

軟式野球部のA君、前日に続き連続来院。
昨日の治療が効いているようで、ボールを投げる動作では、痛みはほとんどありません。
ところが、ひねると左脇腹に痛みがあります。
背中の状態は・・・
『あれ?やわらかい!』
前日の背中とは、全く表情が違います。何が効いたのか分かりませんが、穏やかな背中になっています。
A君の素直な原始感覚がカラダを本来の姿に導いているようです。
ここまで良くなっていると・・・
『左太ももの内側を探れば、もっと良くなる。』
と、チョット根拠のある自信。
左太ももの内側に鍼を刺していきます。ベットから下りて、ボールを投げる動作をしてもらいます。
「あっ、投げた時はもう痛くないです!けど、ひねるとまだ痛いです。」
そこで、グラップラー刃牙のモデルで和らぎ操体の創始者、平直行さんの治療を試みました。
この治療法は、近日中に株式会社カイロベーシックからDVDが販売されます。
そのため、詳細は述べません。興味ある方は、購買されることをお勧めします。
施術後、
「あれ⁉️ひねっても、脇が痛くない‼️」
和らぎ操体、恐るべし!
軟式野球部A君の続編
前回の治療から5日経って来院。
左腰にまだ痛みが残る(ボールを投げた時)そうです。前回同様、氷水袋で冷やすことにしました。
うつ伏せになってもらい、直接皮膚に氷水袋。
「冷たくない?」
「大丈夫です。」
「気持ちええ〜?」
「ハイ!」
しばらく、トントンと小刻みに氷水袋を弾(はず)ませていたのですが、右腰を触ると、熱っぽいので、
「右の方もやってみるね〜〜」
その瞬間、カタツムリに触れたように、右腰が縮みました。
「冷たい?」
「ハイ!」
「ごめん、ごめん?」
『う〜ん、左腰は、深層に熱がこもっとる。それにしても、カラダは正直じゃね〜!』
少年の原始感覚に感心しながらも、チョット冷静な私でした。3〜4分冷やしていると、
「もう大丈夫です。」
充分冷えたようです。今度は、ベットに座ってもらい、背中を改めて見てみます。
脊柱を上から下へ中指で辿っっていくと、腸骨の上あたりが、右に歪んで、左腰の膨隆が
顕著です。そして、同側の左肩甲骨上部も膨隆した分、反対の右肩甲骨下部が張っています。
カラダは、歪みを作り合いながら、バランスを保っています。この背中のバランス関係が、腕や足に反映しています。左の二の腕(上腕三頭筋)、右肘(前腕内側)、左ふくらはぎ(腓腹筋外側)に鍼とお灸。
「ハイ起きて下さい〜。ボールを投げる格好してみて!」
「治療前の痛みが10、全く痛くないのが0。今、どのくらい?」
「3」
再び、ベットに寝てもらいます。今度は、左を上にして横向き(側臥位)。A君が、しきりに、
「ここが、痛いです。」
一番下にある肋骨は、浮いていて触ると、結構痛いのですが・・・A君、その周辺を押さえています。
「よし、そこにお灸をしよう!」
左の首と左の足首の圧痛点に鍼を刺し置き、A君が指定した2カ所に、お灸。
「ハイ、起きて下さい〜〜。さあ、またボール投げてみて〜、今度はどう?」
「うお〜〜、軽い!」
「限りなく0に近い1」
お灸が効いたようです!
全国でも強豪として知られている軟式野球部のA君。
ボールを投げた時(A君は、右利き)、左の腰(骨盤の10cm程上)が、
「ブチッ」
と音がして、背骨が移動した感じ。腕を戻した時にも、同じ音がして背骨が戻ったような感覚だったそうです。凄い感性です。
病院では、炎症と診断されました。左の腰には、湿布が貼られています。炎症している時は、氷水が一番効きます。これは、師匠の今昭宏先生からの教えです。
お灸は火の力を利用しているのですから、氷水の力をお借りするのは、考えてみれば当然のことです。
A君はまだ15才。感性豊かな少年には特に効きます。氷と水を入れたビニール袋を用意します。
「A君、湿布の上に氷水の袋を置いて、突っつくけど気持ちが、ええかい?」
「ハイ!」
「気持ちええのが、のうなったら、言うてや?」
「ハイ!」
右の腰を触れると、同様の熱を感じたので、右腰に氷水袋を置いてみました。
「こっちは、気持ちええ?」
「いいえ!」
「冷たい?」
「ハイ!」
比較する事で、左腰に熱がこもっているのが分かります。しばらく、氷水袋で突いていると、
「もう、いいです!」
少年の感性は、本当に正直です。これだけで、元気をもらえます。次は、腰痛の原因探しです。
あくまで腰痛は、結果です。腰痛の原因は、足あるいは前腕だと推測します。ふくらはぎと太ももの内側に押圧。
「痛いかい?」
「いいえ!」
『・・・・?』
全く痛がりません。『これだけ、反応しないのもそうそう無いな〜〜』と感心しながら、今度は、左腰痛の同則、左前腕を押圧。
「痛い!」
ありました。
肘内側の横紋(肘窩といいます)の下に海底を泳ぐゴジラのような塊。思わず、
「ここじゃ、ここに鍼じゃ!A君、鍼は初めてかい?」
「ハイ!」
「そうか?!・・・そしたら、怖いのう〜〜?」
付き添いで来られているお母さんが、
「何でも、経験よ〜〜!」
と、ニコニコ顔。ついつい、こちらもニコニコ顔。
「あのな〜、一番細い鍼にするけんな〜」
ゴジラの心臓部めがけて、刺します。全く痛みを感じていないA君、拍子抜けの顔をしています。
しばらく鍼を上下に移動させます(これを、スズメがエサを食べるときの仕草に似ているため、雀啄
ジャクタクといいます)。
ゴジラの尻尾や腕にも刺していき、今度はお灸です。
「お灸も初めてじゃろ〜、ちょっとチクッとするけんの。」
「どうじゃ?大丈夫かい?」
「ハイ!」
初めて尽くしのA君ですが、もうすっかり安心しているようです。ゴジラが居なくなってので、今度は、ミニラ探し。左母指球の下の手首付近を泳いでいました。
そこにも、鍼とお灸。
「先生、ボールは右で投げるのに、何で左腕なんですか?」
とお母さんが、素直な質問をされました。
「バットは、左腕を使って振るんです。素振りしよる?」
「ハイ!学校ではやっています!」
正直に答えてくれるA君、家では素振りはしてないようですが、監督さんの前では、しっかり素振りをしているようです。右腕には、ゴジラもミニラもいませんでした。
バットを返す時、左手首と左肘にかなりの負荷がかかります。右腕は、添えてバットコントロールをするだけで、それほど負荷はかかりません。どうやら素振りが原因の一つようです。
ベットから起き上がってもらい、A君に、
「どうしたら、痛いの?」
「ボールをなげたら痛いです。」
「そしたら、投げる格好をしてくれる? どう?痛い?」
「ハイ、痛いです。」
「こっちに来た時の痛みが、10で、全く痛くないのが0としたら、いくつぐらい?」
「2」
「おっ、そしたら、今日は、終了!」
30数年前、胃の摘出手術したのが原因なのか、5~6年前、腰椎の圧迫骨折された70代の女性Bさん。
「背骨の出っ張とるところが、チクチク痛うて、仰向けで寝られんのです。咳するんでも、腰を抑えんと、痛うてできんのです。」
暗い表情で元気のないBさんの治療に入る前に、
「今、石原裕次郎が、流れていますが、(前の患者さんのリクエスト)演歌お好きですか?」
「女の歌手じゃったら、ええんですけど。」
「じゃ〜、美空ひばりで行きましょうか?」
「ハイ、お願いします。」
やはり、この年代の方々は、美空ひばりに勇気づけられ、元気をもらったのです。ひばりさんの話になると、生き生きとしてきます。音楽の持つパワーは大したもの。しかし、初回の治療では、なかなか腰痛は、取れません。3日後に来てもらうことにしました。
2回目の来院。寝ていて起き上がる時、右腰に電気が走るような痛みが来るそうです。右前腕が硬く押すと痛いので、ゆっくりほぐします。少し腰が楽になったので、短時間だけ仰向けになってもらいます。お腹の手術跡を、2本のダイオード鍉鍼をお箸のように使ってほぐします。これが効いたのか、腰が柔らかくなりました。
3回目の来院(5日後)。まだ、背骨の出っ張りがチクチク痛いそうです。いつものように太ももの内側と、ふくらはぎに鍼やお灸。
背骨が痛いので、手首の母指球の下の圧痛点にお灸を5壮。美空ひばりの話をポツリポツリと話しながら、ゆったりと時間が流れ、腰が随分ゆるみました。
「先生、靴下が履きやすくなりました。」
4回目の来院(1週間後)。何が効いたのか分かりませんが、
「先生、だいぶ良うなりました。自然と咳ができます。前じゃったら、腰を抱えとかんと、できんかったのに。」
そこで、前回と同じように治療して終了。
5回目の来院(1週間後)。
「先生、もう腰のチクチクは、なくなりました。」
うつ伏せで、ふくらはぎと膝裏に鍼。Bさん、とても気持ちいいそうで、美空ひばりの唄を楽しんでいます。
6回目の来院(10日後)。
「看護婦さんに、以前よりしゃんとしとる、と言ってもらいました。先生、ここ触ってください。背骨の出っ張りが少なくなってきました。骨って動くんですね〜。」
仰向けになっても全く大丈夫になりました。
7回目の来院(3週間後)
いつものように、太ももの内側とふくらはぎを中心に、鍼とお灸。
「凄い、凄い立ってズボンがはける!」
更衣室から大きな声が聞こえました。
それからは、調子がいいので、1ヶ月後に8回目の来院。
今回は、肩こり。
もう杖をつかなくても、歩けます。様々な行事にも積極的に参加できるようになりました。
やっぱり、「美空ひばりは凄い」
4日前から、膝屈伸をすると右のお皿(膝蓋骨)の下が痛いA君(17才)。
180cm、70kgの筋肉質な体型です。
太ももや足首の筋膜が縮み、引っ張りあう事で、膝痛が起こると考えます。そのため、写真の様に
鍼を刺し置きします。
刺し置きしている間に、巨刺(こし)と呼ばる古代からの治療法を行います。これは右膝の痛みを、左肘で治す治療法。 丁寧に左肘の圧痛点を探し、鍼とお灸。お灸は、20壮以上。
治療を終えて、
「A君、治療前の痛みが10、全く痛みが無いを0としたら・・・今は?」
「1(いち)」
「もう少し、治療したいので、もう一回おいでよ!」
と言ったところ、
「えっえ〜〜・・・・・」
「あっあ、膝が痛なったら、また来てや。」
と押しが弱い院長でした。
操体法の基本概念、息食動想を光の三原色という自然現象に当てはめました。
食は、1日で1時間程度の営みのため、外します。
残りの息動想は、死に至るまで刻々と瞬時に変化します。
それぞれが100%ならば、重なった部分が真っ白になります。これが理想ですが、まずありえません。
重なった部分の明度が60%以上だったら、大丈夫。
そんな生き方をしましょう!
光を当てる部位が、環境となります。この環境は、光と逆に、明度が下がれば下がる程いい環境。
真っ黒が一番いい環境。
5年前から、内臓疾患。
手術後、坐骨神経痛と診断され長時間のイス座位が出来ない70才代の男性Cさん。
「どこへ行っても薬か、けん引だけ。しっかり治らないので来ました。」
ご自身のカラダ事情を的確に説明出来る知性派。
色々触診をしているうちに、右足の内くるぶしと左太もも内側に飛び上がるほどの痛み。
丁寧に押圧し、鍼をその箇所だけに、9本と8本、合計17本刺し置き。
途中で気持ちよく眠りについたCさん。
『気持ち良さそうだし、もう治療は終わり!』
治療時間40分。
「足がポカポカして、初めて治療を受けた気がします。 」
とニコニコ顔で帰るCさんでした。
首をかしげる程良くなった症例(続報)
3週間に6回通院されたAさん。顔色も良く手足も温かくなりました。
そのため、腹診をしながら、カラダ全体のバランスを整える治療となります。
「本当に、良くなりましたね〜、お家で操体法をされていますか?」
「操体法?・・・・あゝ、指一本ずつ伸ばしたり、それから、水を飲んで、咀嚼(そしゃく)をしっかりとするようにしています。指摘されて、納得しましたから。ストレッチのような事も、毎日しています。」
「中々治らなかったものですから、これを機会に、しっかり治そうと思って・・」
やはり、Aさんは初回の診察でお教えした操体法を、毎日やっておられたのです。学習意欲と能力が非常に高い患者さんです。
几帳面な性格の方ですから、徹底的にしておられるのを、感じ取ることができます。必ずしもAさんのように上手くいくということは、ありません。今回は、むしろ珍しいケースだとは思いますが、「3週間に6回集中し施術、しかも毎日操体法を行う」というのは、治療パターンの一つとして考えられます。
改めて、操体法の素晴らしさを確認できた症例です。
大学時代、共同生活をしていた親友Aさんが、患者さん。
世界ツアーをしている舞踏グループのメンバー。腰痛と古傷の膝が気になるそうです。
治療をしながら、昔話がポロポロ。
「石井さん(伝説の舞踏家)を大学に呼んだのは、Aじゃったろ?」
「違う、違うUだよ・・・ワークショップをアクアク(ジャズ喫茶)でする様になって・・・あの頃、転形劇場をやったり・・・大杉漣さんも来たよ、近藤等則さん、田中泯さん、そのポスターを作ったのが、畠山直哉。」
ポロポロ出てきます。訳が分からない勢いのある流れに飛び込み、遊び、もがき共に過ごした友。
その友のカラダを丁寧に触れる時、石井満隆氏のワークショップがよみがえります。
「人生は、即興です」
の一言で、石井満隆ワークショップが始まりました。その言葉の波動が、カラダに火をつけ、今までの生き様と、これからの生き様を踊って表現していったのです。
「お〜〜い、ここ痛いじゃろ」
私が触れたのは、膝の内側にあるしこり。丁寧に探り鍼を刺します。普段からカラダの手入れをしている
舞踊家の筋肉は、素晴らしく柔らかい。触れていくうちに、段々と頭が下がっていきます。何か神々しい
ものに触れている感覚。
治療しているにもかかわらず、私が治療を受けているような感覚になります。カラダは小宇宙。その小宇宙で表現している舞踊家は、神の域に近づいて行くのだろと思います。Aさんは、舞台に上がっただけで、観衆から拝まれような舞踊家になって行くことでしょう。大野一雄さんのように。
いつの間にか、治療は終わっていました。