鍼は痛くない

以前、お絵かき教室の治療をした小学生Aちゃんの続報です。Aちゃんは、思春期に多い起立性調整障害。自律神経のバランスが少しうまくいってないので、朝起きてダルく学校に行けない事があります。鍼が嫌いなので、鍼の代わりに指で軽く刺激をあたえる治療を続けていました。ところが、前回はひょんな事から、鍼治療をしてしまったのです。

その後、連絡がないのでどうしているのか、気になっていたのですが・・

「もしもし、Aの母親◯◯です・・・・・」

ちょっと、ビクッとしてしまいました・・・調子が悪くなったのかな・・・

「先生・・・・今回は、お礼の電話です。おかげ様で、今週から元気に学校に通っています。鍼をした翌日は、だるいと言ってたのですが、その翌日からは元気になって・・・」

「ああああ~、それは良かった❣️・・・やっぱり、鍼が効いたのかな~」

お母様とは、短い会話でしたが、嬉しくて・・・今日一日がご機嫌さんなのです。◯◯さん、お電話ありがとうございました。

そこで、前回の治療を振り返ってみます。Aちゃんは自律神経のバランスが少しうまくいっていません。そういう時は、基礎治療で脳、頸椎、胸椎、腰椎に対応する圧痛点を取ると、脊柱管が整い自律神経の働きが良くなります。Aちゃんの場合は、

上腕診(肘内側の横紋の触診)

左:胸椎、脳幹

右:頸椎

上記に対応する個所に、1本ずつ置鍼。

そして、迷走神経という臓器に作用する10番脳神経に対応する個所に2本置鍼(頭頂部やや前側)。合計5本置鍼して、30分ほどベッドでゆっくりしてもらいました。治療は、これだけでしたが、Aちゃんの治りたいという気持ちが大きく左右した様に思います。前回は、問診の間、「鍼は痛くない」とはっきり口に出して鍼治療をアピールしてくれました。

そのアピールに応えた、私もエライ・・・・と、たまには褒(ほ)めてあげよう❗️っと。

右半月板損傷の患者さんの続報

70才代の女性患者Bさんは、昨年5月末、半月板損傷の大ケガをしました。やや遠くにあったハンガーを取ろうとし、右足を大きく踏み込んだところ、右膝に負荷が掛かかって損傷。

1週間に2回のペースで通院し、本日は6回目です。前回の治療から5日目ですが、患部に湿布をしないで過ごせました。徐々に良くなっています。Bさんは、野菜作りも海外旅行もしたいのです。何とかお役に立てればと思っています。

上腕診(肘内側の横紋の触診)

左:頸椎、胸椎、腰椎

右:頸椎、胸椎、腰椎、脳幹、大脳、小脳

上記の治療点に1本の置鍼で、圧痛点が無くなりました。治療点をしっかり親指の爪で押さえ、診断点の圧痛が無くなるのを確認し置鍼すると、患者さんも納得し、効率的な治療ができます。これで、自律神経を整える基礎治療が終了です。

「これで、どうですか・・・ちょっと、歩いてみて下さい。」

「・・・・・だいぶ楽にはなりましたけど・・・かくんかくんと、膝が鳴って、違和感があります。」

そこで、G点という側頭部と、耳の下(乳様突起という出っ張りの下です)にある治療点に、3本置鍼。

「さあ、どうでしょう・・・歩いてみて下さい。」

「違和感は無くなって・・・・重さだけが残っています。」

こうなると、「下肢の痛みは上肢で取る」という患者さんに説明しても、ある程度納得していただける治療に入ります。それまでの頭への置鍼は、患者さんにとって、「何じゃこれ?・・・でも、効くからいいけど・・・」くらいな感覚です。絵画でいうと抽象画をボッーと観ているうちに何となく気持ち良くなっている感じから、具象画で何を描いているのかが分かり、何となく理解出来る・・・・かな?くらいの治療(変な例えで、スミマセン(*^ω^*)。

「Bさん、ここ痛く無いですか?」

「痛っっっっっっった!じんじん来ます。」

「右膝の痛いところが、コピーされたように右肘にあるんです。便利でしょ?右肘に鍼したら、右膝が良くなるんですから・・・・」

1寸6分(50mm)の鍼で右肘の圧痛点に何ヶ所も刺して抜きます。右肘が徐々に緩んでくるのが分かります。

「これで、どうですか?歩いてみて下さい。」

「・・・あっ、力を入れんでも歩ける・・・膝をかばうで、どうしても力が入りよったんが、のうなりました。」

「そしたら、後はゆっくり休んでいただきますね~~。」

30分ほど休んでいただき、治療は終了となりました。玄関に置いてある松葉杖を手にして、

「先生、これさげて帰ります(持って帰ります)❣️」

と、にっこり笑顔でスタスタと歩くBさんでした・・・・長持ちできます様に❗️

天気予報士

60才代の男性患者Cさん、1ヶ月に2回位の割で来院されます。40才頃から三叉神経痛と群発頭痛に悩んでいました。その頃は、雨が降る直前に、左目からオデコにかけて激痛が走るため、天気予報士以上の預言者だったそうです。また、第六感も働き人を見ると、その人格が直ぐに分かる眼力もあったそうです。その能力の代償が、痛み。

三叉神経は、脳から眼神経、上顎神経、下顎神経(共に感覚神経、運動神経)として顔面に三叉(みつまた)状になり広がっています。Cさんの場合は、眉毛辺りの眼神経に血管が当たり、激痛が走ったようです。2度にわたる手術(アルコールで焼き切るそうです)で、何とか痛みは無くなりましたが、今回、左目がムズムズするため来院となりました。

Cさんの群発性頭痛は、目の上が痒(かゆ)くなる兆候があると、突然起こります。1ヶ月も続くことがあり、病院で酸素吸入と点滴を受けて回復するというパターンだそうです。幸い、当院に通院することでこの2つの痛みはまだ出ていません。

合谷診(人差し指と親指の間の触診):右(右側から治療します)

上腕診(肘内側の横紋の触診)

左:頸椎、胸椎、腰椎、大脳、小脳

右:脳幹、小脳

それぞれ1本の置鍼。

「先生、目が開いた・・・よう見える・・・ムズムズがもう無いわい・・・鼻も通ってきたわい。」

「鼻もしんどいん(疲れているの)?」

「ほうよ、なんせ孫が仰山(ぎょうさん)おろう・・・それが、こないだいっぺんに来たんよ・・・そしたら、うつってしもうて・・・」

お孫さんが10数名おられ、一堂に会すると、おじいちゃんやられます。

こういう時は、頭頂部にある脳神経9番(舌咽神経と肺)に対応する治療点に置鍼をします。ついでに、オデコの感覚点(鼻)にも置鍼。その後は、ゆっくりベッドで休んでいただきます。

「先生、痛みが無いなった分、気象予報士になれんのよ・・・じゃけど、雨の前は眠ならい(眠くなります)・・・起きたら、いっつも晴れとらい(晴れています)・・・もう、眼力ものうなってしもうた。」

と嬉しそうにおっしゃるCさんでした。

本日は大収穫

「先生、お水いる?・・・・これ、田舎のお水で、検査も合格しているのよ❗️」

「それは、ありがたいです。2本も‼️」

2リットルのペットボトル・・・結構重いです。わざわざ持って来院されました。80才代の女性患者Aさんは、私が焼酎の水割が好きなのを、ご存知なのです。また、Aさんのご主人は家庭菜園で野菜を収穫し、Aさんは毎日無農薬野菜でお料理を作っています。冷蔵庫を覗(のぞ)き込んで、何を作るか想像し創作するのが大好きだそうです。今回は、ブロッコリーのおひたしをタッパーに入れて、戴きました(仕事が終わった今、ビール片手に戴いています。Aさん、美味しいです・・・ありがとうございます❣️)。

「Aさん、本当に助かります・・・ボクはもう・・・野菜さえ食べていたら幸せなんですから❣️」

だいたい、Aさんの治療は、向かいあっておしゃべりから始まります。ご主人の囲碁などの趣味の話とか、毎週のサロン(集会場でのお食事会)などなど、治療どころではありません。次の患者さんまでに、1時間30分ありますから、余裕です。好きなフォークソングがかかると、その頃の話に花が咲きます。

「それで、今日はどこが痛いのですか?」

 

「腰・・・・先生、ここあたり。」

最近は、人工関節の右膝のことは、気にされていません。腰が若干張っているだけの事が多いのです。毎週行かれているサロンと、同じ感覚で当院を使って戴いています。私もAさんの顔を見るだけで、和んでしまいます。それが、Aさんにも伝わるのかも知れません。また、この日は偶然にもフォークソングが好きな患者さんばかりが、治療に来る日なので、空間自体が昭和になっているのだと思います。きっと、観葉植物達も昭和を楽しんでいるはずです。

で、いつの間にか治療は終わっていました。

その次の次の次の患者さんが、地元野菜の杓子菜(しゃくしな)と大根とレモンを差し入れして下さいました。本日は大収穫❣️

松葉杖

70才代の女性患者Bさんは、昨年5月末、半月板損傷の大ケガをしました。やや遠くにあったハンガーを取ろうとし、右足を大きく踏み込んだところ、右膝に負荷が掛かかって損傷。

1週間に2回のペースで通院し、本日は5回目です。前回の治療では、「もう少しで松葉杖を忘れて帰る」ところまで回復し、2日間良い状態でした。ところが、昨日から右膝に痛みが出始めました。

上腕診(肘内側の横紋の触診)の後、頭部に7本の置鍼をし、基礎治療終了。続いて右膝治療、右耳の下にあるG点に3本置鍼。

「はい、これで歩いてみてください・・・どうですか?」

「まだ、痛いです。」

そこで、右側頭部にあるG点に1本置鍼。

「今度は、どうですか?」

「少し楽になりましたが、まだ痛いです。」

G点は、膝に効くのですが、私のレベルでは、まだまだ痛みが残ります。そこで右側頭部にあるIソマトトープ(小さな人型)の肘をねらい1本置鍼。上肢と下肢は同側の同じ個所に圧痛点があり、膝の痛みを肘で取ります。

「さて、今度は、どうですか?歩いてみて下さい。」

「・・・・痛みは、無くなりましたが、重いです。」

少し改善してきました。今度は、右側頭部のIソマトトープ(小さな人型)の膝をねらい1本置鍼。

「・・・・さっきより、軽くなりました。」

少しずつ良くなっていきますが、今の私には、頭の置鍼でこれ以上望めない気がするため、下肢を上肢で治す治療に方向転換です。

「Bさん、膝の痛いところを教えてください・・・・・なるほど・・・そしたら、ここ(右肘)痛くないですか?」

「痛ったたた・・・・痛いけど、効いてる!ずっと押してて欲しい‼️」

右膝の圧痛点に対応する右肘の圧痛点を丁寧に見つけ、4本置鍼。

「先生、これは効いとります・・・・ジンジンと・・・・」

「そしたら、これで歩いてみて下さい・・・腕に鍼が刺さってるので、ちょっと歩きにくいですけど・・・・どうですか?」

「・・・楽です❗️」

「そしたら、このまま休んでいただきます・・・けど、どこで休みます?」

「ここ(待合室の長椅子)で・・・」

丁度、Bさんと向かい合わせになるので、世間話に花が咲きました。しばらくして、

「先生、時間を置くと、軽くなってきます。ほら?!・・・・」

Bさんは、長椅子に座ったまま、右足を軽々と何度もキック。45分程置鍼し、抜鍼して終了となりました。松葉杖を小脇に抱え颯爽(さっそう)と帰えるBさんでした・・・3日間、保(も)ちますように❗️

家庭にお灸を

以前、お絵かき教室の治療をした小学生Aちゃん、今回で6回目の通院となります。鍼が嫌なので、指を鍼代わりに治療をしています。Aちゃんは、思春期に多い起立性調整障害、自律神経のバランスが少しうまくいっていなだけです。今朝、起きてダルく学校にいけませんでした。そこで、午前中にお母様と一緒に来院されました。

いつもの様に、合谷診(人差し指と親指の間の触診)、上腕診(肘内側の横紋の触診)をしたあと、置鍼の準備にかかる私。

「あれっ?・・・そうか、鍼嫌いなんじゃね・・・・」

「・・・・・ええと・・・注射は、痛くない・・・」

「うん?・・・・そしたら、鍼やってみる?」

「・・・・・・うん(軽くうなずくAちゃん)」

Aちゃんは、少し鍼に興味があったのかも知れません・・・早く良くなりたいと思っているのでしょう。頭に3本置鍼。その後は、ゆっくりベッドで30分休んでもらいます。その間、家庭内で出来るお灸治療の方法をお母様に話しました。モグサを米粒大に作り線香で火をつけ、火が皮膚に到達する寸前に、指2本の蓋(ふた)で覆(おお)います。すると、酸欠状態になり火は消えて、ヤケドになりません。この技術をお母様が習得すれば、昔から伝わるヤイト(皮膚を焼き切るお灸)とは違う方法で、家庭内治療ができます。

お灸の文化が根強く残っている愛媛県、薬局でモグサを売っています。出張治療で行く京都では、薬局にモグサは置いてないことが多いのですが、愛媛県では需要がまだあるのです。今、お灸を通して親子のコミュニケーションが出来れば、どんなに素敵なことか!・・・と思います。

Aちゃん、5回の治療で少しづつ体調が良くなり、食欲も出て来ました。食後の胃痛も無くなっているようです。まあ~、ボチボチ・・・・きゅう

オデコのざわつき

60才代の男性患者Aさんは、小学校の頃から副鼻腔炎になり、6年生の時に手術を受けましたが、なかなか完治せず、62才の時、再び手術をし完治しました。しかし、24~5才の頃に嗅覚を失い、全く匂いを感じることが出来なくなりました。それでも、最近1年間、漢方薬を飲み続ける治療を行いました。ところが嗅神経がやられているので、治らないとのことでした。

知人の紹介で、本日初診となりました。嗅覚以外は、すこぶる健康的なAさん。上腕診(肘内側の横紋の触診)、首診で圧痛点を感じたのが1カ所。そこに対応する治療点に置鍼をして、基礎治療、応用治療は終了です。

後は、12ある脳神経の第一番目の嗅神経に2本置鍼とオデコにある鼻の感覚点に2本置鍼するだけです。

「そしたら、今から嗅神経をねらってオデコの生え際に鍼を刺します。」

鍼を刺して直ぐに、

「あっっっ、思い出しましした・・・・小学校の頃、親父にバリカンで丸坊主にされる時、バリカンが、オデコの生え際に来た時だけ、何か嫌な感じで・・・逃げそうになったのを!」

「・・・何か、ざわつくという様な感じですか?」

「そうです・・・その表現、ぴったりです❗️」

「はあ~~~、そこ、そこが治療点のあるところなんです・・・カラダって正直ですね!」

Aさんのざわついた感覚を原体験としてカラダは、覚えていたのです。それにしても、脳神経の治療点を発見した山元敏勝先生の凄さに、改めて感嘆せざるを得ません。

Aさんには、置鍼後ゆっくり1時間ベッドで休んでいただき、治療を終了しました。

愛媛マラソン


先日、愛媛マラソンがありました。高橋直子さん、土佐礼子さんも参加し、地元
の南海放送では、6時間以上放映する、ビッグイベントなのです。おもてなしが素晴らしく、参加者が年々増えているようです。このイベントに参加し、5時間代で無事完走した20才代のAさん。筋肉痛に加えて、右足の土踏まず辺りに痛みがあり、この痛みのため途中歩かなければならなくなりました。

Aさんは、高校3年間空手部に所属し、右足土踏まず辺りに負荷がかかる体勢を常に作っていたようです。フルマラソンという過激な運動をすると、その弱みにつけ込まれます。Aさんは、筋肉痛など気にしていません。とにかく、右足土踏まずの痛み・・・

まず、氷水で患部を冷やしますが、あまり必要ではないようです。上腕診(肘の内側横紋の触診)では、左右の胸椎に対応する個所に圧痛点があり、それぞれ2本の置鍼で圧痛点はなくなりました。
これは、基礎治療で自律神経の働きを活発にします。

さて、これから右足土踏まずに集中して治療をするのですが、2つ効いたポイントがありました。
①右耳の上部前方の圧痛点(D点)、ここに2本置鍼で、右足土踏まずの痛み2/3取れました。しかし、これから中々取れません。

そこで、下肢の痛みを上肢で取る手技を行います。右足の土踏まずとは、内側楔状骨になります。これと対応するのは、右手の母指球にある大菱形骨です。この付近の圧痛点に、鍼やお灸をして右足土踏まずの痛みを取っていきます。もう少しなのですが・・・まだ痛みがあります。そこで、
右手の母指球にある大菱形骨の圧痛点に、指を軽く置くだけの操法を15分。

「さあ〜、どうですか?」

「・・・・痛くない‼️」

この操法が効いたようです。Aさん普通に歩けています。めでたしめでたし。

これは、胃経だ!

 

3年前から偏頭痛に悩んでいる40才代の女性患者Cさんの続報です。

前回の治療から調子も良く、順調に来ていたのですが、昨日の夕方に、うたた寝をし目が覚めると頭痛。今朝からは、首から上が頭痛(偏頭痛ではありません) で、仕事(コンピュータの前で画面を見る事が多い)が、はかどりませんでした。

そこで、今回はいつもと違う治療を考えました。合谷診(人差し指と親指の間の触診)、上腕診(肘内側の横紋の触診)はしますが、頭の正中線(生え際から頭頂部)から1cm左右の平行線上の12脳神経の治療点に置鍼する事にしました。

12脳神経というのは、脳から直接出ている神経のことで、1番は、嗅神経。2番は視神経・・・・などあり、12番は、舌下神経、このようになっています。その中で9番の舌咽神経に対応する頭頂部に置鍼すると、

「口の中の舌が当たる上の方と、ノドが楽になってきた。」

「それで、今どこに痛みが残っとるん?」

「左の鼻と、アゴ・・・くらいかな?」

『これは、胃経(胃のツボの流れ)じゃ❗️』と思いました。大雑把にツボの流れをいうと、12ありまして、お腹から手先。あるいは、手先からお腹の流れが6本。頭から足先、あるいは、足先から頭までの流れが6本。この中で、胃に関する流れは、頭から足先になるのです。その流れがCさんの痛みの個所を流れているのです。胃の大切なツボは、膝から下にあります。その大切なツボを刺激するとCさんの顔の痛みが、取れるかもしれません。

そこで、足の甲にお灸を沢山すえます(壮数を数えられませんでしたが、30壮以上していました)。

これで、顔の痛みの範囲が狭ばりましたが、まだ鼻の左とアゴに痛みが残ります。そこで、お灸をあきらめ、鍼を刺す事にしました、まず足三里。

「何か、す~と楽になります。」

この言葉で元気になり、その周辺の胃のツボに鍼を刺していくと、

「随分楽になりました。」

まだアゴに少し痛みが残りますが、これで治療終了としました。1週間保ってください‼️

(胃のツボの流れは、目の下から、足の第2指までです。写真参照)

打膿灸(だのうきゅう)?

「もしもし、◯◯ですけど・・・・分かります?」

「・・・・ヤイトの◯◯さん?」

「そうです。」

1年に1回お灸を据(す)えにくる◯◯さん、70才代の男性患者Dさんとお呼びします。Dさんは、一昔前のカラダと生活習慣をお持ちです。一昔前とは、私の祖父、祖母の時代。両親が共働きだった私は、小学校から帰ると、明治生まれの祖父祖母に面倒をみてもらっていました。そのため、私は明治時代の面影を感じて生活していました。その一つがヤイト。夜になると、近所の方とやいとを据(す)え合うことをしていました。

『ばあちゃんの綺麗な肌に、なんでヤイトの跡をつけるんじゃろ?』

と、思いながら見つめる不思議な光景と「悪いことしたら、ヤイトをすえるぞな。」が口癖の祖母の言葉が重なって「ヤイトは怖い」が私の中では、定着していました。そのイメージがすっかり消え去ったのは、鍼灸師S先生との出会いなのですが、この話は、また別の機会に・・・・

さてDさん。来院されるや否や、服を脱ぎ出し、

「先生、例の3カ所にお願いします。今度は、質の悪いモグサがあろう?あれにしてくれん?ええモグサは、上品で温度が上がらんでね・・・・」

「よう知っとるね~、質の悪い方が熱いんよ・・・それで、かまん?・・・うん、それでしょうわい。」

ということでDさんには、質の悪いモグサで昔ながらのヤイトをする事になりました。胸椎2番、3番、4番の椎間に1cm程のヤイト跡がしっかりあります。私はその中央部に米粒大の大きさのモグサを置き、皮膚が火傷(やけど)するまで、焼き切ります。これを1カ所につき50壮するように注文されました。今回も、Dさんに指し図され、私がその通り行うという関係になります。

「3番目のやいとが、弱いな・・・ちょっとヅラしてみてや・・・・あ~、そこじゃ、そこじゃったら効かあい。」

「確かに、前回より周辺の皮膚の色が違わい・・・ピンクというより、紫に近い赤じゃわい。」

「もうちょっと、モグサを堅めにしてくれんかな~・・・・ワシがおふくろにやって貰いよった時、ワシが、堅いモグサをひねっておふくろに渡して、おふくろが火をつけてしよったんよ。」

私は、堅いモグサをひねる事などしたことが無かったのですが、Dさんの注文通りしっかり堅めます。

「丁度、ええわい・・・・これぐらいが、一番ええ。」

この熱さで50壮。敢えてヤケドで膿みをつくり、免疫力を上げる荒療法ですが、Dさんとの会話に昔ながらの優しさを感じ、四国の田舎にもっと残すべき文化だと思いました。今度は、Dさんから、モグサの大きさをもう一度、伺ってみようと思います。きっと、もっと大きな小豆大のモグサだったに違いありません。

次回こそ、当時を再現してみます。