所に刺しました。

「どうですか?」

「ありゃ、痛ないわい。」

本日は、短時間の治療で終了しました。

下顎骨と寛骨

3年前から、頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

「先生、先週は調子良かった。水曜日には、友達と初めて食事に行けた。今までやったら、夜に外出なんか、考えられんかったのに・・・」

「それは、良かった!・・・・頭の後ろに刺したんが、良かったんじゃろか。」

いつものように合谷診をして、頭に置鍼。しかし、Cさんは、アゴに痛みが残っています。そこで、頭の後ろに6本置鍼。

これは、頭頂部から後頭部の正中線上にあるソマトトープ(小さな人型)の、アゴを狙って鍼を刺したのです。

これで、かなり痛みが軽減しました。まだ残っている痛みをどこで取るか・・・

そこで、考えました。以前、

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰

といった相関関係を述べたことがありました。⇄は、よく似ていて、圧痛点も相関関係にあると考えます。とすれば、下顎骨あたりが痛いCさんは、寛骨に圧痛点があり、鍼を刺して治るのでは・・・と思い、丁寧に診ていき見つけました。

「痛い!先生、そこ痛い!」

2カ所に4本刺して抜きました。

「先生、消えた!痛みがなくなった。」

長持ちできるように、寛骨の圧痛点3カ所にパイオネックス(円皮鍼)。さて、今回はどの位保つのでしょう?ちょっと、楽しみです。