クモ巣とおへそ

60才代の常連の男性患者Aさん、体調が悪くなると、当日電話で来院。平均すると月に2回くらいの治療となります。本日は、左腰外側に痛みがあります。

合谷診をして、頭に置鍼した後、Aさんに左腰の痛いところを教えてもらいます。

最近は、左腰痛ならば、左肩の圧痛点に刺鍼する治療法で対応しています。山元式新頭鍼療法(YNSA)を治療の中心に置くと、明確な造形がイメージできます。

子宮内の赤ん坊は、おへそが中心で、渦巻き状に成長を続けます。これは、山元先生が見て閃(ひらめ)かれたクモの巣の造形につながります。

おへそがクモの巣の真ん中。Aさんを小さくして、大の字になってクモの巣にかかってもらいましょう。勿論、クモの巣中心に、Aさんのおへそがあります。

すると、Aさんの左腰圧痛点が、同じラインの左肩にも圧痛点として出ています。その左肩圧痛点に刺鍼すると、左腰圧痛点が消失していきます。すると、新たな圧痛点が出てきます。それも、このラインを見ながら刺鍼して治療していきます。

今回のAさん、最後の最後のに、

「先生、左の足の小指側に一カ所、もの凄く痛いところがある」

と右足親指で、場所を教えてくれました。そこで、Aさんの左手小指側に圧痛点を探します。

「痛い‼️先生、そこめっちゃ痛い‼️」

圧痛点に刺鍼。

「先生、痛ない‼️」

素直なカラダのAさん、ありがとうございます!

足ウラが大事なんじゃ

3日前に、「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」と来院された運送業を営む50才代の男性患者Cさん、本日も来院。

「どうですか?」

「やっぱり、ケンビキ(肩甲骨痛)が気にならい。」

「そうなん・・・また、ガニ股になっとるね~」

「気をつけとるんじゃけどな~~」

そこで、今回は人工芝の上に置いた陶器の球の上を歩いてもらう事にしました。ゴルフボール位の大きさ。この上に足ウラを置き、体重を乗せると、

「痛っっっった‼️・・・これは、無理じゃ・・歩けん」

「痛かろう・・けど、ちょっとガマンして・・・・やれる範囲でやってみて・・・」

痛かろが、どうであろうが、7分間自身のカラダと付き合っていただきました。その後、前回同様、肩甲骨に対応する腸骨周辺の圧痛点を探しますが・・・・なかなか見つかりません。

「前は、すぐに見つかったのにな~」

「あんまり、ここじゃ!ちゅうとこが、ない・・・」

などと言いながら、臀部に3本置鍼し、20分程ゆっくりしていただきます。鍼を抜いた後、

「Cさんもう一度、人工芝の丸い石、歩いてみます?」

「・・・・う~ん、歩いてみよか」

するとCさん、歩けなかった丸い石を、嫌々ながらも歩けました。

「歩けるようになっとる・・・やっぱり、足ウラが大事なんじゃ・・・」

「そうじゃろ・・・土台じゃけん。」

Cさん、足ウラが柔らかくなると、ケンビキ(肩甲骨痛)が気にならないようです

柳の下のドジョウ?

30才女性患者Aさん、右肩甲骨の内側に痛みを感じ、カラダをひねると痛みが増します。

合谷診では、やはり胸椎にコリがあります。左肩甲骨に対応する左生え際C点に3本置鍼。

前日、運送業を営む50才代の男性患者Cさんが「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」と来院されましたが、AさんもCさんと同じところに痛みがあります。ということは、Cさんと同じ治療法が考えられます。

肩甲骨と胸椎の間の痛みを、腸骨と腰椎の間にある圧痛点に置鍼し、肩甲骨の痛みを取る。

はたして、「柳の下のドジョウ」になってしまうのか・・・やってみないと分かりません。

Cさんの場合、腸骨の圧痛点は、比較的簡単に見つかりましたが、Aさんの場合、なかなか見つかりません。この場合、患者さんにどこが痛いのか、しっかりと聞くことが大切です。

その痛点に対応する腸骨と腰椎の間の位置を推測し、押圧すると見つかりやすいです。ようやく見つかり、置鍼。一カ所見つかると、徐々に見つかり始め、合計5本の置鍼となりました。

「ひねっても、痛みが無くなりました。ガムテープのノリの部分が少し残っている感じです。」

そこで、胸部ソマトトープ(小さな人型)の肩に対応する、胸骨柄の圧痛点(イラスト参照)に鍼をして、改善出来ました。どうやら、ドジョウは見つかったようです。

ケンビキが痛い

「ケンビキだけが、痛いんじゃ・・・ここよ。」

運送業を営む50才代の男性患者Cさん、入室するや否や、訴えて来られます。

松山市に戻り、開業したのは3年前。それまで、色々なところで生活していたので、記憶が定かでない方言があります。

ケンビキがそれです。これは、口内炎、肩コリ、歯痛等を指すようです。Cさんの場合、肩甲骨の内側を押さえながら喋っているので、肩コリと推測できます。ただ、鍼灸師ならば「腱引き」という民間療法を思ってしまいます。私も一時期、腱引き治療をしていた時もありました。これは、達人ともなると、凄い技です。

いずれにしろ、Cさんの肩コリ。何とかしなくてはなりません。

「また、ガニ股で歩いたり、運転も、ガニ股になっとるんじゃろ?」

「ほうよ、ほうよ、気にはしとるんじゃけど、気がついたらクラッチも小指側でな、こやって、こやって踏んどらい。」

「そんなことしよったら、ここで治しても、ついじゃろ(同じでしょう)。」

「分かっとるんじゃけどな~、ついつい楽じゃけん。」

「それが、いかんのよ。」

大した指導にはなっていませんが、一応注意だけはしておきます。

今回は、ケンビキという肩甲骨内側を指定し治療を願っているので、

「ケンビキだけじゃな~、そしたらな、痛いほうを上にして、横になってくれます?」

肩甲骨と骨盤の腸骨は、よく似ています。骨盤は、仙骨+尾骨と寛骨からなります。寛骨は、腸骨と坐骨と恥骨からなります。と文字で表すと混乱しますので、イラストで確かめてください。

よく似ている肩甲骨と腸骨は圧痛点も同様に現れます。Cさんは肩甲骨の内側の1点が痛くてしかたがありません。そこで、腸骨稜から内側の圧痛点を探します。

「痛った‼️そこじゃ。」

しっかり2寸の鍼で3本ほぼ同じ個所に刺しました。

「どうですか?」

「ありゃ、痛ないわい。」

本日は、短時間の治療で終了しました。

下顎骨と寛骨

3年前から、頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

「先生、先週は調子良かった。水曜日には、友達と初めて食事に行けた。今までやったら、夜に外出なんか、考えられんかったのに・・・」

「それは、良かった!・・・・頭の後ろに刺したんが、良かったんじゃろか。」

いつものように合谷診をして、頭に置鍼。しかし、Cさんは、アゴに痛みが残っています。そこで、頭の後ろに6本置鍼。

これは、頭頂部から後頭部の正中線上にあるソマトトープ(小さな人型)の、アゴを狙って鍼を刺したのです。

これで、かなり痛みが軽減しました。まだ残っている痛みをどこで取るか・・・

そこで、考えました。以前、

頭骸骨⇄仙骨

下顎骨⇄寛骨(腸骨+坐骨+恥骨)

頚椎⇄腰

といった相関関係を述べたことがありました。⇄は、よく似ていて、圧痛点も相関関係にあると考えます。とすれば、下顎骨あたりが痛いCさんは、寛骨に圧痛点があり、鍼を刺して治るのでは・・・と思い、丁寧に診ていき見つけました。

「痛い!先生、そこ痛い!」

2カ所に4本刺して抜きました。

「先生、消えた!痛みがなくなった。」

長持ちできるように、寛骨の圧痛点3カ所にパイオネックス(円皮鍼)。さて、今回はどの位保つのでしょう?ちょっと、楽しみです。

第3指と第3趾

造園業をされている70才代の男性患者Bさん。

右手の人差し指、中指、薬指(第2、3、4指)に痛みがあり、伸ばしたり握ったりが、やりづらい状態です。この様に、局所が単独で痛い場合は、真っ先にその対応をします。

まず、C点という正中線から右に4.5cm右の生え際から1cmほど内側に斜め45°入ったあたりの圧痛点に3本置鍼。

その後、右足の指(第2、3、4趾)をチェック。ややムラサキ色で、異常に緊張しています。軽くつまんでみると、

「あ痛った!・・・今までで、一番痛い。」

Bさん一瞬にして苦痛の表情となります。特に、第3趾は棒の様にピーンと立っています。第3趾に対応する右手の中指(第3指)の第1関節が、Bさんの最も痛いところです。

カラダは正直で、最も痛い右手の中指と、それに対応する右足の第3趾が、形状がいびつで、最も痛くなっています。

Bさんに圧痛点を触りながら説明すると、痛い表情と理解できた嬉しさで、痛がりながらニッコリ笑顔で応じてくれます。足の指圧痛点に、パイオネックス(円皮鍼)を貼って本日は終了。

「先生、指がよく動くし、楽になりました。」

こちらもニッコリ笑顔になりました。

京都出張治療2日目

猛暑の京都出張2日目、70才代の女性患者Aさん。脊柱管狭窄症と診断されています。

「左膝の内側が、朝起きた時から痛いのよね。それと、腰が重い感じ。」

「そしたら、膝を先に診ましょう。左膝の痛いところが、左肘にも同じ様にありますから、左肘に鍼をしますね。」

山元式新頭鍼治療(YNSA)では、左下肢の状態が左上肢に反映される原則を、治療に使います。Aさんの左肘の圧痛点に鍼を刺して抜く治療をしながら、左膝の状態をAさんに聞いていきます。

「どうですか?」

「ずいぶん、いい感じ。」

「これで、どうですか?」

「・・・いい感じ!」

という事で、膝治療は終了。続いて、合谷診(親指と人差し指の間の触診)の後、オデコ中央部に2本、左右耳ウラの圧痛点に、一本づつ置鍼。

特に、耳ウラの鍼は、山元先生になりきってしっかり置鍼。すると、この1本でAさんの腰が楽になりました。改めて、鍼1本のパワーを実感しました。

宮崎YNSA セミナー(症例9)

5~6才の男の子Iくん、お母さんと一緒に入室。夜尿症です。

「毎日?」

「ほぼ毎日です。ただ鍼をしている間は、良かったです。」

山元先生は、Iくんの小さな左右の手を同時に、包むように持ち、

「こっちは、ないね・・・・あるのは、こっちだね。」

Iくんの右手に、コリがあったようです。山元先生は、Iくんのオデコ中央部やや右の生え際に、パイオネックス(円皮鍼)を貼っていかれます。

「ボク・・・押さえると、痛い?」

Iくんは、首を横に振りちょっと強がりを見せます。山元先生は、Iくんのオデコにmm単位で密集しパイオネックスを貼り、やや強めに押されます。

オデコの中央部は、A点と言って頚椎に対応する個所なのですが、山元先生は、このA点の狭いエリアにソマトトープ(小さな人型)を見つけておられるようです。

しかし、余りにも超越した天才芸のため、私には、全く理解できません。

夜尿症ならば、Y点(側頭部にあります)の膀胱点に置鍼のはずですが・・・・

両手をオデコに当て、嬉しそうにお母さんと一緒に退出するIくんを見ながら、

ちょっぴり、ため息が出てしまう私でした。

宮崎YNSA セミナー(症例8)

車イスに乗って入室された60才代の女性患者Hさん。頚肩腕症候群という比較的軽症のイメージがする病名ですが、今回のセミナーでは、最も重度の患者さんの一人です。そこで、頚肩腕症候群をウィキペディアから、引用してみます。

「広義の頸肩腕症候群は、首(頸部)から肩・腕・背部などにかけての痛み・異常感覚(しびれ感など)を訴える全ての症例を含む[2]。この中で、他の整形外科的疾患(たとえば変形性頸椎症頸椎椎間板ヘルニア胸郭出口症候群など)を除外した、検査などで病因が確定できないものを(狭義の)頸肩腕症候群と呼ぶ。

狭義の頸肩腕症候群は座業労働やストレスを原因とする場合が多い。かつてキーパンチャー病と呼ばれたものもこの一種であり、現在OA病あるいはパソコン症候群と呼ばれる一連の症状もこの範疇に入る[2]。若年層から起こり、男性より女性のほうがかかりやすいとされている。 職業によって罹患した際は、頸肩腕障害と呼応され、比較的軽度の人から重度の人まで幅広い。 

頸肩腕症候群であることではなく、その重症度が問題の疾患である。 

最近の研究で、重症難治化した頸肩腕症候群の多くは線維筋痛症の容態を示すことが多いことも分かってきた。」

これによりますと、頚肩腕症候群とは、原因不明の疾患で、重症度が問題の疾患とあります。Hさんは、線維筋痛症の可能性があります。

ここで、ウィキペディアの線維筋痛症を引用します。

「線維筋痛症(せんいきんつうしょう、: Fibromyalgia, 略:FM)とは、全身に激しい痛みが生じる病気である。英語では、症候群であることを表現して、Fibromyalgia Syndrome:略FMSとも記される[1]。原因不明の全身の疼痛を主症状とする[2]。疼痛は腱付着部炎や筋肉関節などにおよび、体幹四肢から身体全体に激しい疼痛が広がる[3]。新興疾患では無く、以前は「非関節性リウマチ」「心因性リウマチ」「軟部組織性リウマチ」「結合組織炎」「結合組織炎症候群」などと呼ばれていた[1]。」

Hさんの頚肩腕症候群は、原因不明の全身の激しい疼痛を伴う疾患(おそらく線維筋痛症)となります。

「雨が降ると痛い、首が動かせない。吐き気がして・・・・つわりより、ひどい!」

「困りましたね~~」

山元先生は、Hさんのオデコを押圧されます。痛みのため、Hさんは飛び上がるように反射。その後、いきなりオデコに鍼ではなく注射をされます。

「首動かしてごらん・・・右が動くようになった?」

「イエス。」と首を縦にふるHさん。

山元先生は、再びオデコや、側頭部に次々と注射をされます。そのたびにHさんは、

「ひえーーーーーー、イタッーーーーーーー」

と、壮絶な悲鳴をあげ続けます。山元先生の注射の勢いは、とどまるところを知りません。

「肩を押さえて!ここ!」悲鳴を上げながら訴えるHさん。

「こっちもして!」山元先生に指示するHさん。

「あんた、目は?・・・目をあけて!・・・・目があく?」

「耳鳴りがする。」

再び、オデコを中心に次々と注射。

「ひやーーーーーーー」耳のウラに注射。

「来たーーーーーーーーー」左前腕の外側に注射。

Hさん、突然ズボンを下げ、お尻を出します。そこへ、山元先生が注射を2か所。

合計17本の注射をされました。

「ほら、首が回る❗️」

今まで、車イスに座っていたHさん、急にスクッーと立ち上がって首を回してくれました。

『おっ~~~~~~』

心の中で大声出して叫びました。声を出せない壮絶な治療だったのです。

「休憩じゃ~」

ゆっくりコーヒーを飲みながら、

「彼女は看護士だったから、気になるんだ・・・・お互い頑張るんだ、ハッハハッハ・・」

と説明してくださる山元先生でした。

サッカー場に行ける!

3年前から、頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

「先生、先週は、月曜から水曜まで痛みがあり、木曜日は全く痛みがなくなりました。金曜日から土曜日にかけては波があった感じです。今日は口の中鍼で突かれたように痛みます。」

今回は、合谷診(親指と人差し指の間の触診)をしないで、いきなり、Jソマトトープ(小さな人型)の左アゴに当たる個所に5本置鍼。

「けっこう、痛みが少なくなってきた。」

次に、合谷診のみで、胸椎に対応する個所の圧痛点を探します。実は、一番最初の山元式新頭鍼療法(YNSA)との出会いが、山元先生の治療で、しかも合谷診によるオデコ中央部のみの治療でした。

その印象があまりにも強烈だったので、合谷診のみで脳、頚椎、胸椎、腰椎を 診るのが、私にとっては簡単です。

Cさんは、胸椎に対応する親指と人差し指の個所が、ゴリゴリしています。左眉毛の上に3本置鍼。オデコの口に対応個所に1本置鍼。口腔に対応する個所に5本置鍼しました。これで、口の中の痛みは取れました。

若干、アゴに痛みが残っているので、これに対応するであろう左足甲の部位を軽く触れました。

「痛い‼️先生、今日一番の痛さ‼️」

そこに3本置鍼をして、後は大好きなサザンオールスターズの曲をゆっくり聴いてもらい、休んでいただきます。すっかり寝込んでしまったCさん。

「先生、今日はこれから、FC愛媛の試合を見に行くんです。一年前は、どこへも行けんかったのに・・・・随分良くなりました。ありがとうございます😊」

颯爽とマイカーを飛ばしサッカー場に向かわれました。